第四章 シャオミのケース・スタディ
第 8 節 アクション 5:ユーザーの参加意識を引き出す
以上のように,シャオミは創立した後,ユーザーを獲得する段階,ユーザーの注意と関 与を喚起する段階,ユーザーを巻き込む段階を経て成長してきたことについて説明した.
シャオミは,最初に少数のファンを獲得したが,ユーザーがますます巻き込まれるととも に,現在,ユーザーの協力を得やすい環境が作り出された.このような成果を収められる もう 1 つの原因は,ユーザーの参加意識を引き出すことを重視することである.つまり,
シャオミは,ユーザーが自発的にコミュニケーションとオープン・イノベーションに参加 することを単に待つだけではなく,ユーザーの参加意識を引き出すために,積極的に取り 組んでいる.具体的に言えば,シャオミは主に3つの方法を採用している.すなわち,① ユーザーに権限を委譲する,②商品化のプロセスをオープンする,③ユーザーの口コミを 利用することである.
8-1 ユーザーへの権限委譲
現在,シャオミは,さまざまな面でユーザーに権限を委譲している.例えば,MIUI フ ォーラムが設立された当初の管理者はすべてシャオミの従業員であったが,現在,ユーザ ーはフォーラムの管理者を担当している.こうしたフォーラム管理の役割を果たしている ユーザーたちは「コミュニティ管理グループ(中国語:社区版物组)」と呼ばれる.シャオ ミは,MIUI フォーラムの管理に直接的に介入せず,コミュニティ管理グループのユーザ ーに充分な権限を委譲し,彼らに技術面での支援を提供している.ただし,コミュニティ 管理グループがフォーラムを管理する際,シャオミは補佐役として,様々なアドバイスを する場合が多い.現在,コミュニティ管理グループは 125 人がいて,MIUI フォーラムに
対して50,000回以上の管理と,400,000 件以上の書き込みもした85.
また,同じく管理の役割を果たしているのは「解答グループ(中国語:解答组)」もある.
このグループのメンバーは 362 人がいて,MIUI フォーラムでユーザーが質問した内容に 対する質問応答を行っている86.解答グループのメンバー自身もユーザーであり,シャオ ミへの申し込みを通して解答グループに参加した.現在,彼らは1000,000人以上のユーザ ーに対する解答を行い,1,500,000件の解答を公開している87.
なお,6-3で説明したイベントの企画と開催を担当している78人の「マニアクラブ会長
85 MIUIフォーラムのホームページを参照 http://www.miui.com/joinus-2.html
86 同上ホームページを参照 http://www.miui.com/joinus-5.html
87 同上
- 80 -
(中国語:发烧友俱乐部长)」がいる.彼らはシャオミとともにオフ会の責任者となり,シ ャオミと他のユーザーの間のかけ橋になっている.2014年4月16日,シャオミは学生向 けのMIUIキャンパスクラブをも設立した.それと同時に,「キャンパスクラブ会長」を設 け,80人のコアメンバーを選定し,大学側と提携してキャンパス内でのイベントを企画し ている.現在,キャンパスクラブ会長たちが企画したイベントは500回以上となり,200,000 人以上の参加者が集まった88.
ほかには,世界中で質の高いリソースの発見と体験をした上で,フォーラムで他のユー ザーに勧める役割を担っているグループもある.このような責任を果たしているのは「優 良リソースグループ」のメンバーである.現在,優良リソースグループのメンバーは 24 人がいり,アンドロイドに搭載されている人気のあるゲーム,着信メロディ,壁紙,およ び各種のアプリに関する紹介文をほぼ毎日書き込んでいる89.
こうしたユーザーから構成されているグループは,ほかにも多数存在している.例えば,
シャオミはMIUIフォーラムのユーザーに対して他の基準で権限の細分化も行った.その 中では,普通のユーザーが集まった「昇進ユーザーグループ(中国語:晋级用户组)」,一般 ユーザーが申し込みによって参加できる「普通ユーザーグループ(中国語:普通用户组)」,
シャオミの従業員とユーザー管理人から構成された「サイト管理グループ(中国語:站点管 理组)」などが含まれている.さらに,グループの中では,より詳しく分けられている.例 えば,昇進ユーザーグループにおいて,ユーザーのオンライン時間とフォーラムでの書き 込み回数によって8つのレベルが設けられている.また,普通ユーザーグループにおいて,
ユーザーがフォーラムで果たしている役割に応じて 35 グループに細分化された.サイト 管理グループも,フォーラムで担当している職能に応じて 19 グループに分けられ,それ ぞれの名前をつけている.なお,シャオミの従業員は,フォーラムで個人の ID を持ち,
フォーラムでの解答および掲示板での書き込みができる.そのため,シャオミが設けたユ ーザーに対するグループの分け方はシャオミの従業員たちにも適応している.
