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消費者余剰と生産者余剰

ドキュメント内 12中級ミクロ経済学 (ページ 168-171)

第 3 章 企業の行動 125

3.9 消費者余剰と生産者余剰

+∑

l

slk(p0y˜l0+p1y˜1l+· · ·+pny˜ln−q0x˜l0−q1x˜l1− · · · −qmx˜lm) が得られる。∑

kslk = 1である(すべての消費者の各企業の所有割合の合計は1に等し い)から,この式をすべての消費者について合計すると

p0

k

xk0+p1

k

xk1+· · ·+pn

k

xkn =q0

k

yk0+q1

k

y1k+· · ·+qm

k

ykm

+∑

l

(p0y˜l0+p1y˜1l+· · ·+pny˜ln−q0x˜l0−q1x˜l1− · · · −qmx˜lm) となる。i財の需要,供給の合計∑

kxki および∑

ly˜ilをそれぞれXiY˜iで,生産要素 jの(消費者による)供給の合計∑

kyjk,(企業による)投入量の合計∑

lx˜ljをそれぞれ YiX˜iで表すと上の式は

p0(X0−Y˜0) +p1(X1−Y˜1)+· · ·+pn(Xn−Y˜n)

+q0( ˜X0−Y0) +q1( ˜X1−Y1) +· · ·+qm( ˜Xm−Ym) = 0 と書き直される。この式は各財,各生産要素の超過需要と価格の積の合計がゼロに等しい ことを表しており,企業による生産を含む経済におけるワルラスの法則を表す。財と生 産要素の需要,供給が価格について連続であることから,生産要素の番号をあらためて n+ 1からn+m+ 2まで,価格をpj, j =n+ 1, n+ 2,· · · , n+m+ 2と表すと財が n+m+ 2個存在する交換経済の場合とまったく同じ手順で(ブラウワーの不動点定理を 用いて)均衡の存在が証明される。

■参考:供給の連続性-簡単なケース 企業が完全競争において1つの財をある費用関数 のもとで生産しているとすると,価格と限界費用が等しくなるような産出量を選ぶ。した がって限界費用関数が連続であり,かつ価格が変化しても生産をやめなければ企業の供給 は連続である。

3.9 消費者余剰と生産者余剰

図3.11に,ある財の需要曲線と供給曲線が描かれている。均衡価格はpである。この とき消費者や生産者が得る利益はどのようにして測られるであろうか。図で三角形ACE の面積を消費者余剰,三角形CBEの面積を生産者余剰と呼ぶ*20

*20この図では需要・供給曲線が直線で描かれているので文字どおり三角形になっているが,一 般的には需要・供給曲線は直線ではないので三角形にはならない。その場合でも需要曲線が 縦軸と交わる点をAとして線分AC,CEと需要曲線で囲まれた部分の面積を消費者余剰と 呼ぶ。同様に,供給曲線が縦軸と交わる点をBとして線分CBCEと供給曲線で囲まれた 部分の面積を生産者余剰と呼ぶ。

需要•供給 価

O

D S

B A

E

J K

G I p C

L p0 H

p1

図3.11 消費者余剰と生産者余剰

消費者余剰は需要曲線と均衡価格を表す直線との間の部分の面積,である。需要曲線が 右下がりであることからもわかるように消費者は価格が低くなると需要を増やし高くなる と減らすが,これは消費する財の消費者にとっての価値が,消費量が少ないときの方が大 きいことを意味するものと考えられる。言い換えれば最初に消費する1単位目の財の価値 は大きく,2単位目,3単位目と増えていくにつれてその価値が低下していくわけである。

とは言っても2単位目,3単位目の財が1単位目の財と異なっているわけではない。1単 位消費した上にもう1単位消費するとその価値,正確には消費者が得る効用を貨幣で測っ たものは最初の1単位目の消費から得られる効用と比べて低い,さらにもう1単位消費 して得られる効用はさらに低いということである*21。消費者はその財を消費する最後の 単位の(貨幣で測った)価値が価格に相当するところまで消費する。財の各単位の消費者 にとっての価値を表すのが需要曲線Dである。1単位目の消費は点Aに対応した価値が あり,消費者はその1単位目の財にはOAの金額を支払ってもよいと考える。同様に点 Kに対応した財の消費にはp0支払ってもよいと思い,点Jに対応した財の消費にはp 支払ってもよいと思う。財の消費者にとっての価値,すなわち支払ってもよいと思う額を 合計すると台形AOJEの面積になる。これはOJの消費量に対して消費者が支払っても よいと考える最大の金額を表しているから,その消費から得られる消費者の効用を貨幣で 測ったものを表していると見なされる。消費者余剰はこの台形AOJEの面積から実際に

