• 検索結果がありません。

クールノーの寡占モデル

ドキュメント内 12中級ミクロ経済学 (ページ 183-188)

第 3 章 企業の行動 125

3.13 クールノーの寡占モデル

3.13.1 クールノーモデル - 同質財の場合

独占的競争では完全競争と同様に多くの企業が差別化された財を生産している産業を考 えた。独占ではないが企業数が少ない産業は寡占(oligopoly)と呼ばれる。寡占には同 質的な財を生産している場合と,差別化された財を生産している場合がある。ここでは二 つの企業が同質的な財を生産する最も簡単なケースを考えよう。企業数が二つの寡占は特

に複占(duopoly)と呼ばれることがある。具体的に企業Aと企業Bが,ある同じ財を生

産しているとする。その財の需要は以下のような需要関数で表されると仮定する。

p= 20−X (3.14)

pはこの財の価格,Xは需要である。企業Aと企業Bの産出量をそれぞれxyで表す と市場均衡においてはX =x+yとなっていなければならない。各企業が産出量を決め るとそれに応じて価格が決まる。企業A,Bの費用関数は同一であり,c(x) = 2xおよび

c(y) = 2yで表されるものとする。したがって各企業について限界費用も平均費用(およ

び平均可変費用も)も一定で2に等しく,固定費用はない。企業Aの利潤は

πA=px−2x= (20−x−y)x−2x (3.15) 同様に企業Bの利潤は

πB=py−2y= (20−x−y)y−2y (3.16) と表される。ここで,企業A,企業Bは以下に述べるクールノーの仮定に従った行動を とるものとする。

3.13 クールノーの寡占モデル 171 クールノーの仮定 企業A(またはB)は,企業B(またはA)の産出量を与えられたもの

として,あるいは企業B(またはA)の産出量は変化しないものと考えて,自分の利 潤が最も大きくなるように産出量x(またはy)を決める。

すると(3.15)の企業Aの利潤は,yを一定として

πA= (20−x−y)x−2x=−x2+ (18−y)x

=[x(91

2y)]2+ (91 2y)2

と変形でき,二次関数の最大値を求める手法によって企業Aの利潤を最大化するxは次 の式を満たすことがわかる。

x= 91

2y (3.17)

この式は,企業Bが選んだ(あるいは選ぶであろう)産出量yに対応して企業Aは(3.17) より求められる産出量を選ぶということを意味する。同様の計算で企業Bについて

y= 91

2x (3.18)

が得られる。(3.17)は企業Aの,(3.18)は企業Bの反応関数(reaction function)と 呼ばれる。均衡においては両企業の産出量が利潤最大化の条件を満たしていなければなら ないから,(3.17),(3.18)の両方の式が成り立っていなければならない。したがってこれ らを連立一次方程式として解くと各企業の産出量が次のように求まる。

x=y= 6 (3.19)

このようにして求められた寡占の均衡はクールノー均衡と呼ばれる。クールノー均衡の考 え方はゲーム理論のナッシュ均衡と基本的に同じなので,ナッシュ・クールノー(あるい はクールノー・ナッシュ)均衡とも呼ばれる。(3.14)より財の均衡価格はp= 2012 = 8 となり,企業A,Bの利潤は36と求まる。この例では両企業の費用関数が同一なので均 衡において選ばれる産出量も等しいが,費用関数が企業によって異なっている場合はそう はならない。

寡占のモデルは図で表すこともできる。図3.15のRA,RBはそれぞれ企業A,Bの 反応関数(3.17)と(3.18)を図示したものであり,反応曲線(reaction curve)と呼ばれ る。図では直線になっているが,これは需要関数も費用関数も一次式であるためで一般的 には直線になるとは限らない。均衡においては両企業が反応関数(曲線)にもとづいて産 出量を選んでいるので,RAとRBの交点Cがクールノー均衡を表す。

