博
士 学 位 論 文
オープン・イノベーションプロセスにおける
企業の主導的役割
―シャオミの事例を通して―
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博
士 学 位 論 文
オープン・イノベーションプロセスにおける
企業の主導的役割
―シャオミの事例を通して―
2018 年 12 月 17 日
于 渓
i
目 次
序 章 ... - 1 - 第 1 節 研究の背景と現状 ... 1 第 2 節 問題意識 ... 6 第 3 節 研究の目的と内容 ... 7 第 4 節 理論的枠組みと研究の位置付け ... 7 第 5 節 本論文の構成 ... 9 第 6 節 研究の特徴と意義 ... 10 第 7 節 事例の選択 ... 11 第 8 節 研究の方法 ... 12 -第一章 用語の定義 ... - 14 - 第 1 節 はじめに ... 14 第 2 節 イノベーションの定義について ... 14 第 3 節 日本におけるイノベーションに対する認識の変遷 ... 15 第 4 節 イノベーションをめぐる諸論争 ... 21 第 5 節 イノベーションと混同されやすい用語 ... 22 第 6 節 まとめ ... 24 -第二章 先行研究 ... - 26 -ii 第 1 節 はじめに ... 26 第 2 節 オープン・イノベーションの提示 ... 26 第 3 節 オープン・イノベーション論に対する批判 ... 29 第 4 節 技術提携とオープン・イノベーション ... 31 第 5 節 オープン・イノベーションの分類 ... 32 第 6 節 オープン・イノベーションを再定義 ... 36 第 7 節 オープン・イノベーションの採用に関する研究 ... 38 第 8 節 オープン・イノベーションのプロセスにおける企業の役割 ... 39 第 9 節 本研究の位置付け ... 41 第 10 節 まとめ ... 42 -第三章 ユーザーをオープン・イノベーションに組み込む手法... - 43 - 第 1 節 はじめに ... 43 第 2 節 ユーザー・イノベーションについて ... 43 第 3 節 ユーザー・イノベーションの定義 ... 45 第 4 節 ユーザー・イノベーションの分野と現状 ... 46 第 5 節 リードユーザーについて ... 47 第 6 節 ユーザーコミュニティについて ... 49 第 7 節 ユーザー・イノベーションのためのツールキット ... 50 第 8 節 まとめ ... 51 -第四章 シャオミのケース・スタディ ... - 52 -
iii 第 1 節 はじめに ... 52 第 2 節 シャオミについて ... 53 第 3 節 MIUI について ... 59 第 4 節 アクション 1:ユーザーの獲得 ... 63 第 5 節 アクション 2:多様なユーザーをシステムの開発に取り組む ... 65 第 6 節 アクション 3:ユーザーの注意と関与を喚起する ... 71 第 7 節 アクション 4:ユーザーを巻き込む ... 73 第 8 節 アクション 5:ユーザーの参加意識を引き出す ... 79 第 9 節 アクション 6:従業員の参加意識を引き出す ... 83 第 10 節 アクション 7:価値創造の方法論を共有する ... 89 第 11 節 まとめ ... 90 -第五章 考察と結論 ... - 93 - 第 1 節 はじめに ... 93 第 2 節 ユーザーによって創造された価値 ... 93 第 3 節 知識所有者としてのユーザー ... 97 第 4 節 多様なユーザーセグメント ... 98 第 5 節 オープン・イノベーションの場 ... 101 第 6 節 知識を融合させるインセンティブ仕組み ... 104 第 7 節 オープン・イノベーションの各段階における主導的役割... 108 第 8 節 企業が果たした役割の評価基準 ... 116
-iv 第 9 節 シャオミのオープン・イノベーション事例の位置づけ... 118 第 10 節 まとめ ... 119 -終 章 ... - 121 - 第 1 節 はじめに ... 121 第 2 節 本研究の発見 ... 121 第 3 節 本研究の含意 ... 124 第 4 節 今後のオープン・イノベーション戦略への示唆 ... 124 第 5 節 研究の限界と今後の課題 ... 125 参考文献 ... 127
-- 1 --
序 章
第 1 節 研究の背景と現状
1-1 クローズド・イノベーションの限界
長い間,急進的なイノベーションは大手企業の R&D から生まれたと認識されていた (Chandler, 1962).このような考え方は,典型的な企業内部での技術・製品開発を念頭に置 くものであり,クローズド・イノベーションと呼ばれる.しかし,経営環境の変化の下で, 従来のクローズド・イノベーションのアプローチは,イノベーション・サイクルの短縮と 市場投入までの時間の短縮という要求に応えられなくなる恐れがある.Chesbrough(2007) は,熟練労働者の流動性の高まり,高等教育の普及による社会の知識レベルの向上,ベン チャー・キャピタルによる資金供給という原因でクローズド・イノベーションの限界がき ていると注意を促した.こうしたクローズド・イノベーションの限界の背景として,科学 技術の発展,企業の求める知識基盤の拡大,企業外部の資源を活用する要請が強まること などが挙げられる(Granstrand & Pavitt, 1997;チェスブロウ,2007;延岡,2010).また,マイケル・E・ポーターの「5 フォース」にある代替品の脅威という考え方を用い て,クローズド・イノベーションの限界について説明することができる.ポーター(1980) は,①買い手の交渉力,②売り手の交渉力,③新規参入企業の脅威,④代替品の脅威,⑤ 競合との敵対関係といった5 つの競争要因を提唱した後,これらの要素が「5 フォース」 として周知のものとなってきた.このうち,代替品を見つけ出す行為について,ポーター は,「現在の製品と同じ機能を果たしうる他の製品を探す」と定義した1.その上で,注意 すべき代替品として,①現在の製品よりも価格性能比がよくなる傾向をもつ製品,②高収 益を上げている業界が生産する製品を挙げている.しかし,成熟した市場環境において, 販売チャネル,ブランドイメージなどがまったく異なる相手と競争する局面が増えてきて いる(内田,2009).つまり,企業にとって,消費者が,上述した「現在の製品と同じ機能 を果たしうる他の製品」のみならず,異業種からの代替品にも引き付けられる恐れがある. その一方,消費者の立場から言えば,買い物の選択肢は多いものの,金銭と時間には限度 がある.そのため,限られた金銭を如何に配分するのかを工夫しなければならない.「家 計調査報告」のデータを用いて,異業種からの代替品の脅威を検証することができる2.例 えば,2017 年のデータから見れば,二人以上の世帯の家計消費支出は,2014 年以降 4 年 連続の実質減少となった(表 1).消費支出(二人以上の世帯)を 10 大費目別にみると,「交通・ 1 M.E. ポーター著,土岐坤・服部照夫・中辻万治翻訳 (1995)『競争の戦略』ダイヤモンド社, p.17. 2 総務省統計局 (2018)『家計調査報告〔家計収支編〕』p.2.
