号 5.3.2.2-004)
海外教科書 9 冊及び国内教科書 4 冊を精査して、MetHb 血症に対する MB の治療方法
(【MetHb 血症(と MB 投与)】、 【治療方法(用法・用量、追加投与等)】、 【注意事項】及び【禁 忌】)について以下にまとめた(表 2.7.3.2.2-7、表 2.7.3.2.2-8) 。
海外及び国内教科書においては、 MetHb 血症の治療の第一選択薬として、 MB が記載されて おり、その静脈内投与量は 1~2 mg/kg(1%溶液)である。また、投与に際しては、「5 分かけ て投与すること」が推奨されている。このように緩徐に投与することで痛みを伴う局所反応を 避けることができる。また、局所痛が生じた場合、投与後に生理食塩液で洗浄(フラッシング)
することが効果的であるとの記載がある。
MB の投与 1 時間以内に効果が不十分である場合には、MB の追加投与、及び他の療法を検 討する必要がある。13 冊中 9 冊に追加投与についての記載があり、追加投与の場合には初回 投与と同じ用量を 1 時間後に投与する、あるいは 1 時間以内に反復投与することが推奨されて いる。また、併用療法として原因物質の洗浄のための活性炭や消化管洗浄の他、酸素療法及び 交換輸血が有効である。 2 回の投与で症状の改善が認められない場合には G6PD 欠損症患者の 可能性や他の併用療法も検討する必要がある。一方、 MB 投与により溶血を引き起こす可能性 が示唆されており、累積投与量については 7 mg/kg とすべきとの記載や小児においては 4~
7 mg/kg とすることも記載されている。
MB の用量は成人、小児ともに体重当たりの量で、高齢者でも特に減量の記載はない。また、
アニリンに起因する MetHb 血症患者に対する治療では、ハインツ小体の形成や溶血性貧血を
引き起こすことがあるため、慎重な投与が必要であると記載されている。さらに、高度の腎機 能障害患者、 G6PD 欠損症患者、スルホヘモグロビン血症患者、又は NADPH-MetHb 還元酵素 欠損症患者、及びシアン中毒患者では MB が無効である可能性があることから「禁忌」と記載 されている。なお、静脈内投与以外の投与経路で MB を使用することも禁忌とされている。
表 2.7.3.2.2-7 海外の教科書に記載された MetHb 血症の標準的治療
書籍名 記載内容
Goldfrank's toxicologic emergency.
9th.
(5.3.5.2-358、
5.3.5.2-359、
5.3.5.2-360、
5.3.5.2-361、
5.3.5.2-362、
5.3.5.2-363、
5.3.5.2-364、
5.3.5.2-365、
5.3.5.2-366、
5.3.5.2-367、
5.3.5.2-368)
【MetHb血症とMB投与】
1) 症候性MetHb血症は通常MetHb濃度が20%以上で発症するが、貧血患者又は心
血管系、肺、及び中枢神経系の疾患患者ではそれ以下でも発症する場合がある。
2) 精神状態の変化や虚血性胸痛が明らかに認められる場合はすぐに治療を必要と する。
3) 異常なバイタルサインの頻脈や頻呼吸、組織低酸素によるものと考えられる乳酸 濃度の上昇、又はMetHb血症による機能性貧血の患者へは積極的に治療すべき である。
4) 動作や注意力の変化は低酸素症の兆候の場合があり、治療の対象としても良い。
5) MetHb濃度の上昇のみでは治療しないこと。
【治療方法】
1) 最も広く行われているMetHb血症の治療は、1~2 mg/kgのMBを5分かけて点 滴投与する方法である。1%溶液であるならば0.1~0.2 mL/kg投与である。
