第 5 章 市町村国保の運営の限界に関する実証的分析
3. 市町村国保の財政運営の検証
3.3. 保険料の収納
図 5.13 一世帯当たり保険料調定額・収納率・軽減世帯比率の推移
(注)収納率は、現年分の保険料収納額を保険料調定額で除して算出している。保険料調定額は居所不明者 分調定額を控除した調定額を用いて算出している。平成18年度から19年度の調定額は、介護納付 金分を含む。平成20年度以降の調定額は、介護納付金分および後期高齢者支援金分を含む。
市町村における被保険者数は3-2月の年度平均を用いて計算しており、平成19年度以前は老人医療 受給対象者を含む。
(資料)厚生労働省『国民健康保険事業年報』平成22年度、厚生労働省『国民健康保険実態調査』平成 22年度より作成。
収納率について、再差引収支の黒字団体と赤字団体を区分別にみると、黒字団体、赤字団体
とも90%を上回り95%以下である団体が最も多く、黒字団体では51.0%、赤字団体では44.3%
である(図5.14)。100%である団体は、黒字団体では1.3%(13団体)、赤字団体では0.3%(2団 体)である。黒字団体と赤字団体の収納率の差をみると団体間で差があることが分かる。全体 として、黒字団体に比べ赤字団体は収納率が低い団体が多い。
図 5.14 再差引収支区分別収納率(平成21年度)
(注)収納率は、現年分の保険料収納額を保険料調定額で除して算出している。保険料調定額は居所不明者分調定額を控除 した調定額を用いて算出している。
黒字団体と赤字団体の保険料の差はウィルコクソンの順位和検定のZ値であり、*は有意水準5%で有意であること を示す。
棒グラフ中の数値は、各団体の構成割合である。
(資料)図5.8と同じ。
2節で述べたとおり、市町村の保険料収納率が一定割合を下回る場合に、普通調整交付金が
黒字 赤字 全 体
団 体 数 1018 700 1718 平 均 値 92.2% 90.6% 91.6%
中 央 値 92.6% 90.9% 92.0%
最 小 値 78.0% 77.2% 77.2%
最 大 値 100.0% 100.0% 100.0%
黒字団体と赤字団 体の収納率の差
-8.013*
被保険者の規模ごとに 5%から 20%(7 段階)の範囲で減額されることとなっている5。普通調 整交付金の減額対象となる保険料収納率の基準は、被保険者1万人未満では93%未満、1万人 以上5万人未満では92%未満、5万人以上10万人未満では91%、10万人以上90%未満であ る。以下は、収納率の基準未満はこの数値を下回る収納率が低い団体のケース、基準以上はこ の数値以上の収納率が高い団体ケースに区分して分析を行う。
まず、収納率と再差引収支の関係をみる(図5.15)。収納率を区分別でみると、収納率が低い 基準未満の団体が 942 団体あり、全団体の 54.8%を占めている。特に、基準未満の団体にお
いて 47.1%にあたる 444 団体で再差引収支が赤字であり、収納率が高い基準以上の団体でも
33.0%にあたる 256 団体で再差引収支が赤字であり、国保財政の運営が厳しいことがうかが
われる。収納率の低い基準未満の団体と収納率の高い基準以上の団体の再差引収支の差をみる と、団体間で差があることが分かる。全体として、基準未満の団体は基準以上の団体に比べ赤 字団体が多い。
図 5.15 収納率と再差引収支の関係(平成21年度)
(注)収納率は、現年分の保険料収納額を保険料調定額で除して算出している。保険料調定額は居所不明者分調定額を控除 した調定額を用いて算出している。
収納率の基準は普通調整交付金の減額対象となる保険料収納率の基準のことであり、被保険者1万人未満では93%
未満、1万人以上5万人未満では92%未満、5万人以上10万人未満では91%、10万人以上90%未満である。
棒グラフ中の数値は、各団体の構成割合である。
(資料)図5.8と同じ。
