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実験前に、2 年次の「英語Ⅱ」の後期定期考査の平均点を用い、両グループの差は、
効果量は小であり、有意差はないことを確認したが、3 年次の「ライティング」の学 年末考査では、グループAの平均点は52.37、グループ Bの平均点は39.28で、両グ ループ間の効果量は中(r = .408、p = .013)となった。この学年末考査には、ライテ ィング・テストとして用いた英作文が10点分含まれているが、実際の学年末考査では、
授業を担当する日本人教員2名によって、ライティング力の調査とは別に採点された。
採点基準は、それまでの「ライティング」の定期考査と同様、生徒の書いた分量と、
内容の一貫性に応じて決められた。英作文を除く残りの90点分は、教科書中の例文、
練習問題、補助プリントから、整序作文、穴埋め作文、和文英訳の形式で出題された。
Extensive writingに取り組む以前から、グループAの方がグループBよりも考査平均
点は高かったが、学年末考査でも同じ傾向が見られた。ただし、学年末考査では、両 グループの差は有意であり(p =.013)、効果量も小(r =.213)から中(r =.408)へと変 化した。
表4-12 「ライティング」学年末考査成績
group n 平均 SD 平均ランク 順位和
Score A 19 52.37 17.58 23.26 442.00
B 18 39.28 13.27 14.47 260.50
合計 37 46.00
表4-13 学年末考査成績の検定統計量 score
Mann-WhitneyのU 89.500
WilcoxonのW 260.500
Z 2.478
漸近有意確率(両側) .013*
r =.408 効果量 中
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グループAの成績がグループBよりも良くて当然である。しかし、ライティング問題 以外の残りの問題を含めて、学年末定期考査全体の平均点を比較してみても、グルー プAの成績の方が高く、実験前に見られなかったグループ間の統計的有意差が実験後 には生じ、効果量の大きさも小から中へと変化した。グループBが事前指導として小 テストを受けたのは、学年末考査の大部分を占めた文法の問題であったことを考え合 わせると、グループ A の書く力は、文法を含めて総合的に伸びたと言えよう。また、
この実践で、グループAの書いた10-minute writingのトピックのほとんどは、意見文 ではなかったが、学年末考査でのライティング問題は、意見文を書かせるものであっ た。それにもかかわらず、学年末考査の意見文の問題で、ALTの評価は、グループA がグループBよりも統計的有意差をもって高かった。これらのことから、仮説(1)「自 由作文の形態の一つである10-minute writingをextensive writingとして用いることで、
学習者の総合的な書く能力は向上する。」は肯定されたと考える。
ライティング・テストにおいては、評価者4名がそれぞれ独自に採点したにもかか わらず、全員がグループ Aのほうに高い得点をつけたということには注目できる。評 価者1は実験校のALTであった。評価者2は英語教育推進校に勤務し、評価者3は低 学力生徒が多く在籍する学校に勤務していた。評価者4は国立大学で日本人大学生に アカデミックライティングを教えた経験を持っていた。いずれの評価者も、総合的な 判断として、英文をより多く書いたグループAの作品の方を高く評価した。この事実 は、総合的評価においては事前の打ち合わせが必要である(水本, 2008; 山西, 2004;
Leki, 1995)、また、客観的であるはずの分析的評価に於いても事前打ち合わせが大き
く客観性に関わる(Kondo-Brown, 2002)という先行研究を否定するものではなく、高 等学校のALTとしての、あるいは大学生に英語を教えた経験から、日本の高校生に期 待される英語能力や、達成目標があらかじめ評価者の中で共有されていたことを示し ていると考えられる。打ち合わせ無しで、評価者間の信頼係数が高かったのも、そう した背景に基づくものであろう。
このように、ライティング内容の評価では、グループAとグループBには差が出た が、仮に、学年末考査の問題 “What do you think about this idea? ‘School should have classes on Saturdays too’. Answer in English.”が、日本語で、『土曜日にも授業をするこ とについてどう思うか、あなたの考えを(日本語で)書きなさい』と、問われていたら、
両グループとも、高校3年生としてある程度論理的に理由を添え、自分の考えを表すこ とはできたはずである。ライティングの実践をしなかったグループBは、理由付けでき る論理的思考力に劣っていたのではなく、英語で考えを表現する力の育成が十分でなか ったと言えるだろう。生徒が英語で書くことに慣れれば、生徒の第1言語での理由付け や論理的思考は、第2言語にも適応されるのではないか。学習初心者で、語彙や文法に 制限があるとしても、高校生としての年齢に応じた内容の題材を使うことで、第1言
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語の習得と、第2言語の学習の特徴を踏まえた効率的な学習が可能になるのではない かと考える。グループAが総合評価でグループBを上回ったのは、実際に文章を書く というトップダウン型の練習を加えたことで、語彙や、1 文単位で文法を練習するボ トムアップ型の練習だけを行うことより効果が高かったと思われる。技能を伸ばすた めには、より直接的な、実践的な方法での練習も必要であり、extensive writingは、教 科書での文法練習に加えて行う必要のある、実践的アプローチであると考える。
