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第四章 シャオミのケース・スタディ

第 2 節 シャオミについて

IT専門調査会社IDC(International Data Corporation)の調査によると,2018年第3四半期の 世界スマートフォン出荷台数は,3.552 億であり,前年同期より 6.0%が減少した57.IDC は,5G サービス開始などがきっかけで,2019 年には減少は食い止められる可能性がある と予測しているが,世界スマートフォン出荷台数は,4 四半期連続で減少し,市場全体の 成長は停滞しているということは現状がある.その中では,中国のスマートフォン市場は 6四半期連続で縮小しつつある.中国市場では,世界のおよそ3分の1のスマートフォン が販売されているので,市場が連続で縮小することがスマートフォンメーカーに大きな影 響を与えている.こうした厳しい経営環境の下で,シャオミは,2018年第2四半期に世界 のスマートフォン市場で第 4 位を獲得し,出荷台数も過去最高になった.図14 で示して いるように,現在,シャオミは世界スマートフォン市場で約 9.7%の市場シェアを占めて いる.

図 14 2018年第3四半期の世界スマートフォンメーカー別出荷台数,市場シェア

単位:百万台

出所:IDCのデータにより筆者が作成58

2-1 シャオミの概要

シャオミは,モバイルインターネット関連のベンチャー企業であり,2010年4月6日に 中国北京に設立された.Mobile Internetの頭文字である「MI」が,中国語の「米」の発音 と同じなので,社名は粟(中国語:小米)に由来した.同社の製品は,ハイスペック,高性 能,カスタマイズの自由度といった特徴を持っており,ユーザーに認められた商品を多数

57 IDCのホームページを参照https://www.idc.com/

58 同上

サムソン ファウエイ アップル シャオミ OPPO その他 2017年3四半期 83.3 39.1 46.7 28.3 30.6 149.8 2018年3四半期 72.2 52 46.9 34.3 29.9 119.9

0 20 40 60 80 100 120 140 160

20.3%

14.6%

13.2%

9.7% 8.4%

33.8%

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に開発している.アメリカのファスト・カンパニー誌に掲載されている 2014 年の最もイ ノベーティブCE(Consumer Electronics)メーカーの中で2位にもランクされた(表12)59

表 12 世界で最もイノベーティブCE企業(2014)

順位 会社名 国

1 グーグル(Google) アメリカ 2 シャオミ(Xiaomi) 中国

3 アップル(Apple) アメリカ

4 アマゾン(Amazon) アメリカ

5 ゴープロ(GoPro) アメリカ 6 リープモーション(Leap Motion) アメリカ

7 ソニー(Sony) 日本

8 レゴ(LEGO) デンマーク

9 アイロボット(iRobot) アメリカ 10 スフィロ(Sphero) アメリカ 出所:ファスト・カンパニーのデータにより筆者が作成

図 15 シャオミ製品の一部

出所:シャオミのホームページにより筆者が作成

59「ファスト・カンパニー」は,1995年に創刊され,年10回発行の米国のビジネス誌である.

同誌は,シリコンバレーのIT企業の動向や新しいビジネスモデルなどに関する記事を掲載し ている.

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現在,シャオミは複数の分野に進出しているが,その中での主力製品は,スマートフォ ンである.また,同社は,ハードウェアとアンドロイドをベースにした独自の OS(モバイ ルオペレーティングシステム)も開発している.現在,同社は,スマート家電や,ウェアラ ブル端末などの分野にも進出し,図 15 で見られるように,空気洗浄機,テレビに接続す るためのセットトップボックス,掃除ロボット,腕時計,シェーバー,炊飯器などのよう な製品が多数に販売されている.

2-2 シャオミの市場シェア

シャオミは,2010 年に創業し,歴史がまだ浅いが,図14で示しているように,現在,

スマートフォン市場シェアでは世界第4位につけている.2018年7月9日に,シャオミは,

創業して8年で香港証券取引所に上場した.同社が提出した新規株式上場(IPO)申請書によ って,詳細な財務情報が明らかになった.同申請書のデータから見れば,シャオミ 2017 年の売上高は,約1兆8,798億円(為替相場で1元を16.4円に換算した数字,以下同)とな り,前年比で67.5%の増収となった(表13).その中では,営業利益は約2,003億円であり,

前年と比べて2倍以上に増加した.

