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今回の実験と分析から、次の4点が課題として残った。

(1) 今回の調査で、10-minute writingが文法に悪影響を及ぼすとは言えないことが分 かった。しかし、コミュニケーションを重視したGTEC for STUDENTSの求める文法 力と、高等学校の教室内で求められる「正確さ」が必ずしも一致しているとは言えな い。この文法点の採点が、英語ネイティブ話者によってなされたという点は考慮しな ければならない点である。日本人英語教員が「誤り」として減点する、例えば三人称・

単数・現在の sなどは、今回のコミュニケーションを主体に考える採点法では大きな 減点とはならなかったかもしれない。日本人英語教員が求める文法的正確さと、今回 の文法点は必ずしも方向性は一致しているとは言えないかもしれないため、コミュニ ケーション重視へと転換してきた英語教育において、どのように文法を捉え、その正 確さを高めていくのか、検討が必要である。現行の指導要領では、「英語に関する各科 目に共通の内容等」に「文法については,コミュニケーションを支えるものであるこ とを踏まえ,言語活動と効果的に関連付けて指導すること」とある。これは、次期の 指導要領の解説でも、「文法はコミュニケーションを支えるものであることを踏まえ、

過度に文法的な正しさのみを強調したり,用語や用法の区別などの指導が中心となっ たりしないよう配慮し,使用する場面や伝えようとする内容と関連付けて整理するな ど、実際のコミュニケーションにおいて活用できるように効果的な指導を工夫するこ と」と、明記されており、教師の側の意識変革が求められる部分である。

(2) 10-minute writing と復文練習の両方を取り入れたグループCでは文法点、総合点

ともに、4 グループの中で一番伸びが大きかった。前述の、復文練習で、文法への意 識付けがなされ、そのうえで表現活動を行ったことが効果を上げたのだ、という推論 が正しいとしたら、従来の文法中心の手法に、自由作文の練習を組み合わせると、更 に高い効果が期待できることになる。大きな変更を加えずとも、ライティング活動に 自由作文を取り入れることで生まれる総合的な効果について、更に検討の必要がある。

(3) グループCは、最初からGTEC for STUDENTSでの英語の総合点は他グループ に比べて低かった。入学時から1学期の定期考査の平均点では、どのグループにも大 きな差はなかったが、プレテストの結果を踏まえて、成績下位グループと上位グルー プに分けた分析も必要であった。

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(4) 直接的訂正か間接的訂正かの研究(Chandler, 2003; Ferris & Roberts, 2001)が進 められるなかで、フィードバックは無いよりもあるほうが効果の高いことは明らかに なってきている。一方で,フィードバックのあり方が生徒の書く方向性をコントロー ルしてしまうことも指摘されている(Zamel, 1985; Hyland, 2003)。また、フィードバッ クは学習者を主体として活用され、指導者側でその効果を期待しても限界があること も示唆されている(Kanatani.et.al, 1993)。本研究では、フィードバックは間違い訂正 をせず、中身に対してのみ短いフィードバックを行ったが、フィードバックそのもの の効果については検証していない。これは、そもそも高等学校の現場で、すべての生 徒に間違い訂正のフィードバックを行うことができないという現実問題を踏まえての 事であるが、今後、より正確な文章を目指す指導を考えたときには、コミュニケーシ ョンを重視したフィードバックで充分なのか、あるいは、間違い訂正のフィードバッ クと比べると、どこか弱い部分があるのか検討が必要である。

72 第610-minute writingの流暢さへの影響

1. はじめに

前章では、Elbow(1973)の提唱したfree writing を基に、高等学校の授業で実践可

能な10-minute writing を用いて10分間書き続ける練習を行ったグループは、英語能力

テストにおいて、総合的な書く力と文法力に伸びが見られた。このことは、高校3年 生で「ライティング」を選択科目として選んだ生徒が参加した、第4章での実験結果 と方向性を同じくするものであった。また、第4章での実験では、10-minute writing を 取り入れたグループでは、総使用単語数、1 文当たりの使用単語数、文数に伸びが見

られ、10-minute writing で、流暢さが伸びることが示唆された。本章では、前章に続

き、事前練習の内容から4つに分けたグループを使って、流暢さの伸びは高校1年生 を対象とした場合も起こり得るのか比較し考察した。

流暢さについての確たる定義はないが、一般的には言葉をよどみなく生み出すこと と解釈される。Nation(2014, p.11)は、「流暢さとは、既に知っていることを最大に利 用すること (fluency means making the best use of what is already known) 」という前提に