- 2 - 通信」および「家具・家事用品」の消費支出がそれぞれ1.3%(39,691 円)と 2.7%(10,560 円) で実質増加となった.その一方,「食料」,「教育」,「教養娯楽」,「光熱・水道」,「住居」, 「保健医療」また「被服及び履物」の 7 費目が実質減少となり,「その他の消費支出」は 前年と同水準となった(表 2).それゆえ,成熟した市場において,経営環境は変化しつつあ るにもかかわらず,相対的に消費者が所有する金銭は大きく変化していない.したがって, 消費支出全体が増加することのない市場において,企業は消費者に自社の商品やサービス を購入してもらうために,同業種の競争相手に勝つだけではなく,異なる業界における競 争相手と消費者の金銭を奪い合うことになっている. 表 1 消費支出の対前年増減率の推移 (二人以上の世帯) 年 次 月 月 平 均 額 (円) 名 目 増 減 率 (%) 実 質 増 減 率 (%) 消費者物価指数 増 減 率 (%) 2008 296,932 -0.3 -1.9 1.6 2009 291,737 -1.7 -0.2 -1.5 2010 290,244 -0.5 0.3 -0.8 2011 282,966 -2.5 -2.2 -0.3 2012 286,169 1.1 1.1 0.0 2013 290,454 1.5 10 0.5 2014 291,194 0.3 -2.9 3.3 2015 287,373 -1.3 -2.3 10 2016 282,188 -1.8 -1.7 -0.1 2017 283,027 0.3 -0.3 0.6 * 消費者物価指数は,「持家の帰属家賃を除く総合」である. 出所:総務省統計局(2018)「家計調査報告〔家計収支編〕」(部分) 表 2 項目別家計支出の推移(二人以上の世帯) 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 食料 69,001 68,322 67,563 66,904 67,275 68,604 60,272 71,844 62,248 72,866 住居 16,897 17,024 18,179 18,874 18,231 18,262 19,069 17,931 17,804 16,555 光熱・水道 22,762 21,685 21,951 21,954 22,815 23,240 20,129 23,197 17,905 21,535 家具・家事用品 9,984 9,975 10,266 10,070 10,122 10,325 8,823 10,458 8,720 10,560 被服及び履物 12,523 11,994 11,499 11,382 11,453 11,756 10,269 11,363 9,160 10,806 保健医療 12,649 13,016 12,515 12,691 12,777 12,763 11031 12,663 10,899 12,873 交通・通信 39,147 38,070 38,965 36,509 40,089 41,433 35,080 40,238 32,469 39,691 教育 12,727 12,909 11,734 11,630 11,610 11,539 7,576 10,995 7,667 11062 教養娯楽 31,372 31,274 31,879 29,063 28,483 28,959 25,928 28,314 25,280 27,958 その他の消費支出 69,869 67,469 65,695 63,889 63,316 63,573 53,305 60,371 50,272 59,120 出所:総務省統計局「家計調査報告」2009-2018 年のデータにより筆者が作成3 また,Statista(2017)は世界範囲でスマートフォンの使用時間について調査を行った4.調 3 政府統計の総合窓口 (e-Stat) のホームページを参照 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200561&tstat=000000330 001&cycle=7&tclass1=000000330001&tclass2=000000330004&tclass3=000000330005 4 Statista のホームページを参照
- 3 - 査対象の約半数が毎日スマートフォンを5 時間以上に使用している.当該調査でわかるよ うに,消費者は限られている時間を所有しているが,多くの時間をスマホに費やしている. この現状から,消費者は他の製品やサービスに投入する時間がより限られていると考えら れる. 上述したように,異なる業界から現れた代替品がますます脅威になりつつあることが明 らかになった.企業は,イノベーションを推進する際,このような現象に対応するために, 従来の考え方から解放して,外部知識の活用が求められるようになっている.
1-2 オープン・イノベーションについて
上述したクローズド・イノベーションの限界は,オープン・イノベーションの背景とも なり,この背景の下で,当時,ハーバードビジネススクールの助教授であったチェスブロ ウは,イノベーションの新しいパラダイムを提唱した.彼は,オープン・イノベーション を「知識の流入と流出を自社の目的にかなうように利用して社内イノベーションを加速す るとともに,イノベーションの社外活用を促進する市場を拡大すること」と定義している (チェスブロウ,2007). オープン・イノベーションを活用するメリットとして,主に社内におけるイノベーショ ンの促進,新商品開発のスピード向上,優れた人材のモチベーションの向上,初期市場の 洞察,先行者利益の獲得,コア技術の深耕,製品の利便性と品質,内部開発への緊張感, 及びコストの削減,製品技術戦略・商品開発戦略の再構築などが挙げられている(Rigby & Zook, 2002;Christensen, et al., 2005;清水・米倉,2015).ゆえに,オープン・イノベーシ ョンの概念が提唱されて以来,多数の企業はそれの採用を積極的に推進してきた.例えば, 欧米企業の好例としてよく挙げられているレゴ,マイクロソフト,インテル,シスコ,ま たは日本企業の大阪ガス,資生堂,シャープ,ダイキン工業,トヨタ自動車,パナソニッ クなどがある(Gawer & Cusumano, 2002;元橋他, 2012;JOIC, 2018).とはいうものの,オ ープン・イノベーションのデメリットが存在していることも事実である.例えば,米倉他 (2015)によれば,オープン・イノベーションを実行することは,研究開発情報と技術の流 出の恐れがあり,自社の長期的開発志向が低下していく可能性もある5. このように,クローズド・イノベーションの限界が明らかになった背景の下で,オープ ン・イノベーションは新しいパラダイムとして論じられてきた.しかし,全ての物事が持 っている両面性と同様,オープン・イノベーションにはメリットとデメリットが同時に存 在している.したがって,オープン・イノベーションのメリットを生かすために,いかに してデメリットを解消するかが課題となっている.1-3 オープン・イノベーションに関する研究の現状
オープン・イノベーション理論が提唱されて以来,様々な領域での研究と実践が行われ https://www.statista.com/statistics/781692/worldwide-daily-time-spent-on-smartphone/ Statista は,ドイツに本社があるオンライン統計企業である.当社は,18,000 以上のソースから 得られた80,000 以上のトピックに関する 1,500,000 以上の統計情報を提供している. 5 米倉誠一郎,清水洋 (2015)『オープン・イノベーションのマネジメント』有斐閣,pp.26-28- 4 - ている.図1 は,トムソン・ロイターの科学部門であるサイエンティフィックにより提供 されているWeb of Science のデータから作られたものである.2018 年 8 月現在,オープン・ イノベーションに関する論文が 4,045 件収録されている.イノベーションに関わるほかの 研究と比較すれば,プロダクト・イノベーション 10,066 件,プロセス・イノベーション 18,106 件,サービス・イノベーション 6,782 件やマーケット・イノベーションの 8,028 件 に対し,オープン・イノベーションの研究はまだ少ない.今まで公表したオープン・イノ ベーションに関する論文がまだ少ないという点を見れば,研究される余地は充分にあると 考えられる. 図 1 国/地域別オープン・イノベーションに関する論文件数のランキング 出所:Web of Science のデータにより筆者が作成6 また,国/地域別論文件数のランキング(トップ 20)から見れば,アジア各国の中で,日本 は12 位(124 件)となっている.日本以外のアジア諸国では,中国は第 4 位(282 件),韓国は 第16 位(96 件)になり,第 1 位のアメリカ(1419 件)との間に大きな差がある.