第五章 考察と結論
第 2 節 ユーザーによって創造された価値
雷軍は,2013年4月18日にWeiboに次のように書いた.「僕はユーザーと一緒にインタ ーネットスマートフォンを開発している.何百万人のユーザーも自分の知恵を寄せている.
これはシャオミのインターネット DNA だ」102.確かに,第四章で取り上げた事例から,
現在,シャオミのユーザーが,提供した知恵は,製品の面にとどまらず,市場調査,技術 開発,マーケティング,および企業運営などの面まで及んでいるということが明らかにな
102 雷軍のウェイボーを参照 https://weibo.com/leijun?refer_flag=1001030101_
- 94 -
った.具体的に言えば,ユーザーが同社に提供した価値には,製品価値,マーケティング 価値,サービス価値,マネジメント価値の4つの部分が含まれている.
2-1 製品価値
ユーザーは,シャオミに提供している製品価値には直接的な価値と間接的な価値両方が ある.直接的な製品価値は,ユーザーが自ら開発して,無料にシャオミに提供する価値で ある.第四章で説明したように,シャオミのユーザーは,製品のデザイン案あるいはスマ ートフォン用のアイコンなどを自ら作成し,MIUI フォーラムで無償に公開している.こ のようなユーザーからの価値は,完全に自発的に作り出され,直接的な価値である.この タイプの製品価値は,ほかにも多数ある.例えば,最初のMIUIシステムは,中国語簡体 字,中国語,繁体字および英語,3 つの言語バージョンしかなかったが,シャオミのユー ザーたちが自発的に25言語のバージョンを開発してMIUIフォーラムにアップロードした.
もともとの MIUIシステムは,36 機種に適用できたが,多数のユーザーの努力によって,
現在143機種に適応できるようになってきた.また,シャオミユーザーは,スマートフォ ンのロックを解除する方法も数多く作り出した.ほかには,グループテキストを送信する 前に自動的に相手の名前を追加する機能,安全運転のために開発された交通呼び出しリマ インダーなど,すでに200件以上の案を提供した.
一方,ユーザーにもたらされた間接的な価値は,ユーザーのフィードバックに基づいた ものである.例えば,第四章で説明した「ファングループ」は,シャオミに多数の機能テ ストやバッグのフィードバックなどのような間接的な価値を提供している.このような事 例は,シャオミのユーザーから間接的な製品価値を代表することができる.さらに,現在,
シャオミのスマートフォンの改善は,約3分の1がユーザーによって提唱されたものであ る.
また,シャオミは,間接的な製品価値を活用することができるには,フィードバックソ リューションシステムが不可欠である.ハードウェアにせよ,ソフトウェアにせよ,ユー ザーは,製品の問題点を発見するなら,すぐにMIUIフォーラムを通して,フィードバッ クを行う.それゆえ,シャオミの開発チームは,これらの消費者から寄せられた声を用い て,膨大な量のデータを蓄積・分析することができるようになった.
2-2 マーケティング価値
第四章の第8節で論じたように,シャオミのユーザーは,口コミで他の人に自分が使っ ているシャオミ製品を宣伝し,そこからマーケティングの価値が生まれた.よって,ユー ザーたちはシャオミにもたらしたマーケティング価値は,口コミには大きな関連がある.
シャオミは,宣伝に投入した資金は少ない.その一方,シャオミのブランと製品・サービ スは,ほとんど口コミで,3段階を経て広がった.この3 段階はそれぞれ①従業員からの 口コミ;②マニアユーザーからの口コミ;③普通ユーザーからの口コミである.
シャオミが創業した当初,知名度がないので,同社の製品・サービスを利用したのは従 業員とマニアユーザーであった.従業員たちは,発売した製品に全力で取り組んで,それ に,シャオミの製品を安く買えるという理由もあるので使いたがる.その後,シャオミの
- 95 -
製品を利用した従業員たちは,周りの家族と友達にアピールし,ますます周りを巻き込ん できた.したがって,シャオミの初期段階において,従業員たちの口コミが大きな効果を 発揮していた.
また,シャオミは創業した時,宣伝やプロモーションはユーザーの口コミに頼るという 重要なユーザーにかかわる理念を作り出した.それゆえ,シャオミは,100 人のスマート フォンマニアを集まった時,この理念を用いて,マニアユーザーたちの口コミを活用して いた.多くの潜在的なユーザーにとって,これらのマニアユーザーは,スマートフォンに 関する専門知識を持っているので,彼らの発言は権威性があり,信頼することができる.
こうして,マニアユーザーたちは,この段階において,より多くのユーザーにシャオミの ブランドと製品・サービスに関する情報を発信し,他の潜在的なユーザーの関心を喚起し た.
ユーザーの人数が増加するとともに,ユーザーの特徴も多様化した.よって,マニアユ ーザーのみならず,アクティブユーザー,普通ユーザーなどがますますシャオミの製品を 利用し始めた.この段階になると,口コミの発信者は必ずしも専門知識を持っているユー ザーではないので,知識を伝達するより,自分の感情をシェアしたがるユーザーが多くな ってきた.それゆえに,第四章の第8節で説明した現象があった.つまり,自分とシャオ ミのブランドまたは製品との交わりを口コミによって,より多くのユーザーに話題が広が る.なお,ウェイボーのような公開したソーシャルメディアにおいて,ユーザーの発信は 自分の知り合いのみならず,まったく関係のない知らない人への情報伝達も可能である.
