第 2 章 測定原理と測定器の種類
4. 関連する技術と測定器
4.4 人体計測装置
使用実績や報告のある人体計測装置を表2.7にまとめる.
表2.7 人体計測装置
1本のロッドを接触・走査させ,外郭線を描画する 自動姿勢計測装置 形状
姿勢
実寸
(線)
多数(125本)のロッドを接触させ,外郭線を型取る 簡易弯曲計
スライディングゲージ法
形状 姿勢
実寸
(点)
複製(Replica)を作製する 急速固定剤使用計測装置 石膏型取り法
レプリカ法
形状 実寸
(面)
パンタグラフ形プラニメータ(Planimeter,面積計)の先
端を接触・走査させ,外郭線を描画する 二重プラニメータ法 形状 姿勢
縮小寸
(線)
プローブをX・Y・Z軸の直角方向に動かせて測長し,
測定点座標を検出する
三次元デジタイザ 三次元座標入力装置 門型(直交型)三次元測定機 CMM (Coordinate Measuring Machine)
形状 実寸
(点)
先端にプローブを取付けた多関節アームの屈曲角度 を,ロータリーエンコーダで測角し,測定点座標を検 出する(プローブ:機械式,磁気式)
三次元デジタイザ 三次元座標入力装置 多関節型三次元測定機 アーム式三次元測定機
形状 実寸
(点)
静止写真を撮影する 写真計測装置
シルエッター
形状 姿勢
画像
(面)
モアレ縞を生成する モアレトポグラフィ装置 形状
姿勢
画像
(線)
スポット光を照射・走査させ,カメラで検知し,画像
化する 形状 画像
(点)
スリット光を照射・走査させ,カメラで検知し,画像
化する 形状 画像
(線)
パターン光を投影し,カメラで検知し,画像化する 形状 画像
(面)
レーザ光を照射し,表面まで達した反射波をカメラで
検知し,所要時間から測距し,画像化する 形状 画像
(点)
距離センサを移動させ,カメラで検知し,画像化する 形状 画像
(点)
カメラを移動させ,分割撮影し,
①外郭線を合成し,画像化する
②対象までを測距し,画像化する
①立体写真装置 ステレオ写真装置
②モーションステレオ装置
形状 画像
(面)
超音波を照射し,表面や内部組織まで達した反射波を
受信器で検出し,所要時間から測距し,画像化する 超音波形状計測装置 形状 組成
画像
(点)
①部位にマーカを装着し,
(a)カメラで検知し(光学式),画像化する
(b)センサで検知し(磁気式/機械式/ジャイロ式),
画像化する
②マーカは非装着で,
カメラ映像を解析する(画像式)
モーションキャプチャシステム 運動
画像
(点)
(線)
(面)
測定量
(情報)
接触式
非接触式
三次元人体計測装置 三次元人体形状計測装置 三次元人体全身計測装置 三次元ボディスキャナ
方式 原理 名称(複数名称あり) 主目的
文献(土井,1969;Takasaki,1970;Meadows et al.,1970;寺田,1973;柳沢他,1976; 芦沢他,1979a;芦沢他,1979b;大島,1981;樋口他,1982;増田,1982;草鹿他,1986; 河田,1987;三吉,1987;Tsai,1987;大野,1991;三吉他,1992;荒木他,1992;伊藤
他,1997;堤,1997;Brunsman et al.,1997;Jones et al.,1997;吉澤他,1998;横田,1998; Daanen et al.,1998;持丸他,2000;長谷川他,2000;Istook et al.,2001;Koo et al.,2004; 山内他,2005;坂口他,2005;柳田,2006;尾田,2009;中澤,2009;稲邑,2009;Sybliska et al.,2010;中村他,2011)
■表 2.7の非接触式測定装置においては,測定量は全て「画像」である.しかし,本開発器の測定 量は全て「実寸」である.
■本研究で用いた接触式と非接触式は,表中の「点計測」の範疇に入る.「点計測」とは,「人体に レーザ等による光スポットを照射し,測定部位を特定するとともに,この点の位置座標を検出 することである.」(吉澤,2000).
数学では,点は0次元,線は1次元,面は2次元,立体は3次元を意味する.点計測・線計測・
面計測における点・線・面は,測定する対象箇所(測定部位)が有している「情報」を指している のであって,「次元」を意味するものではない.表2.7の(情報)欄は,測定部位の形状位置情報 を分類したものである.
■次元の使い方に関して,それとは異なる見解をもつ文献がある.『人体計測法を人体に直接触れ て測定する「直接法」と非接触で測定する「間接法」に大別する.直接法を,長さや重さを数量的 表す方法を1次元計測法(マルチン法),数値表現の代わりに形状で表す2次元計測法(スライデ ィングゲージ法),レプリカで表現する 3 次元計測法(石膏,シリコン)に分類する.間接法を,
単写真やシルエッタ写真を分析する2次元計測法,コンピュータで画像解析する3次元計測法 (モアレ,レーザ光線)に分類する.』(伊藤他編,『人間工学ハンドブック』,p. 46,2003).