その結果,権限を与えたれたユーザーたちは,自分が企業の一員としての意識が強まれ,
企業が意識していないところでも活躍し,他のユーザーとのコミュニケーションやフォー ラム管理,イベントの企画などのような活動に参画している.こうしたユーザーの参加意 識は,シャオミとMIUIフォーラムに対する認識があって始めて成り立つことである.ユ ーザーはシャオミのブランドと製品,サービスなどに対する理解がますます深まるにつれ て,コミュニティへの参加動機・意識も高まり,コミュニティが維持される原動力になっ てきた.
上述したように,MIUI フォーラムで,ユーザーが主体となってコミュニティを運営・
管理することができるので,他の参加したユーザーと直接に情報の共有および意見の交換 を行うことが特徴である.それゆえに,新サービスを開発するにあたりアイデアの募集な ど積極的にユーザーを参加させ,コミュニケーションを図っている.こうしたことによっ て,ユーザーにインセンティブを与える効果がある.
88 MIUIフォーラムのホームページを参照 http://www.miui.com/joinus-10.html
89 MIUIフォーラムのホームページを参照 http://www.miui.com/joinus-3.html
- 81 -
8-2 商品化プロセスのオープン
ここまで,シャオミのユーザーが製品の改善及び新しいアイデアの提供について複数の 事例を取り上げられた.本項では,シャオミの組み立て式ルーターの事例を用いて,ユー ザーを商品化のプロセスに参加させる効果について説明していく.結論を先に述べると,
シャオミはユーザーをルーターの商品化のプロセスに参加させることによって,ユーザー の参加意識を引き出した.
シャオミは 2014 年に組み立て式ルーターを発売した.ルーターの部品は,すべて1 つ の木箱に入れられており,組み立て説明書とともに消費者に届ける.消費者は,届いたル ーターの部品を説明書とおり自ら組み立てをする.一般的に考えると,半製品を購入する ことは,組み立ての時間がかかるし,組み立てに成功する保証もないので,理解できない ように思える.しかし,このルーターは,製品の組み立てに参加することができるという ことでユーザーを魅了し,ユーザーが大いに歓迎している.結局,シャオミの組み立て式 ルーターは,2014年4月の発売日の当日に,308万件の予約が殺到した.その中では,最 初の10万台のルーターは,発売と発表してから59秒以内に売り切れになった.この業績 から見れば,シャオミは,ユーザーを製品の商品化プロセスに参加することは,ユーザー の熱意を呼び起こし,参加意識を引き出す効果がある.シャオミは,MIUIフォーラムで,
Wi-Fi ルーターのことを「新型おもちゃ」と呼んでいる.ユーザーが製品の生産プロセス
に参加することができるため,シャオミの商品は単なるモノだけでなく,自分の努力によ って得られた作品であると感じさせることができる.言い換えれば,ユーザーが手を加え られる製品を販売することは,ユーザーを巻き込む効果がある.
もちろん,ユーザーが製品の組み立てに参加させることには,ある程度のリスクも存在 している.例えば,まだ企業の活動に参加する意識を喚起されていないユーザーは,利便 性と安全性を考慮して完成品を購入したがる.第二に,半製品の組み立てに強い関心を持 っているユーザーがいるが,組み立ての経験がない可能性がある.このような問題を解決 するために,シャオミは以下2つの対策を採用している.
① 製品の安定性を求めるユーザーのニーズを満たすために,組み立ての必要がない普 通ルーターは同時に販売されている.普通ルーターと組み立て式ルーターは,デザ インから機能までほとんど同じである.普通ルーターと組み立て式ルーターの区別 は,組み立て式ルーターだけは限定販売であり,一台一台に異なる整理番号がつけ られているだけである.
③ その一方,組み立て式ルーターを購入したが,経験がないユーザーがいる.このよ うなユーザーに対して,MIUIフォーラムにおいて,解答グループのメンバーと他の アクティブユーザーは,無償で組み立てに関する知識を提供して積極的に支援して いる.このような仕組みは,シャオミのサービススタッフにとって,アフターサー ビスの負担が多く軽減された.
こうして,シャオミは,新規製品の研究開発のみならず,場合によって,商品化までの プロセスを公開している.このようなやり方によって,まったく製品に関する知識のない ユーザーからマニアユーザーまで,幅広いユーザー層に参加させることができるような環 境を構築された.さらに,最近,MIUI フォーラムでスマートフォンの組み立ても試みた