第五章 考察と結論
第 6 節 知識を融合させるインセンティブ仕組み
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オミの場合は,MIUI フォーラムを通して,参加者の募集,話題の提示,イベントの開催 などの方法でユーザーを巻き込む.よって,ユーザーは企業の活動にますます関与し,自 律的な存在から能動的な存在に移転しつつある.また,第3段階になると,ユーザーの増 加とともに,企業が行っているイノベーションに対する関心のあるユーザーたちはますま すオープン・イノベーションの場に定着する.さらに,アクティブユーザーたちは自発的 に企業のオープン・イノベーションに参加し,企業にとっての協力的な存在になる.それ ゆえ,この段階では,企業は,ユーザーと従業員のコミュニケーション,あるいはオープ ン・イノベーションのプロセスに介入せずに,特定されたユーザーに十分な権限を委譲し,
ユーザーをサポートする役割を果たすことが効果的である.
上述の通り,本項では,ユーザーの注目と関与を喚起することができるオープン・イノ ベーションの場の特徴について考察した.要するに,企業は,オープン・イノベーション の場の生成と生成した場を動かしていくための場のマネジメントが必要である.
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ンサー』という名前の短編映画をリリースした.この映画は,シャオミ創業のエピソード を物語のベースにし,小さな村で暮らしている若者の夢について語った.この100人の名 前は,ショートフィルムに登場したレーシングカーのボディにも印字された.この短編映 画が好評されたとき,映画館を見に行ったユーザーと従業員たちの涙が溢れた.
さらに,シャオミはオフ会プラットフォームである「同城会」を創設した.これは今や 31の省と都市で開催されている.2週間に1回,シャオミは異なる都市で「シャオミ同城 会」を組織し,30〜50人のユーザーを招待し,シャオミのエンジニアと直接にコミュニケ ーションをとるチャンスを与える.これらのユーザーは非常にアクティブなユーザーであ る.彼らはシャオミ製品に大きな関心を持っており,他のユーザーやシャオミ社の従業員 とこの交流を持つことを楽しみにしている.こうしたインセンティブによって,ユーサー が企業に対する忠誠心を引き出され,シャオミが構築したさまざまなプラットフォームに ますます定着し,従業員とユーザーから構成されているインセンティブ仕組みの必要条件 が満たされた.
6-2 ユーザーと従業員から構成されたインセンティブ仕組み
第二章で説明したように,伝統的なオープン・イノベーションにおいて,専門部署の設 立が強調されている.つまり,知識を探求すること,知識の活用を促進する役割を果たす 組織を独立させるべきであるという主張である.そもそも,専門部署を配置する目的の 1 つは,オープン・イノベーションの遂行における従業員の拒否反応を解消し,よりよく知 識の融合をさせるからである.しかし,シャオミは,組織を増加するもしくは独立するこ とをせずに,オープン・イノベーションの体制を構築した.シャオミのやり方から見れば,
インセンティブ仕組みがユーザーと従業員の間で形成されたので,知識を融合させるとい う目的が実現できた.この現象は,非常に興味深い発見であり,従業員側の自社開発症候 群と拒否反応という問題を解決する際に効果がある.よって,本項ではシャオミのインセ ンティブ仕組みを構築するために必要となる条件と,そこに働くメカニズムについて検討 していく.
勝又(2011)によれば,ユーザー・イノベーション研究では,なぜ無料で共有・配布する のかという問題は大きく取り上げられてきた116.イノベーションを公開にしたユーザーの 動機を明らかにするために,内発的な動機付け(Lerner and Tirole,Roberts, et, al. 2002)と外 発的動機付け(von Hippel ,2005)が提示されている.しかし,まだ明らかにされていない ところが多く,「動機がどこに存在するのかについては,今後の研究課題といえる(勝又,
2011,)」.動機づけには,行動喚起,目標に向けた行動の方向付け,行動持続という 3つ
の機能がある(今田他,2015)ので,オープン・イノベーションのプロセスにおいて,ユー ザーと従業員の行動に動機づけていくためのインセンティブシステムを検討する必要が ある.また,人間の欲求は主に①衛生要因と②動機付け要因2種類に分けられることがで きる(ハーズバーグ,1968).衛生要因は,苦痛を避けようとする動物的な欲求である.つ まり,与えられても満足を高めないが,それがなければ不満を感じるというインセンティ
116 勝又壮太郎 (2011)「リードユーザーの概念と測定への試み-経営学輪講 von Hippel (1986)
-」赤門マネジメント・レビュー10(3),p.222
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ブであり,給与や職場環境,雇用の保証,会社の方針などが含まれる.このようは衛生要 因に関する分析は,従業員を中心に分析が行われているが,本論文では従業員のモチベー ションに着目せずに,オープン・イノベーションのプロセスにおける従業員とユーザーの インタラクションについて論じるので,動機付け要因の視点で説明を行う.動機付け要因 は心理的に成長しようとする人間的欲求であるからである.
