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  本研究は、商店街プロジェクトの実践活動に基づいて考察及び提案を行っていることから、

他の地域課題に対する有効性、さらに他の行政職員の場合の有効性についてまで考察ができ ていない。しかしながら、どのような地域課題であれ、行政職員と市民とが一緒になって同 じ目標に向かって汗をかくことは、行政職員にとっては地域に目を向け、課題を直に把握す る機会となり、地域にとっては解決に向けた一歩を踏み出すことができる最初の一歩につな がることは確かであろう。また、どのような行政職員であれ、行政職員のリソース「行政内 部におけるネットワーク」「地域におけるネットワーク」「市民からの信頼性」を程度の差 はあれ持っていることから、行政職員が「協働」のステークホルダーに十分なり得ることを 示すことができたと考えている。地域と関係をつくっていくことは、行政職員にとって地域 の中に活躍の場と居場所をつくることにもつながるだろう。 

  次に、「協働」は多種多様であることやその体制等もさまざまであるため、「協働」にお ける「デジタルメディア」の具体的な利活用方法・デバイスまで言及することができなかっ た。しかしながら、学習室プロジェクトを通じても明らかになったように、「デジタルメデ ィア」の導入は、どのような「協働」に対してもそのPRだけでなく、参加者や支援者をつ ないだり、参加者のモチベーションを上げたり、新規事業の創出に寄与したりする可能性を 十分に持っていると考えられる。 

  最後に、本章における提案は、その実現可能性や有効性を実証することまではできなかっ た。今後、地方自治体においてこのような取組事例があればぜひヒアリングを行ったり、経 過を追ったりしてその効果を検証していきたいと考えている。 

62 川崎市財政局財政部財政課「平成 25 年度予算編成方針について」

http://www.city.kawasaki.jp/230/page/0000042880.html(閲覧日:2013 年 1 月 3 日)

63 総務省「ふるさと寄付金など個人住民税の寄付金税制」

都道府県・市区町村に対する寄付金のうち、2千円を超える部分について、一定限度まで所得税と合わせ て全額が控除される。

http://www.soumu.go.jp/main̲sosiki/jichi̲zeisei/czaisei/czaisei̲seido/080430̲2̲kojin.html

(閲覧日:2012年1月3日)

10.7  まとめ   

10.7.1  地域資源としての自治体職員と市民、武器としての「デジタルメディア」 

  これからの協働社会を目指して「協働」をかたちづくるのに、行政、つまり地方自治体職 員と市民は地域資源であることを、本研究を進める上で実感している。 

  地域の力をつなげていくのに地方自治体職員は適任だ。全国どの市町村でも地方自治体職 員は必ずいるからである。彼らは何より地域の情報を数多く持っている。また、業務の中で 培われた専門分野や得意分野を持っている場合も多い。しかも地域からすれば、タダで仕事 を受けてくれる(実際は給料という税のコストがかかっているが)。確かに彼らが入庁した モチベーションの一番は「安定した職場」だからかもしれないが、彼らももともとは地域に 愛着があったり、地域の活性化をのぞんでいたりするはずだ。現在、全国の都道府県市区町 村数は1,78964、地方公務員の数は2,788,989人65、もしそのうちの一般行政職員926,249人 の1割の数でも地域に飛び込み地域課題解決のための「協働」を生めば、全国に9万2千も の「協働」が生まれるかもしれない。そして、第7章のケーススタディの振り返りの中で行 政職員が果たした役割が明らかになったように、行政は「協働」に対して「お金」だけでは なく、「行政内部のネットワーク」「地域におけるネットワーク」「市民からの信頼」とい う行政が持つリソースを「協働」の中で活かすことができるのである。 

  多くの地方自治体職員が、それぞれ「協働」に関わることができたなら、全国津々浦々の 市や町で「協働」が生まれやすくなるだろう。 

                       

64 財団法人地方自治センター「都道府県別市区町村数(平成 25 年 1 月 1 日現在) https://www.lasdec.or.jp/cms/1,19,14,151.html(閲覧日:2013 年 2 月 13 日)

65 総務省「地方公務員数の状況(平成 23 年4月1日現在)

一般行政は、議会、総務・企画、税務、労働。農林水産、商工、土木、民生、衛生。このほか、教育、警察、

消防、公営企業等会計部門ごとに集計している。

http://www.soumu.go.jp/iken/kazu.htmlZ(閲覧日:2013 年 1 月 2 日)

図10.4:行政が積極的にアプローチすることが必要と考えられる対象 

  もう一つの地域資源は市民である。 

  市民一人一人は、得意分野や経験、知識を持っている。それらは集まることで地域課題解 決のためにも力を発揮する。そして、彼らの多くが何かしら社会に対して貢献したいと思っ ているのである。 

  だから、これからはそんな気持ちを小さく多く集めていくことが必要だ(図10.4)。 

  そこでそこへアプローチし、ネットワークづくりを行い、「協働」を生んでいくのに、「デ ジタルメディア」はツールとして効果的だ。商店街のような「場」を中心にした「協働」に 導入することで、それは地域のネットワーク、さらには非常時におけるネットワークとして 機能する可能性も持っていることが分かった。 

  従って、これからの社会において「協働」を多く生み育てていくためには、「デジタルメ ディア」という武器を駆使しながら、多くの地方自治体職員が「協働」のデザインを行って いくことが有効であると考えられる。 

 

