第 3 章 受身
3.3 各ジャンルにおける受身表現の集計結果およびその分析
3.3.3 ブログ
「ブログ」は、個人的で主観的な内容が中心と思われ、より話し言葉的性質が強いと予
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想していた。ところが、「文学(地の文)」よりも迷惑受身や有情物主語の比率が低いと いうのは、少し意外な結果であった。しかし、よく考えてみると、公開のブログをネット で書く人は、多少他人にアピールすることを想定していると考えられる。だとすれば、逆 に「嬉しくない、迷惑だ、嫌だ」とかいう気持ちをあからさまに表出するのを避け、表現 を和らげる傾向が強くなるのではないだろうか。類似した現象は、後の「テレビドラマ」
と「トーク番組」においても観察されている。
表3-10 「ブログ」の受身文100文についての統計データ
表3-11 「ブログ」における直接・間接受身の各下位分類の統計データ
表3-12 「ブログ」における主語・動作主の有生性の統計データ
また、「ブログ」に含まれている下位ジャンルを確認してみると、日常生活系の「生活 と文化」「趣味とスポーツ」「エンターテインメント」「出会い」から、専門性の高い「科 学」「健康と医学」「芸術と人文」「政治」「ビジネスと経済」「地域」「学校と教育」
にわたり、非常に幅広い主旨の分野が包括されている。これらの分野は、必ずしもすべて 今回の資料に入っているわけではないが、まとめて「ブログ」と称されるものの、(38)
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や(39)のように軽い気持ちで個人の経験を記すものもあれば、(40)のように好みのゲ ームについて評論するものや、(41)のように学校の試験問題まで出ているものもある。
専門性の高い分野のブログにおいては、専門用語が増えてくると共に、言葉遣いも専門性 が増し、内容自体も説明性や論述性の高いほうに傾き、それで中立受身も、非情物受身も 増えてくるのではないかと考えられる。
(38)今日の1つの問題とチャレンジは、仕事に行く車だ。先週の金曜日はこれに やられた。一番ひどかった。(健康と医学)
(39)蚊にやられたーっ!(Yahoo!サービス)
(40)現在、一番簡単な難易度(NORMAL?)の4面をクリアした所ですが、
本作は前作に比べると大分『マイルドな難易度設定』になっており、比較的遊 びやすく調整されているようですね。(Yahoo!サービス)
(41)問題三十八、弥生時代に人が死ぬとどのように葬られたか。解答三十八、こ の時代は、集落の近くの共同墓地に葬られた。棺は、主に甕棺(かめかん)、
壷棺(つぼかん)などの土棺が用いられたが、木棺や石棺も用いられ、手足を 伸ばして葬る伸展葬が普及した。(学校と教育)
そのほかに、主語「(+)」・動作主「(+)」(有情物主語非顕在・有情物動作主非 顕在)型の受身文も少しながら、「文学(地の文)」より数が多い。なお、「文学(地の 文)」では(42)のように三人称の語り手が登場人物の身に起こった事柄を述べる文が多 数である(一人称主語9文、三人称主語40文)のに対し、「ブログ」では(43)(44)
のように一人称をとる文が多い(一人称主語34文、二人称主語2文、三人称主語7文)。
これは、「ブログ」の話し言葉に近い性質の面を見せていると思われる。
(42)伸一の父親は、戦前、京城(現在のソウル)にいたことがあった。徴兵を受 け派遣されたのである。(主語三人称「(+)」・動作主「(+)」、『新・
人間革命』)
(43)今回はちゃんと確認して、色でなかったから洗濯機にいれたのに。かるく怒 られた…というか、「またかよ…」溜息、みたいな。(主語一人称「(+)」・
動作主「(+)」、Yahoo!サービス)
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(44)昨晩夕食終ってから『ケーキあるけど』と云わたのだけど、飲んで食事した 後、翌朝食べる事にしました♪(主語一人称「(+)」・動作主「(+)」、
生活と文化)
以上のデータと分析から、「ブログ」については次のことが結論として言えよう。①主 節と接続節に現れる受身の数はほぼ半々である。②直接受身(特に直接対象受身)、他動 詞による受身が圧倒的に多い。③ネット上の公開の場におけるマイナス情緒の表出を避け る傾向にあることから、迷惑受身(27%)は「新聞記事」より多いが、「文学(地の文)」
より少ない。④主語は有情物と非情物がほぼ半分ずつであるが、有情物の場合、それがほ とんど文から消えている(86%、37/43)のに対し、非情物の場合、それがほとんど文に 現れている(88%、50/57)。また、「文学(地の文)」では三人称主語文が主流である のと異なり、「ブログ」では一人称主語文が大多数であり、話し言葉に近い性質の面を見 せていると思われる。一方、動作主のほうは、非顕在の有情物が依然として中心である(有
情物が79%、そのうち86%(68/79)が非顕在)。⑤「ブログ」に専門性の高い分野が含
まれており、説明性や論述性の高い文章も少なくないため、「非情物主語顕在・有情物動 作主非顕在」型受身がなお4割ほど存在している。一方、「有情物主語非顕在・有情物動 作主非顕在」型の受身文が増えている(21%)。