第 4 章 ファミリービジネスの利益調整行動
4.1. ファミリービジネスと企業会計
4.1.4. ファミリービジネスの利益調整
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第
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に、オーナーシップの集中と幹部の経営者安住(エントレンチメント)へのチャンスである。オーナーシップの集中は利益調整の可能性に対してポジ ティブとネガティブの両方のインパクトを持ちうる。第
2
に、所有と経営の分 離が小さくなると日和見的な理由からの利益の操作も小さくなる。よってこれ は良質な利益予測につながる。他方においてはファミリーの所有は利益情報の 信憑性または利益情報へのアクセスを傷つけるインフォーマルな関係の発展に つながりうる。これらの対立する結果に対する経験的な証拠は様々である。ファミリービジ ネスにおいて、大きな管理上の利害があまりに頻繁にみられるので、株の価値 を上げるために利益調整に経営者が従事しようとする動機を与えるかも知れな い
(Cheng & Warfield
、2005)
224。逆に、Ali
他(2007
)225は、ファミリービジネス は、非ファミリービジネスに比較して、あまり任意の利益増加分を操作せず、将来のキャッシュ・フローを予測するために利益の構成要素を分析する技術に 長けていると述べている。同じ流れで、Wang(2006)226は、利益の質に対する創 業ファミリーの所有のポジティブな影響を報告している。このことはファミリ ー所有の利害一致(アライメント)効果と一致するものである。
次に、少数株主の手中にある高いオーナーシップの集中は、幹部の経営者安 住(エントレンチメント)の結果に陥る可能性がる。
Fan
とWong (2002)
227は、集中したオーナーシップが利益情報の質を減じる二つの方向につき論じている。
一つは、外部の投資家は、支配している所有者から報告された会計情報は利己 的なものだと考えるかも知れない。これは報告された利益の信憑性を失くす原 因となる。二つ目は、オーナーシップの集中はおそらく会社にもある特殊利益 追求活動の財産の情報がリークするのを防ぐことである。この利益についての 情報の損失は、キャッシュ・フローの権利が、経営する権利から分離される時
224 Carlo Salvato/Ken Moores(2010)”Research on Accounting in Family Firms:
Accomplishments and Future Challenge”Family Business Review Vol.23(3)Family Firm Institute、、pp193-215..(原典)Cheng、 Q.、 & Warfield、 T. (2005). Equity incentives and earnings management. The Accounting Review、 80、 pp441-476.
225 Carlo Salvato/Ken Moores(2010)”Research on Accounting in Family Firms:
Accomplishments and Future Challenge”Family Business Review Vol.23(3)Family Firm Institute、、pp193-215..(原典)Ali、 A.、 Chen、 T. Y.、 & Radhakrishnan、
S. (2007). Corporate disclosures by family firms. Journal of Accounting and Economics、 44、 pp238-286.
226 Carlo Salvato/Ken Moores(2010)”Research on Accounting in Family Firms:
Accomplishments and Future Challenge”Family Business Review Vol.23(3)Family Firm Institute、、pp193-215..(原典)Wang、 D. (2006). Founding family ownership and earnings quality. Journal of Accounting Research、 44、 pp619-656.
227 Carlo Salvato/Ken Moores(2010)”Research on Accounting in Family Firms:
Accomplishments and Future Challenge”Family Business Review Vol.23(3)Family Firm Institute、、pp193-215..(原典)Fan、 J.、 & Wong、 T. (2002). Corporate ownership structure and the informativeness of accounting earnings in East Asia.Journal of Accounting and Economics、 33、 pp401-425.
