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第 2 章 研究方法

2.3 研究方法

本研究では、DCT(Discourse Completeion Test)調査30によって、両言語母語話者の 断り発話を大量に収集し、異文化間語用論と配慮表現の観点から分析する。DCTは「与え られた状況においてどのように言うかを筆記形式で答える手法で、統制されたコンテクス ト に お い て 大 量 の デ ー タ を 短 期 間 で 集 め る こ と が で き る と い う 利 点 が あ る 」( 近 藤

2009:77)。しかし、本研究でDCT調査を使う主な理由は、以下のとおりである。

1. 人間の慣習的な考え方を把握し、話者の規範的な意識を言語化したものを分析できる こと31

2. 日本語とアラビア語の「断り」に関する対照研究は、筆者が行った研究以外、管見の 限りないため、大量のデータを収集することが必要であること。

3. 両言語の類似点及び相違点を客観的に解明できるため、同様の断り場面を設定するこ とが重要であること。

4. 断り発話における正当化のメカニズムは、他者との人間関係により、左右されるため、

異なる人間関係の種類を設定することが重要であること。

DCT調査では、事前に断りにくさに関する予備調査32によって、断りやすい依頼・勧誘 と断りにくい依頼・勧誘の各 2 場面を設定し、各場面において「先生」に対する断りと、

「親しい友人」、「知り合い」の3 種類を設定した。つまり、依頼と勧誘それぞれ6場面、

合計12場面となる。調査場面は、以下表2-1にまとめる。

30 資料ⅠとⅡを参照されたい。

31 ロールプレイ調査や、自然発話例のデータでは、話し手が聞き手の反応に従い、実際に言いたいこと を我慢し言えないときがあるため、断り手が実際にどのように断りたいのか、どのように相手へ配慮を 示せるかと思っているのかということを把握できないわけである。

32 調査詳細は、第4章で詳しく論じる。

表2-1 調査場面

依頼場面 勧誘場面

断りやすい 依頼Ⅰ:飲み物の購入依頼 勧誘Ⅰ:食事の誘い

断りにくい 依頼Ⅱ:教材のコピー依頼 勧誘Ⅱ:誕生パーティーの誘い

本研究では先に述べたように、断り手が用いた断り発話に対して意識調査を通して断ら れる側の印象を明らかにする。聞き手の印象を明らかにすることにより、配慮表現と思わ れる表現形式(程度副詞、義務を表すモダリティ)が客観的に認定できる。

本研究で扱う調査方法及び、調査対象者、調査目的を以下の表2-2と表2-3にまとめる33

表2-2 両言語母語話者の調査情報

日本語とアラビア語母語話者

3

5

調査方法 調査対象者情報 調査目的

①DCT 調査データ 数:1,576

1.カイロ大学アラビア語学科(60名)

2.筑波大学日本語日本文化を主専攻 の日本人大学生 (42名)

断り発話について、両言語母語話者か ら大量のデータを収集し、両言語の異 なりを明らかにする。

4

②意識調査(断りに くさ)

1.カイロ大学アラビア語学科(60名)

2.筑波大学の日本人大学生 (42名)

各場面において、被調査者が断る際に 感じる断りにくさの判断をしてもら い、調査場面を分ける。

③意識調査Ⅰ(選択 式のアンケー)

1.カイロ大学アラビア語学科(121

名)

(女性102名、男性19名)

配慮表現と思われる表現形式(程度副 詞)を客観的に認定できるよう、断ら れる側の印象を明らかにする。

33 本論文の調査は、アラビア語母語話者を対象にアラビア語で、日本語母語話者には、筆者がアラビア 語を日本語に直訳したものを用いて調査を行う。

(原文アラビア語)

④意識調査Ⅱ(選択 式のアンケー)

2.筑波大学日本語日本文化を主専攻 の日本人大学生 (39名)

(女性32名、男性7名)

(原文日本語)

⑤意識調査Ⅲ(選択 式のアンケー)

1.カイロ大学アラビア語学科(121

名)

(原文アラビア語)

アラビア語の助動詞「lazem」、配慮表 現として、客観的に認定する。

⑥ フ ォ ロ ー ア ッ プ インタビュー調査

1.カイロ大学アラビア語学科(8名)

(女性5名、男性3名)

意識調査ⅠとⅢを行った上で、被調査 者がなぜこのように選択したかを確 認する。

⑦ 現 代 日 本 語 均 衡 コーパス(BCCWJ)

1.日本語母語話者の会話例 日本語の「ちょっと」とアラビア語の

「shwya」の比較を行う。

表2-3 日本語学習者の調査情報 アラビア語を母語とする日本語学習者

調査方法 調査対象者 調査目的

6

DCT調査 デ ー タ 数 :372

カイロ大学日本語日本文学部初中級 レベル(36名)

(女性27名、男性9名)

断り発話について、学習者から大量の データを収集する。

② ロ ー ル プ レ イ調査 デ ー タ 数 :288 会話

カイロ大学日本語日本文学部初中級 レベル(36名)

DCT 調査の結果を確認し、学習者の 会話の特徴を明らかにする。

③ 意 識 調 査 Ⅳ

(アンケート調 査)

カイロ大学日本語日本文学部初中級 レベル(36名)

(女性30名、男性6名)

学習者が母語から影響されているの か、日本語母語話者とどう異なるかを 確認するため、母語話者に行った意識 調査Ⅱと同様の調査を行う。

④フォローアッ カイロ大学日本語日本文学部初中級 意識調査Ⅳを行った上で、被調査者が

プインタビュー 調査

レベル(36名) なぜこのように選択したかを確認す る。

インタビュー調

カイロ大学日本語日本文学部中級 レベル(5名)

(女性3名、男性2名)

会話の授業を担当するカイロ大学 の先生がどのような指導法を行うの か、学習者が会話の能力を育成するの に、どのようなストラテジーを用いる かを訪ねる。その理由は、初級レベル の日本語学習者がなぜ、中級レベルの 学習者より、教材に沿った発話を行え るかを明らかにする。