第 4 章 関節可動域の測定
6. 考察
6.4 軸測定と表面測定の関係
生体の測定点は,部位皮膚上の点・軸・表面にある.本測定では,全ての測定点を視覚測定点 に置き換えることを念頭に置いた.点に関しては,視覚測定点として既述してあるため,ここで は,まず,軸と表面の説明を行い,次に,点・軸・表面の位置関係について述べる.
(1) 軸
測定に使われる部位の軸は,「基準軸」と「測定軸」の 2 種類である.基準軸は,床に対する「水 平軸」または「垂直軸」が該当する.例えば,臥位姿勢による測定は,水平軸が基準軸になる場合 が多く,立位や座位では,垂直軸が基準軸になる場合が多い.測定軸は,静止させたままの「基 本軸」と部位に追従していく「移動軸」である.測定軸の設定は,次の3種類によって決められる.
①部位の長軸方向の直線 ②測定点間の直線 ③表面の接線方向の直線
本測定では②を採用した.
(2) 表面
図4.11に示すように,表面上の ABは点 Aと点Bとの間の距離であるが,その種類は次の 4 種類に定義できる(人類学講座編纂委員会,『人体計測法,Ⅰ生体計測法』,pp. 12–14,1991;
『人体計測法,Ⅱ人骨計測法』,p. 164,1991).
①最短直線距離 ②一方向への投影距離 ③曲線距離
④部分直線距離.
本研究では,直尺は①④,巻尺は①③④,レーザ角度計は②を測定した.
図4.11 表面の距離
①最短直線距離,②一方向への投影距離,③曲線距離,④部分直線距離
②
①
③
④
④ ④
A
B
(3) 相互位置関係
点・軸・表面に関する測定では,次の6種類の相互位置関係が考えられる(図4.12).それらは,
①点-点間,②点-軸間,③点-表面間,④軸-軸間,⑤軸-表面間,⑥表面-表面間である.
図4.12 点,軸,表面の相互位置関係
①点-点間,②点-軸間,③点-表面間,
④軸-軸間,⑤軸-表面間,⑥表面-表面間
点・軸・表面を基準とする測定の特徴を表4.9に示す.
表4.9 点・軸・表面を基準とする測定の特徴
①
②
③
④
⑤
⑥
Axis A Axis B
Point B
Point A
種類 測定量 長所 短所 例
点測定 角度
距離 ・関節付近に多く,点設定が易しい ・筋肉の肥厚部と骨の突起部の判別が必要 肩峰
軸測定 角度 ・可動部全体の動きが把握しやすい ・軸の定義と設定が難しい
・軸上に測定点がない場合がある 大転子
表面測定 角度
距離 ・最も観察しやすい ・形状の個人差が大きい
・呼吸の影響が大きい 臍部,大腿部
(4) 角度と距離
可動範囲を角度・距離で表す測定の特徴を表4.10に示す.
表4.10 関節可動範囲を角度と距離で表す測定の特徴
種類 方式 長所 短所 例
非接触式
・可動範囲を面積や軌跡として 動的認識ができる
・アームの回転が観察できる
・可動時に支点が移動する場合は,
補正が必要になる 股関節の外転
接触式 ・簡単で便利 ・可動時に支点が移動する場合は,
追従させる以外,対処できない 肩の挙上
非接触式 ・可動範囲を面積や軌跡として 動的認識ができる
・投影距離と直線距離が一致しない
場合がある 股関節の屈曲
接触式 ・簡単で便利 ・狭い空間では困難
・可動範囲の動的認識が難しい おとがいと胸の間 角度測定
距離測定