第五章 考察と結論
第 5 節 オープン・イノベーションの場
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テストを行ったマニアたちも含まれている.名誉開発メンバーたちは,シャオミの研究開 発者と近距離で接触してコミュニケーションをすることができる.また,このグループの ユーザーは,内部テスト版がリリースされ次第,すぐに手に入れることができ,最新バー ジョンのテストと問題のフィードバックに参加することができる.現在,名誉開発メンバ ーたちは,シャオミに21,405件の機能に関する意見を提供した110.
上述したように,シャオミのユーザーセグメントについて分析した.実際に,シャオミ はこのユーザーセグメントの仕方のみならず,果たした職能などによって,シャオミはユ ーザーを複数の視点でセグメントをしている.例えば,第四章第8節では,権限委譲のと き,シャオミは多数の基準に沿って,ユーザーに委譲する権限に対する細分化を行ってい ることについて説明した.それゆえに,企業はユーザーに対するセグメンを論じる際,考 慮すべき点が以下2つある.
① 関与度別分割:このセグメントの仕方は,製品の開発から商品化までのプロセスに 適用される.ユーザーをオープン・イノベーションに取り組み手法を採用する場合,
各段階におけるユーザーの関与度を検討すべきである.それをもとに,多様化した ユーザーへの対応を設計することが合理的である.
② 機能別分割:このセグメントの仕方は,ユーザーがある程度関与度を持っているこ とを前提にしている.そして,企業のオープン・イノベーションに関与しているユ ーザーが果たした役割に着目し,権限委譲などを推進する.この分割の基準は,ユ ーザーのマネジメント価値を創出する役割を果たし,MIUIフォーラムでのユーザー 分割に使用されている.
ユーザーの特性を理解した上で,この2つの基準を用いてユーザーに対するセグメント を行うことは,よりよく異なる特徴のあるユーザーに対する働きかけることができる.ま た,オープン・イノベーションのデザインに価値のある参考にもなる.
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イノベーションの「場」そのものにつながっている.伊丹(2005)によてば,場とは,「人々 が参加し,意識・無意識のうちに相互に観察し,コミュニケーションを行い,相互に理解 し,相互に働きかけ合い,共通の体験をする,その状況の枠組み」である111.また,野中 他(2017)は近年の研究において,「場とは,リアルな場だけでなはなく,時空間を超えて関 係性が続くソーシャルメディアのような場,バーチャルな場もある.通常業務を行う部署 でも,あるいはその時々の課題に取り組むプロジェクトチームも,また,有志の集まる非 公式な勉強会も,すべて場になり得る」と詳しく説明している112.さらに,野中他(2017) は新しい知を創る場にするには,6 つの条件があると指摘している.筆者はこれらの条件 をそれぞれ次のようにまとめている.
① 参加メンバーがその場にコミットしていること.
② その場が,目的をもって自発的にできていること.
③ メンバー間で,感性,感覚,感情が共有されていること.
④ メンバー間の関係の中で,自分を認識できること.
⑤ 多様な知が存在していること.
⑥ 多様な知を新たに取り入れるために場の境界は開閉自在で常に働いていること.
上述した研究を対照すれば,シャオミの MIUIフォーラムは場の概念に含まれ,さらに 新しい知を創る場でもある.こうした場が構築されたことは,オープン・イノベーション の条件が備えたことを意味している.野中他(2017)の研究の中でも,「開かれた場にして多 様な知を取り入れること」がオープン・イノベーションには必要であると強調されている
113.このように,シャオミの MIUIフォーラムを通して,知識の流動があって初めてオー プン・イノベーションが成り立つ.場において,情報的相互作用が起こり,それに心理的 相互作用が伴うことが特徴である(伊丹,2005)114.それゆえ,こうしたユーザーが集まっ た場をどのようにマネジメントするか,それによって,その後の参加者の行動が変わると いうことを注意すべきである.場のマネジメントとは,「組織の中にさまざまな場を生み だし,それらの場を機能させていくことによって組織を経営しようとするマネジメントの あり方」である115.
シャオミのオープン・イノベーションの場をより分かりやすく表現するために,上述し た分析をもとに,図20が作成された.図20で示されているように,このオープン・イノ ベーションの場は,3 重構造となる.企業側の行動が左側にまとめ,ユーザー側の変化は 右側の枠内に示されている.オープン・イノベーションを実施する初期段階において,企 業はまだ知名度がないので,点在している知識を集めるために,既存したソーシャルメデ ィアを活用し,知識所有者の注意を喚起することができる.この段階のユーザーの特徴は,
自律的な存在であり,会社のブランド,または製品に関与が薄い.ある程度ユーザーが集 まると,オープン・イノベーションは第二の段階に入る.この段階になると,企業は,オ ープン・イノベーションの場に集まってきたユーザーを特定することが必要である.シャ
111 伊丹敬之 (2005)『場の論理とマネジメント』東洋経済新報社,p.152
112 野中郁次郎・西原文乃 (2017)『イノベーションを起こす組織』日経BP社,p.27
113 野中郁次郎・西原文乃 (2017)『イノベーションを起こす組織』日経BP社,p.31
114 伊丹敬之 (2005)『場の論理とマネジメント』東洋経済新報社,p.42
115 同上
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図 20 3重構造のオープン・イノベーションの場と点在している知識の流動性
出所:筆者が作成
ユーザー側
自律的な存在 企業側
ユーザーを集める
既存したSNSからユーザーの注意を喚起する
機能改善の参加者 イベントの参加者
システムテストの参加者
能動的な存在 ユーザーを特定する
参加者の募集・話題の提示・イベントの開催
協力的な存在
名誉開発メンバー マニアクラブ コミュニティ管理グループ 優良リソースグループ 解答グループ
ユーザーに権限委譲
ユーザーのサポートをする
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オミの場合は,MIUI フォーラムを通して,参加者の募集,話題の提示,イベントの開催 などの方法でユーザーを巻き込む.よって,ユーザーは企業の活動にますます関与し,自 律的な存在から能動的な存在に移転しつつある.また,第3段階になると,ユーザーの増 加とともに,企業が行っているイノベーションに対する関心のあるユーザーたちはますま すオープン・イノベーションの場に定着する.さらに,アクティブユーザーたちは自発的 に企業のオープン・イノベーションに参加し,企業にとっての協力的な存在になる.それ ゆえ,この段階では,企業は,ユーザーと従業員のコミュニケーション,あるいはオープ ン・イノベーションのプロセスに介入せずに,特定されたユーザーに十分な権限を委譲し,
ユーザーをサポートする役割を果たすことが効果的である.
上述の通り,本項では,ユーザーの注目と関与を喚起することができるオープン・イノ ベーションの場の特徴について考察した.要するに,企業は,オープン・イノベーション の場の生成と生成した場を動かしていくための場のマネジメントが必要である.