■非接触式測定を「光による探知」の立場から,可視光とレーザ光に大別して,可視光法(写真法,
モアレ法),レーザ光法(レーザスポット法,レーザスリット法)のように分類した文献もある (中野,1982).
■吉澤は,多くの非接触式計測法が提案されているが,その理由は唯一絶対の方法が無いことの 証左であると論じ,「何を計測し,どう処理すればよいのかをユーザが明確にすることができ ない.」と断じた(吉澤,2000).表2.7に示されるように,多種多様なハードウエアは揃ってき ても,ソフトウエアが追いついてこないという状況は,現在でも続いている.
それに対して,接触式測定法の規格は,①測定項目,②その項目の定義,③方法と姿勢,④使 用する測定器,⑤参照するISO規格,⑥図解が明確に規定されている(JIS Z 8500:2002).さら に,⑦データの編集,⑧データの分析法,⑨応用を詳述した文献も存在する(生命工学研,『設 計のための人体寸法データ集』,1996).
■この接触式測定法規格のように,①から⑧までを体系立てることが,非接触式測定法の方法論 の確立に必要であると考える.
代表的な3次元人体形状計測装置を表2.8と図2.31に示す.
表2.8 全身の3次元人体形状計測装置の仕様比較
文献(人間生活工学研究センター,2005)の『人間特性基盤整備事業成果報告書』
の表2.1を,筆者が一部(特徴)を省いて再作表し,2項目を赤色で着色した.
注:人間生活工学研究センターは,1992年~1994年(平成4年~平成6年)に日本人34,000 人の寸法・形状計測事業を実施した(栗山,1995).10 年後の2004年~2006年(平成16 年~平成 18年)には,8,000人を対象にして実施した.それに先立って,2002年~2004 年に「高度人体デジタル計測システム技術」の開発が行われ,その中で非接触式の 3次元 人体計測装置(全身用)が製作された.これとは別に非接触式の足部用と手部用の測定器 が使用された.今回の実施目的は,①定期的調査として,日本人の体格計測を行う,② 従来の手計測と今後発展が見込まれる3 次元計測のデータを比較することであった.表 2.8に記載された計測装置の概観は,それぞれ図2.31(a)–(c)に示す.
測定項目は,4種類の規格・1種類の報告書・1種類のデータベース・企業からの要望等 から抽出され,計267項目であった(手計測155項目,3次元計測104項目,手計測から の計算8項目).手計測はマルチン式測定器を使用した.
手計測では,解剖学的特徴点にシール(直径8 mm,青色)を貼ったり,アイライナーで印 を付けたりした.3 次元計測では同シールと,左右の肩峰点と転子点の 4 箇所は長方形
状(8 mm×38 mmまたは19 mm×79 mm)の白色シールを用いた.姿勢は真直ぐな立位と座
位であった.
商品名 VOXELAN Bodyline Scanner Danae300
型式 LPW-2000FW C9036-02 D300-R100A100
メーカ 浜野エンジニアリング 浜松ホトニクス NECエンジニアリング
測定原理 光切断法
+イメージエンコーダ法 光切断法 位相シフト法
計測範囲 H2000×W850×D600 mm H2000×W1000×D600 mm H1900×W1000×D600 mm
カメラ台数 8台 4台 8台
測定方法 面計測 センサ系直操作方式 面計測
測定時間 5,10秒 6,11秒 5秒
点間ピッチ 1.9 mm 5 mm 4 mm
測定精度 ± 1.0 mm ± 0.5% ± 1.0 mm
測定データ 形状+色データ 形状 形状+色データ
測定点数 1,105,952点 1,024,000点/2,048,000点 ―
データ形式 直交座標系 ― 直交座標系
測定環境 自然光(照明可) 暗室内のみ 暗室内のみ
安全性 クラス2以下のレーザ クラス1以下のレーザ ハロゲン光
CPU パーソナルコンピュータ パーソナルコンピュータ パーソナルコンピュータ 価格(税抜き)円 23,000,000 約15,000,000 12,000,000
(a) 浜野エンジニアリング (b) 浜松ホトニクス (c) NECエンジニアリング (VOXELAN) (Bodyline Scanner) (Danae300)
(d) Cyberware (e) Cyberware (f) Vitronic (WB4) (WBX) (VITUSsmart)
(g) Konica Minolta (h) Artec (i) Topcon (VIVID 910) (EVA) (Image Master Pro)
図2.31 非接触式計測装置 メーカ名(製品名)を示す.
■大型の計測装置は(図 2.31(a)–(f)),移動と設置が困難であり,被験者の占有空間が限られてい る(例:車椅子に乗った障害者は極めて難しいと思われる).現時点での価格は数千万円である.
■携帯の計測器は(図2.31(g)(h)),対象物までの距離や対象物の測定視野範囲に制限があるため,
特定部位の形状向きと思われる.現時点での価格は360万円前後である.
■モーションキャプチャシステムは,運動分析を目的にしているため,静的姿勢での形態や関節 可動域の測定では,体表に取付けるマーカの形状・個数・位置が精度の良否に影響を与える.
■これらの装置の可搬設置性・測定部位範囲・価格を調べた結果,本開発器の優位性を確認した.