第 3 章 事例研究③:「自然エネルギー促進法」推進ネットワーク・事例研究④:容器包装
第 4 節 改正案と「容器包装リサイクル法の改正を進める全国ネットワーク」の市民案と
先述の通り、容器包装リサイクル法は、1997年に本格施行されたが、施行後10年で見直 されることが附則第3条に明記されており、循環型社会形成推進基本計画の工程表により、
2005 年から政府による評価・検討がはじまることが公表され、改正に向けての動きがみら れる。2006年の容器包装リサイクル法の改正に合わせて、2003年 10 月以降、ごみ問題の 解決を目指す市民が集い、市民サイドからの代替案を提案し市民的イニシアティブを発揮 することで、より市民の目線でみた政策の実現を目指しながら改正に関する請願署名の運 動に取り組んでいる市民活動団体として「容器包装リサイクル法の改正を求める全国ネッ トワーク」(以下、容リ法改正全国ネットと称する)9がある。
容リ法改正全国ネットは、2004年7月から、改正市民案をまとめるプロジェクトチーム を発足させて集中討議を行い、市民の賛同意見を具体的な改正案に実らせるため、プロジ ェクトチームによる検討を重ね、2004年9月には「改正市民案」(中間のまとめ)を作成し、
この中間のまとめをもとに容器包装リサイクル法に関係のある事業者団体及び学識者など と多数の意見交換会を開催する一方、容リ法改正全国ネットに参加している全国の市民活 動団体からもひろく意見を募った。容リ法改正全国ネットでは、様々な事業者団体、学識 者や有識者のステイクホルダーと集中的に意見交換を行いながら、全国の市民からも意見 を募り市民案の補強を進めた。そして、2004年12月、全国の市民及び市民団体から寄せら れた意見を取り入れつつ、市民案としてのメッセージを強め、中間のまとめを大幅に加筆 修正した「容器包装リサイクル法・改正市民案」を集大成した。2003年10月から活動を開 始した容リ法改正全国ネットは、全国の市民・市民活動団体や業界団体との意見交換など からまとめたパンフレットである「容器包装リサイクル法改正市民案―リサイクルから3R
へ!―」を2005年1月17日に発行した。
現在の容器包装リサイクル法は、リサイクルを重視した法律のためリサイクルを前提と した環境負荷の高い使い捨て容器の使用を助長し、繰り返し使うことのできるリユース容 器を駆逐してきた。こうして中間のまとめに、全国の市民や団体から寄せられた意見を盛 り込み、2004年12月に正式に「容器包装リサイクル法改正市民案」を完成させた。
改正市民案は、環境負荷の低減、負担の公平性、効率的な資源循環を目指し、(1)リサイ クル中心の現行法を見直し優先順位に則った3Rを実施すること、(2)優先順位に則りリター ナブル容器を普及すること、(3)リサイクルする容器包装の定義(対象)を見直し環境負荷の低 減を進めること、(4)費用負担の不公平を解消し循環コストの低減を図ること、(5)リサイク ルに不向きな容器包装に3R負担金を課しリユース容器の普及に充当すること、(6)統一した 排出区分にもとづいて識別表示を改善し環境メッセージの表示を制度化すること、(7)段階 的なステップアップを目指し次の見直しを5年後とすること10の7つの骨子から成り立って いる。
これまで様々な法律の市民案づくりが行われてきたが、全国の市民から幅広く意見を募 る方式をとったという意味で市民案づくりそのものが特徴的だといえる。容リ法改正全国 ネットと2006年の容器包装リサイクル法の改正に合わせた国や業界団体などの動向を、時 系列的にまとめると次のようになる(図表9)。
図表 9:容リ法改正全国ネットと国の動向
容リ法改正全国ネットの活動 国などの動向 2003年10月 ・ 容リ法改正全国ネットの結
成
・ 国会への請願署名を開始
・ 市区町村への「意見書提出」
署名を開始
2004年1月 ・ 全国で市区町村議会へ請願 の提出
・ 約 350 の地方自治体で採択につな がる(人口約5,000万人)
2004年4月 ・ 第159回国会へ96万筆の署
名を提出(210 名の紹介議員 を獲得)
2004年6月 ・ 国会に提出した請願は、審査未了 となる。
