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市民研究員制度

ドキュメント内 2008 年 10 月 博士(公共経営)学位論文 (ページ 108-125)

第 6 章 地方自治体シンクタンクの課題と展望

第 4 節 市民研究員制度

第1項 市民研究員制度の意義

地方自治体シンクタンクにおいて、住民自治を確立していくための取り組みとして、「市 民研究員制度」という市民参加を基調とした政策形成があげられる。政策研究への市民参 加を進めようとする研究指向であり、知的な市民参加の新しい形態でもある。これは、行 政が市民を市民研究員として採用し、市民が地方自治体の政策研究に参加するものである。

とりわけ、③地方自治体内設置型のシンクタンクにおいては、市民参加型の政策形成を実 現するべく市民研究員制度を導入したりするなど、政策形成に市民の意見を反映させる取 り組みを実施しているところがある。それらは、地方自治体の内部組織でありながらも、

自主的な研究活動を標榜している。

例えば、市民研究員制度を実施している地方自治体内設置型シンクタンクには、公募し て市民を選抜し、正式に市民研究員として採用する「選抜方式」と、懇談会を開催しそこ に参加する市民を選抜することなく、参加した市民を市民研究員とみなす「懇談会方式」

に大別することができる。「選抜方式」をとっている地方自治体シンクタンクとしては、

「小田原市政策総合研究所」、「金沢まちづくり市民研究機構」、「上越市創造行政研究所」、

「さがみはら都市みらい研究所」、「向日市コラボレーション研究所」などが該当する。

一方、「懇談会方式」をとっている地方自治体シンクタンクとしては、「みうら政策研究 所」があげられる(図表23)。

図表 23:各地方自治体シンクタンクの市民研究員制度の採用方式

類型 市民研究員の採用方式 名称 小田原市政策総合研究所 金沢まちづくり市民研究機構 さがみはら都市みらい研究所 上越市創造行政研究所 選抜方式

向日市コラボレーション研究所 地方自治体内設置型

懇談会方式 みうら政策研究所 (出典)筆者作成。

牧瀬(2006a)は、市民研究員制度の意義として、次の 5 点をあげる。①政策の執行段階に 参加するのではなく、政策をつくる段階から参画できること、②市民自らが地方自治体政 策に関わる課題を自らの問題として意識されること、③それぞれのネットワークに公共的 な問題が伝播されることで、公共的問題を意識する人材が増えること、④行政職員だけで は行き詰まる問題も、市民感覚をもった斬新な発想により克服が期待できること、⑤意識 の共有化に端を発した問題解決に向けての協働化が図れることである18

そこで、「選抜方式」では「小田原市政策総合研究所」及び「金沢まちづくり市民研究 機構」を、「懇談会方式」では「みうら政策研究所」を事例として取り上げ、市民研究員 制度の現状と課題について考察する。

第2項 事例①:小田原市総合政策研究所

地方分権改革を受けて、小田原市は、地方自治体としての政策形成能力を高めるべく、

職員のみならず、各界の有識者や市民の意見も取り込みながら、新しい時代に対応したま ちづくりを進めるため、地方自治体シンクタンクとしての「小田原市政策総合研究所」を 2000年4月1日に設立した。

「小田原市政策総合研究所」では、地方分権をはじめとする大きな時代の変化を見据え たマクロ的視点から、21世紀を拓く創造的な行政を志向し、基本テーマ(小田原から分権時 代を切り拓く 世界にきらめくまちづくり)を設定している。基本機能は、調査・研究機能、

研究情報交流機能、人材活用・育成機能がある。調査・研究機能としては、①政策提言(基 礎的な調査・研究にもとづく、将来の政策立案に向けた提言)、②政策研究(市政の横断的か つ重要な事項に関する専門的な研究)、③政策形成支援(政策アドバイザーの各部局への派 遣)、④委託調査(外部調査機関への委託による調査等)があげられる。研究情報交流機能と しては、①研究フォーラム、②研究紀要の刊行、③インターネット等である。人材活用・

