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技術伝承研究会における議論

第 4 章 理論「技術者直観」の生成

4.2 技術伝承研究会における議論とインタビュー調査

4.2.1 技術伝承研究会における議論

(1)技術者直観レベル(図 1)の生成 図 4-2 について

先述している技術者直観を球と線で表現した図の生成過程を示す。最初は簡易なイメー ジから入り、議論をしていく中で球と線について考えていき、最終的に単純化を図った。

最初に議論をしたのは第 4 回である。この回の議題は、能力開発の視点 -直観力を鍛 える、であった。議論のために筆者がメンバーに示したのは、図4-5である。

図 4-5 ベテラン技術者のイメージ(第 4 回 2012 年 11 月 2 日)

出所:技術伝承研究会の議論をもとに筆者作成

議論を進めていく中で、図4-5を単純にして考えたらどうかという話になり、ホワイト ボードに描き出し、図4-6を得るに至った。つまり、この段階で球と線で表すことがなさ れたわけである。この点についは研究会メンバーの納得するところである。ただし、この

時は L1~L5 だけでなく、L5+を設定していた。L1~L5 が「直観」の範囲で、L5+を「直

感」の範囲と考えたからである6)

図 4-6 直観力のレベル(第 4 回 2012 年 11 月 2 日)

出所:技術伝承研究会の議論をもとに筆者作成

6) 3章でも注記しているが、直観(Intuition)と直感(Instinct, Gut feeling)は、区別している。本研究 では、後に論理立てて説明をすることができる直観に重点を置いている。「直感」を軽視するものではない。

L1 L2 L3

L4 L5 L5+

第 4 回においては、「直観力」という呼称で扱った。直観力とは、「直観を発揮する能力 のこと。直観を発揮する能力とは、あるパターンとあるパターンをつなぎ合わせ・組み合 わせる能力」のことであると定義した。カン・コツと呼ばれる感覚や感触といったもので判 断をして仕事をするイメージを否定し、上位の理論として直観力と名付けたものである。

第6回開催の議題は、パターンとは?-パターンの認識を考え直す、であった。球と線を つなぐ組み合わせについて、パターンという言葉を使ってきたが、明確にすることを目的 として詳細について議論した。議論の中でパターンを「一つの業務経験」とみるに至った。

つまり、球そのものも業務経験であるが、球と線が組み合わされたものも業務経験という 捉え方である。また、パターンの中でもいくつかのチェックポイント・組み合わせがあり、

それを経た上で、最適経路(A→B)を見つけ出すという考え方である(図4-7)。

ベテランは様々な業務をとおして球として集積し、的確な組み合わせの線により、問題 が生じた時に必要な選択をしているのである。しかし、この時に課題となったのが、ベテ ラン、中堅、若手の区別である。

図 4-7 パターンの考え方(第 6 回 2013 年 2 月 12 日)

出所:技術伝承研究会の議論をもとに筆者作成

そのため第7回開催では、ベテラン、中堅、若手のレベルで、球と線について議論する こととなった。議題は、パターンとは? -視点とスケール、であった。議論となったのは、

視点とそのスケールである。ベテラン、中堅、若手を混同して理解していたことを読み解 いた。つまり、ベテラン技術者を想定して議論してきた。しかし、若手、中堅、ベテラン と視点を変えてみていくと、そのレベルの違いが明確であることが示された。図4-8に示

すように、それぞれの遂行可能範囲が異なることがみてとれる。若手は、業務の集積が少 ないためできる範囲は狭い。ベテランになるにつれ範囲が大きくなるのである。また、重 要ことは、段階によって最適経路を複数から選択できるようになることである。

図 4-8 視点とスケール(第 7 回 2013 年 3 月 27 日)

出所:技術伝承研究会の議論をもとに筆者作成

第7回までで球と線の組み合わせとスケールについてまとめた。しかし、各水準を理解 できる言葉で示すことには至っていなかった。そこで、第9回開催で各水準を表現する言 葉について議論した。

図 4-9 直観力のレベル(第 9 回 2013 年 6 月 18 日)

出所:技術伝承研究会の議論をもとに筆者作成

図4-9に示されるように、L1を「チェックポイントをそろえる」、L2を「チェックピン

トをつなぐ(ルートをつくる)」、L3を「つなぐルートを増やす」、L4を「変化への対応(ル ートを自在に変えられる)」、L5を「創造性(ルートを飛び越える)」、L5+を「ひらめき(パ ターンを飛び越える)」である。

この時点でも、L5+を設定していた。後述する技術者直観(図2、図3)との関連で議論し た結果、L5+は表現しないこととなった。なぜならば、目標とするのは企業における技術 者の一定水準以上への到達だからである。つまり、L1~L5が「直観」の範囲でよいと考え たからである。したがって、第15回開催において結論づけ、技術者直観(図1)を最終のも のとするに至った。

