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第四章 シャオミのケース・スタディ

第 7 節 アクション 4:ユーザーを巻き込む

7-1 参加者の募集

MIUI フォーラムに集まったユーザーが増加するとともに,ユーザーの意見を収集する ことはますます便利になってきた.例えば,表22で示しているように,シャオミは,MIUI フォーラムでスローガンの募集,テスターの募集,壁紙の募集,製品開発に関する意見の 募集などが多数発表した.実は,シャオミと上述したマイクロソフト以外にも,多数の企 業は,このようなインターネット上の募集を採用しており,ユーザーのアイデアを集まっ ている.しかし,単なる消費者の声を収集することだけは無意味であり,正しくユーザー からの情報を読み取り,活用することこそ大事である.小川進は,ユーザー・イノベーシ ョンに関する研究を積極的に行っている日本人学者として,多数のユーザー・イノベーシ ョン事例を取り上げている(2002a, 2002b, 2006, 2011, 2013).これらの事例の中から,良品 計画の事例を挙げて説明すれば,同社は,ユーザーとともに新商品の開発を行う際,次の ような開発フローが構築された(小川,2006).

① 登録したユーザーが掲示板に書き込みを行う

② ユーザーの書き込みから抽出した商品開発テーマを発表する

③ 当該テーマに対して消費者が自分のアイデアを投稿する

④ ユーザーのアイデアを整理した上で,最も気に入られたものを知るために投票を実 施する

⑤ ④で最も喜ばれたアイデアを元に,いくつかデザイン案を良品計画側が作成に,再 投票を実施する

⑥ ⑤で投票数が最も多かったものの商品化を推進する

⑦ 確定された商品案に対して購入予約を募る

⑧ 購入予約者への販売完了後,ネットに加えて,実店舗での販売を開始する

⑨ 購入者からのコメントを集め,次の新商品の開発と既存商品の修正を検討する シャオミは,良品計画と同じような開発フローがあり,ユーザーからの情報を収集し,

価値のある提案に対して積極的に取り組みを導入している.例えば,シャオミのスマート フォンに搭載されている機能は,時々募集の方法で参加したユーザーの提案から開発した.

表22に載せている「ROMの開発に関する意見」という書き込みは,良品計画と同様な目 的をもって始められた.こうした活動を設計した流れはほとんど良品計画と同じなので,

詳しく述べる必要がないが,筆者は,MIUI フォーラムで行われているコミュニケーショ ンを観察したところ,次の2つの現象を捉えた.

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①シャオミの介入を伴わずに,ユーザー間で行われているコミュニケーションがシャオ ミにメリットをもたらした.具体的に言えば,書き込みは,シャオミによって発信された ものであるかどうかを問わず,ユーザー同士の間では,自発的にコミュニケーションが形 成されている.シャオミは,こうしたコミュニケーションの活用によって,自社に便宜を もたらすことができる.

②もともと市場調査のような消費者の需要を把握するための行動は,企業が行うべきで あるが,シャオミのユーザーが自発的この役割を果たしていることを発見した.上述した 良品計画の開発仕組みで説明すれば,投票を含め,すべてのプロセスは良品計画側が主導 的に推進している.しかし,筆者は,MIUI フォーラムで,ユーザーが自発的にこのプロ セスを実施している現象を発見した.

例えば,シャオミは,「新機能に関する意見」というセクションを開設した.ユーザー は,このセクションで互いに意見のやりとりを行うことができる.現在,「新機能に関す る意見」には,26万以上のテーマが書き込まれ,毎日の新規テーマとコメントは500回以 上もある.それゆえ,シャオミは,このセクションを通して,ユーザーの意見を知ること ができる.これら収集された意見は,シャオミにとって,新機能の開発と既存機能の修正 を行う際の参考にもなる.また,このセクションにおいて,ユーザーは自分が求めている 機能や改善をアピールするだけではなく,他のユーザーの意見も知られる.例えば,ユー ザーAさんは1つの書き込みにMIUIシステムについて次の3つ意見を発表した.①ホー ム画面にカレンダーが表示される時,西暦と旧暦両方ともあるべきだということ,②MIUI 天気という機能のアイコンのデザインが悪いこと,③シャオミのスマートフォンに搭載さ れたシャオミ音楽という機能を消して欲しいということを提唱した.こうした3つの意見 に対して,シャオミからの返事は,①と②について検討すること,③について,シャオミ 音楽の削除はしないが,今後,アプリの改善に努めていく.ここまでのやり取りは,普通 に,ユーザーの要望に対して企業の一対応が見られるが,その後の展開は興味深いところ がある.

