第4章 外部支援による実地検証
9 実施結果の詳細と分析
外部支援による実地検証教科横断型の学習展開社会的背景の調査教育リソースの投入と活用議論と提言
化を追跡することが実質困難であったためである。
表9-1の設問No.1およびNo.2は,創造性やイノベーションの能力を問う項目であ り,ここから,参加した生徒は,身の回りの小さな問題が,他の大きな問題に連続的に 接続していることを認識している一方で,新しいアイデアを生み出し,共有するといっ た経験が少ないことを推測した。
No.3~No.6は,協働性やコミュニケーション能力を問う内容であり,自分の考えを 周囲に説明し,理解させ,また分かりやすく質問をするといった点で自信がないように 捉えられる。しかしながら,コミュニケーションをとったり,協力し合い作業を進める ことに関しては,優れている点として挙げることができる。
No.7およびNo.8は,現代の生徒に必須となるメディアの利用に関する質問であり,
おそらく学校での情報教育等を通じ,それに対する認識は総じて高い。結果からも読み 取れるように,情報を参考にしたうえで,自分なりの考えを持つことが大切であるとい う生徒が多かった。また,メディアを通じ双方向でやり取りをする機会が増えているこ とから,その使用にモラルやプライバシーが関わっていることについても,概ね良好の 回答を得られた。
No.9およびNo.10は,科学実験において一般的に求められる能力について問い,実
験を行うことの必要性を,自然界の現象を理解するためのものとして捉えている生徒は 多かった。また,実験で仮説を立てたり,予想をしたりする場面が増えてきていること からも,その重要性についての認識は高かった。
これら,生徒のキーコンピテンシーを調査するためのアンケートについて,内容は 生徒に分かりやすいように簡略化してあり,また,あくまで概略的であることからも,
4.2キーコンピテンシーに示された項目すべてを網羅できているわけではない。
表 9-1: キーコンピテンシー チェックリスト(生徒)
キーコンピテンシー No. チェック項目
(斜体は「はい」「いいえ」のいずれか高い方を示す) はい 分から ない
いい え
創造性・イノベーションス キル:
他人の意見を尊重しながら,
自ら率先してアイデアを創造 し,問題解決につなげる能力
1 さまざまな新しいアイデアを取り入 れたり,生み出したりすることができ る。
41 % 12 % 47 %
2 身近な小さな問題は,地球的スケール の問題につながっていると思う。
93 % 1 % 6 %
協働性・コミュニケーショ ンスキル:
多 様 性 の あ る ア イ デ ア に 対 し,偏見を持たずそれを共有 し,異なる年齢間や背景をも った参加者と効果的にコミュ ニケーションをとる能力
3 自分の考えを他人に伝え,理解させる ことができる。
30 % 21 % 49 %
4 周りの人とコミュニケーションをと り,意見を交換することができる。
62 % 13 % 25 %
5 周りの人と協力し,問題に取り組むこ とができる。
86 % 3 % 11 %
6 疑問に思った点は,聞く人に分かりや すいように質問することができる。
38 % 19 % 44 %
メディア・情報リ テラシ ー:
メディアから得られる情報の 意図や影響を批判的,多面的 に読み取る能力
7 テレビやインターネットからの情報 を参考にし,自分なりの考えを持つこ とができる。
76 % 3 % 21 %
8 テレビやインターネット等の情報に は,モラルやプライバシーが関わって いると思う
81 % 4 % 15 %
科学的アプローチ:
予備知識や仮説を基にした実 験 シ ナ リ オ を 描 く こ と が で き,それを実行する能力
9 実験を行う時には,どのような結果を 得たいのか予想してみると良いと思 う。
88 % 4 % 7 %
10 どのような実験も,身の回りの現象を 理解するために必要だと思う。
88 % 2 % 9 %
(参加者数91人)
外部支援による実地検証教科横断型の学習展開社会的背景の調査教育リソースの投入と活用議論と提言
参加者評価(事後アンケート)
2012年度に実施した計5回の実験講座では,事後アンケートを実施し,参加者の反 応を項目別に調査することとした。このアンケートには,支援事業者である科学技術振 興機構によって指定された質問と,筆者によって作成された質問が統合されている。
感想によれば,講座前は,難しそうなトピックということで,ややためらいをもつ 生徒がいたようだが,活動を終えて「とてもわかりやすかった」「まあまあわかりやすか った」という肯定的回答は,91 人中87 人に上った。以前にこのような活動に参加した ことのない生徒は,91 人中 63人であり,弘前市およびその近隣市町村での科学コミュ ニケーション活動は,あまり普及していない様子を垣間見ることができた。見方を変え れば,主要な科学館,博物館,その他産業展示施設がほぼ存在しないこの地域にとって,
このような活動の意義は大きいことを示している。
各学校に募集チラシを配布したり,電話をしたりして理科教員に参加者を募っても らったことから,すでに科学技術に興味を持っている生徒が集まったことは回答からも 分かる(とても興味があった 91 人中 50人)。講座を受け,その後の興味の高まりにつ いて「更に興味を持った」が91人中60人という結果になった。21世紀の課題について,
そして社会の中での科学技術の役割について考えを深めることができた生徒は,「よく考 えることができた」と「まあまあ考えることができた」の肯定的な回答を合わせると91 人中87人であった。また,アイデアの視覚化のために利用したカードによる活動,また 情報通信機器の活用に関しても,同様に生徒の評価は高く,ともに全体の 8 割以上が肯 定的であった。
表 9-2: 科学技術コミュニケーション推進事業 事後アンケート結果(生徒)
質問項目 回答者の分布(人)(斜体は各項目の最大数を示す)
1)今日の活動は楽しかったで すか?
