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測定点と距離測定の問題点

ドキュメント内 非接触式可搬型人体測定器の開発と応用 (ページ 129-134)

第 3 章 形態の測定

5. 考察

5.3 測定点と距離測定の問題点

2個の測定点(始点と終点)の相対位置について,3種類の具体例を挙げて述べる.

5.3.1 同一軸上にない測定点

図3.11に示すように,「全頭高」は「頭頂」と「おとがい点」との垂直距離であるが,この2点は床 に対して同一垂線上には無かった.これを通常のノギスで測定するためには,「頭頂」に当てる固 定ジョウを長くするか,あるいは,「おとがい点」に当てる移動ジョウを短くしなければならなか った.

3.11 ノギスによる全頭高の測定(側面)

全頭高(total head height)は,頭頂(vertex)とおとがい点(gnathion)の垂直距離を意 味する.ノギスを使う場合は,長い固定ジョウ(Stationary Jaw)と短い移動ジョウ (Moving Jaw)が必要になる.

このような場合,ロッドスライド形測定器を被験者の側方に設置し,図3.12(a)に示すようにロ ッドを水平方向,つまりxy平面に対し平行に回転させることによって測定ができた.同図3.12(b) に示すように,レーザスライド形測定器から照射されたレーザ光線も同様に回転できた.そのレ ーザ方式は始点から終点への移動中に他の部位に接触する危険性はないが,眼部への照射の危険 があった.

既述したように,ロッドスライド形とレーザスライド形のNC/Cが最も小さかった主な理由は,

両方とも床を基準にしていることと,ロッドやレーザマーカを搭載したスライドベースに段違い 水平回転機能があることだと考える.そこでの誤差の発生は,主に測定器の設置にあると考える.

vertex

gnathion

Moving Jaw Stationary Jaw

z

x y

(a) ロッドスライド形 (b) レーザスライド形

3.12 スライド形測定器による全頭高の測定(上面) 全頭高(total head height)は,頭頂(vertex)とおとがい点(gnathion)の垂直距離を意 味する.ロッドスライド形測定器のスライドベース(Slide-base)上のロッド(Rod) やレーザスライド形測定器のスライドベース上のレーザマーカ(Laser Marker)を 水平回転させることによって,頭頂とおとがい点にロッドやレーザ光線(Laser Beam)を当てることができる.

vertex gnathion vertex gnathion

Rod

Laser Beam

y

z x Slide Base Slide Base

5.3.2 左右非対称の測定点

「肩峰幅」と「上腕長」は,肩峰点を測定点としている.この場所は円弧が大きく,筋肉の量も多 いため,測定点の設定が困難であった.膝蓋骨も円弧は大きいが,皮質が大部分であり,筋肉の 隆起は少なかった.肩峰点に関する測定で生じる誤差は,主に測定者の視診に基づく個人誤差に よると考える.

その誤差の軽減対策の一例を示す.図3.13に示すように,レーザマーカを垂直軸から45°傾斜 させた状態で,レーザ光線を肩峰点付近に近づけ,最初に当たったA点を肩峰点の測定点として 定義することである.そのレーザ光線は肩峰部を完全な1/4円とみなしたとき,その円の接線と 等しくなる.図のようにA点では右肩が上がって,B点では左肩が下がっている場合は,それぞ れの測定点の相対位置が異なり,不均衡となる.そのような不均衡は一般的には,他の部位にも 存在するため,身体左右差の問題として議論され続けてきた.したがって,測定点の目視検知に は統一した基準を設ける必要があると考える.

注:ここでは45°に設定したが,状況によって,30°でも60°でも可能である.

3.13 肩峰点の設定(正面)

左右非対称の位置にある肩峰点(acromion)を決定するには,レーザマーカ(Laser

Marker)を垂直軸に対して45°傾斜しながら下降させて,その位置で照射されたレ

ーザ光線(Laser Beam)が,肩部に最初に当てられた点を肩峰点とする.

Laser Beam

45°

acromion acromion

A B

Laser Marker

z

x y

Vertical Axis

5.3.3 空中にある測定点

「前腕長」の測定では,被験者に日常ではあまり行われない姿勢をとらせた.図3.14に示すよう に,その部位を体幹から離れさせ,肘関節を 90°に屈曲させ,前腕を下垂させた状態で,空中に 静止させた.そのため,肘関節部と手関節部に微動が無意識に生じることが観察された.

3.14 前腕長の測定

前腕長(Forearm length)は,通常は橈骨点(radiale)から橈骨茎状突起(stylion)まで の距離を指す(JIS Z 8500:2002).この図では前腕長は,肘関節を90°に屈曲させ,

前腕を下垂させた姿勢を保持したまま,尺骨肘頭の外側中央(lateral-central olecranion)から手関節の尺側(ulnar wrist joint)までの垂直距離を測定する.

被験者にとっては,少し辛い姿勢であったが,このように部位を空中で静止させて生理学的振 戦が生じるような姿勢で測定を試みることは,動作分析や作業空間の測定という観点から必要に なると考える.例えば,食事動作や VDT 作業等では,頭部・体幹・上肢の三者の相対位置が,

通常の身体測定(例えば,座高,座面高)を終えた後に,個別に検討されることになる.つまり,

そこでは部位の固有寸法と動作寸法が別々に測定されることになる.重力に任せた自然体姿勢 (解剖学的肢位)の寸法や重力に抗した作為的姿勢(機能的肢位)の寸法が混在されることは十分 予想される.

解剖学的肢位は「基本姿勢」とも呼ばれ,その定義は次のように記されている.

直立不動の姿勢で足をそろえて,つま先をまっすぐに向けた起立位において,顔は正面 に向け,耳眼水平位を保ち,上肢は体幹の両側に垂れ,手掌は前方に向けている状態の 姿勢である(姿勢研究所,『姿勢用語事典』,p. 39,1990).

lateral-central olecranion

ulnar wrist joint z

x y

stylion radiale

Forearm length

を言い,通常は日常生活を対象とするが,特殊な職業動作で機能的な肢位に関節を固定すること もある(同,『姿勢用語事典』,p. 38,1990).しかしながら,「機能的肢位は運動の可動域測定が 困難なことと,個人差が大きいために用いられることは無い.」(井原他訳,『関節・運動器の機能 解剖(上肢・脊柱編),pp. 6–7,2005).さらに,正確な再現性が難しく,姿勢保持には,揺れ・微 振動が起きやすくなる.このような位置や姿勢を接触式で測定する場合には,巻尺か直尺が使わ れるが,狭い空間内測定(例:箸で食物を口に運ぶときの手首と口との直線距離測定,キーボー ドを打つときの指間の屈曲距離測定)では,物理的にも時間的にも困難であると推測される.こ のような狭隘部測定においては,レーザスポット光を用いると測定が容易になる.これは非接触 式測定の長所である.

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