育成機能としては、①派遣職員の活用、②職員研修(将来的に実現)である。

組織・体制面では、小田原市政策総合研究所は、市組織として企画部まちづくりデザイ ン課内に置かれている。スタッフは、まちづくり政策調整担当部長を政策総合研究所担当

とし、研究所内に政策研究担当を置いている。副所長は、研究課題と必要に応じて、①研 究グループ、②ワーキングチームを編成する19(図表24)。

図表 24:小田原市政策総合研究所のスタッフ構成

区分 スタッフに充てる者 職務

副所長 まちづくり政策調整担当部長 事務局業務の統括 主任研究員 まちづくりデザイン課課長補佐(政策研究担

当)。研究事項に関係する部局の担当主査級以 上の職員のうち、副所長が必要と認める者。そ の他副所長が特に必要と認める者

研究員 まちづくりデザイン課政策研究担当。研究事項 に関係する部局の上級主査級以下の職員のう ち、副所長が必要と認める者。その他副所長が 特に必要と認める者

所 長及び 副所 長の 補 佐

所長 専門委員 研究活動の統括

研究顧問 所 長の学 識を 超え る

事項に関する助言

上席研究員 研 究事項 に関 する 指

導・助言及び研究事項 のとりまとめ

副主任 研究員

専門の学識を有する者のうち、副所長が必要と 認める者

主任研究員の補佐 学

学生研究員 首都圏の大学または大学院に在学の者のうち、

副所長が適当と認める者

研究活動の支援

民 市民研究員 本市に在住、在勤または在学の者のうち、副所 長が適当と認める者

研 究事項 に関 する 研 究

(出典)「小田原市政策総合研究所(政策総合研究所の概要)」『小田原市』

http://www.city.odawara.kanagawa.jp/policyrese/informat/gaiyou.html(最終閲覧日:2007年6月 19日)をもとに筆者作成。

小田原市政策総合研究所では、2000年度から2005年度までは、市民研究員を公募し、職 員研究員や学識経験者と共同研究体制をとってきた(図表25)。

図表 25:小田原市政策総合研究所の平成18年度までの研究

年度 研究グループ 構成員 研究成果

2000年度 旧東海道研究グループ 市民研究員 東 海道小 田原 宿千 年

職員研究員 学識経験者

別邸建築ワーキングチーム 職員研究員 学識経験者

保 存から まち づく り へ

市民ラボ研究グループ 市民研究員 学識経験者

千年蔵を動かそう 2001年度

小田原遺産調査研究グループ 職員研究員 学識経験者

場 所を読 む― 小田 原 ら しいま ちづ くり 手 法の提案―

市民ラボ研究グループ 市民研究員 学識経験者

実証研究

ま ちづく り応 援団 ― な りわい 交流 の再 生 を 促す中 間組 織の 展 望―

2002年度

まちづくり課題研究グループ 職員研究員 学識経験者

4人のあなたの物語―

豊 かな暮 らし と豊 か な 地域を 創る ため に

― コミュニティ自治研究グループ 職員研究員

学識経験者

コ ミュニ ティ 自治 序 説 〜地域 で問 題を 共 同 解決す る仕 組み づ くり〜

2003年度

善意の交換・循環研究グループ 市民研究員 職員研究員 学識経験者

地 域助け 合い シス テ ム徳

地域コミュニティでの問題解決 の仕組みづくりに関する実践的 研究

職員研究員 学識経験者

地 域コミ ュニ ティ 研 究 シナリ オ編 〜底 力 を 生かし た問 題解 決 の仕組みづくり〜

2004年度

マル徳交流グループ 市民研究員 職員研究員 学識経験者

地 域助け 合い シス テ ム・マル徳〜市民・コ ミ ュニテ ィレ ベル で の自主的運営を目指 して〜

2005年度 地域コミュニティ研究グループ 職員研究員 学識経験者

地 域コミ ュニ ティ 研 究 提言編 〜実 践的 研

究 からみ た地 域の 問 題 解決能 力の 向上 策

〜 ホットネット交流グループ 市民研究員

職員研究員 学識経験者

助 け合い の芽 を育 て る場「サロン」〜顔の 見 える関 係で 支え 合 う〜

2006年度 職員研究員

学識経験者

新 しい城 下町 を考 え る 〜心が 豊か にな る まちの姿(生活景20)を めざして

2007年度 (研究中)

職員研究員 学識経験者

新 しい城 下町 を考 え る 〜心が 豊か にな る まちの姿(生活景)をめ ざして

(注)市民研究員の箇所には、網掛けを施している。

(出典)小田原市企画部企画政策課(2007)「小田原市政策総合研究所」をもとに筆者作成。

しかし、2006 年度以降、2007 年度の時点では、市民研究員の公募を行っていない21。現 在は、市民研究員制度の代替措置として、市民公開研究会を定期的に開催し、学識経験者 による講義及びワークショップなどを通じて、市民との意見交換の場としている。2007 年 度10月現在、市民研究員制度は休止中であるが、今後は再開される可能性もある22。 第3項 事例②:金沢まちづくり市民研究機構

「金沢まちづくり市民研究機構」は、2003年6月17日に設置された。研究方針は、市民 等が主体的に参加し、世界都市金沢の実現に向け、地域にあった個性豊かで創造的な政策 研究を行うものである。研究テーマについては、市民と行政の協働で取り組むべき課題や、

将来の都市のあり様にも関わるような事項としている。公募の「市民研究員」と学識経験 者の「ディレクター」で構成され、その円滑な運営を図るため機構会議を置いている。研 究部門は、5つある。その内訳は、金沢世界都市戦略・世界の都市政策交流研究部門、まち づくりの総合戦略政策統合研究部門、内発的発展・地域経済政策研究部門、知識文化創造 都市・教育・健康・医療・福祉の金沢モデル研究部門、サスティナブル・金沢環境戦略研 究部門である。市民研究員は個人参加とし、研究テーマごとに10名程度で構成し共同で研 究を行う「市民研究会」を置く。

研究場所は、金沢市庁舎南分室内の研究室とする23。2007年9月から2008年8月までの

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