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戦後の社会保障制度の整備期における国と地方の財政関係

ドキュメント内 社会保障に関わる地方財政の制度分析 (ページ 41-44)

第 3 章 日本の地方財政制度と所得再分配機能の展開

3. 戦後の社会保障制度の整備期における国と地方の財政関係

実施の責任と経費の負担とを地方公共団体に統一的に帰属させて、責任の明確化を図り、住民 の地方行政に対する関心を高め、もって地方行政の自主的な運営を確保するという考え方に基 づくものとされており、国と地方の負担区分は、国や地方自治体の受ける利害の強弱の度合い には関係がなく、実際にサービスを提供する機関がその経費を負担するとされた10

なお、先に述べた地方財政平衡交付金制度は、地域間の税収の偏在を調整し、いずれの地方 自治体においても一定の行政水準が確保できるよう、中央政府による地方政府に対する財源保 障機能と地方政府間の財政力格差是正を同時に達成しようとするものであり、シャウプ勧告の 内容に沿うものであった。

このように、戦後、占領下でのシャウプ勧告やそれを受けた神戸勧告に基づき構想され、一 部実現された日本の国と地方の財政関係は、行政責任明確化の原則により、社会福祉に関連す る事項「民生行政」は、市町村優先主義に基づき地方自治体に対する国の行政的な関与は限定 なものとした。財源に関しては、基本的には税源分離の原則に基づくが、市町村優先主義によ り市町村の財源確保の観点から、所得課税が国と重複している。

この時期の国と地方の財政関係について財政連邦主義の類型でみると、行政責任明確化の原 則や税源分離の原則に基づいたマスグレイブ型の財政連邦主義と所得再分配機能において市 町村優先主義とする北欧型の財政連邦主義の混合型であるといえる。

する経費について、昭和 23年制定の地方財政法第10 条の「国と地方公共団体相互の利害に 関係のある事務」に列挙されており、国の負担である生活保護費負担金がシャウプ勧告による 国庫補助負担金の整理で議論となったが、そのまま存続された13

また、日本国憲法第25条において、国民の生存権を保障した上で、「国は、すべての生活部 面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と規 定している。それを受け、昭和 22 年に児童福祉法が制定(翌年施行)された。児童福祉法は、

戦前の少年教護法と児童虐待防止法、母子保護法の一部を吸収統合し、要保護児童のみではな く、次代の日本を担う児童すべての健全育成をも目的とした。また、昭和24年には、多数の 傷痍軍人に対し、生活保護法の救済では対応できない援助を行うことを目的として身体障害者 福祉法が制定された。なお、生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法は、福祉三法と呼ば れている。

その後、昭和25年 10月に社会保障制度審議会が行った「社会保障制度に関する勧告」に おいて、戦後の日本の社会保障制度の整備の方向が示された14。この勧告では、社会保障は、

社会保険を中心に、国家扶助、公衆衛生及び医療、社会福祉の4部門により構成されることを 示した。また、社会福祉を社会保障の一部門として位置づけ、国家扶助を社会福祉とは別の部 門として位置づける一方で、国家扶助の適用を受ける者への援護育成は社会福祉に含まれると した。また、国が社会保障制度に対する総合的な企画を立て、国みずからの責任において、制 度の実施に当たることが原則として示された。

この社会保障制度審議会による勧告と2節で述べた神戸勧告(第一次勧告)の二つの勧告は、

同年に行われ、両者とも戦後の新憲法に則ったものであったが、対照的な内容であった。地方 行政調査委員会議による勧告は、当時の社会政治情勢の変化において戦前からの制度を変更す るのが難しく、結局は既得の権限に固執する国の各省庁の抵抗に合い、その内容のほとんどが 実現されなかった。それに伴い、シャウプ勧告の国庫補助負担金の整理も徹底されず、シャウ プ勧告によって批判された国と地方の負担区分の原則にかかる規定も不十分なものとなった。

2節で述べたとおり、昭和27 年に改正された地方財政法において、実際にサービスを提供 する機関がその経費を負担することを原則としたが(第 9 条)、この原則に対して四つの例外 規定がなされており、地方自治体が実施する事業のうち、国がその全部または一部を負担する

13 昭和21年制定の生活保護法(旧法)において、生活保護行政に関する国の負担割合は10分の8となった。

立法過程で、生活保護を国の責任で機関委任事務として行う以上、全額国庫負担で行うべきであるという意見 が厚生省社会局内にあったが、生活保護世帯を安易に認定するなど濫給を防止するために、一部地方負担を決 めたという経緯がある(厚生省社会局保護課編 1981289頁を参照)。

