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個人住民税の非課税限度額制度の創設・改正の経緯

ドキュメント内 社会保障に関わる地方財政の制度分析 (ページ 114-119)

第 6 章 個人住民税の非課税限度額に関する考察

3. 個人住民税の非課税限度額制度の創設・改正の経緯

(世帯人員別世帯単位の経費、11月から 3月の間は地区別冬季加算を合わせて計上)、年末年 始の特別需要への対応のための期末一時扶助費(12 月支給、世帯構成員人数分)の合計額であ る。教育扶助は、義務教育に伴う費用を対象とする給付であり、算定には一般基準の基準額と 学習支援費を用いる。住宅扶助は、家賃、住宅維持費等を対象とする給付であり、算定には家 賃等の一般基準額を用いる14

地区分に関係なく「生活保護法の扶助額」から同額の40万円を一律に控除することとしたの は、均等割のみを課すべき者についての措置であること等から、主として給与所得者を基準に 収入ベースの金額を所得ベースの金額に換算するため、経費相当分を考慮したことによる。な お、「条例で定める一定金額」は、当該市町村の生活保護の基準の級地区分に応じて前年の生 活扶助等の金額を算定し、昭和51年度においては、1級地15万円、2級地13万円、3級地 11万円、4級地9万円とした(表6.1「均等割S51年度」参照)。この級地区分は前年の12月 31日現在の地域の級地区分によるものとされた18

昭和53年度には、基本的な仕組みは継承しつつ、「条例で定める一定金額」の算定に当たり 参酌すべき額の算出方法が改正された。「生活保護法の扶助額」から同額 40 万円の一律控除 が地域間の均衡を図る上で不十分とされたため、「前年の12月31日における生活保護の基準 における地域の級地区分ごとに自治省令で定める率で、市町村が該当した地域の級地区分に係 るものを乗じて得た金額を参酌して定めることとされた。具体的には、昭和52年の生活保護 の基準の級地区分ごとの生活保護法の扶助額の較差に応じて、1級地1.0、2級地0.9、3級地 0.8、4級地0.7とされた19

その後は、表6.1の均等割の算式の推移で示すとおり、平成14年度までは非課税限度額が 引き上げられた。非課税限度額は、均等割のみの納税義務者の税負担の実情、生活保護法によ る扶助額の引上げを勘案し、また、昭和56年度に所得割の非課税限度額が創設されてからは 所得割の非課税限度額の見直しも勘案して、1級地における前年の生活扶助基準額を上回るよ うに設定された。なお、昭和59年度には、非課税基準に該当するかどうかの判定を「所得の 金額」から「合計所得金額」により行うよう改正された。これは、課税技術上の理由からくる 捕捉の難易による実質上の不公平を避け、課税事務の合理化を図りつつ、かつ納税者にとって も有利な結果とするためであった20

平成3年度には、表6.1「均等割H3年度」で示すとおり、控除対象配偶者又は扶養親族を 有する場合には平成2年度の基本額34万円に4万円を加算した金額とすることとした。基本 額を据え置いたのは、単身者の給与所得者の場合、平成2年度において給与収入ベースで99 万円であり、所得税が課税されない給与収入の限度額が 100 万円であることや、老年者や障 害者、寡婦等の社会的な弱者に対しては非課税措置が別途講じられていること等を勘案する と、単身者の非課税限度額はすでに相応の水準にあると考えられ、控除対象配偶者又は扶養親

18 前掲書、223-24頁。

19 地方財務協会編『改正地方税制詳解』昭和53年版、244-46頁。

20 地方財務協会編『改正地方税制詳解』昭和59年版、144、146頁。

族を有する低所得世帯について特に配慮したものである。なお、加算額についても基本額と同 様、生活保護の基準の級地区分に応じた率を乗じている21

平成16年度において、初めて非課税限度額が引き下げられた(表6.1「均等割H16年度」

参照)。それは、平成13年度、平成14年度に、生活保護の基準が国民消費動向や社会経済情 勢を総合的に勘案して据え置かれ、平成15年度には国民の消費支出や物価の下落により引き 下げられたことによる。これに伴い、平成16年度の生活扶助基準額は引下げとなり、非課税 限度額は見直され、加算額が24万円から22万円に引き下げられた22。平成18年度の非課税 限度額は、平成17年4月の生活扶助第2類費の引下げ、また、生活扶助第1類費の4人世帯 以上の算定に乗じる逓減率の導入により生活扶助基準額が引下げとなったことを踏まえ、表

