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第 8 章 技術者直観が伝わる人材育成方法の検証

8.3 実験の内容

図 8-5 スキル分析(技術版)の参考例

測定開始 1年後

出所: 山﨑(2012)

「②キーワード」は、ベテラン技術者と若手中堅技術者の間に共通の認識を持たせるた めのステップである。共通の言語により意思疎通の円滑化を図ることが目的である。企業 に入るまでに受けた教育だけでなく、日々の業務において使用しているキーワードを拾い 集めて整理する必要がある。

「③事例」は、課業スキル表やキーワードだけでは気づくのが難しい行間を理解するた めに使用する。課業スキル表によって業務の流れを理解し、キーワードを認識した上に使 用するものである。①課業スキル表、②キーワードとあわせて知識や知恵などを整理・蓄 積をするための道具である。事例については、後に詳述する「8.3 実験の内容」において 具体的に示すものとする。

「④擬似訓練」は、課業スキル表、キーワード、事例による普段の自己研鑽における訓 練を経た後に、事例で訓練したことをベテラン技術者と共に擬似体験するものである。本 当の現場で行うものでなく、室内を基本とする。ベテラン技術者は、若手中堅技術者が技 術者直観に気付き、それを高めていくことを支援する役割を担う。

「⑤協働」は、擬似訓練までの段階を経た後、ベテラン技術者と共に実際の業務を遂行 していく中で、技術者直観を引き継いでいくものである。協働による集積をした後に、振 り返ることがとても重要になる。擬似訓練との違いは、現実の厳しい環境下で行っていく ため、集積の密度は非常に高いものとなる点である。

実験の事例として使用したのは、第5章において提示した道路設計である。活動①~④ は次のとおりである。活動①(①課業スキル表)として提供したものを示す。技術者業務共 通事項と道路設計における入社 1~3 年目の技術者の遂行事項について記したものである

(図8-6、図8-7)。図8-6に示されるように、技術者業務共通事項では、業務の流れを確認

しておくことで、事前に理解して業務遂行にあたるための材料である。図8-7では、道路 設計における入社1~3年目技術者を対象に業務の流れを理解してもらう材料である。

図 8-6 課業スキル表(業務版技術者共通)の抜粋

出所: 山﨑(2012) 技術者

※業務の流れに従う(若干の前後あり)

業務 課業 課業内容

提案書の作成 業務受注のための作業 但し、このレベルでは対象としな い

現地踏査 下記、外勤(技術)に従う 内勤

必要資料の収集

①業務仕様を達成するための資料の把握(業務により異なるため)

②資料の収集(各関係機関や取得場所の把握)

③収集資料の整理、内勤(作業)への指示 業務全体像の把握

①特記仕様書の確認

②実施計画書(業務工程)や必要書類の作成

③上司(管理技術者)との業務全体像の把握

④業務の作業項目を抽出する

⑤協力会社(下請け会社)の検討および作業依頼

資料作成

業務仕様満たすための資料作成(ワード・ エクセル・ CAD・ 専門ソフトの使用)

①協議用資料の作成(協議録、調査結果等)

②報告書に載せるデータ・図面の整理、作成

③専門ソフトによる解析(原理原則を理解した上で使用すること)とアウトプットの整理、作成

④内勤(作業)への指示 資料収集

受注業務対応準備

技術者

※業務の流れに従う(若干の前後あり)

業務 課業 課業内容

部員状況把握 それぞれの技術者・内勤同士で連絡がで きる状況にする(報告・連絡・相談)

現地調査

現地調査を効率的に手戻りが発生しないよう行う

①頭の中で整理している段取りに従って、着実に調査を進めていく(頭の中で整理できなけ れば簡易メモ等作成のこと)

②不測の事態が発生した場合の対処を行う(苦情対応・事故・業務工程の遅延対処等)

③計測忘れ、ミス等をしていないか確認を行う(技術的判断も求められる)

④お世話になった近隣住民の方への完了のお知らせをする(特に主となる、市町村役場、

町内会長、考慮すべき関係団体) 外勤

現地踏査

収集資料を用い、業務仕様を満たせるよう現地踏査を行う

①現地でどのような調査を行うか確認する

②全体像を把握するため、簡易的な調査(現地状況写真撮影、図面確認等)を行う

図 8-7 課業スキル表(技術版道路設計)

出所: 山﨑(2012)

職種: 技術部(道路設計) 技術者

※業務の流れに従う(若干の前後あり)

業務 課業 課業内容

提案書の作成 業務受注のための作業 但し、このレベルで は対象としない 受注業務対応準備 業務スキル版に従う

内勤

       課業スキル表 技術部(設計) 『技術内容版 入社1~3年』

道路詳細設計

設計図書に基づき作業方針を検討し、計画する

①業務の目的・主旨を把握したうえで業務内容を確認する

②業務概要・実施方針・業務工程・業務組織計画・打ち合わせ計画の確認

③成果品の品質を確保するための計画

④使用する図書および基準の確認

⑤貸与資料の確認 設計計画

既往資料の検討

設計箇所について 、地形や関連施設な どの現地状況を把握するために現況調査を行な う

①構造物位置、交差または付替道路、用排水系統等の確認

②地形、地質、地物、植生、土地利用状況及び文化財の確認

③地質については地質調査結果より把握するが調査が必要必要と判断される場合は、

その理由と位置について提案する

④近隣住民への周知徹底(特に主となる、市町村役場、町内会長、考慮すべき関係団体)

⑤現地調査における段取りの確認(計測・収集する物、効率性を考慮に入れる)

