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教育の質と国際学力調査の相関性

第1章 社会的背景の調査

3 国際学力調査からの視点

3.4 教育の質と国際学力調査の相関性

外部支援実地検教科横断学習展社会的背景の調査教育リ投入議論と

図 3-7: OECD各国の産業分布と業種分布(就業者数割合)

[OECD, 2013c]

教育は,付加価値を伴うアウトプットを貨幣的単位で測定することができないノン マーケットセクターと位置付けられるということは前述の通りである。PISAやTIMSS が評価の対象としているのは,このような教育から生産される製品(人材)の価値を,「試

験(Examination)」という形式により学力から測定する試みであると捉えられる。しか

しながら,生徒が将来労働力として社会で生産活動に従事した際に生み出される実質の 価値を測定することは困難であるから,この手法は教育から得られるアウトプットの価 値の一部を評価しているに過ぎないことになる。

本項では,教育の質というものの評価について,異なる視点を導入したい。KAMカ スタムカードに記載された「教育パフォーマンス」では,数学・科学教育の質が評価項 目となっている。この項目は,世界経済フォーラム(World Economic Forum)が毎年発 行しているGlobal Competitiveness Reportからの引用であり,世界中の産業界から合

計14,000程度(一国当たり100程度)のサーベイシートを回収し,集計評価がなされた

結果である。各国の競争力を比較するために,以下の12のピラーが用意され,数学・科 学教育の質を含めた計 111 の評価項目によって構成される [World Economic Forum, 2012]。

表 3-6: Global Competitiveness Report - 評価項目(全12ピラー)

ピラー1:社会制度 ピラー2:インフラ ピラー3:マクロ経済環境 ピラー4:保健・初等教育 ピラー5:教育・職業訓練 ピラー6:製品市場効率

ピラー7:労働市場効率 ピラー8:金融市場発展 ピラー9:テクノロジー ピラー10:市場サイズ ピラー11:ビジネス ピラー12:イノベーション

[World Economic Forum, 2012]

ここでの関心の対象は,ピラー5の教育・職業訓練である。日本の調査結果を次に示 したい。教育制度の質に関し,1位スイス(6.0ポイント),2位フィンランド(5.8ポイ ント),3位シンガポール(5.8ポイント)という順にならび,日本は参加144カ国中43 位という結果である。また,数学・科学教育の質については,1位シンガポール(6.3ポ イント),2 位フィンランド(6.2 ポイント),3 位ベルギー(6.2ポイント)という順に

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ならび,日本は参加144カ国中27位であった [World Economic Forum, 2012]。

表 3-7: ピラー5 教育・職業訓練評価(日本)

教育・職業訓練, 2011-2012 評価 順位/参加144カ国

高等教育就学率 59.7 % 36

教育制度の質 4.2 / 7 43

数学・科学教育の質 4.8 / 7 27 マネージメント教育の質 4.1 / 7 80 学校のインターネット接続 4.9 / 7 43 研究と訓練サービス 5.5 / 7 12

教員訓練の程度 5.3 / 7 5

[World Economic Forum, 2012]

PISAやTIMSSは,世界共通の学力調査を通じ,生徒自身の能力を測定,評価する

ことで,教育,学習環境の質向上に役立てる側面を持つ。しかしながら,そこから生徒 の能力が,実際に産業界のニーズに合致しているかを読み取ることはできないことから,

Global Competitiveness Reportの「数学・科学教育の質」に関する評価は,教育と産業

の接続性を読み取るための一助となる。数学・科学教育の質と PISA スコア両者の相関 性を図3-8に示す。同程度のPISAスコアを持つ国,地域(カナダ,ニュージーランド,

台湾等)と比較し,日本は数学・科学教育の質が低いという評価を受けていることが分 かる。言い換えると,現在の学力を維持しつつも,産業界のニーズを取り入れることで,

教育の有用性や生産性向上への寄与といった観点から,その重要性の認識がさらに高ま っていくと思われる。

図 3-8: GCR「教育の質」とPISA「科学的リテラシー」の相関性

[World Economic Forum, 2012] [OECD, 2007]を基に筆者にて編成

以上本章にて調査なされた,社会的背景と教育,経済,産業といった様々な側面か らの指標を考慮し,次章では,科学コミュニケーションや21世紀の課題の活用,そして 情報通信技術の教育への適用といった,より具体性を持った内容を示していく。

Finland Belgium

Switzerland

Taiwan Korea New Zealand

Netherlands Hong Kong Canada

Slovenia

Iceland Estonia

Australia France

Croatia Ireland 日本

Germany Sweden

United Kingdom Denmark

Hungary Austria United States

Latvia

R² = 0.3882

4 4.5 5 5.5 6 6.5

480 490 500 510 520 530 540 550 560 570

Global Competitiveness Report 数学・科学教育の質,2011-2012

PISA 科学的リテラシー,2006

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