表 13 シャオミの財務データ

単位:千元

2015 2016 2017

売上高 66,811,258

(約1兆957億円)

68,434,161

(約1兆1,223億円)

114,624,742

(約1兆8,798億円) 売上原価 64,111,325

(約1兆514億円)

61,184,806 (約1兆34億円)

99,470,537

(約1兆6,313億円) 売上総利益60 2,699,933

(約443億円)

7,249,355 (約1,189億円)

15,154,205 (約2,485億円) 営業利益 1,372,670

(約225億円)

3,785,064 (約621億円)

12,215,467 (約2,003億円) 出所:香港証券取引所のデータ(p.315)により筆者が作成

http://www3.hkexnews.hk/listedco/listconews/SEHK/2018/0625/LTN20180625030_C.HTM

シャオミは,事業セグメントの区分をスマートフォン,IoT・生活消費製品,インター ネットサービス,その他の 4 部門に分類している.事業セグメント別の売上高は表 14の とおりである.2017年のデータから見れば,スマートフォンセグメントは,全体の売上の

約70.3%を占めている61.具体的に言えば,スマートフォン事業では,Mi MiX 2S,Mi MiX

2,Mi Note 3,Mi6,Mi 5C,Mi 5Xなどの機種が含まれ,販売が好調に推移し,売り上げ

が増加している.スマートフォン事業の製品ラインが単一であるのに対して,IoT・生活 消費製品分野は,テレビ,ルーター,ノートパソコン,掃除ロボット,家具,おもちゃな

60 売上総利益 (gross margin) とは,売上高から売上原価を差し引いたものである.

61 シャオミのIPO申請書のデータにより

http://www.csrc.gov.cn/zjhpublic/G00306202/201806/P020180611106685793601.pdf

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ど,ウェアラブル端末など幅広い製品から構成され,売上は全体の約20.5%を占めており,

毎年伸びっている.また,有料アプリやゲーム,動画・音楽などが含まれるインターネッ トサービスセグメントは,売上の約8.6%を占めている.上述したデータから,スマートフ ォン事業の売上高は最も多く,同社の主要事業であることが確かになった.

表 14 シャオミのセグメント別売上高

単位:千元

201520162017

スマートフォン 53,715,410

(約8,809億円) 80.4% 48,764,139

(約7,997億円) 71.3% 80,563,594

(約13,212億円) 70.3%

IoT・生活消費製品 8,690,563

(約1,425億円) 13.0% 12,415,438

(約3,278億円) 18.1% 23,447,823

(約3,845億円) 20.5% インターネットサービス 3,239,454

(約531億円) 4.9% 6,537,769

(約1072億円) 9.6% 9,896,389

(約1,623億円) 8.6%

その他 1,165,831

(約191億円) 1.7% 716,815

(約118億円) 10% 716,936

(約118億円) 0.6%

合計 66,811,258

(約1957億円) 100% 68,434,161

(約11,223億円) 100% 114,624,742

(約18,798億円) 100%

出所:香港証券取引所のデータ(p.316)により筆者が作成

http://www3.hkexnews.hk/listedco/listconews/SEHK/2018/0625/LTN20180625030_C.HTM

しかし,表15の利益率で示しているように,スマートフォンセグメントの利益は約1,165 億円と半分以下となる一方,インターネットサービスセグメントの利益は,約978億円と,

スマートフォンに迫っている.つまり,シャオミの主力事業はスマートフォンであるが,

一番大きな利益率をもたらしたのはインターネットサービスである.スマートフォン事業 は,シャオミに売上高の7割もたらされているが,利益率は低い.それに対して,インタ ーネットサービスセグメントは,売り上げのパーセンテージが1割未満と低いが,利益の 約4割を占めている.シャオミは事業展開の最初段階において,スマートフォンを中心に して事業を展開してきたが,現在は,複数の業種を股にかけ,IoT ビジネスを展開し,売 上の成長を続けている.

表 15 シャオミのセグメント別の売上総利益および売上総利益率

単位:千元

201520162017

スマートフォン -170,899 (約28億円)

-0.3% 1,681,762 (約276億円)

3.4% 7,101,339 (約1,165億円)

8.8%

IoT・生活消費製品 34,877

(約6億円)

0.4% 1012,873 (約166億円)

8.2% 1,950,865 (約320億円)

8.3%

インターネットサービス 2,078,677 (約341億円)

64.2% 4,208,475 (約690億円)

64.4% 5,960,751 (約978億円)

60.2%

その他 757,278

(124億円)

65.0% 346,245 (57億円)

48.3% 141,250 (23億円)

19.7%

合計 2,699,933

(約443億円)

4% 7,249,355 (約1,189億円)

10.6% 15,154,205 (約2,485億円)

13.2%

出所:香港証券取引所のデータ(p.320)により筆者が作成

http://www3.hkexnews.hk/listedco/listconews/SEHK/2018/0625/LTN20180625030_C.HTM

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中国の人口が多く,市場規模が大きいが,シャオミは中国市場にとどまらず,2014年か ら世界市場に進出し,海外売上高の割合が伸びている(表16).現在,シャオミのスマート フォンは,世界中の 74 カ国と地域に進出しており,中東,欧州および中国以外のアジア 市場で成長している.とりわけ,シャオミは,インド,ミャンマー,ウクライナ,中国,

エジプト,ギリシャ,イスラエル,ロシア,インドネシアなどの国と地域で,出荷台数で トップ5のスマートフォンブランドにランキングされた.2017年,シャオミの海外売上高 は,5,261 億円であり,全体の約28%を占めている.その中,インドのスマートフォン市 場ではシャオミの出荷台数が大幅に伸びている.IDC の統計によると,インド市場では,

2018 年第1四半期のスマートフォン分野におけるXiaomi Mobileの市場シェアは30.3%で

あり,インド市場では第 1 位となった62.つまり,シャオミは,事業拡大とともに,ます ます海外市場を重視するようになってきた.