現在,日本で は,RIETI(独立行政法人経済産業研究所)はオープン・イノベーションに関する研究を数多 く行っている.例えば,元橋他(2012)は,日本の大手企業 9 社を対象にして,インタビュ ー調査を行い,「日本企業のオープン・イノベーションに関する新潮流: 大手メーカーに 対するインタビュー調査の結果と考察」を発表した.また,2015 年 2 月,日本の産業にイ ノベーションを創出し,競争力を強化させることを目的とする JOIC(日本オープン・イノ 6 Web of Science のホームページを参照 http://apps.webofknowledge.com/WOS_GeneralSearch_input.do?product=WOS&search_mode=Genera lSearch&SID=F2cMHV6lBMys9eTyv1W&preferencesSaved= 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 スコットランド フィンランド ブラジル デンマーク 韓国 インド スウェーデン ベルギー 日本 スイス オーストラリア スペイン カナダ イタリア オランダ フランス 中国 ドイツ イギリス アメリカ プロダクト・イノベーション 10,066 件 プロセス・イノベーション 18,106 件 サービス・イノベーション 6,782 件 マーケット・イノベーション 8,028 件 オープン・イノベーション 4,045 件 アメリカ:1419 件 日本:124 件 中国:282 件 韓国:96 件
- 5 - ベーション協議会)が設立された7.設立後わずか1 年で,JOIC は NEDO(新エネルギー産業 技術総合開発機構)とともに『オープン・イノベーション白書』を公表し,成果を上げた. さらに,2018 年現在,『オープン・イノベーション白書 第二版』も公表された.同白書 では,オープン・イノベーションの定義や変遷などを示し,国内外のオープン・イノベー ションにかかる現状と課題などについて検討を行った.それに,日本のオープン・イノベ ーション推進事例も多数掲載されている.RIETI の調査と JOIC の設立,またオープン・ イノベーションに関する研究の諸成果を見れば,日本ではオープン・イノベーションへの 関心が高まっていると言える. その一方,中国ではオープン・イノベーションに関する研究は,図 1 で示したように, 論文件数がアジア第1 位となっている.しかし,これらの研究は,ほとんど産業視点で行 われるものであり,個別企業に関する事例研究が極めて少ない.その原因は,欧米企業と 日本企業のオープン・イノベーション事例がしばしば挙げられているのに対して,中国企 業の成功例に関する情報が少ないからである.近年,中国企業のイノベーションについて の報道がますます多くなってきた.例えば,日経ビジネスオンラインで「中国」「イノベ ーション」を同時に入力して全文検索すれば,937 件の結果が出てくる8.同じ条件でオー プン・イノベーションを検査すれば,わずか 33 件があった.つまり,現在,中国企業の イノベーションが注目されているが,中国企業が推進しているオープン・イノベーション に関する詳細な報道が少ない.この現状を上述した日本側の調査・研究の動向と対照すれ ば,中国企業のオープン・イノベーション事例に対する研究の必要性が明らかになった. とりわけ,世界中からオープン・イノベーションへの関心が高まり,オープン・イノベ ーションを採用する会社が増えているにもかかわらず,Mortara, et al.(2011)は,実践に成功 している大企業の例はまだ少ないと強調している.それゆえ,こうした現状の下で,オー プン・イノベーションは汎用性の高い理論であることを検証するために,国を問わず,多 数の企業を研究することが不可欠である.本研究の方向性は,上述した背景と現状によっ て,明らかになった. 以下に,本節の要点をまとめる. ① 完全なクローズド・イノベーションのアプローチは限界に達し,オープン・イノベ ーションに対する検討が必要である. ② イノベーションに関する研究の中では,オープン・イノベーションはいまだに研究 する余地が十分にある. ③ オープン・イノベーションに関する研究は,アメリカで一番進んでいるのに対し, 他の国はアメリカとの間に大きな差がある. ④ オープン・イノベーションを実践している大企業の例はまだ多いとは言えない. ⑤ オープン・イノベーションの汎用性を検証するために,従来の欧米企業のみならず, 異なる国の企業に対する研究も必要である.特に,日本企業のオープン・イノベー ション事例がしばしば報道されている中で,中国企業に関する研究は少ない. 7 JOIC のホームページを参照.https://www.pr-table.com/JOIC/stories/486 8 日経ビジネスのホームページを参照 https://business.nikkeibp.co.jp/
- 6 -
第 2 節 問題意識
第 1 節で説明したオープン・イノベーションの定義とおり,チェスブロウは,「知識の 流入と流出」の活用を強調し,最終的に市場を拡大する目標につながるべきであると主張 している.しかし,点在している知識が,自律的に流入と流出を実現するか,もしくは何 かの影響を受けて流動しているかについては述べられていない.既存した調査と研究から, オープン・イノベーションにおける企業の役割として,予算・投資額の確保,専門部署の 設置,人材の発掘,評価体制の構築,プラットフォームの提供(Boudreau&Hagiu, 2009;Gawer & Cusumano, 2002),リードユーザーの特定などが挙げられている(チェスブロウ,2008; JOIC・NEDO,2016;中園,2016;West & Lakhani, 2008;Antikainen & Vaataja, 2010;von Hippel, 2013).しかし,知識を流動させる視点で,企業の役割を理論化した研究はまだ少 ない.いうまでもなく,従来の研究では,点在している知識に注目し,知識の移転と活用に関 する論述は少なくない.例えば,ユーザーの視点で行われているユーザー・イノベーショ ンに関する研究がある.この領域は,マサチューセッツ工科大学の教授 von Hippel(1976) の論文「The dominant role of users in the scientific instrument innovation process」を皮切りに 研究されてきた9.しかし,ユーザー・イノベーションの研究において,イノベーションを 起こすことのできるリードユーザーが自律的な存在であるというイメージが強く,イノベ ーションが発生するプロセスにおける企業の役割は強調されていない.また,組織能力の 視点でオープン・イノベーションに関する研究があるが,主に企業内の研究開発組織に焦 点を当て,「技術探索組織と技術活用組織に求められる役割と能力」を中心に議論されて いる10. なお,知識を融合させる面で行われている研究がある.例えば,外部知識を受け入れる 際の問題点について,チェスブロウは,社外の知識に対する社内の拒否反応があると発見 し,拒否する理由について分析を行った11.他には,異なる用語で表現されているが,元 橋他(2012)は,日本の大手企業 9 社を調査した結果,オープン・イノベーションの障害に ついて5 社が回答し,そのうちの 3 社は研究者の「自前主義」が強いという問題を抱えて いることが明らかになった.この問題を解決するために,専門部署の設置などが挙げられ た. こうして,従来の研究はいずれも,効率的にオープン・イノベーションを実施すること によって,より多くの価値を得ることを前提にし,企業の役割と,知識の移転,知識の活 用に注目した.しかし,内部知識にせよ,外部知識にせよ,知識を流動させるプロセスに おける企業の主導的役割に関する議論は極めて少ない.それゆえ,より効率的にオープ ン・イノベーションを推進し,より多くの新しい価値を創造するために,企業側の主導的
9 von Hippel, E. 1976. The dominant role of users in the scientific instrument innovation process. Research Policy, 5(3), pp.212–239 10 中園宏幸(2016)「 オープン・イノベーションにおける研究開発組織の分化-企業内組織間 コンフリクトにかかわる探索的事例研究-」碩学舎ビジネス・ジャーナル第4 回碩学舎賞一席 受賞作,p.1. http://www.sekigakusha.com/sbj/ 11 ヘンリー・チェスブロウ編・PRTM 監訳・長尾高弘訳(2008)『オープン・イノベーション -組織を越えたネットワークが成長を加速する』英知出版,pp.38-39 参照
- 7 - 役割について研究する必要がある.