さらに,シャオミは携帯電話の発売前にプロトタイプをリリースする方法も採用してい る.市場に投入されたプロトタイプの数は限られており,プロトタイプにはある程度の希 少性があるため,プロトタイプをスナップアップした最初のユーザーはウェイボーやウェ イチャットの友人のサークルと同様のソーシャルメディアに写真を投稿することがあっ た.このような共有はすべて,ユーザーが作成したマーケティング価値を形成するシャオ ミ製品の広告と同様である.
2-3 サービス価値
ユーザーは,シャオミに提供しているサービス価値は,第四章で述べたMIUIフォーラ ムの解答グループメンバーの行動で見られる.解答グループのユーザーは,自発的にフォ ーラムで他のユーザーの質問に対して回答している.質問のあるユーザーにとって,こう した仕組みが構築されたことは,自分の問題を迅速に解決することにつながる.よって,
シャオミのブランドに対するイメージが向上する.
実は,MIUI フォーラムの解答グループだけではなく,多数のユーザーは,このような ユーザーが自発的に構築した仕組みに参加している.よって,企業側は,アフターサービ スのための費用を低減させることができる.また,シャオミのサービススタッフたちにと って,ユーザーの質問やクレームをいちいち対応する必要がなくなり,アフターサービス の負担も多く軽減された.
その一方,ユーザーは,必ずしも製品に関する知識は十分に持っているとは限らないの で,オープン・イノベーションのプロセスに参加しようとするユーザーにとって,コミュ
- 96 -
ニティから知識の獲得を求めている.しかし,従業員は毎日フォーラムの閲覧と質問に対 する回答を行っているものの,まったく基礎知識を持っていないユーザーの質問に対して いちいち返信・指導することはできない.この状況において,ユーザー同士は互いに質問 の回答者となるシステムは絶大な効果を発揮することができる.よって,これら無償でサ ービス価値を提供しているユーザーは,企業のサービス負担を軽減させると同時に,製品 に関する知識を持つユーザーをますます拡大させていく.
また,シャオミのサービススタッフは,毎日 MIUIフォーラムで公開されたユーザー同 士のやり取りを閲覧しているので,このプロセスにおいて,ユーザーたちの需要を観察す ることができるので,今後,よりよいサービスの提供につながっていく.したがって,ユ ーザーたちが自発的に行っているサービスは,シャオミにとって,全体のサービス品質を 高める効果がある.こうした流れの中で,ユーザーと開発者のコミュニケーションが新規 サービスを作り出し,このような仕組み自体は,サービスのイノベーションである.
2-4 マネジメント価値
ユーザーはシャオミに作り出したマネジメント価値について,具体的に言えば,2 種類 がある.
第1は,ユーザー対ユーザーのマネジメント価値である.シャオミは,ユーザーに対し て,徹底的に権限委譲と強力な支援を提供している.よって,参与度の高いユーザーは,
シャオミのために他のユーザーを管理することができるような仕組みが構築された.例え ば,第四章の第7節7-3で取り上げた,ユーザーが自発的にイベントの企画と開催に取り 組んでいる事例はユーザー対ユーザーの管理である.こうした価値は,アクティブユーザ ーたちが一般ユーザーに対するマネジメントから生まれたものである.
第2は,ユーザー対従業員のマネジメント価値である.シャオミのオープン・イノベー ションインフラであるMIUIフォーラムが開設された当初,シャオミは業務命令として従 業員に閲覧させる.それに,MIUI フォーラムで質問をしたユーザーがいるならば,すぐ にその質問に対して回答することも要求している.しかし,バグソリューションシステム とフィードバック仕組みが構築された後,ユーザーはますますシャオミの製品開発や問題 解決,さらに商品化のプロセスに参加することができるようになった.現在,ユーザーた ちは,シャオミのために,品質管理の役割を果たしている.よって,シャオミは品質を管 理するための人件費を削減することにも間接的に関連している.
また,ユーザーは,MIUI フォーラムを通して,製品に対する要望や意見を発信すると 同時に,従業員たちはこれらの情報を利用して製品の開発や改良に活用するので,ユーザ ーと従業員の関係がますます緊密になり,互いにより理解し合っていく.なお,第四章の 第5節で述べたように,シャオミは,定期的にユーザーに喜ばれた製品あるいは機能を社 内で発表している.喜ばれた機能に当選することは,開発者にとってモチベーションにな る.ユーザーと従業員から構成されたインセンティブ仕組みについて,第6節の6-2で詳 細に議論するが,このようなプロセスを通して,ユーザーと従業員双方にとってモチベー ションを上げる効果があり,開発者とユーザー,またユーザー同士間のつながりが強めら れていく.それゆえ,シャオミのユーザーは,社内の従業員にとってのインセンティブの