本件洋上大型貯炭出荷設備の整備を計画するに際し、検討が必要な主な法令としては、イ ンドネシアにおける石炭の取扱いに関連する法令(生産ならびに取引等に関する規制)、海 洋輸送に関連する法令(船舶に求められる必要な要件)、石炭物流に関連する法令(荷姿等 への規制)、海上構造物に関連する法令、その他、投資、用地取得、環境等に関連する法令 があげられる。本章では、これら法令の最近の動向についてとりまとめる。
9.1
石炭の生産に係る法令石炭の生産に関連する主な法令は、鉱業法(UU No 4 / 2009 Tentang Pertambangan Mineral
dan Batubara)である。同法は、旧鉱業法(UU No. 11 / 1967)に代わり、採掘権や、採掘事
業参入のための手続を明確化したものである。以下、鉱業法の特徴を、旧鉱業法との対比を 中心に述べる。9.1.1
鉱業法の主な内容鉱業法は、以下に関する規定が含まれている:
採鉱地域の決定
鉱物と石炭鉱業の経営活動
鉱物と石炭の採鉱業者(鉱業に従事するための要件と許可証)
採鉱活動終了後の跡地再生活動
鉱物および石炭の国内への優先供給
旧Contracts of Work
とCoal Contracts of Work
に準じる投資計画変更の処理
中央と地方政府の鉱業からの収入の透明性
違法行為に対する行政処分現鉱業法が石炭の流通に大きな影響を及ぼしているのは、同法で規定されている国内への 石炭優先供給の規定である。同法では、エネルギー鉱物資源大臣が大臣令を以って、国内で 生産される石炭のうち、国内に供給されなくてはならない量(DMO: Domestic Market
Obligation)を定めることができるとしている。
また、現鉱業法が旧法と比較して大きく改善されている点は、特に許可証発給関連制度の 簡素化及び外国投資家と国内投資家が同等に扱われるようになった点である。すなわち、現 鉱業法の実施により、従来国内投資家又は限られた少数の外国大手投資家しか取得できなか
った
KP(Kuasa Pertambangan
採鉱権)又はKK(Kontrak Karya/Contract of Work/COW/事業
契約)は、新たな鉱業許可証(Ijin Usaha Pertambangan/IUP)として外国投資家にも発給され るようになった。また、中小規模の採鉱事業に係る
IUP
は、手続を経れば発給されるが、国家戦略上重要な意味を持つ大規模採鉱事業の実施は、いわゆる「特別鉱業許可証」(Ijin
Usaha Pertambangan Khusus/IUPK)を必要とする。
9.1.2
国内への石炭優先供給現鉱業法では、エネルギー鉱物資源大臣が国内で生産される石炭総量のうち、国内に供給 されなくてはならない量を大臣令にて定めることができるとされている。例えば
2009
年に おいては、生産計画量2
億3,000
万トンのうち、国内市場供給義務量は6,800
万トンであっ た。同量の国内市場供給が達成でき、輸出のための余剰が見込める場合に、同大臣はWork Budget and Program (CCoWRKAB)に基づき石炭生産・流通事業者に対し余剰量を生産計画に
比例配分することにより、生産・流通事業者が石炭を輸出することを可能としている。9.1.3
営業許可関連制度現鉱業法のもうひとつの特徴は、営業許可制度が旧法から大幅に改定され、外資参入が比 較的容易になったという点にある。営業許可関連制度における現行の鉱業法と旧法の違いは、
表 9-1に示すとおりである。
表 9-1 営業許可関連制度における現行鉱業法と旧法との対比 項目 (現行法)IUP/IUPK (旧法)KP/KK 許可取得
の手段
IUP:入札より取得 IUPK:国有企業に優先付与
民間企業は入札より取得KP/KK:申請より取得
主管政府 機関
IUP
:・
MEMR
(州を跨ぐ地域/
海岸から12
マイル以上海域)・州知事(県・市を跨ぐ地域
/
海岸から4~12
マイルの海域)・県・市知事(県・市範囲内
/
海岸から4
マイル未満海域)IUPK
:主管省の大臣KP
:県・市政府が採鉱権を付与KK
:インドネシア政府とインドネシ ア法人企業(外資との合弁企業も含む)との契約締結
許可の付 与対象
IUP
:企業(外資との合弁企業も含む)協同組合、個人
IUPK
:企業(外資との合弁企業も含む)KP
:インドネシアの個人又はインドネ シアの100
%出資会社KK
:インドネシア法人企業(外資合 弁企業も含む)許可の種 類
・探査の
IUP/IUPK(一般調査、探査、F/S
を含む)・生産の
IUP/IUPK
(建設、採掘、加工・精製、輸送・販売を含む)
・KP:以下の各種活動に区分する。
一般研究・調査、探査、採掘、加工・
精製、輸送・販売それぞれの
KP
・
KK
:一つのKK
は採鉱関連のすべて の活動を包括する。有効期限 ・探査の
IUP/IUPK: 金属 8
年、石炭7
年・生産の
IUP/IUPK: 40
年(20年+10年+10年)KP:・探査:5
年(3年+2年)・生産:50年(30年+20年)
KK:・生産開始前の段階:8~12
年・生産:
50
年(30年+20年)許可取得 面積上限
・探査の
IUP/IUPK:金属 10
万ha、石炭 5
万ha
・生産の
IUP/IUPK:金属 2.5
万ha、石炭 1.5
万ha
KP:1,000~10,000ha
KK:鉱物 25
万ha、石炭 10
万ha
出所)Harsono Hermanto Strategic Consulting, “Corporate Briefing” (February, 2009)9.1.4
石炭を含めた鉱業活動の類型別と企業種類別の許可証取得方法鉱業法により、政府は潜在的な鉱物資源が特定された地域を、
IUP
