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4 石炭のバージ輸送における現状と問題点の調査

4.1 安全性の観点からの現状調査

多くの石炭輸送バージ船団が輻輳する

Mahakam

川は、屈曲箇所が多く、跨川橋によって は航行可能な幅(橋脚バリケードの最小間隔)と高さ(Air Draft)が厳しく限定されるため、

安全上の課題も多い。特に満載状態にて河川流に乗って川を下る場合、TBS は一般的な自 航船舶と比して横流れ(Drift)が大きく、操船性能が著しく劣るため、その危険性は格段に 高まる。実際に横流れが大きく生じたことにより、曳航されるバージが橋脚に接触する事例 も多数生じている。

以下では、主な

TBS

の安全上の課題を挙げ、整理する。

4.1.1 TBS

の低い操縦性

Mahakam

川流域で活動する石炭輸送バージは、全長

25~30m

のタグが最大約

90m

(300ft)

のバージを速力

4

ノット程度で曳航している。曳航時には、両者を曳航ロープ(ワイヤまた はホーサー)で接続するため、船団の総延長は最大で

190m

程度にまで達する(図 4-3参照)。

更に、パイロット強制区間にある

Mahulu

橋と

Mahkota 1

橋の

2

つの跨川橋を航過時には、

船団後部にアシストタグが配備されることから、船団の総延長は最大で

250m

にまで拡大す

Muala Jawa

Muala Berau

る(図 4-4参照)。

このパナマックス船型(載貨重量トン

7

t

程度)以上の長さになる

TBS

は、タグが曳航 ロープ(ワイヤまたはホーサー)を介してバージを曳航するため、タグと曳航ロープおよび 曳航ロープとバージの接合点において屈折が生じる。特に船尾より河川流を受けながら変針 する場合には、船団後部のバージが外側に圧流されるため、その制御は困難なものとなる。

Mahakam

川の

Mahulu

橋および

Mahkota 1

橋の架けられた流域は、河川が屈曲しており、船

団は右転と左転の繰り返しを強いられるため、TBSの危険性は更に高まる(図 4-5参照)。

<進行方向>

図 4-3

TBS

の構成

<進行方向>

図 4-4

Mahulu

橋および

Mahkota 1

橋航過時の

TBS

の構成

図 4-5

Mahulu

橋付近における危険な状況

4.1.2 Mahkota 1

橋の航行可能な幅と高さの制限

Mahakam

川の

Samarinda

付近には

4

本(うち

Mahkota 2

橋は建設中)の跨川橋が架けられ

ている(図 4-6参照)。また、各橋の詳細については巻末の資料

3

に示す。

TBS

による石炭輸送においては、

4

本の跨川橋のうち

Mahulu

橋と

Mahkota 1

橋が、地形、

可航幅およびエアドラフトといった航行環境が厳しい。表 4-1 にはパイロットに対するヒ アリング結果を基に取りまとめた各跨川橋の概要を示す。

特に

Mahkota 1

橋については、橋脚間の幅が狭いにも関わらず、バージが接触することに

より橋脚が傷付くことを避けるためバリケードが設けられており、実際の可航幅は

80m

と 最も狭い(図 4-7参照)。また、建設当初(1968年完成)は、これほどに高さの高い船舶が 往来することは考慮されていなかったため、橋桁が低く、エアドラフトは

12m

と最も低い。

12m

のエアドラフトでは、タグもマストを立てたままでは航過できないため、Mahakam 川 流域を航行するタグは、昼間はマストを倒したまま航行している(図 4-8参照)。図 4-9に

Mahkota 1

橋の概要を示す。

なお、Samarinda の地方条例(1989、No.1)では、タグの馬力はバージの積載重量の

1/4

以上とすることと、パイロット強制区間ではアシストタグを配備することが規定されている

(「14.3参考資料

3」参照)。

図 4-6

Samarinda

周辺に架かる跨川橋の位置

表 4-1 跨川橋の概要

図 4-7

Mahkota 1

橋の橋脚バリケード

Kartanegara橋 Mahulu橋 Mahkota 1橋 Mahkota 2橋

橋脚間隔(m) 200m 165m 80m

-Air Draft(m) 12m以上 17.7m 12m

-橋桁下の水深 15m以上 20m以上 20m以上 10m以上

図 4-8 マストを倒して航行するタグ

図 4-9

Mahkota 1

橋の概要

4.1.3 Mahakam

川の浅水域

Mahakam

川では、Samarindaから片道

4

日も要する上流部からも石炭が出荷されている。

そういった上流部では、水深が

2.0~2.5m、幅が 50m

程度の水域もあり、乾季には数週間に わたって降雨がないことも珍しくない。そのため、当該流域の最大船型である

8,000DWT

(300ft)型バージ(満載喫水:5.0~5.5m、幅:24.4m)での石炭輸送は困難である。

一方、平坦な

Mahakam

川河口部については、土砂の堆積が多く、定期的な浚渫が必要と なっている。特に乾季の低潮(Low Water)時には、最小水深が

4m

程度にまで低下するこ とも珍しくない(図 4-10参照)。そのため、多くの

TBS

運航会社は季節や天候を考慮し、

積載量を加減することにより、喫水を調節している。

しかし、実際にはバージの乗揚げ事故は多発しているものの、Mahakam 川下流部の底質 は泥であることから、船体が損傷を受けることはないとのことである。

図 4-10

Mahakam

川河口部の浅水エリア

4.1.4

荷役時における石炭船への接触

TBS

の場合、タグしか動力を持たないため、バージを適切に操ることは難しい。特に強 風時には、バージが圧流することが多くなることから、タグが操作しきれない事態が発生し ている。

その場合、バージは石炭を積み替えるために沖待ちしている大型石炭船やフローティング クレーンの船体に接触し、損傷させることが多発しており、石炭船の運航者を悩ませている。

そのため、バージ運航会社は保険に加入することが必須であるとのことである。