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本研究の目的は、書く量と質の関連について、個別のケースの経緯を観察して、分 析することであった。また、その中で、明示的な文法訂正のフィードバックを受けた 2 例と、内容に対するコメントのみをフィードバックされた 4例の間の共通点や相違 点があるかどうか調べることであった。

包括的な印象では、6 例とも、ライティング練習初期のものより、練習後期の方が 上達したと言える。では、上達するとは、何が伸びることなのか。生徒1の初回の作 品と最後の作品は、トピックセンテンス、トピックを支える3つの理由、結論、とい う同じ構成でありながら、最後の作品の方が上達したとの印象を受けた。2 つの作品 を比べると、最後に書かれた方の作品の総使用語数が多く、1 文あたりの語数も増え た。詳しい説明をしようとすれば、文章は長くなり、表したい内容をよりはっきり伝 えることが可能になる。使用語数の増加を調べることが、流暢さを知る手段になり得

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る(Fraser, 2014)というのは、使用語数から書くスピードを計測できるからであるが、

同時に、1 つのトピックについて書かれている場合は、使用単語数の多い方が、内容 的にもより詳しく説明がなされていると推測でき、読み手に、書き手の意図する情報 が伝わりやすくなる可能性が増す。他の作品と比べて、より詳しい説明が、より読み やすく書かれているときに、読み手は上達したという印象を持つのではないだろうか。

生徒1から6の英文は、使用語数を増やすことを目的とはしていなかったが、結果 として、より多くの単語を用い、より長い文章を書こうとする傾向が見られた。また、

後置修飾を用いて、文構造においてもより複雑なものが使われるようになっていた。

総使用単語数、使用異語数、1 文あたりに使用する単語数など流暢さの指標となる部 分の伸びが見られたと同時に、文章の構成・展開に工夫が起こり、文法の間違いの減 少が起こった。これらは、間違い訂正のフィードバックを行った2名、行わなかった 4 名に共通した特徴であった。このことから、使用単語数の伸びに、フィードバック の種類の違いが果たす役割は小さいと考えられる。

語彙の伸びに関して、生徒2はunknownに分類される語、レベル1に分類される語 がともに減少し、レベル2以上の語彙を使う割合が増えたことが確認されたが、他の 5 人の生徒では、unknownに分類されていた語の割合が減ったが、同時にレベル 1の 使用率も減ったという生徒は見られなかったため、語彙の伸びは限定的で、スペリン グの間違いや、日本語をそのまま使った判別不能の語彙が減ったにとどまったと判断 できる。受容語彙を産出語彙にするためにはアウトプットの練習が必要である。生徒 2 のように、積極的に知っている語を使い、間違い、訂正されるというインターアク ティブが起こることが望ましいが、そうでなくてもある程度の成果を期待することは できるだろう。

名詞の後置修飾は、フィードバックの種類にかかわらず、6名中、4名の生徒で使用 が増える傾向を示した。作品によっては後置修飾の使用が全くないもの(生徒1では

作品3, 4, 8, 11、生徒2では作品5)も見られ、表7-25で表した、生徒3から生徒6の

課題ごとに使われた後置修飾の数からも、課題により、後置修飾を使いにくいものが あることが示された。こうしたトピックによる違いも考慮する必要はあるが、後置修 飾を用いるということは、より複雑な文構造を扱えるようになったということであり、

より丁寧に説明がされ、内容が伝わりやすくなるということであろう。後置修飾の種 類と使用回数は、作品の質、及び読みやすさという観点からの流暢さを判断する際に、

一つの指標となり得る可能性があると考えられる。

後置修飾では、生徒6名とも前置詞句によるもの、関係詞によるものの使用頻度が 高かった。生徒 2は同格の使用も多かった。6 名とも、分詞、不定詞による後置修飾 はそれらに比べて使用が少なかった。分詞による修飾は、中学校で関係代名詞より先 に学習し、関係代名詞を使った文との書き換えを練習することも多い。例えば生徒 5 の作品12で使われたthe spikes she bought for the last meet は the spikes bought by her for

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the last meet と表現することもできるだろうが、そうしなかったのは日本語の「母が 買ったスパイクシューズ」という語順に影響を受けて英語の表現を選んだのか、分詞 を使った後置修飾を練習する機会が少なかったためか、何か他に理由があるのか疑問 が残った。この観点からの分析でも、生徒 1、生徒2の変化と、生徒3から生徒4の 平均値による変化の間に、フィードバックの種類による差は見られなかった。ただし、

生徒3から生徒4を個別に分析すると、練習回数が増すにつれ、後置修飾の使用が減 った生徒もいた。更に個別の分析が必要であると考える。

文法に関しては、誤りと、既に知識となっている文法事項をどのように使ったかに 注目した。ケースとして検討した6人の生徒は、最初から意図する意味を伝える最小 限の力はあり、生徒1の、作品5中の1文にカンマが抜けていたことによる意味の混 乱と(([In] contrast, [to prepare] for life by being competitive[,] if you think learning to be competitive is good, you must do your work for yourself.)、生徒 3 の最後の作品での S+V+O+Cの語順のミス以外( It's necessary to know ②[right] ①[how to use the internet].)、 意味を損なうような大きな間違いはなかった

生徒 1、生徒2は明示的な間違い訂正のフィードバックにより、指摘された内容を 復習し、自分の意図する意見を述べるためにはどうすればいいのかを効率よく短期間 で知ることができた。例えば、生徒1の作品4に見られたBecauseを従属接続詞とし て使っていない誤りは、指摘後はIt’s because~の形として、直ぐに使うことができた。

また、生徒2は、図表を解説するための表現をほぼ正確に身に付けた。しかし、名詞 の種類による単数・複数の扱い方や前置詞については間違いが残り、間違い訂正のフ ィードバックを受けても解決しない問題もあった。一方、内容に対するコメントフィ ードバックを受けただけの生徒3、生徒5 も、それぞれの最後の作品で関係詞や使役 動詞を正しく使い、間違い訂正のフィードバックを受けなくても、文法が正しく使え るようになった。

フィードバックの差について考えると、訂正のフィードバックには、モティベーシ ョンが高く、どのような種類の文章が期待されているかはっきりしている生徒には即 効性の効果があった。一方、文法を身に付け発信できるようにするという一般的な目 的に対しては、内容に対するコメントフィードバックだけでも、生徒の文構造の複雑 さは増し、誤りは減少し、ある程度の達成が可能であった。5章で、10-minute writing の練習をした生徒のグループが文法点を伸ばしたことから、『生徒は継続したライティ ング活動を行うことで、既知の文法を生かす機会を得て、知識が強化されるのではな いか』と推測したが、今回のケース・スタディでも、同様の事が考えられる。今後、

この部分に焦点を絞った検証は必要だが、間違い訂正のフィードバックは教師側の大 きな負担になるため、個別指導に入る前に、生徒に英文を書くことに充分慣れさせて おくことが重要なのではないだろうか。

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