を必要とする「鉱業事 業許可区域」(Wilayah Ijin Usaha Pertambangan/WIUP)、IPR(Ijin Pertambangan Rakyat)を必 要とする「市民鉱業区域」(Wilayah Pertambangan Rakyat/WPR)と呼ばれる小事業主鉱区、及び
IUPK
を必要とする「特別鉱業事業許可鉱区」(Wilayah Ijin Usaha Pertambangan Khusus/WIUPK)にそれぞれ区分して指定する。
そのうち、
IUP
の発給対象は石炭、金属鉱物、非金属鉱物、及び石材を採掘する企業、協 同組合又は個人である。IUPK は石炭と金属鉱物を採掘する国有企業(Badan Usaha MilikNegara/BUMN)、地域の国有企業(Badan Usaha Milik Daerah/BUMD)又は民間企業(Badan Usaha Milik Swasta/BUMS)に発給するが、国有企業と地域の国有企業は優先権より許可証
を取得できるのに対して、民間企業は許可証を取得するために入札に参加しなければならな い。また、IPR
は狭い地域における小規模な鉱業活動の実施の権利をインドネシア国籍の個 人、地方共同体、協同組合に付与するものである。IUP
とIUPK
の発給は以下のように探査許可証と生産許可証という2つの段階に区分して 実施し、許可証取得の方法も活動類型と企業の種類によって異なる。(表 9-2参照)表 9-2 新鉱業法における種類別許可証の取得方法
活動類型
IUP
の取得IUPK
の取得 探査 ・非金属と石材鉱物:申請・石炭と金属鉱物: 入札
・
BUMS
(外資合弁企業含む):入札・
BUMN
とBUMD
: 優先取得権 生産 ・探査IUP
からのアップグレード・探査
IUP
を持たないBUMS(外資合弁企
業含む)、協同組合、個人: 入札・探査
IUPK
からのアップグレード・探査
IUP
を持たないBUMS(外資合弁企
業含む): 入札出所)「鉱物と石炭採掘作業の実施に関する政令」(Government Regulation No. 23 / 2010)
9.2
石炭の海上輸送に係る法令9.2.1
海運事業、港湾事業に係る法令本件洋上大型貯炭出荷設備に石炭を輸送する際、同設備から船積みされる石炭の輸送に係 る法令としては、海運法(船舶の航行に関する法律: UU No17 / 2008)がある。同法は、
旧海運法(UU No21 / 1992)に代わるものであり、内航、外航に関する必要要件等を定めた ものである。同法では、国内の港湾運営についても規定しており、旧法では
PT Pelindo
社の 独占が定められていた国内港湾運営事業は、2011 年には開放されることとなっている。同 時に、港湾関連事業に対する外資の参入も出資比率49%を上限として認められている。
9.2.2
内航に係る法令インドネシアでは、内航を原則として同国籍船に限定する
Cabotage
の規定を設けている。これは、国内海港間の貨物輸送に関する運輸大臣規則(KM No22 / 2010 Tentang Pengangkutan
Barang / Muatan Antar Pelabuhan Laut di Dalam Negeri)にて規定されたものである。同規則で
は、石炭、石油、ガスの国内港湾間の輸送を2010
年以降は同国籍船に限定した。その後、運輸大臣令(PM No73 / 2010)により改定され、外国船による国内海港間の貨物運送が認め られる期間を
2011
年5
月7
日までに延長している。9.3
海洋構築物に係る法令海洋構築物の位置づけ、取扱いに関する規定は、主に空間計画と海域開発や海上施設の建 造に係る法律にて記されている。まず、空間計画関連法律(UU No26 / 2007 Tentang Penataan
Ruang)では、海洋構築物が海岸から 12
マイル以上離れる海域にある場合は中央政府の管轄範囲、3~12マイルの海域にある場合は州政府の所管範囲、3マイル未満の場合は県・市 政府の所管範囲に入ると規定している。このように、海洋構築物の設置場所により主管政府 が異なってくる。
ただし、海洋構築物の属性の確定も管理体制を規定するためには重要な要素となっている。
すなわち、海洋構築物が「港湾」として認められる場合、所在海域と関係なく、中央政府の 海運総局の許認可を必要となる。本プロジェクトとの関連については、導入する予定の大型 洋上貯炭施設が海洋構築物として見るべきか否かについて、現時点では未確定であるため、
今後インドネシア政府主管部署との意見交換を通じて確定する必要がある。
また、海岸・島嶼開発関連法律(UU No27 / 2007 Tentang Pengelolaan Wilayah Pesisir Dan
Pulau-Pulau Kecil)では、沿岸に海洋構築物を設置する際の自然環境保護のための配慮事項
等が規定されているとともに、このような海洋構築物を、私的な所有物という形で設置する ことを可能にしている。これにより、海洋構築物を使った民間事業者による事業運営が可能 となっている。9.4
その他の法令9.4.1
エネルギー需給に関する法令石炭需給の枠組となる、エネルギー需給に関する法令としては、国家エネルギー政策を定 める大統領令(PP No 5 / 2006 Tentang Kebijakan Energi Nasional)がある。同大統領では、
2025
年までにインドネシアにおける一次エネルギーに占める石炭の割合を35%とすることが定
められている。また、エネルギー法(UU No30 / 2007 Tentang Energi)では、石炭を含むエネルギーの用 途を定義するとともに、インドネシアにおける自給の必要性が謳われている。
9.4.2
用地取得に関する法令事業実施等のために用地を取得する際の基本となる法令としては、土地所有の規定する土 地基本規則に関する法律(UU No.5 / 1960: Tentang Peraturan Dasar Pokok Pokok Agraria)、土