*21これは限界効用逓減の法則と呼ばれる。しかし,この概念は基数的効用にもとづいているの で現在ではあまり使われず,代わりに序数的効用にもとづいた限界代替率逓減の法則が用い られている。ここで考えているのは消費者の効用を貨幣で測った価値であるから,(貨幣で 測った)限界効用とは財と貨幣との限界代替率と見ることができる。貨幣と言っても紙幣や 硬貨などの『お金』の意味ではない。貨幣そのものは消費者に効用を与えるわけではないの で,ここで貨幣というのはそれで購入可能な財一般を指している。その意味では貨幣ではな く『購買力』あるいは『所得』と呼んだ方がよいかもしれない。

3.9 消費者余剰と生産者余剰 157 消費者が支払う金額である長方形COJEの面積を引いたものになっている。支払っても

よいと考える金額から実際に支払う金額を引いた残りなので余剰と呼ばれる。これは消費 から得られる効用の貨幣価値と支払う金額の差に等しい。

ここで実際に支払う金額を引く理由は以下の通りである。政府の政策やその他何ら かの事情によってある財(X財とする)の消費量が変化すればその財の消費から得 られる人々の効用も変化する。それが「支払ってもよいと考える金額」の変化に表 れる。一方X財の価格が変化すると一定の消費量を実現するために必要な支出額 が変る。価格が上がれば支出は増えるが,所得が変らない限りそれによって他の財 に対する支出額が減り,それらの価格が変っていなければ消費量が減って効用が下 がる。X財の価格が下がった場合には逆の変化が起きる。したがってX財の消費 に「実際に支払う金額」の変化は他の財の消費から得られる効用に影響する。「支 払ってもよいと考える金額」と「実際に支払う金額」とは消費者の効用に逆の影響 を与えるので,前者から後者を引くことによって上で説明した2つの効用の変化を 消費者余剰の変化によって表すことができる。

一方生産者余剰は,均衡価格を表す直線と供給曲線との間の部分の面積である。供給曲線 が企業の限界費用を表していることを考えれば,生産者余剰は企業の収入である長方形 COJEの面積から可変費用の合計である台形BOJEの面積を引いたものであり,企業の 利潤に相当するものである。正確には利潤と固定費用の和である。固定費用は供給曲線に は表されていない。消費者余剰と生産者余剰とを合わせたもの,すなわち三角形ABEの 面積は総余剰と呼ばれ,この財の市場についての社会的厚生を表すものと見なされる。固 定費用は社会的厚生に含まれるべきものではないが短期的には一定であるから政策の効果 を分析するときなどには問題にならない。生産者余剰が総余剰に含まれることについて は,消費者は労働者であるばかりでなく資本家でもあり企業の利潤も国民の所得に含ま れ,その所得によって財の消費をすることができるから生産者余剰も社会的厚生に含まれ るべきものであると考えることができる。政策の変化などによって生産者余剰すなわち利 潤に変化があれば,所得が変化し消費者の消費も影響を受ける。ただし,ある特定の財の 需要曲線は消費者の所得が一定であるとの仮定のもとに描かれているので消費者余剰の定 義においては生産者余剰の変化による消費の変化は考慮されていない。また財の価格変化 がもたらす所得効果も無視されている。しかし,消費される財の種類がたくさんあって1 つの財が消費者の予算に占める割合が小さければ生産者余剰の変化や所得効果による消費 の変化は小さくなるであろう。

もし何らかの理由で(たとえば政府の規制によって)この財の価格がpからp0に上 昇し,需要の減少によって消費量がOKになったと考えてみよう。消費者余剰は三角形 AHIの面積になり,生産者余剰は台形HBGIの面積になる。生産者余剰は増えるが消費 者余剰がその増加分以上に減り,総余剰は台形ABGIの面積になって価格がpのときよ

り三角形IGEの面積だけ小さくなる。同様に価格がpより低いp1になると供給が減っ てやはり消費がOKまで減る。この場合は生産者余剰が三角形LBGに,消費者余剰が台 形ALGIになり,総余剰は三角形IGEの面積の分だけ小さくなる。したがって総余剰は 均衡価格において最大となることがわかる。これは競争経済における消費と生産の効率性 を示すものである。

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