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日本の社会保障関係分野における日本の地方財政制度の課題

ドキュメント内 社会保障に関わる地方財政の制度分析 (ページ 54-58)

第 3 章 日本の地方財政制度と所得再分配機能の展開

7. 日本の社会保障関係分野における日本の地方財政制度の課題

本章では、社会保障制度の変遷によって戦後から現在までを 5期間に区分し、第 2 章で議 論した財政連邦主義を踏まえ、国と地方の財政関係と所得再分配機能について、事務配分や税 源配分、財政移転の観点から整理した。その結果の主旨は次のとおりである。

戦後、GHQの占領下、国と地方の財政関係は、地方自治の確立に向け、行政責任明確化の 原則や税源分離の原則に基づいた国と地方の財政関係の構築をめざした。そのなかで市町村優 先主義がうたわれ、生活保護を含む民生行政の多くのサービスは市町村が行うことし、所得再 分配機能は地方も担うこととされる。しかし、実現には至らなかった。

その後は、この国と地方の財政関係が大きく方針転換される。国と地方が役割を分担し、所 得再分配機能は重複することになり、税源分離主義を転換し、税源重複とした。一方、市町村 優先主義は貫かれた。歳出面については、機関委任事務による統制が、歳入面については税源 の共有だけでなく、課税標準そのものが国税に依存することとなった。課税権が統制されるな かで、国庫補助負担金と地方交付税による財政移転が地方財政運営を支えていくことになる。

地方の自主性は低く、機関委任事務による歳出の決定権限や課税権の統制により中央集権化が 進み、財政移転を基本とする日本型の財政連邦主義が形成され、現在に至る。

この中央集権型の日本の財政連邦主義は、国の方針や財政力に大きく影響を受ける。昭和30 年代から40年代にかけては、社会保障制度の整備期であり、国において社会保障関係施策の 優先順位が高く、市町村を中心として全国画一的なサービスを実施できるよう、国庫補助負担 金や地方交付税が増額されていく。これは、高度成長期もあって、国の財政力が強かったこと も影響している。サービスの増加に伴い、財源が確保できた時期は、地方の課税権を拡大しな くとも、地方も国庫補助事業に加え、独自施策を行い、所得再分配機能を果たしていた時期で あるといえる。

その後、昭和50年代から 60年代は、社会保障制度の進展により、貧困者や低所得者に対 する所得再分配から、一般所得層をも対象とした社会保険、社会福祉へ、さらに、経済社会情 勢の変化により、家族や地域が担ってきた子育てや介護といったサービスへと拡充し、財政が 多くの所得再分配機能を担うことが要請されてきた。一方、国では、社会保障制度を拡充しつ つも、政策の優先事項に行政改革、財政再建が加わり、それに伴う社会保障制度の見直しも同 時進行する。社会福祉分野の機関委任事務の団体委任事務化は、権限移譲により分権化が進展 し、社会福祉サービスが地方の業務として位置づけられていく。その一方で、行政改革による 国庫補助負担率の引下げが地方負担の増加をもたらし、結果として地方の財源不足を招く。そ の財源措置は、地方交付税を通じて行われたが、地方交付税の法定率の引上げではなかった。

この時期は、日本の財政連邦主義は、歳出面では分権が進展していくが、歳入面では課税権は 制約されたまま、国庫補助負担金の減額と地方交付税の増額という財政移転の構造が変わった にすぎなかった。

平成元年以降、社会保障関係施策は変わらず国の重点的施策にあるが、その一方で、公共部 門の効率化や財政再建が国の施策の優先順位の高い位置にある。そのなかで、地方分権改革は、

行政上の効率化も含みながら、地方の歳出の決定権限を徐々に移譲させていく。歳入面でも課 税権の統制が緩和され、決定権限がわずかに拡大された。しかし、国の施策に従ったサービス

だけでなく、地域の実情にあった政策が必要とされているなか、構造改革による歳出抑制と社 会保障制度の拡充による歳出拡大が並行して行われており、地方歳出の伸びは抑制され、結果 として地方交付税総額の伸びも抑制され、一般財源の確保が困難になっている。日本型の財政 連邦主義のもとでは、歳入面での権限配分が大きくない限り、国の財政力により、国からの財 政移転の影響を受け、地方自治体の財源確保が厳しい状況になる。

このような状況を踏まえ、今後の地方財政制度の展開について考察する。

これまで日本では、国の方針として、社会保障関連施策の拡充を行い、少なからず国と地方 は所得再分配機能を果たしてきた。この施策を大幅に縮小することは、抵抗が大きく、現実的 ではない。近年では、地方自治体による所得再分配機能、特に社会福祉分野における現物給付 によるサービスが不可欠な要素となり、その重要性が高まり、地域の実情に応じたさまざまな 施策をより総合的、計画的に実施し、サービスの充実を図っていくことが求められている。

その際に、中央集権型の日本の財政連邦主義では、国の財政力が強い場合や全国画一的な社 会保障サービスが不可欠な場合には、行政任務と課税権が非対応であっても、国による財政移 転により、地方自治体の財源確保ができる。しかし、国の財政力が弱まり、地域の実情にあっ た政策が必要とされる場合には、行政任務と課税権が非対応であることによって、地方自治体 の財源確保が困難となる。地方自治体が国の施策と併せて地域独自の政策を展開し、所得再分 配機能を果たすためには、行政任務と課税権の対応が不可欠であり、その方向性としては、お のずと、第2章で議論した財政社会学的財政連邦主義に近づく。

歳出の決定権限に関し、国は経済保障に加え、社会福祉分野における基準統一の必要性の高 いもののサービス水準については法令で規定し、具体的なサービスの内容に関し、地方自治体 の施策の実施手段の決定においては自由度を拡大し、目標達成に向けた施策の手段の制約はす るべきではない。計画の策定によって、国の施策と同時に地方独自のニーズも捉えられ、優先 順位をつけながら、補助金付きのサービスか、国の施策への「上乗せ」「横出し」か、地域独 自の施策か、財源も考慮し、選択、効率的な実施を行うことが可能となる。

歳入面について、長期的な視点からの見直しが必要である。必要な財源を確保する方法とし て、(1)歳出の実態に合わせて税源移譲、(2)地方の自主財源、独自財源の強化、(3)地方交付 税制度による財源保障の強化、(4)国庫補助負担金の増額、などが考えられる。このうち、(1)、

(2)、(4)は、地方自治体間の財政力の格差拡大が懸念される。したがって、地方交付税制度に よる財源保障、財源調整が重要となる。(1)、(2)、(4)を実行した場合はなおさらである。

国や地方、都道府県や市町村との関係性を完全に無関係なものでなく、「協働・分権型」を

前提として、国が基準統一の必要性の高いもののサービス水準を法定とし「公平性」を確保し、

地方自治体は、多様化する地域のニーズに応じて効率的な財政運営を行うことができるよう、

国と地方の財政関係を考えていくべきだろう。地方分権改革は、新自由主義に基づく行政改革 ではなく、所得再分配政府と地方自治の両方を維持することを目的として行われなければなら ないだろう。

ドキュメント内 社会保障に関わる地方財政の制度分析 (ページ 54-58)