2) 5分間かけてゆっくり投与することによって、痛みを伴う局所反応を避けること ができる。なお、投与痛を生じた場合には、点滴後に少なくとも15~30 mLの 生理食塩液で洗浄(フラッシング)を行うことで軽減できる。
3) 新生児では、多くの場合0.3~1 mg/kgで有効である。
【注意事項】
1) MBによって回復しない場合には、種々の可能性を検討をすること。
臨床症状の改善は、MB投与後数分以内に確認できるが、点滴後1時間以内にチ アノーゼが消失しない場合には、追加投与及び他の治療を検討すべきである。
• ダプソンのようにMetHb血症を誘発する原因物質が持続的に吸収され排泄が遅 い場合には、消化管の洗浄と併せて、MBの追加投与が必要になることがある。
また、ダプソンの過量投与によって発症したMetHb血症では、シメチジンが保 護効果を示すことがあり、MBと併用して使用すべきである。
• MB治療が有効でない場合には交換輸血又は高圧酸素療法が有効である。時間と 費用がかかるが、高圧酸素療法によって内因性のMetHb還元が起こり、酸素分 圧が高まり患者の保護に繋がる。
• G6PD欠損症患者ではMBによる溶血のリスクがある。MBの投与は行わず、交 換輸血及び高圧酸素療法等がMetHb血症に対する代替治療法として推奨される。
2) その他
• 持続注入: 0.05%MB溶液を0.1 mg/kg/h又は3~7 mg/h(0.9%塩化ナトリウムに溶 解)で持続点滴静注する治療も報告されている。しかし、この投与方法は十分に は検討されていない。
【禁忌】
1) G6PD欠損症患者
2) スルホヘモグロビン血症又はNADPH-MetHb還元酵素欠損症患者: 回復しない ことがあるので注意が必要。
3) 皮下投与あるいは髄腔内投与法
表 2.7.3.2.2-7 海外の教科書に記載された MetHb 血症の標準的治療 (続き)
書籍名 記載内容
Cecil Medicine 24th.
(5.3.5.2-369、
5.3.5.2-370、
5.3.5.2-371)
【MetHb血症とMB投与】
1) MetHb濃度が急性に誘発されて、20%では疲労感、30%では頻脈、50%を超える
と脱力感、息切れ、錯乱、70~80%で昏睡及び死亡する。
【治療方法】
1) 1%MB 1~2 mg/kg(1%溶液0.1~0.2 mL/kg)を5分間かけて投与し、持続性又は 再発の症状又は徴候が認められる場合には追加投与する。
2) 治療のエンドポイント: 呼吸困難の回復及び精神状態の変化。
【注意事項】
1) 累積投与量は、7 mg/kgを超えるべきではない。
2) ある種の中毒物質(例えば、ダプソン)は長期的な治療(prolonged therapy)が 必要な場合がある。
【禁忌】
1) G6PD欠損症患者
HARRISON'S Principles of Internal Medicine 18th.
(5.3.5.2-372、
5.3.5.2-373)
【MetHb血症とMB投与】
1) MetHb血症は、MetHb濃度が15%を超えると脳虚血が起こり、通常60%を超え
ると致死的となる。
• 臨床像: 初期の生理的刺激とそれに続く生理的抑制による低酸素血症の症候。
MetHb分画 > 15~20%で酸素投与に反応しない灰褐色のチアノーゼ、MetHb分
画 > 45%で頭痛、乳酸アシドーシス。
【治療方法】
1) 救急処置としてはMB 1 mg/kgの静脈内投与が効果的である。
• MetHb分画>30%、症候性低酸素症、虚血にはMBを静脈内投与。
2) 高用量の酸素投与。重症や不応性の場合は交換輸血と高圧酸素療法。
【禁忌】
1) G6PD欠損症患者 2) 腎機能不全患者
Hematology Basic principles and practice 6th.