10.7.2  これからの社会のインフラストラクチャとしての「協働」 

  これからの協働社会を構成する必要な要素は、行政と市民とが参加し、お互い対等な立場 で地域課題の解決に向かう一つ一つの「協働」である(図10.5)。 

  行政職員には「行政内部のネットワーク」「地域におけるネットワーク」「市民からの信 頼」というリソースがあり、それらを「協働」の中で活かすことができる。つまり行政職員 が参加することで「協働」が生まれやすくなるのである。また、「協働」に参加していくこ とが、市民との協力関係を構築していくことにもつながるのである。 

                             

  図10.5:これまでとこれからの「協働」の  かたち 

  そして、デジタルメディアは、「協働」を生むための共感を呼び、参加する人・支援する 人をつなげるツールとして、さらには地域のネットワークを新たにつくるツールとしても活 用が期待できる。 

  行政に必要なことは、「デジタルメディアの利活用」による「協働」のデザインだ。それ は、多くの市民と情報を共有し、共感をつくり、つなげ、多くの市民の参加をうながしてい く、そして、それらを瞬時に、分かりやすく、コストをかけずに行う、水平方向のネットワ ークづくりと自ら市民と一緒になって汗を流す市民との関係づくりの仕事である。デジタル  メディアの時代だからこそできるデザインであり、協働社会の構築に必要な行政の役割であ る。 

  「協働」をかたちづくるのは、その町の住民だけとは限らない。地域社会における課題を 解決しようと意思を持って集う、それがすなわち協働社会における「市民」ではないだろう か。グローバル社会における市民ともいえるだろう。川崎市自治基本条例第3条第1項66で  は市民の定義を「本市の区域内に住所を有する人、本市の区域内で働き、若しくは学ぶ人又  は本市の区域内において事業活動その他の活動を行う人若しくは団体」としている。これか らの社会は何もその町だけで課題を解決することを考えなくてもよい。他の町や市にも応援 したいと思っている人は大勢いる。東日本大震災は改めてそのことを浮き彫りにした。 

地域社会の課題を解決しようと思いを持って、行政区を軽々と飛び越えて支え合う、デジタ ルメディアの時代における協働社会の市民である。 

  「協働」づくりは、地縁のつながりが弱まり、孤立化が急速に進む社会において、支え合 いの社会をつくり直すことであり、いざという時には私たちの命を守り救う「安全・安心の ネットワーク」づくりでもある。いわば、これからの社会のインフラストラクチャである。 

  そして「協働」は、市民一人一人の出番や役割を生み出し、やりがい・生き甲斐の場とし ても機能する。 

  「協働」の萌芽はすでにある。 

  しかし、それらはまだまだ点の状態だ。 

  これからの行政には、まさにそのインフラストラクチャを町中に張り巡らす役割が求めら れている。 

  「協働」は、まちの未来に欠かせない大事な一つ一つの細胞なのだ。 

66 川崎市総合企画局自治政策部「自治基本条例」

http://www.city.kawasaki.jp/200/page/0000003199.html(閲覧日:2012 年 1 月 31 日)

謝辞 

 

  「協働」やボランティアに対して、私はずっと何か懐疑的だった。今になってやっと分 かったのは、そこにはお金だけではない、誰かのための役に立つという仕事の原点や、お 互い様の輪から成る社会の基本、個人のやりがいや居場所が詰まっている、純粋な気持ち から成る第二の家ということだ。そして、私にとっていつも発見がある、学びの場となっ ている。 

 

  慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科大川恵子教授には、Global  Education  Project において、数々の御指導、また叱咤激励をいただきました。5年前、まだ私が川 崎市中原区役所職員だった頃、年末の冷たい小雨が降りしきる中、慶應藤沢湘南キャンパ スを先生あてお尋ねし、大学院入学について御相談をいただいたほか、地域コミュニティ の必要性などについて話していたことがつい最近のことのようです。先生からお教えいた だいた、Project の根底にあるもの、教育の機会は等しくあるべき、の教えは、まさに商 店街プロジェクトにおける教室開催や学習室プロジェクトにつながっています。この論文 を進める際にも最後までずっと温かく励ましていただきました。感謝申し上げます。 

 

  Global Education Project のメンバーのみんなには、いつも元気づけられました。一緒 に勉強してくれてありがとう。遠隔技術を使って、皆既日食を中継しながら世界の子ども たちと宇宙の不思議を勉強したり、東京芸術劇場でアジアの人々と合唱をしてみたり、世 界の高校生たちとワークショップをしたりと、体力任せにばたばたと賑やかに過ごせた 日々が楽しかったです。メンバーで考えた Project のコンセプト「Global  citizen,  for  Global  issues」は、商店街プロジェクト、学習室プロジェクトを通底しているものです。

みんなで少しずつ世界をよい方向に変えていこう。 

 

  このたび審査委員を務めてくださいました、砂原秀樹先生、中村伊知哉先生、岸博幸先 生、飯盛義徳先生には、お忙しい中多くの御指導をいただき、また、遅筆な私を励まして いただきまして、ありがとうございました。感謝申し上げます。 

 

  オズ通り商店街では、柳沢正高理事長、安生誠彦副理事長、中野勝久副理事長に大変お 世話になっております。私が商店街を歩くと声をかけてくださり、そして夜になるといつ も一杯誘っていただき、可愛がってくださっています。中小企業診断士の為崎緑様には運 営会議を始め、商店街の要としてアドバイスをいただきながらプロジェクトの御協力をい ただいており、株式会社キーライフ大川雄司様には、コンテンツ制作を市民のみなさまと 一緒に御協力いただいております。商店街運営スタッフのみなさまに感謝申し上げます。