2004年7月 ・ 容リ法改正全国ネットの事 ・ 環境省、経済産業省の見直し審議
務局が中央環境審議会の委 員として参加。
会が開始。
2004年8月以降 ・ 「改正市民案」プロジェク ト、30数回の議論を展開。
2005年1月 ・ 「改正市民案」をまとめ発 表。
・ 紹介議員に「市民案」配布。
2005年6月 ・ 審議会の「中間とりまとめ」が提 出され、「拡大生産者責任を強化(事 業者による収集費用の一部負担)す る方向」が合意。
2005年9月 ・ 改正条文・市民案の検討を開 始。
2005年10月 ・ 日本経団連の意見表明。具体的に は、「事業者が分別収集費用を負担 する妥当性はない。自主行動計画 で十分である」。
2005年11月 ・ 改正条文・市民案を発表。
2005年12月 ・ 審議会の「最終とりまとめ」が出 され、「事業者の一部負担」の文言 が消え、「事業者の自主的取り組 み」「事業者の拠出の仕組み」の方 向が出される。
2006年1月 ・ 環境大臣へ意見答申
2006年3月10日 ・ 改正政府案が閣議決定。
2006年4月26日 ・ 日本経団連(リサイクル8団体)・自
主行動計画を発表。
2006年5月9日 ・ 衆議院本会議に政府案が提出。
2006年5月12日 ・ 環境委員会に政府案の主旨説明。
2006年5月16日 ・ 環境委員会で審査開始。
2006年5月19日 ・ 参考人陳述で容リ法改正全 国ネットの事務局が意見陳 述。
・ 環境委員会で参考人招致。
2006年5月23日 ・ 衆議院環境委員会で法案が可決、
併せて、19項目の附帯決議を可決。
2006年5月25日 ・ 衆議院本会議で可決、衆議院へ。
(出典)中村秀次(2006)「容器包装リサイクル法見直しの経過」をもとに筆者作成。
しかし、容リ法改正全国ネットが強く主張してきた「容器包装リサイクル法改正市民案」
は今回の法改正には結果的に反映させることができず、政策提案が受け入れられることは なかった11。今回の法改正の主な点は、「排出抑制の促進」、「事業者が市町村に資金を拠出 する仕組みの創設」となっているが、容リ法改正全国ネットが求めてきた「事業者責任の 強化」と「発生抑制・再使用の推進」とは異なるため、6月16日に衆参両議院議員意見表明 を、6月27日に中央環境審議会意見表明を、6月29日に産業構造審議会意見表明をそれぞ れ提出した。
先述の通り、容リ法改正全国ネットは、2004年12月に正式に「容器包装リサイクル法改 正市民案」を集大成させたわけであるが、その政策提案が改正案に反映されることはなか った。そこで、容リ法改正全国ネットでは、改正案に対して、2006年3月23日に、改正案 の不備と改善を求める市民案を発表している12。その市民案によると、2006年の容器包装リ サイクル法の改正案には、循環型社会形成推進基本法や中央環境審議会の最終答申である 意見具申に照らし合わせると、(1)「発生抑制」(reduce)が、「排出抑制」に置き換えられて いること、(2)「再使用」(reuse)の文言が抜け落ちていること、(3)自主的取組を促進する事 業者に製造事業者が抜け落ちていることの3つの点で重大な不備があるとする。具体的に、
(1)について、中央環境審議会の意見具申では、リデュースは「発生抑制」として明記され ている。ところが、「排出抑制」は「発生抑制」の半分でしかないにもかかわらず、改正法
案では、すべて「排出の抑制」と表現されている13。(2)について、循環型社会基本法第7条 の「循環資源の循環的な利用及び処分の基本原則」において、再生利用よりも再使用を優 先することが定められている14。また、中央環境審議会の意見具申においても、「再使用」
が重視されているにもかかわらず、改正法案には「再使用」が抜け落ちている。(3)につい て、中央環境審議会の意見具申では、利用事業者には限定されていないにもかかわらず、
改正法案第7条の4の対象が、利用事業者に限定されている(図表10)。
図表 10:中央環境審議会の意見具申(今後の容器包装リサイクル制度の在り方について)の一部 抜粋及び産業構造審議会の報告書(容リ法の評価検討に関する報告書)の関連記述
中央環境審議会の意見具申の一部抜粋
