第1章 社会的背景の調査
1 知識経済と教育投資,労働力
1.2 労働生産性と教育投資
外部支援による実地検証教科横断型の学習展開社会的背景の調査教育リソースの投入と活用議論と提言
追記した(本来KAMには示されていない)。
表 1-3: カスタムスコアカード
【経済パフォーマンス】
・ GDP成長率
・ 国民一人当たりのGDP
・ 単位労働時間当たりのGDP(労働生産性)
・ 労働力人口
・ 人間開発指数
【教育パフォーマンス】
・ 教育向け公共投資
・ 科学学習の達成度指数(8th Grade,TIMSS)
・ 数学・科学教育の質
・ 15歳生徒の科学的リテラシー(PISA)
[World Bank, 2012] 注:労働生産性については [OECD, 2013a]を基に筆者にて追記
従来から教育への投資の結果として,それが果たして経済,産業の発展に寄与して いるのか,という両者の接続性が重要であるという認識は存在しながらも,科学教育に 特化した形で取り扱われた例は,管見の限り存在しない。次項以降,労働生産性と教育 投資の相関,労働力人口の減少といった事案について取り上げながら,2節のより地域的 な産業と雇用という側面につなげる。学習の達成度,科学教育の質,科学的リテラシー といったパラメータについては,3節の国際学力調査の視点から個別に論じていく。
業機械における,いわゆる「効率」に相当する用語であるが,ここでは,「単位労働時間 当たりに得られる富」としての定義 [Greenhalgh & Rogers, 2010]を利用することとす る。OECD は,すべての加盟国の経済,環境,社会的統計を Global Competitiveness
Reportとして毎年公開しており,そこから生産性に関わるデータを抽出することができ
る。日本の経済規模は,2012年時点,GDPにて世界第3位,アジアでは中国に次いで 第2位(実質値で約520兆円)の規模であるものの,生産性という指標を用いて比較す ると,その順位はOECD加盟各国中21位まで後退する。これは先進国の中で最も低い 水準に位置することを示している [OECD, 2013a]。
生産性,つまり労働者一人当たりの生み出す富が低い日本において,現在の国際的 な経済力を維持することができている背景には,一産業,一組織当たりの就業人数の多 さや一労働者当たりの労働時間の長さがあるものと推測できる。言い換えると,日本が 教育の平等性やその質を高いレベルで実現し,かつすべての市民が恩恵を得る仕組みを 持つ国でありながら,そのような教育を受けた生徒が,富を生み出すための職に就き働 き始めたときに,自らの力によってその生産性を十分に高めることができていない一面 を示すともいえる。このことは,後述する労働力人口の減少に直面する社会において,
この生産性の向上が喫緊の課題であり,教育の役割に接続しながら考察する必要がある。
筆者は,OECDが公表している,各国の中等教育向け公共投資(以下,教育投資)
のデータを用い,生産性と教育投資の相関性を見い出す試みをした(図1-1) [Homma,
et al., 2013]。これによると,日本と同程度の年間約9,000ドル/人の投資がなされている
国は,ドイツ,フィンランド,カナダ,韓国といった国々があるが,それぞれの生産性 には大きな開きがあることが分かる。これらいくつかの国は,明らかに,より効率良く,
教育投資によって出力される生産性を高めているものと推測できる。また,日本の教育 投資は,OECD平均と同程度であるものの,生産性にいたっては,10 %弱低い結果が出 ていることも読み取れる。
外部支援による実地検証教科横断型の学習展開社会的背景の調査教育リソースの投入と活用議論と提言
図 1-1: 労働生産性対教育投資(中等教育)
[Homma, et al., 2013] [OECD, 2013a] [OECD, 2012]
表 1-4: 同程度の教育投資を行っている国の生産性比較 No. 国 労働生産性(ドル/
時),2011
対OECD 平均比
中等教育向け年間公共投資
(生徒一人当たり)(ドル),2009
1 Germany 55.8 + 18.5 % 9,285
2 Finland 48.1 + 5.4 % 8,947
3 Canada 46.3 + 1.7 % 8,997
4 Italy 45.6 + 0.2 % 9,112
5 日本 41.6 - 9.4 % 9,256
6 Korea, Rep. 29.7 - 53.2 % 9,399
OECD平均 45.5 - 9,312
[OECD, 2013a] [OECD, 2012]
Norway
Luxembourg
United States Belgium
Ireland
Germany
Austria Canada
Finland
Switzerland
New Zealand 日本
Slovakia
Czech Korea
OECD平均
R² = 0.635
20 30 40 50 60 70 80 90
4,000 8,000 12,000 16,000 20,000
労働生産性(ドル/時),2011
中等教育向け年間公共投資(生徒一人当たり)(ドル),2009