3.13.2 クールノーモデル - 企業数が 3 以上の場合

企業数が3以上の場合のクールノーモデルも複占と同じように考えることができる。ご く一般的に表してみよう。企業数をn(正の整数),各企業をiで表しその産出量をxi

C RA

RB

6 9

6 9

企業Aの産出量 企

業 B の 産 出 量

図3.15 クールノーの寡占モデル

合計の産出量をX,価格をpとする。また需要関数(逆需要関数)を p=p(X)

企業iの費用関数を

c(xi)

とし,費用関数はすべての企業に共通であるとする。固定費用はc(0)と表すことができ る。企業iの利潤は

πi=p(X)xi−c(xi) であるから,利潤最大化の条件は

∂πi

∂xi

=p+xip(X)−c(xi) = 0

となる。c(xi)は限界費用であり,p(X)は需要曲線の傾きを表す。各企業は自分以外の 企業の産出量を与えられたものとして利潤を最大化するのでxiの変化はXの変化に等し く,単純にp(X)を微分すればよい。具体的にp= 10−Xc(xi) =x2i + 2とし,すべ ての企業について費用関数が同一なので均衡における産出量も等しいことを考慮すれば利 潤最大化条件は

10(n+ 1)xi2xi= 0 となり,

xi= 10 n+ 3

3.13 クールノーの寡占モデル 173 が得られる。このとき価格はp= n+330 に等しく,各企業の利潤は

πi= 200 (n+ 3)2 2

に等しい。企業の参入が自由であるとすれば利潤が負でない限り新しい企業が参入する ので

200

(n+ 3)22≧0 から,n= 7となるまで企業が参入することがわかる。

3.13.3 クールノーモデル - 差別化された財を生産する場合

2つの企業が差別化された財を生産するケースを考える。企業をA,B,それぞれの産 出量をxAxB,各財の価格をpApBとする。差別化された財なので価格が異なる可能 性がある。それぞれの(逆)需要関数を

pA= 12−xA−kxB

pB= 12−xB−kxA

とする。k1< k <1を満たす定数であり,kが1に近づいたときの極限が同質財の 場合に対応する。kが正の場合は両企業の財が代替的であることを,負の場合は補完的で あることを意味する。簡単化のために費用をゼロとする。企業Aの利潤は

πA= (12−xA−kxB)xA

となり,利潤を最大化する産出量は

xA= 6−k 2xB を満たす。同様に

xB= 6−k 2xA

を得る。これらが反応関数である。kの符号によって傾きが異なる。これらから均衡産 出量

xA=xB= 12 2 +k が求まる。また,そのときの価格は

pA=pB= 12 2 +k となる。

3.13.4 独占的競争の簡単なモデル

モデルの構造は企業数が3以上の場合のクールノーモデルと似ている。n社の企業が互 いに差別化された財を生産し,各企業の需要関数は次のようであるとする。

pi=a−b

n

j=1,j̸=i

xj−xi

pi は価格,xi は産出量である。∑n

j=1,j̸=ixji以外の企業の産出量の和に等しい。

a > 0,b(0 < b <1)は定数。nは定数ではなく企業の利潤がゼロになるという条件に よって決まる。各企業の費用関数を次のように仮定する(cfは正の数)。

ci=cxi+f

cは一定の限界費用,f は固定費用である。そうすると各企業の利潤は次のように表さ れる。

πi = (a−b

n

j=1,j̸=i

xj−xi)xi−cxi−f すべての企業の産出量が等しいとすると利潤最大化の条件

a−[(n1)b+ 2]xi−c= 0 によって

xi= a−c (n1)b+ 2 を得る。そのとき企業の利潤は

πi=

[ a−c (n1)b+ 2

]2

−f =x2i −f を満たす。これがゼロに等しいとすると

xi =√ f

が得られる。一方各企業の平均費用ACiは次のように表される。

ACi=c+ f xi

xiを横軸にとって描いた平均費用曲線の傾きは dACi

dxi =−f x2i

3.14 シュタッケルベルク均衡 175

ドキュメント内 12中級ミクロ経済学 (ページ 183-188)