(5.3.5.2-374、
5.3.5.2-375)
【MetHb血症とMB投与】
1) 治療にはMetHb濃度と患者の症状が目安となる。MetHb濃度が20%未満で無症
状の患者は経過を観察する。もし症状がありMetHb濃度が20%を超える場合に は、MBの適応となる。
【治療方法】
1) 高度の中毒性MetHb血症の緊急的な治療は、1%MB溶液(生理食塩水に溶解)
を1~2 mg/kg静脈内投与すること。
2) 通常、(3~5分かけて)速やかに投与し、必要であれば、30~60分後に1 mg/kg を追加投与することができる。
【注意事項】
1) 累積投与量が4~7 mg/kg(小児ではさらに低い投与量)を超えると、チアノーゼ、
呼吸困難及び急性溶血を発症することがある。治療中の患者に対しては、MetHb 血症の再発する可能性を考慮し、注意深い観察が必要である。
2) 交換輸血は、重症のMetHb血症に対して使用され有効であった。
【禁忌】
1) G6PD欠損症患者には無効である。
表 2.7.3.2.2-7 海外の教科書に記載された MetHb 血症の標準的治療 (続き)
書籍名 記載内容
Therapeutic drug 1999
(5.3.5.2-376)
【治療方法】
1) 薬剤誘発性のMetHb血症の緊急的な治療には、1%MB溶液1~4 mg/kg(通常は
1~2 mg/kg)を5分間かけて静脈内投与し、必要であれば1時間後に追加投与す
る。
【注意事項】
1) G6PD欠損症患者: MBは細胞外ではMetHb生成物質として働き、MetHb血症の 増悪、溶血性貧血を発症することがある。
2) 新生児: MBを羊膜内に使用した後に溶血性貧血の危険性が高くなる。
3) 母乳: 薬物が母乳に移行する程度は不明である。胎盤を通じて胎児に影響がある というエビデンスはある。授乳中の母親は色素の使用を避けるべきである。
4) 小児: 一般的に投与量は体重で決めるべきである。緊急時、症候性の乳児は最初
に2 mg/kgで投与すべきである。
5) 妊婦: 新生児が溶血性貧血を発症する危険性がある。
6) 高齢者: 腎機能が十分な高齢者では、特別な有害作用は報告されていないが、腎 障害のある高齢者では減量する。
7) 合併症患者: 重篤な腎障害のある場合、通常用量で毒性の血中濃度が認められる 可能性がある。
8) 静脈内投与以外の投与経路(皮下投与、髄腔内投与、羊膜内投与)で投与する場 合、毒性が発現する可能性がある。
【禁忌】
1) 重篤な腎障害患者 2) G6PD欠損症患者 3) 皮下又は髄膜内投与
Martindale 2011
(5.3.5.2-377)
【治療方法】
1) 1%MB溶液1~2 mg/kgを数分間かけて投与する。30~60分後の追加投与が必要
な場合がある。
【注意事項】
1) アニリンに起因するMetHb血症に対する治療では、ハインツ小体の形成、溶血 性貧血を引き起こすことがあるため、慎重に投与すべきである。アニリン中毒で は初回投与時にMetHb濃度を低下させたとしても、追加投与時にはMetHbを還 元せずに溶血を悪化させることがある。
2) 高度の腎機能障害を有する患者では、注意して使用すべきである。
3) MBは、MetHb血症の治療に用いるが、高用量の投与では、MB自身がMetHb 血症を引き起こすため、MBでの治療中はMetHb血症濃度を注意深く観察する 必要がある。
【禁忌】
1) G6PD欠損症患者
2) シアン中毒での亜硝酸塩治療に起因するMetHb血症の治療: シアン化物結合が 低下し結果的に毒性が増加するため、亜硝酸ナトリウム投与時には使用してはな らない。
3) 塩素酸塩中毒に起因するMetHb血症の治療: より毒性の強い次亜塩素酸塩が形 成されることがある(重度の塩素酸塩中毒によるMetHb血症の治療へのMB使 用は適切と判断している規制当局もある)。
4) 皮下投与、髄腔内投与 Nelson textbook of
Pediatrics 19th.
(5.3.5.2-378、
5.3.5.2-379)
【治療方法】
1) 1%溶液0.1~0.2 mL/kg(1~2 mg/kg)を5~10分間かけて投与、30~60分おきに 反復も可。
【禁忌】
1) G6PD欠損症患者