⑥必要機器・調査票等をチェックリストにより確認(チェックリストは業務により異なる) 現地踏査

業務仕様を満たすための資料作成

①予備設計、既往資料の整理

②現地調査の結果を整理、把握

③上記資料の問題点、質問事項をまとめる 内勤

外勤

仮設構造物設計

①構造計算、断面計算または流量計算等を必要とする仮設構造物について、設計図書に基づき現場条件、

 設計条件に合致するよう設計する

②施工計画書、図面及び数量計算書を作成する

用排水設計

①既存資料及び現地踏査の結果に基づいて用排水系統の計画、流量計算、用排水構造物の形状等について  設計を行い排水系統図を作成する

②現地における既設の関連用排水現況、将来計画との整合を考慮して設計を行なう

③使用する用排水構造物は「標準設計図集」を参照する

④用排水系統図には、自然流下の用排水路については流水方向と施工高さを記入する 平面設計

①実測平面図用い道路予備設計により決定された線形の再確認及び必要に応じた細部検討を行なう

小構造物設計

①道路付属構造物以外で原則として応力計算を必要とせず標準設計図集等から設計できるを設計する

②石積み、ブロック積み擁壁、コンクリート擁壁(高さ2m未満)、管渠、側溝、街渠、法面保護工、

 小型用排水路、集水桝、防護柵工、取付道路、階段工等を設計する

③必要に応じ展開図を作成する

施工計画

①設計図書に基づき経済的かつ合理的に工事の費用を予定するために必要な施工計画を行なう 横断設計

①実測横断図を用い、地質調査結果に基づき土層線を想定し法面勾配と構造を決定し、

 道路横断の詳細構造を設計する

道路付属構造物設計

①一般構造物[擁壁、函渠、特殊法面保護工、落石防護柵工等]及び管渠、溝橋、大型用排水路、

地下道、取付道路、側道、階段工等ついては、設計図書に基づき現場条件、設計条件に合致するよう設計する 縦断設計

①実測縦断図用い橋梁・トンネル等の主要構造物位置、形式、基本寸法を考慮のうえ縦断線形決定する

②測点及び主要点を標準とする測点について計画高計算を行なう 設計計画

設計図作成

設計計画にて検討された平面・縦断・横断計画等を基に各種設計図を作成する

①路線図

 1)市販地図等に路線、主要構造物、コントロールポイント、連絡等施設を記入する

②平面図作成

 1)平面形状を計画し、法面、重要構造物、交差構造物、主要水路等を記入し平面計画形状をお行う

③縦断図作成

 1)実測図を使用し、コントロールポイントの基本値を算定の上、縦断線形、重要構造物、諸数値を記載し、縦断図作成

④標準断面図作成 1)切土、盛土等の断面について代表的な形状箇所を選定し作成する 2)標準断面図には、幅員構成、舗装構成、法面保護工、道路付帯構造物を記入する

⑤横断図作成

 1)実測横断図を用い、地質調査結果に基づき土層線を想定し法面勾配と構造を決定し、横断図を作成する

報告書作成

基本条件の整理、設計の経緯、比較検討及び施工上の問題点等を記載する

①計画の概要

②各種検討の経緯とその結果

③設計計算書(排水計算、設計計算等)

④その他必要事項 数量計算

①数量計算は平面図、横断図等関係図面より算出する

②数量算定については、マニュアルによる

前段の予備設計に基づき、平面・縦断線形・横断形状の検討を行な い、

その他関連施設、構造物等の位置、基本形状を計画する 下記に準ずる

活動②(②キーワード)として提供したものを示す。本実験で示したキーワードは以下の とおりである。

(1)道路規格

道路構造の各規定を決定するために前提となる規格として、「道路の区分」「設計車両」

「設計速度」の規格がある。これらの規格は、道路の担うべき機能等の性格を決める重要 な役割を持っている。

(2)路線計画

交通計画は対象とする計画内容によって,交通網計画,路線計画,ターミナル計画に 大別することができる。複数の路線や路線相互の接続,乗換えを含めて交通施設のネッ トワークを検討するものが交通網計画で,例えば国土や地域間のような広域交通では道 路,鉄道,港湾,空港など,都市内では鉄道,道路などの交通施設を総合して考えるこ とがとくに必要となる。

(3)地形

地形の把握は観察や生活体験から得られるのが普通であるが,広く客観的にみるには 各種縮尺の地形図,宇宙画像,空中写真等が必要となる。地形図(コンター)を読み取れ るようになることは、技術者として必須である。

(4)地質

地質学は、これらを専門的に研究する学問である。岩石とその層状の構造である地層 である。逆に、考古学や古生物学の知見から、地層の年代の特定が行われるなど、隣接 分野からの知見が地質に関する知見を広げることも多々ある。

設計技術において、地質に関する技術は、最も近い隣接分野である。

(5)支障物件

埋設物や電線・送電線、地権者の土地といった、道路を建設する上でコントロールポ イントとなるもののことを言う。特に既存資料を基に現地での確認が必要である。

(6)現地踏査

現地の状況を確認することである。設計に必要な情報を収集することが目的である。

時間には限りがあるため、何度も現地踏査に行くことはできない。

(7)設計条件

設計をするための条件を整理したものである。道路構造令を基本とする。

(8)標準幅員構成

設計条件より標準的に採用する幅員構成である。これを基に、現況にあわせた幅員構 成とする。

(9)平面縦断設計

平面・縦断の線形計画をすることである。平面と縦断が頭の中で連携できるかが大事。

(10)横断設計

平面・縦断と連携して横断図に図を描いていく。横断図箇所の測量データは、チェッ クし最新のものを使用する。