第 2 章 消費者の行動 22
2.2 効用最大化
U =u(x, y)
のように表現される。具体的な効用関数の作り方には以下のような方法がある。X財,Y 財の消費量を示すある点を通る無差別曲線を考える。その無差別曲線が傾き1の直線と交 わる点(その点においてはX財とY財の消費量が等しい)をとり,原点とその点との距 離(あるいはその距離の何倍か,何乗かの値)をその無差別曲線の各点が示す消費が与え る効用の大きさとする。
無差別曲線は効用が等しい点を結んだものであるからその方程式は u(x, y) = ¯U , U¯は定数
で表される。消費者の選好は順序関係だけを問題にしているので効用に数値を割り当てる とは言ってもその大きさそのものには意味がなく,さまざまな消費量の組み合わせについ てどれがどれより効用が大きいか小さいかという相対的な関係だけを表している。ある組 み合わせの効用が別の組み合わせの効用よりどの程度あるいは何倍大きいか小さいかとい うことは問題にならない。
xy=a, aは定数
という方程式で表される無差別曲線を考えると,それに対応する効用関数はU =xyでも
U = 3xyでもU =x2y2でもよい。すべて同じ無差別曲線を与えるものであり同一の選
好順序を表す。このように選好順序だけを問題にする効用の考え方を序数的効用と呼ぶ。
一方効用の大きさも問題にするような効用の考え方は基数的効用と呼ばれるが,現在では 序数的効用の考え方が主流である。
2.2 効用最大化
2.2.1 予算制約式・予算制約線
消費者は自らの予算の制約のもとで行動を決めなければならない。予算の制約は式と図 で表される。1万円の所得を得て1単位の価格100円のX財と価格200円のY財を購入 するとすると,予算の制約を表す式は
100x+ 200y= 10000
となる。この式を予算制約式と呼ぶ。XとYの消費量はそれぞれx, yで表されている。
予算を全部使う必要はないので予算制約式は厳密には不等式で表されるべきであるが,1 回限りの消費を考えると選好の単調性の仮定から予算を残すよりも全部使って消費量を増
M
N N′ Xの消費量 Y
の 消 費 量
図2.5 予算制約線
やした方がよいので等式になる。一般的には所得をm,XとYの価格をpx, pyで表すと,
予算制約式は
pxx+pyy=m
と書き表される。これを図に描いたのが図2.5の直線MNである。この直線を予算制約 線と呼ぶ。Nの座標は(m/px,0)(上の例では(100,0)),Mの座標は(0, m/py)(上の例
では(0,50))である。点Mは所得全額をYに使った場合にいくら買えるかを,点Nは所
得全額をXに使った場合にいくら買えるかを表している。予算制約線の直線としての傾 きは−px/pyであるが,その大きさは『X財のY財に対する相対価格』に等しい。X財 のY財に対する相対価格とは,X財1単位と交換にY財を何単位手に入れることができ るかを意味する。
X財の価格pxが高くなると予算制約線は図のMN′ のように変化する。予算制約線が 内側に回転するのはX財の価格が高くなることによって同じ予算で買えるXの量が少な くなるからである。
2.2.2 消費者の選択・効用最大化
消費者は予算制約のもとで効用が最大となるように財の消費量の組み合わせを選択する のであるが,その選択を無差別曲線と予算制約線とを用いて図で表すことができる。消費 者は予算制約線MN上の点が示す消費量の組み合わせしか選択できない。その中で最も 効用が高いものあるいは最も選好順序が上位にある組み合わせを選択する。たとえば図 2.6の点A,Bは選択可能な消費量の組み合わせの例を示しているが,これらは最大の効
2.2 効用最大化 37
U2
U1 U3 M
N C
E
B A
Xの消費量 Y
の 消 費 量
図2.6 消費者の選択
用を与える点ではない。なぜならば予算制約線上で点Aより少し右下の点(図には描い ていないが)を考えるとそれは点Aと点Bを通る無差別曲線より上にあるので点Aより 大きい効用を与える,同様に点Bより少し左上の点も点Aと点Bを通る無差別曲線より 上にあり,点Bよりも,また点Aよりも大きい効用を与える。このように考えると予算 制約線上で最も大きい効用を与える点は,予算制約線の上でその点の右下の点も左上の点 もその点を通る無差別曲線より下にある点ということになる。それは予算制約線と無差別 曲線とが接する点Eである。点Eより右下の点も左上の点も,点Eを通る無差別曲線よ り下にあり効用は小さい。またこの点より効用が大きい点,図の点Cなどは予算制約線 よりも上にあり実現不可能な(この消費者の所得では買えない)消費の組み合わせである
*5。
先に述べたように無差別曲線の接線の傾きは消費者にとってのXとYとの相対的な価 値を表し限界代替率と呼ばれる。一方予算制約線の傾きはX財のY財に対する相対価格 である。したがって効用最大化が予算制約線と無差別曲線が接する点で達成されるという ことは,その点において
限界代替率=相対価格 (2.2) という関係が成り立っていることになる。これは効用最大化の条件が,消費者の2財に対
*5無差別曲線を地図の等高線,予算制約線を山の中腹を通る一本の道になぞらえて考えれば,
ある道に沿って山を登って行ったときにその道の中で最も高い地点を求めることと同じ論理 である。道と1つの等高線が交わっていれば道はその等高線よりも高く上って行くが,道と 等高線が接している場合にはどちら向きに歩いても下がって行くのでその接点が最も高い地 点である。
U1 U2
U3
M1
N1
M2
N2
M3
N3
A B
C
Xの消費量 Y
の 消 費 量
図2.7 所得の変化と消費
する評価と市場の評価(相対価格)が一致することである,ということを意味している。
これらはたまたま一致するのではない。もし
限界代替率>相対価格
であれば(これは図2.6の点Aの状況である),Xの消費量が少なすぎることを意味して いるので,(Xの消費量の増加とともに限界代替率は小さくなるから)Xを増やしてYを 減らすことによって限界代替率が引き下げられる(AからEへ向かっての変化)。逆に
限界代替率<相対価格
の場合には(これは図2.6の点Bの状況である),Xの消費量が多すぎるのでXを減らし てYを増やすことによって限界代替率が引き上げられる(BからEへ向かっての変化)。
このようにして
限界代替率=相対価格 の関係が実現される。