第 3 節 研究の目的と内容
上述した内容からわかるように,従来のオープン・イノベーションに関する研究では, そのプロセスにおける企業の役割は不明であり,それに,いかにして役割を果たすかにつ いての解明も求められている.そのため,オープン・イノベーションにおける企業の役割 を体系的に理解することが必要である.よって,本研究では,オープン・イノベーション において,企業側は,点在している知識をいかにして流動させるかに着目し,企業の主導 的役割を明らかにすることを目的とする.具体的には,中国のモバイルインターネット関 連企業であるシャオミ(小米シャオミ科技, 以下シャオミ)に関するケース・スタディを通して考察す るものである. 概して,本研究では,以下の3 つの問題に対する回答する. ① なぜオープン・イノベーションにおける企業の主導的役割が重要であるか. ② 企業は,オープン・イノベーションにおいて,どの段階で役割を果たすべきか. ③ 企業はいかにして異なる役割を果たすことができるか. 本論文の関連する章で後に詳しく述べるが,オープン・イノベーションに関する理論と ケース・スタディを通して得た洞察に基づき,上述した3 つの問題を明示にし,企業が主 導的役割を果たすための理論と具体的施策などを検討する.第 4 節 理論的枠組みと研究の位置付け
上述した問題意識をもって,オープン・イノベーションにおける企業の役割を解明する ために,本研究では,チェスブロウのオープン・イノベーション理論をもとに,議論を展 開していく.また,従来の研究に対する新規性を示すように,先行研究の理論モデルをも とに,図 2 が作られた.従来,Chesbrough(2003)は,オープン・イノベーションパラダイ ムを図2 のように示している12.その一方,図3 は本研究の理論的枠組みである.点在し ている知識のまわりにある渦は,知識を流動させる力を反映している. 要するに,本研究では,この理論的枠組みに基づき,知識が移転する前,どのような現 象が存在しているか,企業としていかにして知識を流動させるかなどの問題を明らかにす る.12 Chesbrough, H.W, (2003) Open Innovation: New Imperative for Creating and Profiting Technology, HBP, Boston, p.xxv
- 8 - 図 2 オープン・イノベーション研究の理論的枠組み 出所:Chesbrough(2003)により13 図 3 オープン・イノベーション研究の理論的枠組みと本研究の理論的枠組み 出所:Chesbrough(2003)をもとに筆者が作成14 13 同注 12
14 Chesbrough, H.W, (2003) Open Innovation: New Imperative for Creating and Profiting Technology, HBP, Boston, p.xxv 点在している知識を流動させる力 研究 開発 新たなマーケット 既存のマーケット 新たなマーケット 既存のマーケット 研究 プロジェクト 研究 開発 研究 プロジェクト
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第 5 節 本論文の構成
本研究は,7 章から構成されている.まず,本節を含め,序章では研究の背景と問題意 識,研究の目的と内容,研究の特徴と意義,事例の選択基準,研究の方法を提示して,そ れ以降の章で詳しく論述する. 第一章では,本論文を理解するために必要な用語の定義について説明する.具体的には, イノベーションに対する捉え方をたどり,その変遷について考察する.また,シュンペー ターによって提唱されたイノベーションと,従来日本の学者のイノベーションに対する認 識との相違をさらに明確にする.その次,創造,発明,改良や革新などのような混合され やすい用語との関係についても分析されている.また,先行研究のレビューを行った上で, 本研究で論じるイノベーションの定義を定める. 第二章では,オープン・イノベーションがイノベーションン論の重要な分野を形成する ことを示す.その次,オープン・イノベーションの分類と応用,オープン・イノベーショ ンの採用について説明する.そして,オープン・イノベーションに対する批判的な意見を 挙げながら,オープン・イノベーションに対する理解の変容を明らかにする.また,先行 研究を十分に概観したうえで,従来のオープン・イノベーションにおいて,企業の役割に ついての研究を取り上げたうえで,本研究の位置付けを明らかにする. 第三章では,ユーザーをオープン・イノベーションに組み込む場合,ユーザーの位置付 けや必要とするほかの要素間の関係について論述する.ユーザーをオープン・イノベーシ ョンに取り組む手法について詳細に説明するために,リードユーザー,ユーザーコミュニ ティ,ユーザー・イノベーションのためのツールキットなどの要素とオープン・イノベー ションとの関連についての検討を行う. 第四章では,中国のモバイルインターネット関連企業シャオミのオープン・イノベーシ ョンプラットフォームで観察した事例を挙げる.具体的には,多様なユーザーへの対応, ユーザーの関与の喚起,ユーザーに対する巻き込み,ユーザーの参加意識の引き出し,従 業員の参加意識の引き出し,価値創造の方法論の共有についての事例を説明する.シャオ ミのケース・スタディを通して,ユーザーとともにオープン・イノベーションを遂行する 際,企業は如何にしてそのプロセスに介入,リード,権限移譲をするかなどについて論述 する. 第五章では,シャオミのアクションに対する考察を通して,オープン・イノベーション における企業の役割についての検討を行う.また,ユーザーが参加者となるオープン・イ ノベーションから生まれた新しい価値は多様化であることを明らかにする. 終章では,本研究の主張を要約した上で,オープン・イノベーションにおいて,企業が 発揮する主導的役割は,同時にユーザーと従業員の両方に機能すべきであることについて 注意を促したい.オープン・イノベーションにおいて,内部知識と外部知識を融合させる ためにユーザーに対する主導的役割を果たすことは重要であるが,それと同時に,社内の 知識所有者に対する働きかけなどの面で企業の役割を体系化すべきであることを主張し ている.本研究では,従業員と外部の知識所有者を同一の組織と見なす前提は,この点に 由来する. 以上のような考察を行った後,終章では,本論文の発見を要約する.具体的には,オー- 10 - プン・イノベーションにおける企業の役割を果たす前提,オープン・イノベーションにお ける企業の役割の継続性,オープン・イノベーションにおける企業の役割の基本的な構造 について説明を行う.また,本研究の理論的,実務的な貢献,含意をまとめ,今後のオー プン・イノベーション戦略への示唆を提示する.最後に,研究の限界と今後の課題につい て説明する.