シャオミが返事した後,この書き込みを閲覧したほかのユーザから,発言者の提案に対 して,多数の批判が寄せられた.その理由は,①西暦を使う人はほとんどであるが,旧暦 を使う人は少ない.だから,少数のユーザーのためにわざわざホーム画面に表示する必要 がない.②デザインに対する感覚は人それぞれであるので,今のデザインにはシャオミの 特徴があり,変える必要がない.③シャオミ音楽は工場出荷状態下で搭載されており,発 信者が利用しなくても特に影響がないが,スマートフォンを購入してからすぐ音楽機能を 使おうとするユーザーにとって,シャオミ音楽がなくなると困る.このようなユーザー同 士のコミュニケーションが行われるにつれて,より多くのユーザーがディスカッションに 参加するようになった.さらに,提案②をめぐって,良いデザインというものは一体どの ようなものかについての論議が展開していた.

結果から見れば,このようなユーザー同士の間で行われている発言は,より多くのユー ザーにとって,関心を喚起する効果があった.この書き込みに参加したユーザーたちが,

同じ話題の論争に巻き込まれたと同時に,互いの意見を知ることができ,情報の交換によ って,シャオミの製品の機能についての理解も深められた.MIUI フォーラムにおいて,

このような例は多数見られる.さらに,ユーザー側自発的に意見調査とアンケートも行わ

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れている.シャオミは,その中,要望の多い意見を活用し,採用することによって,新商 品の開発や既存機能の改善・改良を促進することができた.

以上は,シャオミの介入を伴わずに,ユーザー間で行われているコミュニケーションが シャオミにメリットをもたらした具体例を説明した.そこで,ここからシャオミのルータ ーに関する1つの事例をもちいて,ユーザーが自発的に市場の動向と他のユーザーの需要 を調査する役割を果たすことについての説明を行う.

2014年9月16日,ユーザーBさんは,MIUIフォーラムでシャオミルーターに関する意 見調査を行った.書き込みをしたBさんは,多数のユーザーから出た代表的な意見を整理 し,集約化した複数の項目に対してユーザーが必要とする機能についての投票を行った.

筆者は,Bさんが設計した投票の調査項目について表23のようにまとめている.実は,最 初,Bさんははっきりした目的を持って真剣にアンケートを実施するつもりではなかった.

ただ自分がシャオミルーターを購入したので,これをネタとして,MIUI フォーラムで共 通した話題に参加してくれるようなユーザーを見つけたかった.アンケートを実施した時,

Bさんはルーターを購入して2日しか経ってなかった.最初,Bさんは9月16日に,①-

⑩の質問を添付し,MIUI フォーラムの「シャオミルーター」というセクションの書き込 みに公開した.その結果,アンケートに参加したユーザーが 1711 人もおり,B さん本人 は,「書き込みをしてから,あまり期待してコメントを待っていなかったので,人の関心 を引いたことを思わなかった」と言った.

表 23 シャオミルーターの新機能に関する調査

タイムコントローラ機能 10.50%

指定した時間にルーターのシャットダウンを実行 6.13%

シャットダウンしたルーターを自動的に起動する 8.87%

ルーターの SSDI(アクセスポイントの識別名)を使い分ける機能(ゲ ストSSDIを設定し,ゲスト用の暗証番号を定期的に変える)

9.50%

知らない人の無断利用を防ぐ機能 11.18%

ウェブ上のインターフェースを改善 7.71%

有線接続の場合パソコンでリモートする機能 7.21%

VPN(Virtual Private Network)接続の設定 14.45%

広告ブロック機能がもっと多くの広告をカット 13.08%

自動的にファイルをクラウド上に保存 3.69%

マルチSSID機能(追加質問)81 3.64%

ハードウェアの休止状態を強化(追加質問) 4.03%

出所:MIUIフォーラムの情報により筆者が整理して作成

現在,このアンケートに回答したユーザーは1786人もいる(2018年11月27日).参加し たユーザーが増加するとともに,この書き込みはシャオミ側の従業員の注目を引いた.そ の結果,現在,シャオミのルーターには①―⑩の機能がほとんど実現した82.このような

81 マルチSSID機能は,1つのルーターで複数のSSIDが使えることである.

82 ⑪と⑫は追加された質問なので,公開された時間は短い.この理由で,この2つの項目はま