たち、Fillmore(1979)の「話で時間を埋める能力」という、従来、スピーキング技能

に限られることの多かった「流暢さ」の解釈を、他の技能とも関連させて、第2言語 の習得を研究していくべきだとの立場をとっている。Nation は、流暢さを他技能に関 連させる中で、流暢さとは「適切な速度で、言語を理解し、作り出す言語処理能力 (the ability to process language receptively and productively at a reasonable speed)」であると説明 し、作り出された言語の質を考慮するというよりも、量ベースとしての定義に目を向 けた。

Housen and Kuiken(2009)は、1980年代には、対立概念としてとらえられていた「正

確さ」と「流暢さ」に、の「複雑さ」の概念が加わり(Skehan, 1989; Skehan and Foster, 2008)、CAF (complexity, accuracy, fluency) が、今日、英語能力を測る原則的な3つの 要素になっていると紹介した。CAFは、パフォーマンスの根底にある、学習者の習熟 度の指標としてだけでなく、学習者の口頭および書かれたアセスメントのための要因 子として使われ、言語学習の時に進歩を測定するために使われている、第2言語習得 理論において、複雑さ、正確さ、流暢さは、どの技能においても英語の総合力を伸ば すうえで無視できない要因である。と述べている。

Fraser(2014, p.179)は、流暢さを、「伝達能力の全体的な概念の中での必須の構成

要素」と位置付け、学習者のアウトプットだけでなく、受容の面でも必要な能力であ ると指摘しライティングの流暢さはアウトプットされた量、文の長さ、考えのまと め方一貫性と適切な語彙選択を含んだ上での意味を伝える効果的表現メッセージの 伝達を邪魔しない躊躇の度合い、によって、読み手によって包括的に規定されると考 えた。それ故、流暢さは、時間のプレッシャーの下で過度の躊躇を起こさずに、伝え

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ようと意図する内容を伝達するために、適切な量をもってなされる生産物という形で 示されると定義している。また、Fraser はライティングの流暢さの指標とした、総使 用単語数、語彙、文数は、包括的な印象としての流暢さと互いに正の相関関係がある ことを示した。

以上を踏まえ、本章では、流暢さを表す指標として、総使用単語数、語彙、異語数、

文数、1文当たりに使用された単語数の平均を用いて、前章の実験参加者のGTEC for

STUDENTSと、ALTとのティーム・ティーチングで用いたライティング活動のデータ

を分析した。

2. 研究の目的

本章での研究の目的は、ライティングにおける流暢さが10-minute writingでどのよ うに変化するか分析し明らかにすることである。本研究に用いた10-minute writingは、

ライティングにおける流暢さを伸ばす練習として用いられたものを改良したものであ り、参加者には事前指導の際、10分間にできるだけ多くの英文を書くようにというタ スクが与えられた。活動直後には、実際に書いた単語数を記録させ、英文が書けるよ うになる過程を単語数によって意識させ、更に、クラスの中で何単語書けたか、尋ね ることで、多く書く意識付けを強化した。第4章の実験では、ライティングを選択し た高校3年生が実験に参加し、処置群と統制群を総使用単語数、異語数、文数で比べ た時の効果量の大きさが、それぞれ中から大程度あったことから、10-minute writing で流暢さが伸びることが示唆された。本章では、語彙の少ない高校1年生でも、同様 の結果が得られるのか、また、自由作文である10-minute writingの練習をしたグルー プと比較して、教科書の復文練習をしたグループとの間に差異はみられるのかを考察 する。近年、コミュニケーションを英語教育の中心に据える方針が強調されてきた中 で、ライティング・プロセスや、プロダクトの内容にも目が向けられるようになった が、依然として流暢さに目を向けた取り組みは、現場では「軽視」されており(鈴木, 2011)、効果的な練習方法についての研究も進んでいない。事前指導の取り組みの差を 比較することで、より実践的で効果的な指導法を創造することにつながると考えた。

3. 研究仮説

研究仮説は、

(1) 10-minute writingは復文練習に比べ単位時間に書く量は増える。

(2) 10-minute writingで語彙は伸びない。

(3) 10-minute writingは復文練習に比べ、構成・展開の力はつかない。

の3点とした。

流暢さの指標として、第4 章に用いた総使用単語数、異語数、文数、1 文当たりの