第 6 節 研究の特徴と意義
本研究の特色として主張されるのは,主に以下4 つにまとめることができる. ① 従来,成功例に関する情報の少ない中国企業の事例を通して考察する. ② 外部知識所有者と内部知識所有者を同一の組織と見なすことを前提にする. ③ 知識を流動させることに焦点を当てる. ④ 技術のイノベーションに焦点を絞らず,価値を創造することに着目することである. 本研究には,実践的意義と学術的意義両方が含まれている.まず,実践的意義は2 つあ る. ① オープン・イノベーションを遂行する早期段階において,外部の知識所有者がオー プン・イノベーションの場に集まらないという問題に解決策を提供することができ る. ② オープン・イノベーションにおける実施上の問題として,よく挙げられている自前 主義の解決に示唆を与えることができる. その次,理論的意義も2 つある. ① 既存理論の補完 図3 で示したように,従来のオープン・イノベーションに関する研究領域では,点在し ている知識もしくは知識所有者が重視されているが,それを移転させるために,企業が果 たすべき役割については,まだ十分に理論化されていない.それゆえ,本研究はこの見落 とされた部分に着目し,従来のオープン・イノベーション理論を補完する. ② 研究の新規性 本研究は,従来のオープン・イノベーション論に対する理論的補足がある一方,新規性 も含まれている. まず,従来の研究では見落とされた部分に関する議論を展開することは本研究の新規性 の1 つである(図 3). そして,研究対象で言えば,本研究は,優先性がある.本論文の研究対象であるシャオ ミは注目を浴びているが,同社のオープン・イノベーションに関する研究や記事などの情 報は少ない.中国企業のオープン・イノベーションに関する公開した情報が少ない背景の 中で,シャオミのオープン・イノベーションを考察することによって,関連する情報をい ち早く掘り出すことができる. また,本研究を通して,オープン・イノベーション実施上の問題点に対して新しい解決 策を提供することができる. 要するに,現在,オープン・イノベーションにおける企業の役割を意識して行われる研 究がまだ少ないが,この課題を明らかにすることによって,企業にオープン・イノベーシ- 11 - ョン体制の確立に方法論を提供することが可能である.つまり,企業は,主導的な役割を 果たすことによって,オープン・イノベーションのプロセスにおいてよりよい効果を発揮 することが期待できる.また,理論的意義として,本研究はオープン・イノベーションに 関する研究領域で新たな議論の展開の契機となる可能性があり,オープン・イノベーショ ン論の新しい発展につながるという点は意義がある.
第 7 節 事例の選択
前述とおり,オープン・イノベーション理論の汎用性を検証するために,国と地域を問 わず,多くの企業に対する事例研究が必要である.しかし,中国企業のオープン・イノベ ーションに関する情報が少ないという現状がある.それゆえ,本研究では,オープン・イ ノベーションを遂行する中国企業を対象に研究を行う.また,本論文では,オープン・イ ノベーションのプロセスにおける企業の役割を中心に議論を展開する.よって,外部知識 提供先が実際に新しい価値を積極的に創造し,オープン・イノベーションにおける内部と 外部知識の融合に対して優れた対応を見せている企業の事例を調査の対象とする.なお, 研究の妥当性を考え,選ばれた企業は,次のような重要な特徴を備えるべきである. ① 経営戦略の面でオープン・イノベーションを重視している. ② 世界中に生産・販売する拠点を置いたグローバル企業である. ③ ビジネスを展開する世界市場においてトップクラスのシェアを獲得している. シャオミは,2010 年 4 月 6 日に中国北京に設立されたモバイルインターネット関連企業 であり,今年(2018)年 7 月 9 日に香港証券取引所に上場した.創立したわずか 8 年の時間 で,スマートフォン市場シェアの世界第4 位に躍進し,世界中にビジネスを展開している 15.それゆえ,本研究では,上述した特徴を有しているシャオミを研究対象にした. また,本研究が注目するのは,オープン・イノベーションにおける企業は外部知識の活 用だけではない.企業はいかにして主導的な役割を発揮し,外部知識と内部知識を融合さ せることによって,オープン・イノベーションの成功を収めるかに着目して論述する.よ って,シャオミを研究対象にしたのは,また2 つの理由がある.1 つは,同社の事例を分 析することで,企業が主導的役割を果たし,イノベーションに促進する可能性について考 察することができるからである.もう1 つは,そうした可能性に向けて,企業がどのよう な視点を持ち,オープン・イノベーションの仕組みを構築する必要があるのかについても 洞察を得ることができるからである.15 スマートフォン市場シェアに関するデータは,IT 専門調査会社 IDC (International Data Corporation) のホームページを参照 https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prUS44425818 IDC (Internet data center) は,IT 専門の調査会社として,1964 年に設立されて以来,世界 110 カ国以上の国々で技術,産業の機会と動向に関する専門知識を提供している.情報技術・通 信産業をはじめ,金融機関,政府機関等に,市場データ,市況分析とそれにもとづいたアド バイスを提供している世界的なトッププロバイダーである.
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第 8 節 研究の方法
第7 節で論じたが,本研究では,企業は,オープン・イノベーションにおいて,なぜ主 導的役割を果たすのか,またどのように果たすべきかという問題を検討する.こうした「ど のように」と「なぜ」のような問題はより解釈的(explanatory)なものであり,ケース・スタ ディ戦略はこうした問題に最も適している(イン,1996). また,イン(1996)によれば,ケース・スタディの質を向上するために,いくつかの支配 的な原則が重要である.①複数の証拠源,つまり2 つ以上の源泉からではあるが,同じ事 実あるいは発見物に収斂する証拠,②ケース・スタディ・データベース,つまり最終的な ケース・スタディ・リポートとは異なる公式の証拠の集合,そして③証拠の連鎖,つまり 問われた問題,収集されたデータ,および導き出された結論との間の明示的な結びつきで ある.筆者は,これらの原則を貫き,図4 の通りケース・スタディを設計した. まず,オープン・イノベーションに関する先行研究をレビューした上で,その貢献と限 界を明らかにする.次に,先行研究の分析からの発見に基づき,ケースの選択とケース・ スタディの実施方法を設計する.また,事例を収集した上で分析と考察を行う.最後に, こうしたケース・スタディから得た分析結果を理論化し,結論を付ける. 図 4 本研究のケース・スタディ 出所:筆者が作成 ケース・スタディの証拠は,文書,資料記録,面接,直接観察,参与観察,および物理 的人工的の 6 つの源泉から収集される16.本論文は,主に文書,資料記録,直接観察,参 与観察という4 つのチャンネルから情報を収集している. ここでは,直接観察と参与観察について説明する必要がある.上記のとおり,現在,中 国企業のオープン・イノベーションに関する研究及び情報はまだ少ない.そのため,ケー ス・スタディの対象企業に関する情報の入手可能性は本論文における重要な考慮事項の一 つである.シャオミは,ユーザーとともにオープン・イノベーションを推進しているので, 本研究の観察対象として,ユーザーとシャオミの従業員が含まれている.それに,本研究 で論じている課題は,経時的な追跡が必要であるので,オープン・イノベーションのプロ 16 ロバート.K.イン著,近藤公彦訳(1996)ケース・スタディの方法』千倉書房,p.105 定義と設計 準備・収集・分析 理論の導出 理論の修正 理論の提示 分析と結論付け MIUI フォ ー ラ ム の 登録 公 開 し た 情 報 の 収 集 参与観察 情報の分 析・利用 ケースの選択 実施方法の設計 先行研究の レビュー 問題発見- 13 - セスに参加する者に対する参与観察が効果的である.そのため,本研究で挙げられている 複数の現象は,MIUI フォーラム(シャオミのコミュニティサイト)を通して観察されたもの である.筆者は,シャオミのオープン・イノベーションコミュニティの一員として毎日フ ォーラムの閲覧,オープン・イノベーションの参加者に対する観察を行っているので,参 与観察を利用して情報の収集を実現した.ただし,具体的なイベントやテスター募集など のような行動に関する関与はしないので,直接観察の特性も備える.