14 社会保障制度審議会「社会保障制度に関する勧告」(昭和251016日)。

ものが規定された15。(1)第10 条で、法令に基づいて実施しなければならない事務であって、

国と地方公共団体相互の利害に関係のある事務のうち、なお国が進んで経費を負担する必要が あるものに要する経費(負担金)、(2)第10 条の2で、国民経済に適合するように総合的に樹 立された計画に従って実施しなければならない法律又は政令で定める土木その他の建設事業 に要する経費(負担金)、(3)第10 条の3で、法律又は政令で定める災害にかかる事務で、地 方税又は地方交付税によってはその財政需要に適合した財源を得ることが困難なものに要す る経費(負担金)、(4)もっぱら国の利害に関係のある事務に要する経費(委託金)、である。シ ャウプ勧告に基づき、一般行政経費にかかる負担金、公共事業にかかる負担金、災害復旧事業 にかかる負担金に区分され、国庫負担の根拠として国と地方の相互の利害関係があることが示 された。しかし、これらに規定される経費の種目、算定基準及び国と地方公共団体とが負担す べき割合は、法律又は政令で定めるとし、個々の機関との折衝で決定し、個別法で規定される こととなった16

税源配分については、税源分離主義を転換し、税源重複を前提に地方税の再編が行われた。

昭和26年度の税制改正において、市町村民税法人税割が設けられ、法人所得を国と市町村が 財源を共有することとなった。昭和29年度の税制改正において、市町村民税の一部を移譲し た道府県民税の創設が行われた。都道府県民税の復活は、事業税を基幹税、入場税と遊興飲食 税を補完税とする都道府県税の体系のもとで生じていた税源偏在問題に対処するためであっ た。また、付加価値税に代わる事業税の復活に加え、都道府県たばこ消費税、市町村たばこ消 費税が新設され、都道府県と市町村の間でも税源が共有された。所得課税については、国税、

道府県税、市町村税の三段階で行われることとなった。税率については国会の決定事項となり、

地方自治体は事実上決定権をもてなかった。このように、税収確保という現実の要請に応える ために税源分離の原則から乖離するかたちとなり、その結果、独立した税源をもつものは市町 村の固定資産税だけであり、市町村民税、府県民税、事業税はいずれも税源を国税と共有する こととなり、税源の共有だけでなく、課税標準そのものが国税に依存することとなる。そして、

現在の地方税体系が形成された。

また、昭和29年度に地方譲与税制度が設けられた。この制度は、本来地方に帰属すべき税 源を形式上、一旦国税として徴収し、地方に対し一定の基準に従って配分する仕組みである。

一般的には、地方自治体間の合理的な税源配分や財源調整を図る必要性をも考慮して設けら

15 これらの規定は現在も維持されている。

16 このほかに、第16条に、国はその施策を行うため特別の必要があると認めるとき、または地方公共団体の 財政上特別の必要があると認めるときに限り、国が補助金を交付することができるとされた。

れ、一律に客観的基準によって配分される。それまで府県税であった入場税が都道府県に入場 譲与税として譲与され17、また、揮発油税が都道府県に揮発油譲与税として譲与された18

一方、地方財政平衡交付金制度は、平衡交付金の総額を決定する場合に、財源不足額を積み 上げ、必要な財源の絶対額を確保することが実際上は困難であったため、昭和29年度から地 方交付税制度に改組され、地方財政計画の策定を通じて総額の財源不足額を推計する方法をと ることになった。発足当時の地方交付税原資と法定率は、所得税と法人税のそれぞれ19.874%、

酒税の20%であった。

このように、社会保障分野、特に社会福祉行政に関しては、国と地方が分担し「共同」で担 当している「縦割型」の事務配分が定着した時期であり19、いわゆる「機関委任事務」という 制度的手法により、中央集権的に全国画一的に拡大し展開していくこととなった。その財源は、

国庫補助負担金、地方譲与税、地方交付税、地方税のいずれかを通じて国が財政措置を行うこ とで賄われることとなった。その結果、税源の共有が多くなり、地方財源の拡充は、国の税体 系や財政力、国の施策の優先順位に大きく依存することになった。

この時期の国と地方の財政関係を所得再分配機能の観点からみると、第 2 章で述べたマス グレイブのいう価値財に対する見解と類似しているといえる。しかし、日本の場合は、国によ る特定補助金だけでなく、国庫補助事業については、国負担に加え、地方負担分は地方交付税 による財源措置がなされる。地方の単独事業の財源については、主に、地方税と地方の固有財 源としての地方交付税とを合わせて一般財源として地方財政計画を通じて確保していく。した がって、地方の自主性は低く、歳出と歳入の決定権限は中央集権となり、財政移転を基本とす る日本型の財政連邦主義が形成された。

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