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に悪化する
(Francis
他、2005 )
228。経営者安住(エントレンチメント)の理論と 矛盾せず、Sanchez-BallestaとGarcia-Meca(2007)
229は、内部オーナーシップ、自 由裁量の利益増加分そして利益の情報の間の関係は非線形ではないこと証明し ている。それゆえインサイダーの姿勢は会社を支配する彼らの能力と個人的な 利益を引き出すコスト次第であるとも証明している230。(2)ファミリービジネスの利益調整に対する今後の研究課題
全体的にみると、これらの結果は、会社のディスクロージャーに対するファ ミリーオーナーシップのインパクトの多様さを描写しているのである。それゆ
え
"
支配するファミリー"
のエンティティーを舞台の中央に置き、更なる研究努力を要求しているのである。
たとえば、残された課題としては、いろいろなタイプのファミリービジネス は様々な利益調整戦略に賛成するのだろうか。もしそうならば、なぜ、コズメ ティック対リアルな利益調整の広がりは、ファミリービジネスは非ファミリー ビジネスに比較して違っているのであろうか231。
(3)
ファミリービジネスにおける会計方法の選択ファミリービジネスについての会計方法の選択の研究は限られていて、この 分野では古い。
Dhaliwai
他(1982
)232によれば、株主が管理する会社は、FIFO
(先入先出法)のような収入増加減価償却(income-increasing depreciation method)
228 Carlo Salvato/Ken Moores(2010)”Research on Accounting in Family Firms:
Accomplishments and Future Challenge”Family Business Review Vol.23(3)Family Firm Institute、、pp193-215..(原典)Francis、 J.、 Schipper、 K.、 & Vincent、 L.
(2005). Earnings and dividend informativeness when cash flow rights are separated from voting rights. Journal of Accounting & Economics、39、 pp329-360.
229 Carlo Salvato/Ken Moores(2010)”Research on Accounting in Family Firms:
Accomplishments and Future Challenge”Family Business Review Vol.23(3)Family Firm Institute、、pp193-215..(原典)Sanchez-Ballesta、 J. P.、 & Garcia-Meca、 E.
(2007). Ownership structure、 discretionary accruals and the informativeness of earnings. Corporate Governance: An International Review、 15、 677-691.
230 Carlo Salvato/Ken Moores(2010)”Research on Accounting in Family Firms:
Accomplishments and Future Challenge”Family Business Review Vol.23(3)Family Firm Institute、、pp193-215.。
231 Carlo Salvato/Ken Moores(2010)”Research on Accounting in Family Firms:
Accomplishments and Future Challenge”Family Business Review Vol.23(3)Family Firm Institute、、pp193-215.。
232 Carlo Salvato/Ken Moores(2010)”Research on Accounting in Family Firms:
Accomplishments and Future Challenge”Family Business Review Vol.23(3)Family Firm Institute、、pp193-215..(原典)Dhaliwal、 D. S.、 Salamon、 G. L.、 & Smith、
E. D. (1982). The effect of owner versus management control on the choice of accounting methods. Journal of Accounting and Economics、4、 pp41-53.
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とか定額減価償却法を選択する可能性はより少ない。経営日和見主義が経営オ ーナーシップと共に減少するからである。同じように、Niehaus (1989)233は、
Fortune
の500
の会社では、先入先出法(FIFO
)の可能性は経営オーナーシップと積極的に関係していることを発見した。ただし創業ファミリーが支配する会 社に典型的にみられるように、経営オーナーシップが高い場合だけである234。
(4)ファミリービジネスの会計方法の選択に対する今後の研究課題
この研究分野は、おそらく、過去
2、 30
年間はもっと魅力的であっただろう。この時代には、会計法は決して均一ではなかったし、今日のグローバルな資金 市場においてよりもずっと自発的であった。しかしファミリービジネスと非フ ァミリービジネスにおける会計方法の選択についての証言が非常に限られてい ることはいいとして、残された研究課題としては、次のようなものがある。す なわち、違った国々でのファミリービジネスは、会計方法の採用につき、限定 された柔軟性を行使する際にどのくらい非ファミリービジネスと異なるのだろ うか。どうしてファミリービジネスは、会計法の選択につき違った選択をする のだろうか、という課題である235。