1.と て も 楽 し かった
2.ま あ ま あ 楽 し か っ た
3.普通 4.あ ま
り 楽 し く な か った
5.全 然 楽 し く な か っ た
不明 Σ
82 9 0 0 0 0 91
2)今日の活動は分かりやすか ったですか?
1.と て も 分 か り や す かった
2.ま あ ま あ 分 か り や す か っ た
3.普通 4.少 し
難 し か った
5.と て も 難 し かった
不明 Σ
67 20 2 2 0 0 91
3)以前にもこのような活動に 参加したことがありますか?
1.よ く 参 加 し ている
2.参 加 し た こ と が あ る
3.今 日 が は じ めて
不明 Σ
7 21 63 0 91
4)また参加したいと思います か?
1.積 極 的 に 参 加
2.機 会 が あ れ ば参加
3.ど ち ら と も い え な い
4.あ ま り 参 加 し た く ない
5.も う 参 加 し た く な い
不明 Σ
35 52 4 0 0 0 91
5)今まで,自然や科学技術に 興味がありましたか?
1.と て も 興 味 が あ っ た
2.ま あ ま あ 興 味 が あ った
3.ど ち ら と も い え な い
4.あ ま り 興 味 は な か った
5.全 然 興 味 は な か っ た
不明 Σ
50 27 6 8 0 0 91
6)今日参加して,自然や科学 技術への興味が高まりました か?
1.更 に 興 味 を 持った
2.少 し 興 味 を 持った
3.変 わ らない
4.少 し 興 味 が 薄れた
5.興 味 が な く なった
不明 Σ
60 30 1 0 0 0 91
7)今度は今日のような活動に 友達を誘ってみたいですか?
1.と て も 誘 っ て み た い
2.誘 っ て み た い
3.あ ま り 誘 っ て み た くない
4.誘 っ て み た くない
不明
41 47 3 0 0
8)今日の活動をどこで知りま したか?
1.チ ラ シ ・ ポ スター
2.広 報 誌
3.学校 4.科 学
館 ・ 公 民館
5.知 人 の紹介
6.講 師 や 主 催 者
7.そ の 他
不明 Σ
0 0 81 0 1 9 0 0 91
9)21 世紀の課題がどのよう なものか自分なりに考えるこ とができましたか?(筆者に て追加)
1.よ く 考 え る こ と が できた
2.ま あ ま あ 考 え る こ と が で きた
3.ど ち ら と も い え な い
4.あ ま り 考 え な か っ た
5.全 然 考 え な かった
不明 Σ
52 35 4 0 0 0 91
10)世界の中で,そして社会 の中で,科学が果たす役割を 自分なりに考えることができ ましたか?(筆者にて追加)
1.よ く 考 え る こ と が できた
2.ま あ ま あ 考 え る こ と が で きた
3.ど ち ら と も い え な い
4.あ ま り 考 え な か っ た
5.全 然 考 え な かった
不明 Σ
39 43 9 0 0 0 91
外部支援による実地検証教科横断型の学習展開社会的背景の調査教育リソースの投入と活用議論と提言 11)カードを用いたグループ
ワークを普段の授業でも使っ てみたいと思いますか?(筆 者にて追加)
1.と て も や っ て み た い
2.で き れ ば や っ て み たい
3.ど ち ら と も い え な い
4.あ ま り や り た く な い
5.全 然 や り た くない
不明 Σ
51 32 5 2 1 0 91
12)タブレットのような情報 機器を普段の授業でも使って みたいと思いますか?(筆者 にて追加)
1.と て も 使 っ て み た い
2.で き れ ば 使 っ て み たい
3.ど ち ら と も い え な い
4.あ ま り 使 い た く な い
5.全 然 使 い た くない
不明 Σ
76 10 3 1 1 0 91
参加者感想とその解析
実験講座の実施後に,アンケートとともに感想を記述してもらう時間を設けた。生 徒の感想は,生徒が持った考え,思いが率直に記され,その後の講座を成り立たせ改善 していくために有用であった。感想はすべて情報端末にタイプしてもらい,それを集約 した。1回目の講座では,初回ということもあり時間不足で感想の収集をすることはでき なかったが,2回目以降の生徒の感想については,抜粋を本項に,また,すべての感想を 添付資料に加えてある。
ここでは,概要を示すために感想のいくつかを取り上げる。実験手順(シナリオ)
を生徒自身が構築していく作業に関し,「実験手順を予想して話し合ったりしたことが一 番印象に残リました。」「私も科学をもっと勉強し,物質の性質や働きをよく知って,実 験のやり方を自分で筋道立てられるようになりたいと思った」という感想を受けた。ま た,「しっかりとした科学的根拠を用いて実験の結果を得ることができて自分でもすごく 納得がいったし自信にもなった」「表現力が求められることを感じ,実験を皆で協力して やり遂げるのは達成感がすごくありました」「実験を自分で考えなければいけないので少 しは自分で考える力が身に付いた気がしました」という感想もみられた。
情報端末の利用とそこから得られる知識,情報については,「調べ方が楽になり,よ り多くのことを調べられるということはその分いろんなことを視野に入れて,より自分 の問題,身近な問題として考えていかなくてはならないと思いました」と感想があった ように,学習を進める上で,メディア,インターネットの活用を建設的に捉える生徒も いた。また,引率教員からは,「生徒にとってはタブレットを使っての作業ということで とても楽しかったと思います」「コンピュータや情報機器の発達でいろんなことが可能に なるのもすばらしいと思う反面,使い方を間違えると大変なことになるなあとも思いま