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第一章 用語の定義
第 1 節 はじめに
オーストリア経済学者であるヨーゼフ・シュンペーター(Joseph Alois Schumpeter, 1883-1950)は,イノベーションを最初に定義した人である.シュンペーター(1977)は,『経 済発展の理論』において,生産ということは,「結合することである」と提示し,五つの 場合が含まれると述べている.すなわち,「新しい財貨」,「新しい生産方法」,「新しい販 路の開拓」,「原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得」,「新しい組織の実現」である. その後,シュンペーター(1939)は,『景気循環論』において,上述した現象を表示する用語 として,「新結合」を「イノベーション」に言い換えた.現在では,シュンペーターのイ ノベーション理論を理解する際,「新結合」と「イノベーション」を区別せずにイノベー ションという用語に統一されている(山田,2010,p.48.). 最初,イノベーションに関する研究は,いずれも経済学アプローチが中心となったので, マクロ的視点からの経済問題として扱う傾向が顕著にみられる.しかし,現在,イノベー ションの研究領域はいくつかの変遷を重ねてきて,企業の視点で行われた研究がますます 多くなってきた. それゆえ,イノベーションの概念は,約100 年前にシュンペーターによって提唱された 当時の定義と異なり,再検討する必要がある.本章では,オープン・イノベーション研究 において,過去の先行研究がイノベーションの概念をどのように扱ってきたかを概観する. 筆者は,本章により,従来の研究を踏まえて,イノベーションに対する理解を挙げながら, イノベーションの概念はどのように認識されてきたかを明らかにする.この考察に基づき, 本研究で取り上げたイノベーションとは,経済的効果がある新しい価値を創造するプロセ スであると定義付けている.この定義は,オープン・イノベーションの定義とオープン・ イノベーションを研究する際の注意点を明らかにすることに繋げていく.
第 2 節 イノベーションの定義について
シュンペーターはイノベーションの概念を提示し,イノベーション論の初期の位置づけ を確立したが,理論の体系化をしていなかった.Freeman(2007)は,次のようにシュンペー ターのイノベーション論を批判している. ① シュンペーターが起業家という個人レベルに注目し,企業という組織をまったく考 察しなかった. ②急進的な革新を重視し,漸進的な革新を正当に評価していない. ③革新を引き出す事情が外生的な事情としてとらえられ,革新は経営者の意欲的行為と して描かれている. ④シュンペーターは発明,革新,技術の蓄積を十分概念化していない.- 15 - ⑤シュンペーターの場合,優れた起業家は注目を浴びているが,科学者,技術者,一般 労働者,経営者,ユーザーなどのようなイノベーションの貢献者は無視された. Freeman(2007)の批判は,多岐にわかり,代表的な意見であるとも言える.そのため,イ ノベーションがシュンペーターによって発見された後,多くの研究者は,これらの問題点 をもとに,改めてイノベーションを定義しようとしている.例えば,ドラッカー(1985)は, 経営学のアプローチでイノベーションの本質を考察し,『イノベーションと企業家精神- 実践と原理-』において,イノベーションを次のように認識した.すなわち,供給にかか わる概念としてよりも,むしろ需要にかかわるものとして理解すべきであり,消費者が資 源から得るところの価値や満足を変えるものと規定すべきである17.その後,ドラッカー はイノベーションに関するさらなる研究を行い,イノベーションについて体系的に論じた. ドラッカーによれば,イノベーションとは「人的資源や物的資源に対し,より大きな富を 生み出す新しい能力をもたらすことである」,「科学や技術そのものではなく価値である」 と定義し,それを「組織の外にもたらす変化」と位置づけたのである18. こうして,ドラッカーは,イノベーション論の発展のために重要な貢献をしたが,シュ ンペーターと同様,企業家だけがイノベーションの担い手であるという認識は一面的であ った.また,シュンペーターとドラッカーの理論では,画期的なイノベーションが注目さ れたが,改良,漸進型イノベーションが見落とされていた.
第 3 節 日本におけるイノベーションに対する認識の変遷
イノベーションという概念が 100 年ほど前に確立されたが,現在,当時の定 義 と 異 な り ,今 ま で い く つ か の 変 遷 を 重 ね っ て き た .例 え ば ,日本ではイノベーションに関 する研究のパイオニアは,1950 年代頃から,イノベーションのコンセプトに注目し,研究 し始めた.しかし,イノベーションという用語を日本語に翻訳する場合,多数の日本語訳 が存在していることが一つの原因で,イノベーションのコンセプトはテクノロッジーの発 展,あるいは発明,創造などに等しいという大きな誤解が生じた.本節では,イノベーシ ョンを再定義するために,こうした日本におけるイノベーションに対する認識を整理し, その変遷を明らかにする.3-1 「新機軸」について
技術史家の星野芳郎(1958)によれば,シュンペーターのいうイノベーションは,『経済白 書』の中で「技術革新」に和訳された前,多くは「革新」,「新機軸」のように訳されてい た.1949 年,「外資導入と経済復興-受入態勢に新機軸」と「米国鉄鋼業の新機軸」が出 版されたので,シュンペーターの理論が注目され始めたと考えられる19.翌年,伊達邦春 17 P. F. ドラッカー著,小林宏治監訳 (1985)『イノベーションと企業家精神―実践と原理―』 ダイヤモンド社,p.49 18 P.F.ドラッカー (2001)『マネジメント【エッセンシャル版】―基本と原則』ダイヤモンド社 pp.18-19, pp.266-267 19 国会図書館に収録された「新機軸」に関連するデータ (2017 年 12 月) の中で,最も古いの- 16 - (1950)は『早稻田政治經濟學會政治経済学雑誌』に「景気循環の一構想としての新機軸理 論について-衝撃現象の一つの型として Innovatiors」を発表して,単なる発明は新機軸で はなく,それに,新機軸は様々な発明と新しい結合を含めて,狭義の技術革新ではないと 指摘している20.1950 年代から,新機軸に関する研究が行われたが,図 5 で示しているよ うに,新機軸という言葉を使っている文献の中で,ピークの2011~2015 年でも 5 年間で わずか335 件しかなかった.言い換えれば,「新機軸」という言葉自体が広がっていない. 図 5 「新機軸」に関する研究の推移 出所:国会図書館のデータにより筆者が作成
3-2 「技術革新」について