①発生抑制 Ⅱ. 3 容器包装リサイクル法の見直しの基本的方向(1)
「循環型社会形成推進基本法に規定された基本原則に基づき、リサイク ルより優先されるべき発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)を更に推 進する」
②再使用 Ⅲ. 1 発生抑制及び再使用の推進
消費者…「排出者として、容器包装廃棄物の発生抑制・再使用を推進す る重要な役割があるとの認識の下に、容器包装の使用量の少 ない商品等の選択を行うことが必要である」
市町村…「住民や地域の事業者との相互連携を図り、当該市町村の区域 内における発生抑制・再使用に主体的に取り組む必要があ る」
事業者…「軽量化・薄肉化された容器包装の製造・利用や、過剰な容器 包装の使用抑制を推進するとともに、容器包装廃棄物の発生 抑制・再使用に資する消費者の商品選択を促す取組を広げて ゆくことが求められる」
③事業者自主的取組 Ⅲ. 1 (6) 発生抑制等に係る指針の策定や達成状況の報告等による事業 者の自主的取組の促進
「このような環境負荷低減の観点から事業者による自主的取組をより 促進するための措置としては、容器包装廃棄物の発生抑制の促進に係る 指針(対策が十分進んでいない事業者に対し、対策が比較的進んでいる事 業者レベルの対策を促すための指針)を国が示した上で、容器包装の利用 量等の観点から対策を特に講ずることが必要だと考えられる特定事業 者に対して、発生抑制等の取組の実施状況に関する報告を求める」
産業構造審議会の報告書の関連記述
①発生抑制 第1章 2. (4) ①事業者における容器包装の使用の合理化努力
「事業者においては、例えば、容器包装の軽量化のような使用の合理化
による容器包装廃棄物の発生抑制(リデュース)のための取組が進展して きている」
②再使用 第2章 見直しの具体的な方向性
「容器包装に係る資源の有効利用のためには、容器包装のライフスタイ ルの各段階において、資源の消費量を減らすリデュース・リユースの取 組を進めることが重要である」
③事業者自主的取組 第 2章 1. 事業者による製品の製造・利用段階における 3Rの取組の推 進
「<対応の方向>特に、現状において十分な使用の合理化が進んでいない 容器包装を利用する事業を行う事業者に対しては、事業者が取り組むべ き事項(中略)を国が示す」
(出典)容器包装リサイクル法の改正を求める全国ネットワーク(2006b)「3R推進法に変えてくだ さい!―3月10日に閣議決定された容リ法改正案は、1.5Rに過ぎません!」をもとに筆 者作成。
容リ法改正全国ネットは、改正法案の不備を 3 点取り上げた上で、改正法案は不備があ るだけではなく、レジ袋有料化が明記されず、また、事業者の自主的取組を担保する規定 がないなど、3Rを推進できる法案ではないと指摘し、次の5点についての見直しを求めて いる。
(1)「排出の抑制」という表記を「発生の抑制」に直すこと。
(2)第2条(定義)、第3条(基本方針)などに再使用を定めること。
(3)第7条の4に「製造事業者」も加えること。
(4)レジ袋有料化の推進が不十分な場合には、「レジ袋税の導入」を条件として盛り込むこと。
(5)事業者の自主的取組の効果が薄い場合には、「拡大生産者責任の強化」を条件として盛り
込むこと。
レジ袋税を導入する根拠としては、改正法案では、違反しても罰金50万円に過ぎないの で、レジ袋を販売すればその売上げが大きな収入源になる事業者が、真剣にレジ袋の削減 に取り組むことや販売代金を消費者に還元することは担保されない。すべてのレジ袋が有 料化され、50%の「発生抑制」があった場合、販売金は約750億円(300億枚×5円/枚×50%) となり、この金額がレジ袋税による徴収額の目安となる。拡大生産者責任を強化する根拠 としては、実効性の担保のないまま、事業者の自主的な取り組みに委ねてしまうのは、取 り組まない事業者を許容してしまうことにつながる。事業者の自主的取り組みの効果が不 十分であれば、中央環境審議会及び産業構造審議会の「中間取りまとめ」で合意された拡 大生産者責任を強化することは、議論の経過からいっても妥当性がある。