第 4 章 理論「技術者直観」の生成
4.1 理論「技術者直観」
本理論の特徴は、技術者の直観を整理しただけでなく、視覚的に捉えることでイメージ しやすくしたことにある。本節ではまず、最終的に生成された理論「技術者直観」を示す。
図4-1は、ベテラン技術者の技術者直観が発揮された時のイメージである。多くのパタ ーンを持つ中で、選び出し組み合わせ最適経路を瞬時に選んでいるのがわかる。ある環境 下において問題発見・原因究明・問題解決を同時に瞬時にこなしているのである。
図 4-1 ベテラン技術者の技術者直観
出所:技術伝承研究会の議論をもとに筆者作成
図4-2は各レベルの詳細について示している。L1は、集積によって習得可能で、技術者 直観を働かせるための準備段階と言える。L2は、集積し、意思決定材料を結ぶ線をつくっ ていく段階である。L3は、意思決定材料と意思決定材料を結ぶ線が増え、技術者直観が高
1) 筆者が主催する建設業界の企業の技術者・人材育成担当者との研究会。2012年5月から1~2ヶ月に 1回の頻度で開催している。2017年9月30日現在、全17回開催。
2) 理論「技術者直観」について英語論文および国際学会で発表した。Yamasaki, M. (2014) および
Yamasaki, M. (2016) に示されている。また、山﨑雅夫 (2015) においても理論の概略を示している。
まっていく段階である。L4は、技術者直観によってパターンを自在に組み替えられる段階 である。L5は、これまで築き上げた意思決定材料を組み合わせ新たなものを創造する段階 である。
集積する能力に関していえば、球をそろえることである。また、使いこなす能力に関し ていえば、球を線でつなげて組み合わせていくことで、問題を解決することである。
図 4-2 技術者直観(図 1)
出所:技術伝承研究会の議論をもとに筆者作成
図 4-3 は、技術者直観のレベルを示している。技術者直観のレベルは、L1~L5 で示さ れ、「集積によって習得可能な技術者直観の範囲」と「使いこなすことを通して鍛えられる 技術者直観の範囲」の2つに分けられる。ただし、この2つは順不同で起こることがある。
そのため図4-3では、「集積によって習得可能な技術者直観の範囲」と「使いこなすことを 通して鍛えられる技術者直観の範囲」を重ねて表現している。L5に至るにあたっては、企 業は選抜し、全幅の信頼の下、好きなようにさせ、個人は熱中して考え抜き、責任を持っ て、実現させるという相互の関係が必要となる。また、各レベルの関連性は、L1:学生・
入職初期、L2:若手技術者、L3:中堅技術者、L4:ベテラン技術者、L5:卓越したベテ ラン技術者である。企業・個人が目指すべきレベルを設定するのに足るものである。
図 4-3 技術者直観(図 2)
出所:技術伝承研究会の議論をもとに筆者作成
図4-4は、レベルにおける多様性を示している。多様性は、広さと深さによって分類さ れる。例えば、L4の範囲にいる人でも、広さと深さによって、技術者直観の種類が異なる のである。同じレベルにあっても種類の異なる技術者直観を示す者がいるのである。
図 4-4 技術者直観(図 3)
出所:技術伝承研究会の議論をもとに筆者作成