表 16 シャオミの売上高及び売上高比率

単位:千元

2017 2016 2015

売上高 売上高 売上高 中国国内 82,543,462

(約13,537億円) 72.0 59,279,381

(約9,722億円) 86.6 62,755,575

(約1292億円) 93.9 その他の国と地域 32,081,280

(約5,261億円) 28.0 91,154,78

(約14,949億円) 13.4 4,055,683

(約665億円) 6.1

合計 114,624,742

(約18,798億円) 100 68,434,161

(約11,223億円) 100 66,811,258

(約1957億円) 100 出所:香港証券取引所のデータ(p.317)により筆者が作成

http://www3.hkexnews.hk/listedco/listconews/SEHK/2018/0625/LTN20180625030_C.HTM

2-3 シャオミの資金調達

シャオミは創業後8年の短期間で,急成長を遂げるとともに,事業内容も毎年拡大して いる.その中では,シャオミの積極的な資金調達は成長要因の 1 つとなっている.表 17 は,シャオミが行った資金調達をからまとめられたものである.2010年4月創業したシャ オミは,同年の9月にシリーズA総額2,000万ドルの資金調達を実施し,3ヶ月後,また シリーズBの資金調達で2,750万ドルを調達した.シャオミは,シリーズAからシリーズ Fまでの資金調達も迅速であり,調達資金額もかなり高い.

一般的に言えば,ベンチャー企業は,創業から利益が出るまでの間は,運営や設備投資 などに資金を投入するが必要であるため,外部からの資金調達が必要となる.調達した資 金の使い道を見ればわかるように,シャオミは順調な資金調達を行ったからこそ,上述し たインド市場への進出を実現することができると考えられる(表18).

62 IDCのホームページを参照https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prUS44425818

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表 17 シャオミの資金調達 2010年4月 創立

2010年9月 シリーズAの資金調達で2,000万ドル 2010年12月 シリーズBの資金調達で2,750万ドル

2011年4月 シリーズB+ラウンドの資金調達で275万ドル

2011年8月 シリーズB++ラウンド60万ドル

2011年9月 シリーズCの資金調達で8,800万ドル

2011年11月 シリーズC+ラウンドの資金調達で210万ドル

2012年6月 シリーズDの資金調達で1億8,000万ドル 2013年8月 シリーズEの資金調達で1億ドル

2014年12月 シリーズFの資金調達で7億5,080万ドル

2015年3月 シリーズF+ラウンドの資金調達で2,315ドル

2015年7月 シリーズF++ラウンドの資金調達で2億ド

2017年8月 シリーズF+++ラウンドの資金調達で1000万ドル 出所:シャオミのIPO申請書により筆者が作成

http://www.csrc.gov.cn/zjhpublic/G00306202/201806/P020180611106685793601.pdf

表 18 調達した資金の使途

番 号 調達した資金の使い道 割合

1 研究開発 30%

2 IoT・生活消費製品及びインターネットサービス(AIを含め)など

のエコシステム 30%

3 世界市場への進出 40%

合 計 100%

出所:シャオミのIPO申請書(p.35)により筆者が作成

http://www.csrc.gov.cn/zjhpublic/G00306202/201806/P020180611106685793601.pdf

2-4 創始者について

シャオミの創始者雷軍は,1969年12月に生まれ,中国の湖北省仙桃市の出身である.

彼は1991年に武漢大学コンピュータ科学技術学部を卒業し,1992年にソフトウェアメー カー「キングソフト(金山軟件:Kingsoft Corporation)」に入社した63.その後,わずか6年 を経て,1998 年にキングソフトの社長に就任した.2007 年,雷军はキングソフトの社長 を退任した後,エンジェル投資家になり,2010年にスマートフォンを開発会社であるシャ オミを創立した.翌年の 2011 年に,彼はキングソフトの取締役会長にも就任した.雷軍 自分がエンジェル投資家であるので,資金の調達と資金の運用の経験を積んできた.それ

63 キングソフト株式会社は,中国最大のソフト開発販売会社のひとつであり,オフィスソフト,

セキュリティソフト,辞書・翻訳ソフト等の製品を開発して扱っている.また,ジョイントベ ンチャーとして 2005 年に東京都港区赤坂にキングソフト株式会社が設立され,日本法人独自 で様々な企業との事業提携,協業を行い,近年はスマートフォン分野に進出している.