6.1「均等割H18年度」に示すとおり、加算額が22万円から21万円に引き下げられた23。そ

の後、生活保護の基準は平成25年7月まで据え置かれ、従って、生活扶助基準額は変更され ず、非課税限度額は据え置かれている。

3.2. 個人住民税所得割における非課税限度額制度の創設・改正の経緯

所得割の非課税限度額制度は、昭和56年度に創設されたが、それは、課税最低限と生活保 護基準等の国民生活水準との関係をめぐる問題に対する臨時的、例外的措置であった。

所得割の課税最低限に関し、過去の政府税制調査会答申では、所得税の課税最低限と関連し て最低生計費は歴史的、社会的環境に支配される相対的なものであり、確定的な数字を挙げる ことができないとの見解を示している。一方、生活保護の基準は、生活保護法によって最低限 度の生活を満たすものであって、かつこれを超えないと定められているのであるから、現実の 生活保護の基準はそのような法律の要請を満たしていると認識できる。課税最低限と生活保護 基準との関連については、租税制度と社会保障制度の双方にわたる問題として多くの論議があ り、課税最低限が最低生計費を絶対に下回ってはならないとは言い切れないとの見解もある。

しかし、常識論としては、生活保護基準程度の収入を得ている者に対してその所得に課税する のは適当ではないといえる24

所得割の課税最低限についても、所得税と同様、従来少なくとも最低生計費には課税しない という観点に立ちながら、その時々の国民生活水準、住民税の納税義務者数の推移、地方財政

21 地方財務協会編『改正地方税制詳解』平成3年版、226-27頁。

22 地方財務協会編『改正地方税制詳解』平成16年版、313-14頁参照。

23 地方財務協会編『改正地方税制詳解』平成18年版、333-35頁参照。

24 地方財務協会編『改正地方税制詳解』昭和56年版、137-39頁。

の状況等を総合的に勘案して、その額を定めてきた経緯がある25。そのような点をも考慮し、

政府税制調査会の昭和 56 年度の税制改正に関する答申は、「現下の厳しい地方財政の状況に かんがみ、課税最低限の引上げ等大幅な減収につながる措置を講ずることは極めて困難である と考えられる。しかしながら、国民生活水準等との関連で特に低所得者層の税負担について配 慮を加える必要があると認められることから、一定の所得金額以下の者については住民税所得 割を課さないこととする措置を講ずることもやむを得ない」とされた。それを踏まえ、すべて の納税者にとって共通の非課税部分である基礎控除等の所得控除の引上げによって課税最低 限が引き上げられることを避け、国民生活水準等の関連で特に低所得者層の税負担について配 慮をするため、また、低所得者層のみを対象として減税を行えば減収額も少なくすむため、昭 和56年度限りの措置として、一定の所得金額以下について非課税措置を講ずることとした26。 なお、昭和57年度以降の非課税措置について、「国民生活水準の推移等を勘案して、引き続き 検討する必要がある」との答申がなされた。

昭和56年度の非課税措置は、表6.1「所得割S56年度」で示すとおり、所得の金額が27万 円に本人、配偶者及び扶養親族の合計額を乗じて得た金額以下である者に対し、所得割を課税 しないこととしている27。非課税の基準を 27 万円に家族数を乗じたものとしているのは、① 所得割の課税されない収入金額の水準である非課税限度額が典型的な世帯類型の生活保護基 準額を上回る水準になるようにすること28、②非課税の基準は各人の担税力の程度を示すとみ られる所得のレベルで捉えること、③簡明な基準とすること、に配慮したものである29

非課税措置は、所得を基準として一定の所得金額以下の者を非課税としており、かつその金 額が課税最低限に見合う所得金額より高く定められているので、非課税基準の金額を若干上回 る所得を有する者については、その所得割控除後の所得の金額が非課税基準の金額を下回ると いうことが起こる。制度を複雑にすることなく簡易な方法によって逆転現象の解消を図るた め、所得の金額から所得割の金額を控除した残額が非課税基準の金額を下回る場合には、その 下回る金額を所得割の金額から控除することとした30。なお、非課税の水準は、課税最低限と

25 前掲書、228頁。

26 前掲書、133 頁参照。当時、課税最低限について生活保護基準額を上回る水準にまで引き上げるには、基 礎、配偶者、扶養の3控除それぞれ3万円の引上げが必要であり、この場合の減収額は約2千億円と見込ま れた。

27 夫婦2人の給与所得者の場合の非課税限度額は、27万円×4人の金額に給与所得控除の最低保障額を加え た額175.7万円となる。

28 生活保護基準額は、生活扶助、教育扶助、住宅扶助の合計額である。

29 前掲書、134-35頁。

30 調整額の算式は「27 万円×(本人、控除対象配偶者及び扶養親族の合計額)-(総所得金額等-算出税額)」

である。

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