続いて、収納率と保険料の滞納の関係をみる。保険料の滞納に対する措置で、被保険者資格 証明書(以下「資格証明書」という)が災害などの特別の事情がないのに、納期限から1年以上 保険料を滞納している世帯に交付される。こうした世帯の人が医療機関にかかる場合、窓口で いったん医療費の全額を支払う必要がある6。ここでは、資格証明書の発行世帯の有無と収納
5 普通調整交付金とは、定率の国庫負担のみでは解消できない、市町村の産業構造、住民所得、家族構成等の 差異による市町村間の財政力の不均衡を調整するための交付金である。普通調整交付金は、政令が定めるとこ ろによる画一的な算定方法によって算定され、交付される。
6 被保険者資格証明書は、保険医療機関等での療養の給付が行われず、世帯主の申請により事後的に特別療養 費として給付を行われることとなり、被保険者証が有する二つの性格、①被保険者であることを示す証明書、
黒 字 赤 字 全 体
基 準 未 満 498 444 942
基 準 以 上 520 256 776
全 体 1018 700 1718
収 納 率
団体数
Pearson X2 = 35.2565*
再差引収支
率の関係をみる。
資格証明書を発行している団体は、1,218団体であり、全団体の70.9%を占めている。収納 率が低い基準未満の団体で資格証明書を発行している団体は761団体あり、81.1%を占めてお り、ほとんどの団体で保険料の滞納に対する措置が実施されている(図5.16)。また、収納率が 高い基準以上の団体でも58.5%にあたる454団体が資格証明書を発行している。収納率の低 い基準未満の団体は、基準以上の団体に比べ資格証明書を発行している団体が多いことが分か る。収納率の低い基準未満の団体と収納率の高い基準以上の団体の資格証明書発行の差をみる と、団体間で差があることが分かる。全体として、基準未満の団体は基準以上の団体に比べ資 格証明書を発行する団体が多い。厚生労働省の調査によると、被保険者資格証明書交付世帯に おける保険料の納付状況は低く、平成20年度では8.86%から平成21年度には7.14%に低下 している7。収納率の低い基準以下の団体で資格証明書を交付している団体が多いことから、
収納率の向上は難しい状況であるといえる。
収納率の向上に対し、口座振替の促進、定期的な支払の催告、保険料が納付できない事情等 について調査等、各団体で努力しているが、低所得者の保険料の負担が重く収納率を上げるこ とが難しい状況である。なお、保険料を支払うことができない特別の事情がないにもかかわら ず滞納する世帯については適切に滞納処分を行って収納率の向上を図ることができる。
図 5.16 収納率と被保険者資格証明書発行世帯の関係(平成21年度)
(注)収納率は、現年分の保険料収納額を保険料調定額で除して算出している。保険料調定額は居所不明者分調定額を控除 した調定額を用いて算出している。
収納率の基準は普通調整交付金の減額対象となる保険料収納率の基準のことであり、一般被保険者 1 万人未満では 93%未満、1万人以上5万人未満では92%未満、5万人以上10万人未満では91%、10万人以上90%未満である。
X2の値の*は有意水準5%で有意であることを示す。
棒グラフ中の数値は、各団体の構成割合である。
②被保険者が療養の給付等を受けることができる受診券、のうち、①のみの性格のみを有し、受診券としての 性格は有していない。
7 厚生労働省保険局国民健康保険課「被保険者資格証明書交付世帯における保険料(税)の納付状況サンプル調 査結果」(平成21年12月21日)。
あ り な し 全 体
基 準 未 満 764 178 942
基 準 以 上 454 322 776
全 体 1218 500 1718
Pearson X2 = 105.3155*
被保険者資格証明書交付世帯
収 納 率
団体数
(資料)厚生労働省『国民健康保険事業年報』平成21年度、厚生労働省保険局国民健康保険課「資格証明書世帯に属する 中学生以下の子どもに対する短期被保険者証の交付状況及び資格証明書世帯に属する高校生等の人数に関する調 査(平成21年9月時点)の結果について」(平成21年12月16日)の添付1のデータにより作成。