一方,「技術革新」について,星野(1958)は,著書『技術革新』の中で,「『技術革新』と はみょうな言葉である.技術革命とか,技術の変革とかいう言葉は,私たち技術史家もし ばしばつかうが,『技術革新』という用語はつかったことはない」と述べている21.また, 「技術革新」は,昭和 31 年の『経済白書』に登場した後,速く広がり,ジャーナリズム もちょっとした技術革新ブームになった22.筆者は,国会図書館のデータベースで調べた ところ,1956 年まで,「技術革新」という言葉は見当たらなかったが,「教育の革新」,「輸 送革新」,「農政革新」のような表現があることが判明した.『昭和 31 年度 経済白書~日 本経済の成長と近代化』の中には,下記のように,初めて「技術革新」とイノベーション は1898 年で小説家である後藤宙外の『新機軸』(春陽堂出版) だが,シュンペーターの理論と まったく関係がなかった.また,秋田魁新報は1915~1951 年の 37 年間,「新機軸」をタイト ルに7 回使っていたが,同様に経済用語として認識されていなかった. 20 伊達邦春 (1950)「景気循環の一構想としての新機軸理論について-衝撃現象の一つの型とし てInnovatiors」政治経済学雑誌,鹽澤博士古稀記念論集 Vol.69-70 合併,pp.85-108 21 星野芳郎 (1958)『技術革新』岩波新書,p.vi. 22 同上書,p.1. 1956 年,通商産業省の『通商産業研究』に「特集・技術革新の意味するもの」をタイトルと する記事が掲載されたが,技術革新についての定義は,統一されていなかった. 9 13 5 5 10 12 18 14 25 183 249 317 335 170 0 50 100 150 200 250 300 350 400 件数- 17 - を同じ意味として使われている(表3). 「(中略)このような投資活動の原動力となる技術進歩とは原子力の平和利用とオートメ イション(筆者:オートメーション)によって代表される技術革新(イノベーション)である」 23.文脈から見れば,同白書は,イノベーションを狭義的技術の革新として捉え,原子力 とオートメーションによって代表される技術革新の重要性を論じた.その中では,「技術 の進歩」と「新しい技術の発明」が強調されているが,技術面以外は言及されていなかっ た.また,表 3 にまとめた「技術革新」の意味合いは,有賀他(2014)によって作成したも のである.この表は,昭和 30 年代から『科学技術白書』に使われていた「技術革新」の 意味の変遷を示している.この表から見れば,技術革新イコールテクノロジーの発展とい うような理解は,昭和 50 年代まで続いていた.イノベーションという用語に対する一般 的な理解は,ある程度,同白書の影響を受けていると言える.広辞苑(新村出編集,2008, 第六版)においても「日本では技術革新という狭い意味に用いることが多い」と記している 24. 表 3 『科学技術白書』に使われた「技術革新」の意味合い 年代 念頭に置かれた主な技術・ 産業分野 「技術革新」をめぐる 主な認識 「技術革新」が主に 指す事柄 昭和30 年代 原子力,オートメーション,合 成化学,エレクトロニクス ・急速な「技術革新」による社会の 変化が進行中 新技術の登場が直ち に社会変化を生む 昭和40 年代 合成化学,エレクトロニクス, オートメーション,鉄鋼,自動 車,家電 ・「技術革新」は技術導入によるもの で,自主技術の開発が必要 ・急速な「技術革新」が社会問題を もたらしている 重厚長大型の産業技 術開発 昭和50 年代 エレクトロニクス,合成化学, 鉄鋼,自動車,半導体,メカト ロニクス,生命科学 ・「技術革新」の世界的停滞から「新 たな革新」へ 新技術や改良技術の 開発・普及 昭和から 平成へ エレクトロニクス,半導体,材 料科学,生命科学 ・重化学工業からエレクトロニクス へと「技術革新」の流れが変化 ・「技術革新」につながるようなシー ズ志向の研究を振興すべき 先端科学に基づいた 革新的技術の開発 平成10 年代 以降 「デジタル化技術」,情報通信 ・デジタル化による「技術革新」を 通じた社会の変化が進行中 ・「技術革新」と「イノベーション」 は異なる 「イノベーション」 の一手段としての, 革新的技術の開発 出所:有賀他(2014) また,1976 年版の『科学技術白書』において,イノベーションの定義は,次の通りに初 めに書かれた.同白書によれば,「ここで言う技術革新とは,科学的・技術的知識が,新 製品や新製法あるいは改良された製品や製法として具現化され,これが人間生活に有用で 23 経済企画庁編 (1956) 『昭和 31 年度 経済白書~日本経済の成長と近代化』東京至誠堂,p.34. の第三章第二節より 24 新村出編集 (2008)『広辞苑第六版』岩波書店 p.193.
- 18 - あって,しかも経済性をもって普及してゆく過程である」と定義している25.この定義に ついて,有賀他(2014)は,同白書によって定義された「技術革新」は,「イノベーションと いう術語の原義に近い内容を指して用いられていることになる」と指摘している26.
3-3 「イノベーション」について
イノベーションに対する理解が深まると同時に,「技術革新」の代わりに,「イノベーシ ョン」を外来語のままで使う文献が増えてきた.図6 で示しているように,2000 年までに イノベーションに関する文献はまだ少なかったが,2000 年に初めて「技術革新」という用 語をタイトルに入れる文献の数を超えた.それに対して,技術革新に関する文献の件数は ほぼ横ばいで推移している.2016 年のデータから見れば,イノベーションに関する文献は 1909 件あり,技術革新に関する文献は 232 件の 8 倍以上もなっている(2017 年 12 月). 図 6 イノベーションと技術革新に関する文献の推移 出所:国会図書館のデータにより筆者が作成 また,イノベーションという用語は 2000 年頃盛んに使われてきたが,国会図書館のデ ータベースから検索できる一番古いイノベーション研究は,飯野(1960)の「アメリカ産業 におけるイノベーションと人的資源」であった.その後,占部都美は,シュンペーターの イノベーション論を理解するとき,ドラッカーの観点を受け入れ,イノベーションは技術 ではなく,経営革新なのであり,あらゆる経営活動に存在すると認めている.こうして, 占部(1961)は,本格的に経営学のアプローチでイノベーション概念を研究し始め,イノベ ーションとは,本来,経済的な概念であると肯定しており,企業が収益性を確保するため に,革新(Innovation)を行わなければならないと主張している.まだイノベーションイコー ル狭義的技術革新と主張されていた時代において,イノベーションの定義について,占部 25 同注 5 26 有賀暢迪,亀井修 (2014)「科学技術白書に見る『技術革新』の意味合いの変遷」Bulletin of the National Museum of Nature and Science. Series E, Physical sciences & engineering,37,p.39.0 500 1000 1500 2000 2500 ~ 1956 1958 1960 1962 1964 1966 1968 7019 1972 1974 1976 1978 1980 1982 1984 8619 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 イノベーション 技術革新 2000年 イノベーション:372件 技術革新:232件 2016年 イノベーション:1909件 技術革新:206件
- 19 - 都美は非常に価値がある見解を示していると,筆者は考える. 要するに,時代とともに,技術革新という言葉自体の意味合いが変遷しており,技術革 新がイノベーションの日本語訳として使われる場合,単に狭義的技術とテクノロジーの革 新ではないと認識されるようになった.