まず,従業員とユーザーから構築されたインセンティブ仕組みが重要である理由は,オ ープン・イノベーションの参加者は,企業内部の従業員と外部の知識所有者であるからで ある.それゆえに,従業員とユーザー両方に対して,同時に効果がある仕組みが求められ る.ここでは,第四章で取り上げたシャオミの事例をもとに,シャオミのインセンティブ 仕組みを図 21 のように示している.中央に置かれたのは「ユーザー」である.左側と右 側にある「開発者」と「サービス提供者」は全体従業員を代表している.ユーザーと従業 員の間は実線,二点鎖線,点線,異なる線種で連結しており,インセンティブの生成順番 を表現している.それぞれの線種が表した順番が,図の下にまとめられている.また,矢 印の方向はインセンティブの提供側とインセンティブの与えられる側を提示している.
図 21 を用いて第四章の事例を検討すれば,左側にあるシャオミの開発者たちは,フォ ーラムが成立された当初,企業の業務命令に従い,フォーラムの閲覧,ユーザーとの交流,
質問に対する回答などを行っていた.よって,このプロセスにおいて,従業員たちはユー ザーが持っている問題を発見し,ユーザーの需要も知ることができた.その次,これらの 情報に基づき,従業員はユーザーの需要を満たしたので,ユーザーは,開発者とコミュニ ケーションをすることは自分にとってメリットがあることを認め,より積極的にフィード バックや機能の評価などをした.それに加えて,自分の問題を解決してくれた開発者に対 して謝意を表すために,MIUI フォーラムが含まれたソーシャルメディアで応援する気持 ちを発信する.こうしたユーザーからの反応を見て,開発者たちは,自分の仕事が承認さ れていると感じられ,モチベーションが生まれ,さらなるユーザーとのコミュニケーショ ンを求めるようになってきた.その一方,ユーザーたちは,従来開発者とのコミュニケー ションから便宜を与えられたので,より要望と新しいアイデアを提供していく.こうした 好循環が形成した結果,開発者はユーザーの意見やアイデアをもとに既存製品の改善と新 規製品の開発に取り組むことが実現した.
その一方,サービススタッフたちはユーザーに親切で,特徴のあるサービスを提供し,
ユーザーの感謝と購買意欲が引き出された.また,ユーザーから得た良い反応は,サービ ススタッフのインセンティブとなり,スタッフたちはより多くのコミュニケーションを自 ら積極的に行うようになった.その結果,ユーザーはサービススタッフの立場をよりよく 理解することができた.それゆえ,サービススタッフたちは自分の仕事を理解してくれた ユーザーに応えられるために,積極的によりよいサービスの提供と仕事内容の改善を行っ ていく.したがって,図 21 で示しているように,シャオミのインセンティブ仕組みにお いて,開発者とユーザーの間にせよ,サービススタッフとユーザーの間にせよ,このよう なコミュニケーションを繰り返す中で,ユーザーと従業員たちが互いにのインセンティブ 提供者となっており,さらに仲間意識が生まれてきた.ここで,注意しなければならない のは,このインセンティブ仕組みにおいて,直接にアイデアやイノベーションを貢献して いるユーザーのみならず,ある程度関与度のあるユーザーにも広く機能していることが特
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図 21 従業員とユーザーから構成されるインセンティブ仕組み
出所:筆者が作成
バリュークリエイター
アクティブユーザー
認証したユーザー コア・バリュークリエイター
ステップ3 ステップ2
ステップ1 ステップ4 ステップ5
サービススタッフ 開 発 者
ユーザーの関与の推移
さらに要望と新しいアイデアを出す フィードバック・機能評価・応援
さらにサービススタッフの立場を理解する 感謝・購買意欲
問題解決・需要を満たす
さらなるコミュニケーションを求める
ユーザーの声を既存製品の改善と新規製品の開発に取り組む
サービスを提供する
さらなるコミュニケーションを求める
ユーザーを応えられるために,よりよいサービスの提供
ユーザーにとってのインセンティブ 従業員にとってのインセンティブ