第 6 章 個人住民税の非課税限度額に関する考察
4. 個人住民税の非課税限度額と生活保護の基準額の差額の検証
4.1. 均等割の非課税限度額と生活扶助基準額の推移
4.1.1. 標準世帯の非課税限度額と生活扶助基準額の推移
昭和51年度から平成25 年度の均等割の非課税限度額と生活扶助基準額を比較し、その較 差を分析する。
年度の均等割の非課税限度額 _ については、非課税限度額の算式をもとに、所得金 額に給与所得控除を加えて給与収入額を算出する。勘案される生活扶助基準額について、昭和 51年度、昭和52年度は、『改正地方税制詳解』で示されている金額を用いる。昭和53年度以 降、 年度に勘案される生活扶助基準額 については、前年の生活保護の基準の級地区分1級 地-1における生活扶助(第1類費、第2類費、期末一時扶助費の合計額)であり、厚生労働省 告示の「生活保護法による保護の基準」に示された金額(月額)を用いて算出する36。
_ , _ , _ , 4・ 1
LA_Im,t-1:t-1年m月の第1類費、LA_Hsm,t-1:t-1年m月の第2類費世帯人員数4人の基準額、LA_Hw m,t-1:t-1年m月の第2類費4人Ⅵ区の冬季加算額(ただし、m=1, 2, 3, 11, 12)、YEAt-1:t-1年の期末一時扶 助費(居宅)
また、夫婦子2人の第1類費 _ , はそれぞれの年齢区分の合計額とする。ただし、平成 17年4月以降、4人以上世帯について第1類費の算定に逓減率を乗じることとされたので、
その合計額に逓減率 , を乗じた額とする。
_ , _ , _ , _ , _ , ・ ,
LA_Imm,t-1:t-1年m月の夫35歳の第1類費、LA_Ifm,t-1:t-1年m月の妻30歳の第1類費、LA_Ibm,t-1: t-1年m月の小学3年9歳男子の第1類費、LA_Igm,t-1:t-1年m月の4歳女子の第1類費
年度の較差 は(2)式、 年度の較差率 は(3)式によって算出する。
_ 2
36 ここで算出した生活扶助基準額は『改正地方税制詳解』で示されているそれと金額が一致しない年度があ る。児童養育加算の取扱いが年によって異なるためであり、算出データから除いている。4.2.1で算出する生 活保護基準額も同様である。また、平成25年度の生活扶助基準額は、平成25年4月1日現在の基準額を使 用して算出している。
_ 100 3
均等割の非課税限度額と生活扶助基準額の推移をみると、昭和58 年度と昭和60 年度を除 き、非課税限度額が生活扶助基準額を上回っている(図6.2)。これらの年度では非課税限度額 の改正は行われていない。非課税限度額は生活扶助基準額を「勘案して定める」としているの で、著しい差異がなければ生活扶助基準額を上回らなくても問題はない。
図 6.2 標準世帯の均等割の非課税限度額と生活扶助基準額の推移
(1) 実額
(2) 較差
(注)生活保護の基準の級地区分1級地の場合を示している。
千円単位未満は切り捨てている。
較差率は、0を超えると非課税限度額が生活扶助基準額を上回る状態、0未満では非課税限度額が生活扶助基準額を 下回る状態を示している。
(資料)非課税限度額は表6.1、生活扶助基準額は『生活保護手帳』(中央法規出版)により算出し作成。
均等割の非課税限度額と生活扶助基準額の較差は、非課税限度額の算式が生活扶助基準額と 連動していないので、一律ではなく年度ごとに異なる。平成25 年度の非課税限度額は255.7 万円、生活扶助基準額は235.2万円であり、較差は20.5万円で較差率は8.7%となっている。
較差率の最小は昭和58年度で-5.5%、最大は昭和51年度の13.2%である。較差は、創設時 は比較的高くなっているが、昭和61年度以降は10%の範囲内で推移している。
非課税限度額が引き上げられた年度についてみると、税率が引き上げられた昭和55年度と、
税率引上げの翌年の昭和61年度の較差率が大きい。非課税限度額と生活扶助基準額の改定率 は、昭和55年度ではそれぞれ10.1%、8.9%であり、昭和61年度ではそれぞれ9.4%、2.9%
であり、改定率は生活扶助基準額に比べ非課税限度額のほうが大きい。これは、低所得者層の 税負担の軽減に対する配慮であることがうかがわれる。平成元年度以降をみると、較差率の最
小は平成12年度で0.2%、最大は2年度で4.1%である。
一方、非課税限度額が引き下げられた年度についてみると、較差率は、平成16年度は2.4%、
平成18年度は5.4%となっている。平成16年度に比べ18年度の較差率が高いのは、平成16
年度の非課税限度額の改定率は-1.1%、生活扶助基準額の改定率-0.7%であり、両者はほぼ同 水準であったが、平成18年度では生活扶助基準額の改定率の-2.9%に比べ非課税限度額の改 定率は-0.5%と低いためである37。また、平成17年4月から導入された生活扶助第1類費の 4人世帯以上の算定に乗じる逓減率0.98は平成19年度までに0.95まで引き下げられ、生活 扶助基準額が引下げとなったが、この間には非課税限度額の引下げは行われていない。非課税 限度額の引下げは影響が大きいと考えられるので、配慮がなされたことがうかがわれる。