3-4 カイゼンとイノベーションについて
そもそもイノベーションという概念は欧米から伝わったものであるのに対して,カイゼ ンは日本企業から生まれた概念である.シュンペーターのイノベーション概念は均衡を破 壊し,「慣行の軌道」から脱皮していく大胆な企業家活動(entrepreneurship)を中心にすえて おり,漸進的革新を軽視する傾向がある(由井・橋本,1995).また,日本のカイゼンは, 一般的な研究開発型のイノベーションとは異なる.鷲田(2015)によって,カイゼンでは, 特定の誰かが生み出したという形ではなく,生産現場の従業員が日常的な生産活動の中で, 明示化されていない形で少しずつ無駄を省いたり,より良い方法に切り替えたりする活動 を積み重ね,いつの間にか商品やサービスが以前よりも大幅に優れたものに変貌してゆく という段取りを踏む.この場合,それを実施している労働者やエンジニアには,イノベー ションを生み出そうという明確な意図はほとんどないにもかかわらず,全員の少しずつの 自発的な試みが積み重なって発生するという特徴がある. 国会図書館のデータを見る限り,日本では最初に経営管理の改善に注目したのは,「機 械産業等の経営管理の改善に関する調査研究報告書」である(機械振興協会・経済研究所, 1889).また,1900 年から「農業構造改善基礎調査報告書」が発行され,農山漁村文化協 会によって出版された「農家経営改善シリーズ」という映像資料も確認できた27.さらに, 1935 年に,「工場経営管理改善」,「商店経営改善」,「漁業經營の改善」,「経営改善のすす め方」のようなものが次々と発表された.図7 が表すように,日本では,改善に関する文 献の件数は1950 年代から徐々に増え,1980 年代後半から急激に増えてきた. 現在,カイゼンはイノベーションの一種類であると認識されているが,従来,イノベー ションに対する誤解があることが原因の一つで,カイゼンをイノベーションとして認めら れないことが多かった.例えば,今井(1988)によれば,「普通,日本企業は漸進的アプロー チを好み,欧米企業は跳躍的アプローチを好むが前者はカイゼン,後者はイノベーション という言葉に集約される」と述べている .今井(1988)は,ここで言うイノベーションとは, ハイテクノロジーの開発,最新のマネジメント思想ないし最新の生産技術の導入の結果と して起こる画期的な変化であると捉えている.また,彼は,カイゼンとイノベーションの 区別を比較して表4 のようにまとめている28. その中では,イノベーションについて,「一部のエリートしか参加しない」と「徹底し た個人主義,個人的アイデアと努力」と指摘している.その理由について,筆者は,当時, ユーザー・イノベーションやオープン・イノベーションなどの概念がまだ認識されていな 27 国会図書館ホームページを参考 http://iss.ndl.go.jp/books?filters[]=4_1900&display=&rft.title=%E7%B5%8C%E5%96%B6%E6%94% B9%E5%96%84&search_mode=advanced 28 今井正明 (1988)『カイゼン―日本企業が国際競争で成功した経営ノウハウ』講談社,p.84- 20 - 図 7 「カイゼン」に関する文献 出所:国会図書館のデータにより筆者が作成 表 4 カイゼンとイノベーションの対比 カイゼン イノベーション 1. 効果 長期的かつ継続的だが,劇的でない 短期的だが,劇的である 2. ベース 小はば 大はば 3. 時間枠 継続的かつ漸進的 断続的だが,漸進的でない 4. 変化 ゆるやかで一定 急激で爆発的 5. 参加 全員 一部のエリートしか参加しない 6. アプローチ 集団主義,集団努力およびシステム・ア プローチ 徹底した個人主義,個人的なア イデアと努力 7. 方式 維持および改善 スクラップ・アンド・ビルド 8. 原動力 在来のノウハウと既存の技術水準 技術的飛躍,新発明,新理論 9. 実際の必要性 投資はほとんど不要だが,それを維持す る大いなる努力が必要 大きな投資が必要だが,それを 維持する努力は少なくてよい 10. 努力方向 人間 テクノロジー 11. 評価基準 より良い結果のためのプロセスと努力 利益面の結果 12. 利点 低成長経済においてよく機能する 高度成長経済により適合する 出典:今井正明(1988)『カイゼン―日本企業が国際競争で成功した経営ノウハウ』講談社, p.84 かったということに関係があると考える.また,イノベーションには,画期的な変化をも たらす場合もあるが,継続的に推進しているイノベーションもある.つまり,イノベーシ ョンは必ずしもこのような劇的な変化に限らない.それゆえ,今井(1988)はイノベーショ ンとカイゼンに対する考え方は,一線を画したものであった.こうしたイノベーションに 対する認識の背景として,前述した,経済白書と科学技術白書の影響が挙がられる.当時, イノベーションのコンセプトに対する理解には誤解がある.この事実から,今井は(1988), カイゼンがイノベーションの一種類であるという事実は,まだ認識していなかったと推測 することができるのではないかと考えられる.また,例えば,表 4 で示しているように, 「急激で爆発的」をもってカイゼンとイノベーションを区別する,またイノベーションを 0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 1900 1904 1908 1912 1916 1920 1924 1928 1932 1936 1940 1944 1948 1952 1956 1960 1964 1968 1972 1976 1980 1984 1988 1992 1996 2000 2004 2008 2012 2016 カイゼン
- 21 - 「テクノロジー指向」とする(表 5)などのようなイノベーションに対する理解は,実はイノ ベーションの定義に対する誤解があるからである. クリステンセン(1997)は『イノベーションのジレンマ』において,企業が主流市場でリ ーダになるための経営慣行そのものが,破壊的技術によってもたらされる機会を失う原因 になるという問題を提起した.この中では,破壊的イノベーションという概念の確立とと もに,持続的イノベーションというコンセプトも提示された.こうして,クリステンセン の影響を受けて,日本では,カイゼンはイノベーションの一種類であるという認識がよう やく定着された. 表 5 イノベーションとカイゼンのもう一つの比較 イノベーション カイゼン 創造性 順応性 個人主義 協同作業(システムズ・アプローチ) スペシャリスト指向 ゼネラリスト指向 大飛躍への関心 細事への関心 テクノロジー指向 人間指向 情報:閉鎖的・独占的 情報:開放的・共有的 部門別(スペシャリスト)指向 機能別(クロズ・ファンクショナル)指向 新テクノロジーを追求 既存の技術を積み重ねる ラインとスタッフ 機能別(クロズ・ファンクショナル)組織 限定的なフィードバック 広範なフィードバック 出典:今井正明(1988)『カイゼン―日本企業が国際競争で成功した経営ノウハウ』講談社 p.96.に より筆者が作成