第1章 社会的背景の調査
3 国際学力調査からの視点
3.3 国際成人力調査( PIAAC )
PIAACは,OECDに加盟する22カ国とその他2カ国を合わせ計24カ国において,
16~65歳の約166,000人を対象にして実施された国際成人力調査である(実施期間2011
年8月~2012年2月)。この調査では,情報処理コンピテンシーとして社会や職場で有 用となる,読解力,数的思考力,ITを活用した問題解決能力が測定され評価される。こ のような能力に加え,読解や計算に関連した日々の活動,コラボレーション等に関わる
能力,また,自身の能力や資格が,どの程度仕事に生かされているか等も調査される [OECD, 2013c]。
表3-5に示されるように,読解力ならびに数的思考力について,日本はOECD各国 のレベルと比較し,ともに好成績をおさめている。前者については全体の約70 %,後者 については全体の約60 %がレベル3~4を獲得している。これに加え,レベル1未満~
レベル 1 に該当する割合が極めて少ないことが,全体のスコアを押し上げている要因と なっている。ただし,レベル 5 の特に優れたスコアを獲得した割合は,フィンランドの 割合の半分程度におさまる。OECD加盟国の中でも,日本は移民が少なく(人種がほぼ 単一),公教育の普遍性が高いレベルで保たれている(平等性の確保)といった点が,高 水準につながっていると思われる。
一方で,ITを活用した問題解決能力について,日本は,OECD各国と比較するとそ の水準の低さが際立っている。レベル3の割合は高水準の他国と同等の8 %前後,レベ ル2が OECD平均と同水準であるものの,ITの利用経験なし,試験を辞退,または不 適合となった割合は全体の35 %にのぼる。このことが,全体の水準を大きく下げている 要因となっている。
外部支援による実地検証教科横断型の学習展開社会的背景の調査教育リソースの投入と活用議論と提言
表 3-5: 読解力,数的思考力,ITを活用した問題解決能力(上位10カ国比較)
I. 読解力 (斜体は各レベルの最大数を示す)
No. 国 平均 レベル1
未満 レベル1 レベル2 レベル3 レベル4 レベル5 Missing
1 日本 296.2 0.6 4.3 22.8 48.6 21.4 1.2 1.2
2 Finland 287.5 2.7 8.0 26.5 40.7 20.0 2.2 0.0
3 Netherlands 284.0 2.6 9.1 26.4 41.5 16.8 1.3 2.3
4 Australia 280.4 3.1 9.4 29.2 39.4 15.7 1.3 1.9
5 Sweden 279.2 3.7 9.6 29.1 41.6 14.9 1.2 0.0
6 Norway 278.4 3.0 9.3 30.2 41.6 13.1 0.6 2.2
7 Estonia 275.9 2.0 11.0 34.3 40.6 11.0 0.8 0.4
8 Belgium 275.5 2.7 11.3 29.6 38.8 11.9 0.4 5.2
9 Czech 274.0 1.5 10.3 37.5 41.4 8.3 0.4 0.6
10 Slovakia 273.8 1.9 9.7 36.2 44.4 7.3 0.2 0.3
OECD平均 272.7 3.3 12.2 33.3 38.2 11.1 0.7 1.2
II. 数的思考力
No. 国 平均 レベル1
未満 レベル1 レベル2 レベル3 レベル4 レベル5 Missing
1 日本 288.2 1.2 7.0 28.1 43.7 17.3 1.5 1.2
2 Finland 282.2 3.1 9.7 29.3 38.4 17.2 2.2 0.0
3 Belgium 280.4 3.0 10.4 27.7 36.8 15.4 1.6 5.2
4 Netherlands 280.3 3.5 9.7 28.2 39.4 15.6 1.3 2.3
5 Sweden 279.1 4.4 10.3 28.7 38.0 16.7 1.9 0.0
6 Norway 278.3 4.3 10.2 28.4 37.4 15.7 1.7 2.2
7 Denmark 278.3 3.4 10.8 30.7 38.0 14.9 1.7 0.4
8 Slovakia 275.8 3.5 10.3 32.2 41.1 11.8 0.8 0.3
9 Czech 275.7 1.7 11.1 34.7 40.4 10.6 0.9 0.6
10 Austria 275.0 3.4 10.9 33.1 37.2 12.5 1.1 1.8
OECD平均 268.7 5.0 14.0 33.0 34.4 11.4 1.1 1.2
III. ITを活用した問題解決能力
No. レベル1
未満 レベル1 レベル2 レベル3 IT利用
経験なし 辞退 不適合 Missing
1 Sweden 13.1 30.8 35.2 8.8 1.6 5.7 4.8 0.1
2 Norway 11.4 31.8 34.9 6.1 1.6 6.7 5.2 2.2
3 Netherlands 12.5 32.6 34.3 7.3 3.0 4.5 3.7 2.3
4 Finland 11.0 28.9 33.2 8.4 3.5 9.7 5.2 0.1
5 Denmark 13.9 32.9 32.3 6.3 2.4 6.4 5.3 0.4
6 Australia 9.2 28.9 31.8 6.2 4.0 13.7 3.5 2.7
7 Canada 14.8 30.0 29.4 7.1 4.5 6.3 5.9 1.9
8 England 15.1 33.8 29.3 5.7 4.1 4.6 5.8 1.6
9 Germany 14.4 30.5 29.2 6.8 7.9 6.1 3.7 1.5
10 Belgium 14.8 29.8 28.7 5.8 7.4 4.7 3.5 5.2
・ ・
・
14 日本 7.6 19.7 26.3 8.3 10.2 15.9 10.7 1.3
OECD平均 12.3 29.4 28.2 5.8 9.3 10.2 4.9 1.5
[OECD, 2013c]
このような事実から,年代を問わず,産業形態の変化に人材が対応していかなくな るのではないだろうかという懸念が生じる。図3-6は,1980年以降のOECD加盟国で の産業形態の変化(就業者数割合)を示している。多くの国で,減少傾向にあるのは第 二次産業である製造業であり,高次産業(サービス,知的財産等)への遷移が続いてい
る [OECD, 2013c]。このような状況において求められる,高度な情報処理能力をこの
PIAACでは評価し,各国の教育政策への反映が勧められている。サービス業全体の割合
が年々増すごとに,ITの利活用を伴った業種(特に企画提案,知識提供,課題解決型)
に必要とされる能力は,今後日本の教育において適切な対応が求められる。4.2キーコン ピテンシーにて詳細に触れる。
図 3-6: OECD加盟国での産業形態の変化(就業者数割合)
[OECD, 2013c]
参考までに,図3-7は,現在のOECD各国の産業分布と業種分布(ともに就業者数 割合)を示している。社会が成熟し,より大きな富を生み出そうとする過程で,産業は 常に高次化の方向に進む。この変化を教育が後追いするのではなく,能動的に,そこか ら輩出される人材のありようを予測し,それに教育を適合させていかなければならない。
-40 -20 0 20 40 60 80 100
1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010
産業形態の変化(%)
年
製造業全体 製造業(High-tech分野)
コミュニティー,社会,福祉サービス 金融,保険,不動産,ビジネスサービス
通信サービス
外部支援による実地検証教科横断型の学習展開社会的背景の調査教育リソースの投入と活用議論と提言
図 3-7: OECD各国の産業分布と業種分布(就業者数割合)
[OECD, 2013c]