(2)技術者直観(図 2)の生成 図 4-3 について

先述している技術者直観のレベルを球と線で表現した技術者直観(図 1)と関連付けて生 成した過程を示す。特に、企業内における必要とするレベルの人材像を設定したことは重 要であった。最終的に技術者直観(図1)の補助的な説明を示すに至ったものである。

最初に議論したのは、第 2 回開催である。議題は、若手の職業観について、であった。

技術者について言及するにあたって段階についての議論を示すのが必要と考えたからであ る。技術者の段階について、図4-10に示す。この時は、5段階を設定していた。①入職初 期、②半人前、③一人前、④エンジニア、⑤プロフェッショナルである。議論になったの は、④と⑤の区切りについてであった。⑤はどのレベルの技術者をいい、そこに達するに はどのようにする必要があるかということである。つまり、今までにない発明をする様な 者を⑤というか、一定以上に達しその水準で工夫して貢献する者かである。一定以上に達 しその水準で工夫するというならば、④というレベルにしても間違いではないのではとい うことである。この差は、やはり、建設技術者の間で暗黙にあつかわれる「カン・コツ」と ではないだろうかということになった。④と⑤の区別は、議論の余地があることと、①~

④の過程についても次回以降検討することとなった。

図 4-10 技術者の段階イメージ(第 2 回 2012 年 7 月 13 日)

出所:技術伝承研究会の議論をもとに筆者作成

①入職初期、②半人前、③一人前、④エンジニア、⑤プロフェッショナルの段階に疑問 が残ったこと受け、第3回開催では、中央職業能力開発協会の取り組みを例に議論を進め た。図 4-11に示すように、直観のレベル(左図)を設定し、それに技術者の段階(右図)を関

連づけた。左図に示されるように、プロフェッショナル・エンジニアとエンジニアの区別 には、「L5+:ひらめき」、「L5:創造性」、「L4:変化への対応」を関連づけた。入職初期か らエンジニアになる過程についても区別し、関連づけた。

さらに議論になったのが、設定したレベルの詳細である。段階を経るのは理解ができる が、その連続性を説明しなければならないということである。つまり、それぞれのレベル の状態はどのようなものかを示す必要があるということになった。また、あるレベル以上 には断裂があることを示す必要についても言及があった。そこで、考え出したのが L4 と L5の間の断裂である。

図 4-11 レベルの設定(第 3 回 2012 年 9 月 28 日)

出所:技術伝承研究会の議論をもとに筆者作成

出所:技術伝承研究会の議論をもとに筆者作成

第3回開催まででL4とL5の断裂を示したように、企業内における必要とするレベルの 人材像を考える必要が生じた。そこで第5回開催では、企業にとって必要な人材について

議論した。議題は、パターンをつかむ -実例をもとに、であった。直観力の訓練による習 得可能性について議論した。結論としてでたのは、あるレベルまでなら訓練によって習得 が可能であるということである。第1段階は、L1~L3の範囲で「訓練によって習得可能」

とし、第2段階は、L4~L5で「経験を通して鍛えられる」とした。レベルの断裂(L4~L5) は、そのレベルに達する人と達しない人を区別するためである。経験によって習得可能な 直観とは、人によって早い遅いはあるものの、一定のプログラムにしたがって訓練を受け ることで習得できる能力のこと。経験を通して鍛えられる直観とは、様々な業務や現場を 経験することで鍛えられる能力のことである(図4-12)。L3まで直観力は、使いこなすこと によって習得可能だと定義づけた。また、第9回開催において直観力のレベルに関する順 不同性が議論され、その考え方を組み込むにも至っている(図4-13)。

図 4-12 直観力の範囲と能力開発・育成段階の関係性(第 5 回 2013 年 1 月 8 日)

出所:技術伝承研究会の議論をもとに筆者作成

図 4-13 直観力のレベル(1)(第 9 回 2013 年 6 月 18 日)

出所:技術伝承研究会の議論をもとに筆者作成

(3)技術者直観(図 3)の生成 図 4-4 について

先述している球と線で表現した技術者直観(図1)とレベルを表現した技術者直観(図2)に 関連付けて、技術者直観の広さと深さについて生成した図についての過程を示す。特に、

技術者直観の水準が様々な範囲の集積によって高くなるものと一つのものと深く集積する ことによって高くなるものを区別したことは重要であった。最終的に技術者直観(図1、図 2)の補助的な説明を示すに至ったものである。

第 9回開催までで技術者直観(図 1、図 2)が生成されてきた。加えて、第 10 回、第14 回開催において技術者直観の広さと深さについて議論した。この議論により、各レベルの 中でも種類の違う(持っているものが違う)者がいることを示すに至った(図4-14、図4-15)。

図 4-14 直観のレベル(第 10 回 2013 年 7 月 29 日)

出所:技術伝承研究会の議論をもとに筆者作成

図 4-15 各技術者の技術的直観のレベル(第 14 回 2014 年 1 月 12 日)

出所:技術伝承研究会の議論をもとに筆者作成