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スルツキー方程式の一般的導出

ドキュメント内 12中級ミクロ経済学 (ページ 101-105)

第 2 章 消費者の行動 22

2.10 効用最大化の数学的分析 ∗

2.10.9 スルツキー方程式の一般的導出

2.10.9.1 スルツキー方程式

X財の(通常の)需要関数はpxpyおよび所得の関数であるが,効用水準がu¯のとき の支出関数の値(必要最小限の予算)をm(px, py,u)¯ とすると

x(px, py, m(px, py,u)) = ˜¯ x(px, py,u)¯

が得られる。x˜は補償需要関数である。この式はu¯の効用を実現できる所得において通常 の需要と補償需要が一致することを意味する*29。通常の需要はその所得が一定であると して価格と需要の関係を考えるものであり,効用は一定ではない。一方補償需要は効用を 一定として価格と需要の関係を考えるものであり,所得は一定ではない。u= ¯uを一定と してこれをpxで微分すると

∂x

∂px

+ ∂x

∂m

∂m

∂px

= ∂x˜

∂px

*29¯uの効用を実現できる最小の支出,すなわち所得のもとで最大限達成できる効用はu¯に他な らない。もしu¯より大きい効用が実現できるとすれば,もともともっと少ない支出でu¯を実 現できていたはずである。したがってu¯の効用を実現する補償需要と,その所得のもとで効 用を最大化する通常の需要は等しい。

2.10 効用最大化の数学的分析 89 を得る。pyは変化していない。またmu¯の効用が実現できるように適当に調整され

る。この式から

∂x

∂px = ∂˜x

∂px ∂x

∂m

∂m

∂px

が導かれる。左辺はpxの変化によるxの通常の需要(所得一定のもとでの)の変化を,

右辺第1項はpxの変化によるxの補償需要の変化,すなわち代替効果を,右辺第2項は pxの変化による実質所得の変化に対応したxの通常の需要の変化,すなわち所得効果を 表す。∂p∂m

x は効用を一定に保つために必要な所得の調整を表している。価格が高くなった 場合は負,低くなった場合は正である。補償需要ではこの調整がなされているが通常の需 要ではなされていないので差し引かなければならない。この式がスルツキー方程式であ る。同様にしてpyの変化について

∂x

∂py + ∂x

∂m

∂m

∂py = ∂˜x

∂py から

∂x

∂py

= ∂˜x

∂py ∂x

∂m

∂m

∂py

が導かれる。左辺はpyの変化によるxの通常の需要(所得一定のもとでの)の変化を,

右辺第1項はpy の変化によるxの補償需要の変化(代替効果)を,右辺第2項はpyの 変化による実質所得の変化に対応したxの通常の需要の変化(所得効果)を表す。Y財に ついては

∂y

∂px

= ∂y˜

∂px ∂y

∂m

∂m

∂px

および

∂y

∂py

= ∂y˜

∂py ∂y

∂m

∂m

∂py

が得られる。

2.10.9.2 代替効果の符号について

2財の場合の代替効果の符号について考えてみよう。支出関数の変化を考える。X財の 価格がpxからpx+ ∆pxへ,さらにpx+ 2∆pxへ変化したとする。∆pxはわずかな変化 である。それぞれの支出関数をm(px, py,u)¯ ,m(px+ ∆px, py,u)¯ ,m(px+ 2∆px, py,u)¯ と表す。マッケンジーの補題により(∆pxはわずかな変化であるから)

m(px+ ∆px, py,u)¯ −m(px, py,u) = ˜¯ x(px, py,u)∆p¯ x (2.33) m(px+ 2∆px, py,u)¯ −m(px+ ∆px, py,u) = ˜¯ x(px+ ∆px, py,u)∆p¯ x (2.34) となる。m(px, py,u)¯ とm(px+ 2∆px, py,u)¯ はそれぞれX財の価格がpxpx+ 2∆px のときの最小化された支出であるが。px+ ∆pxのときの支出を最小化する補償需要では

pxおよびpx+ 2∆pxのときの支出は最小化されない。つまり

m(px, py,u)¯ < pxx(p˜ x+ ∆px, py,u) +¯ pyy(p˜ x+ ∆px, py,¯u) および

m(px+ 2∆px, py,u)¯ <(px+ 2∆pxx(px+ ∆px, py,u) +¯ pxy(p˜ x+ ∆px, py,u)¯ が成り立つ。これらの条件は無差別曲線が凸であることに対応する*30。両辺をそれぞれ 加えると

m(px, py,u) +¯ m(px+ 2∆px, py,u)¯ <2(px+ ∆pxx(px+ ∆px), py,u)¯ + 2pxy(p˜ x+ ∆px, py,u)¯