7.2 流暢さの伸び(仮説2について)
流暢さの指標となる、英語の総使用単語数、文数、異語数(Fraser, 2014)のいずれ においても、ポストテストでは、10-minute writingにより訓練を受けたグループAの スコアが高く、グループBとの差は、それぞれの項目で統計的有意差があった。効果 量も中から大であったので、仮説(2)「第1言語で流暢に書くためのアプローチであっ
た10-minute writingが、初級から中級の外国語の訓練としても効果がある。」は肯定さ
れたと考える。書いた量の違いを平均で比較すると、グループ Aは1分間につき1.5 語ずつグループBより多く書き、1文につき1.4単語分ずつ長い文を書き、10分間の うちに、1.2文多い意見文を書いたことになる。これで、流暢さが伸びたと言えるかど うか解釈は分かれるだろうが、少なくとも1つの意見文を書くというタスクに対して、
10分間で約1文の差が生じた。学年末考査のライティング・テストでは、それまでの 定期考査と同様、書いた分量によって採点されることは事前に生徒に知らせてあった ため、受験した生徒は時間内に多く書くことを充分に意識していたであろう。ここで 統計的に有意な差のある結果が生じ、特に総使用単語数では効果量が大であったこと から、語彙や習得した文法に制限のある初級から中級の学習者にとっても、週に1度
の10-minute writingを継続して15回行うことは、英文を書く上での流暢さを伸ばすの
に効果があったと言える。今回用いた10-minute writingの基であるElbow(1973)の non-stop writignはFlower and Hayes(1981)のように認知プロセスを強く意識したもの ではなかったが、練習することにより、自己の持つlong-term memoryをtask environment に向かわせることは、第1言語でなくとも、また語彙力や文法力が充分でなくとも、
それぞれのレベルで起こり得ることでないのかと考えられる。
この実験では、流暢さの変化を推測するのに、事前訓練として行った15回の課題ご とに、書いた単語数がどのように変化したかについては調査していない。これは、
10-minute writingは、思ったことを英文で書く活動で、教科書との関連も考えた上でト
ピックを設定したため、難易度についての調整は行わなかったことによる。 例えば 11 回目の活動に使ったWhat would you like to be if you were reborn? というトピック は、その時に教科書で仮定法を学習していたことに基づいた課題で、6 回目の、未来 形や予定を表す表現を意識した What is your plan for this coming weekend? と比べると、
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生徒にとってはかなり難易度が高かったと思われる。そのため、途中経過の活動にお いて、総使用単語数で流暢さを推測することはできないと考えたためである。
7.3 文法
使用した文法項目において、グループ Aの平均値は4.21で、グループ Bの平均値 3.33より多かったが、効果量は小で、統計的有意差も生じなかった。しかし、正しく 使用できている項目数は、グループ Aでは平均値4.00、グループBでは2.78で、こ の差は有意であり、効果量は中であった。今回の事前指導の10-minute writingでは、
限られた文法知識や語彙を駆使して意思を通じさせることが練習の目的で、積極的に 既習の文法事項を使うという目的は2次的であり、また文法的正確さには注目しなか った。それにもかかわらず、グループAは、グループBに比べ、文法をより正確に使 用したと言える。ただし、ここでの文法使用の正誤は、その項目に限って判断したも のである。例えば、be interested in ~ingの形がとれていれば、主語とbe動詞の間に間 違いがあっても 前置詞+動名詞の項目で正解と数えた。従って、厳密には文法項目の 使用に間違いがないことが、文法的正確さと同意ではない。しかし、文法訂正のフィ ードバックを行わなくても、英文を書き慣れることで、より多くの既知の文法項目を 取り入れ、より正確に英文を綴ろうとする傾向は見て取れたと考える。
7.4 学習態度
1 年間の授業を通して観察した生徒の様子から、表現活動への意欲は高まったと判 断できる。 1回目の ’Please introduce yourself’ という課題では、「何を書いたらいい かわからない」という声が、半数近くの生徒から上がった。クラブや、自分の好きな もの、年齢、どこに住んでいるかなど、単語が分からない場合は辞書を見ていいので 10分で書くように指示をし、1分間の準備時間を与えて書かせた。
2回目、3回目の活動は、クラスの雰囲気作りも念頭に置きながら、ペア活動を取り 入れた。その後、課題によっては、もっと時間がほしいというリクエストが上がり、
最終課題のリレー物語作りでは、4 人のグループの中で、前の生徒から回ってくる話 の続きを 1 分ずつ書いていったのだが、4 種類の話が入り混じって何を書いているの かわからないと慌てながらも、それぞれのグループで活動を楽しむ様子が見られた。
最後の15回目の活動は、もう1時間リレー作文をしたいという生徒からの要望で、予 定を変更してリレー作文に取り組んだ。
その間、実際の生徒の感想として、「もう10分過ぎたん?もうちょっと続けたいわ」
「もうちょっとで終わるから延長!」「来週もやろう!」などの声があった。また、数 名の生徒が、定期考査の解答用紙に、授業者やテストに対する感想を自発的に英語で 書いてきた。この実験に参加した生徒の感想をアンケート調査していないが、生徒対