なお、補足ではあるが、均等割の非課税限度額は、3節で示したとおり、生活扶助基準額を 勘案して設定されている。標準世帯における非課税限度額と生活扶助基準額の相関係数を推計
すると0.987であり、正の強い相関がある。
4.1.2. 標準世帯以外の世帯の非課税限度額と生活扶助基準額の推移
次に、非課税限度額の算定を行うために規定された標準世帯以外の世帯について、均等割の 非課税限度額と生活扶助基準額を比較し、その較差を分析する。対象とする世帯は、単身世帯
(20-30代)、夫婦2人世帯(30代・20代)、夫婦子1人の3人世帯については、平成25年 4月1日現在の厚生労働省告示の生活保護の基準の標準世帯である30代・20代・4歳の構成
37 平成18年度の標準世帯の給与所得者の均等割非課税限度額は、平成16年度の257.1万円から255.7万円 に引下げとなった。
と40代夫婦・中学生の世帯、夫婦子2人の4人世帯(40代・大学生・中学生)とする。非課 税限度額と生活扶助基準額は、4.1.1 の算式をもとに算出する。分析期間は昭和 53 年度から 平成25年度とする38。
較差率をみると、すべての世帯において、非課税限度額が生活扶助基準額を上回っているわ けではない(図6.3)。平成25年度において、非課税限度額が生活扶助基準額を上回る世帯は、
標準世帯(較差率8.7%)、4歳の子がいる3人世帯(較差率 3.5%)と中学生の子がいる4人世 帯(較差率
0.1%)であり、非課税限度額が生活扶助基準額を下回る世帯は、単身世帯(較差率-3.3%)、夫婦2人世帯(較差率-1.9%)、中学生の子がいる3人世帯(較差率-5.5%)である。
その理由は、非課税限度額と生活扶助基準額のもとになる生活扶助の基準の算定の相違であ ると考えられる。非課税限度額の算式が政令で定める標準世帯に基づいて画一的に設定される のに対し、厚生労働省告示の生活扶助の基準は、保護対象者及びその家族の性別・年齢・居住 する地域等の具体的状況に対応して積算して定められる。その際、家計の弾力性に乏しい少人 数世帯の特性や世帯人員別の消費構造の差異を勘案し、一般低所得世帯の世帯人員別の消費支 出に合わせるよう改定されており、第2類費については、世帯人員が少人数世帯においては標 準世帯を上回る改定率とし、多人数世帯においては抑制されてきた39。第 1 類費については、
平成17年度に4人世帯以上の第 1類費の算定に際して適用する逓減率が導入された。また、
第1類費は、栄養所要量の年齢別格差をもとに設定されているので、中学生・高校生の基準額 が高く、20歳を超えると年齢が高くなるにつれ基準額が低くなる。
その他の理由として、4.1.1 の分析から、非課税限度額が生活扶助基準額と連動していない ので、非課税限度額の改定率と生活扶助基準額の変化率が異なること、非課税限度額が扶養家 族を有しない単身世帯を含む基本額の改定か、扶養家族を有する世帯のみを考慮した加算額の 改定かによって異なることが考えられる。
したがって、夫婦2人世帯、4歳の子がいる3人世帯では、非課税限度額が生活扶助基準額 を上回る年度が多い一方、中学生の子がいる3人世帯では、非課税限度額が生活扶助基準額を 下回る年度が多く、他の世帯に比べその較差も大きい。中学生の子がいる4人世帯では、逓減
38 均等割の非課税限度額は昭和51年度に創設されたが、昭和51年度と昭和52年度において斟酌される生 活保護基準額の算式が不明なため、ここでは53年度以降の分析を行っている。また、平成25年度の生活扶 助基準額は、平成25年4月1日現在の基準額を使用して算出している。
39 厚生労働省告示の生活保護の基準における標準世帯は、ここでの分析期間では昭和53年度から60年度ま では4人世帯(35歳男、30歳女、9歳男、4歳女)であり、昭和61年度以降は3人世帯(33歳男、29歳女、
4 歳子)である。この標準世帯は生活扶助基準の算定を行うために想定した世帯構成であり、被保護世帯の代 表的(平均的)世帯構成ではない。
率の導入により生活扶助基準額が減少し、非課税限度額が改定されなくても、非課税限度額と 生活扶助基準額の較差は縮小し、平成21年度以降、非課税限度額が生活扶助基準額を上回っ ている。
また、昭和53 年度から58 年度まで較差率が低下しており、生活扶助基準額との較差が縮 小している。ただし、単身者の非課税限度額は、所得税のかからない給与収入の限度額や老年 者や障害者等の社会的な弱者に対しては人的非課税措置が講じられていること等が勘案され ることや生活扶助基準額において少人数世帯の改定率が高くなっていることもあり、平成8年 度から非課税限度額が生活扶助基準額を下回っている。
図 6.3 世帯類型別均等割の非課税限度額と生活扶助基準額の較差率の推移
(注)生活保護の基準の級地区分1級地の場合を示している。
標準世帯とは、非課税限度額の算定を行うために想定された世帯のことである。
較差率は、0を超えると非課税限度額が生活扶助基準額を上回る状態、0未満では非課税限度額が生活扶助基準額を 下回る状態を示している。
(資料)非課税限度額は表6.1、生活扶助基準額は『生活保護手帳』(中央法規出版)より算出し作成。