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第 4 章 配慮表現の観点から見た断り発話

4.4 調査結果と考察

4.4.3 表現選択の判断要因

4.4.3.2 断りにくさの異なり

度が少ないのに対し、「ちょっと」のように派生的機能で解釈できる場合、使用率が上が る傾向があった。具体的に述べると、問1と4の選択肢として「ごめん、水曜日は少し忙 しいんだ」と「ごめん今少し疲れているんだ」があり、両方とも「ちょっと」のように派 生的機能で解釈できると思われるが、問2・3では、「ごめん、今少し大事な用事があるか ら帰るところなんだ」と「ごめんなさい。金曜日は少し勉強しなければならないから、行 けないんだ」という 2 つの理由で使われた「少し」は本来の意味で解釈されやすいため、

使用頻度が少ないことが分かる。

このことから、日本語の断りにおいて、「少し」も「ちょっと」のように配慮を示す二 次的用法を備えており、相手がどれだけ「忙しい」「大変」かどうかは、断られた側にと って重要ではなく、むしろ相手に対する配慮をどのように示すかということが重視される。

つまり、情報重視コミュニケーション様式より、人間関係重視コミュニケーション様式が 好まれると考えられよう。

また、上記の結果から日本語の断りにおいて、頻繁に使用される「ちょっと」は常に低 い程度の意味に限定して用いられるのではなく、対人的配慮を表す(牧原 2005)場合が 多いこともうかがえる。

図4-8 日本語における断りにくさの判断

図4-9 アラビア語における断りにくさの判断

図4-8・4-9から分かるように、場面内容の異なりによって、親しみのある相手からの期

待が高い。そして自分が相手に損失を与えてしまうような要求内容の場合に、「断りにく さ」の度合いが高くなる。特に依頼Ⅰでは、FTAを行わないストラテジーに当たる「断る ことができない」という選択肢 4 の割合が、比較的高いという結果が得られた。しかし、

0%

20%

40%

60%

80%

100%

勧誘Ⅰ 勧誘Ⅱ 依頼Ⅰ 依頼Ⅱ 日本語母語話者

簡単に

少し気を遣う

慎重に言葉を選ぶ

断ることができない

0%

20%

40%

60%

80%

100%

勧誘Ⅰ 勧誘Ⅱ 依頼Ⅰ 依頼Ⅱ アラビア語母語話者

簡単に

少し気を遣う

慎重に言葉を選ぶ

断ることができない

アラビア語母語話者は、「簡単に断る」の選択率が最も高いのに対し、日本語母語話者は 親の相手に対しても、気を遣う度合いが高いことが明らかとなった。具体的に述べると、

日本語では、勧誘場面より、依頼Ⅰの方が断りにくく、依頼Ⅱより、勧誘場面の方が断り にくい傾向が見られた。一方、アラビア語では、依頼Ⅰ以外は、ほぼ断りやすい傾向が見 られた。このことから、アラビア語においては、断ると相手が困ることが予想される要求 内容の場合、断りにくさの度合いが高くなるのに対して、断っても相手が困らないだろう と推測される依頼Ⅱでは断りやすい傾向にある。しかし、表現の選択結果を示す図4-1か ら分かるように、断りやすいと判断された勧誘場面でも、最も配慮の度合いが高いとされ る「gdan」の選択率が 70%程度を占めている。このことから、アラビア語では、全体的 に場面内容による断りにくさに限らず、断る際に事情を大きくする「自己の負担が大きい と述べよ」の原則を用いることが望ましいことが分かる。つまり、アラビア語においては、

断り手が断りやすいと判断した場面では、断られる側が期待する配慮の度合いが高いこと が分かる。

一方、日本語では場面内容により、結果が異なった。場面1〜3においては、「少し気を 遣うが断ることができる」の選択率が最も高く、「程度副詞の調査結果」でもこれらの場 面において納得の度合いが高いとされる「副詞なし」の選択率が最も高かった。一方、場

面4「飲み物の購入依頼」では、「簡単に断る」の選択肢が最も高い割合を占め、その結果

「程度副詞の調査結果」でも、納得の度合いが低い「少し」と「とても」の使用率が上が り、「副詞なし」の選択率が下がる傾向があった。従って、DCTで集めた断りのデータの 中でも、特に場面4では「批判」の意味公式が含まれる談話が見られた。そのため、意識 調査結果ⅠとⅡでも、両言語母語話者が納得の度合いが高いと判断した表現形式より、納 得の度合いが低いと判断した表現の方が高い割合を占める結果となった。

人間は本来自分の力だけではできないことに対して、他人から助けを求めるものである が、依頼Ⅱは自分の力だけでできる要求であるため、このように、断り手が「断りやすい」

と判断し、断られる側も配慮の度合いが低い表現でも納得できると考える。

以上の結果から、依頼場面より、勧誘場面の方が断りにくい場合もあることが分かる。