=2m(px+ ∆px, py,u)¯ が得られる。この式から次の式を得る。

m(px+ 2∆px, py,u)¯ −m(px+ ∆px, py,u)¯ < m(px+ ∆px, py,u)¯ −m(px, py,u)¯ したがって(2.33),(2.34)より

˜

x(px+ ∆px, py,u)∆p¯ x<x(p˜ x, py,u)∆p¯ x (2.35) が導かれるから,X財価格の上昇(∆px >0)によってX財の補償需要が減少し,下落 (∆px<0)によって増加することがわかる。したがってX財価格の変化がそれ自身の補 償需要に及ぼす代替効果は負である(∂px˜

x <0)。

2.10.9.3 代替効果の対称性

上の議論では,ある財の価格の変化がその財に及ぼす代替効果を考えたが,もう一方の 財に及ぼす代替効果の性質について考えてみよう。まず2変数関数の偏微分について次の 事実を示す。

xyの関数f(x, y)をxyの両方で微分するとき,どの順に微分しても結果は 等しい。」

これは次のようにして証明される。xx0からのわずかな変化を∆xで,yy0 からのわずかな変化を∆yで表す。まずf(x, y)を(x, y) = (x0, y0)においてxで 微分することを考えると∂f∂x

*30支出が最小化されている状況では無差別曲線(効用一定なので固定されている)と予算制約 線(支出額によって変るが傾きは相対価格で決まっている)が接している。その状態で1 の財の価格が変化すると予算制約線の傾きが変り,もとの支出最小化を実現する消費量を表 す点を通る新たな予算制約線は無差別曲線と交わるので変化した後の価格のもとで支出を最 小化する消費の組はその線よりも下に位置する。

2.10 効用最大化の数学的分析 91 f(x0+ ∆x, y0)−f(x0, y0)

∆x (2.36)

において∆xを0に近づけたときの極限として求められる。同様にy =y0+ ∆y においては

f(x0+ ∆x, y0+ ∆y)−f(x0, y0+ ∆y)

∆x (2.37)

の∆xを0 に近づけたときの極限がf(x, y)のxによる微分の値である。一方 f(x, y)を(x, y) = (x0, y0)においてyで微分することを考えると∂f∂y

f(x0, y0+ ∆y)−f(x0, y0)

∆y (2.38)

において∆yを0に近づけたときの極限として求められる。同様にx=x0+ ∆x においては

f(x0+ ∆x, y0+ ∆y)−f(x0+ ∆x, y0)

∆y (2.39)

の∆yを0に近づけたときの極限がf(x, y)のyによる微分の値である。

(2.37)と(2.36)の差をとって∆yで割ると

f(x0+ ∆x, y0+ ∆y)−f(x0, y0+ ∆y)−f(x0+ ∆x, y0) +f(x0, y0)

∆x∆y (2.40)

となるが,この式においてx0+ ∆xをx0に,y0+ ∆yをy0に近づけたときの極 限がf(x, y)xで微分し,さらにyで微分して得られる 2f

∂y∂xの値に他ならない。

同様に(2.39)と(2.38)の差をとって∆xで割ると

f(x0+ ∆x, y0+ ∆y)−f(x0+ ∆x, y0)−f(x0, y0+ ∆y) +f(x0, y0)

∆x∆y (2.41)

となるが,この式においてy0+ ∆yをy0に,x0+ ∆xをx0に近づけたときの極 限がf(x, y)yで微分し,さらにxで微分して得られる ∂x∂y2f の値に他ならない。

(2.40)と(2.41)とは等しいから

2f

∂y∂x = 2f

∂x∂y (2.42)

が証明された。

支出関数m(px, py,u)¯ に(2.42)を適用すると

2m(px, py,u)¯

∂py∂px

= 2m(px, py,u)¯

∂px∂py

となるが,マッケンジーの補題によって

∂x˜

∂py = ∂y˜

∂px (2.43)

を得る。したがって代替効果は対称的である。

この結果は次の章で「補償変分」「等価変分」「消費者余剰」について分析するときに用 いる。

u(˜x,y) = ¯˜ uを効用一定のもとでpxで微分すると(2.31)より ux

∂˜x

∂px

+uy

∂y˜

∂px

= 0 となる。x˜

∂px <0なので

∂˜y

∂px

>0

でなければならない。すなわち2財の場合はX財とY財は互いに代替財となる。しかし 以下の議論で見るように多数財の場合はそうとは限らない。

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