• 検索結果がありません。

オーナーファミリーとの取引

ドキュメント内 博士論文題目 (ページ 118-125)

第 4 章 ファミリービジネスの利益調整行動

4.2. ファミリービジネスと利益調整の傾向

4.2.2. オーナーファミリーとの取引

112

とか定額減価償却法を選択する可能性はより少ない。経営日和見主義が経営オ ーナーシップと共に減少するからである。同じように、Niehaus (1989)233は、

Fortune

500

の会社では、先入先出法(

FIFO

)の可能性は経営オーナーシップ

と積極的に関係していることを発見した。ただし創業ファミリーが支配する会 社に典型的にみられるように、経営オーナーシップが高い場合だけである234

(4)ファミリービジネスの会計方法の選択に対する今後の研究課題

この研究分野は、おそらく、過去

2、 30

年間はもっと魅力的であっただろう。

この時代には、会計法は決して均一ではなかったし、今日のグローバルな資金 市場においてよりもずっと自発的であった。しかしファミリービジネスと非フ ァミリービジネスにおける会計方法の選択についての証言が非常に限られてい ることはいいとして、残された研究課題としては、次のようなものがある。す なわち、違った国々でのファミリービジネスは、会計方法の採用につき、限定 された柔軟性を行使する際にどのくらい非ファミリービジネスと異なるのだろ うか。どうしてファミリービジネスは、会計法の選択につき違った選択をする のだろうか、という課題である235

113

オーナーファミリーたる経営者との取引は、実態的裁量行動の典型である。

ファミリービジネスにおいては、株式所有がオーナー一族によるケースが多い。

よって、株主利益の最大化といっても、経営者一族の利益に結びつくこととな る。したがって、オーナーファミリーたる経営者との取引は、裁量の余地が大 きく、実態的利益調整行動が行われやすい。

そのため、ファミリービジネスと経営者一族との取引を総合的にみて、収益 力を把握することが必要となる。

また、税務上の課税所得の算定基礎として企業会計上の利益が用いられると いう会計の利害調整機能から、ビジネスでの利益をファミリーに還元する場合、

法人税や所得税等を合わせた納税負担等がより軽減されるような観点で、役員 報酬等を決定しながら、その結果として当期純利益を確定させる傾向もある。

(1) 役員報酬

ファミリービジネスにおいても、会社の収益力が上がると役員報酬等を増や す、逆に収益力が落ちると役員報酬等を減らすことが一般的である。よって、

役員報酬が増えている場合は実質的に業績がよく、これに対して、減少してい る場合は収益力が落ちている可能性が高い236

(2)

地代家賃

今までは役員報酬の見方を中心に述べたが、地代家賃についても同様の分析 が可能である。むしろ、役員報酬と合わせて分析に組み込むことが必要である。

ファミリービジネスに利益が生じだすと、経営者一族が法人税等の負担を回 避するために、役賃報酬を増額することはすでに説明したが、役員報酬でなく 地代家賃を増額することによっても同様の効果が得られる。

なぜなら、社長が会社から地代家賃を多くもらえば、個人的には利益を還流 できるし、その分だけ会社の経費が増えるため、法人税等も少なくなる。

会社がオーナーである経営者の自宅の一部を使っている場合や、その所有す る土地に会社の建物を建てた場合などは、経営者個人が会社から適正額以内で 地代家賃をもらうことが可能である。

そのような場合には、社長が会社からもらう金銭等の名目は、役員報酬とし ても、地代家賃としても、結果はおおむね同じである。

したがって、ファミリービジネスの利益調整を判断する場合には、経営者一 族が得ている役員報酬と地代家賃を合わせたところで検討することが必要にな る。

236 石田昌宏(2008)「融資力トレーニングブック 粉飾決算の見分け方」ビジネス教育出 版,pp11-15。

114

実際には、経営者個人の所得税額の算定上で、役員報酬には給与所得控除が 認められるメリットがある一方で、場合によっては年金支給額が減額される等 のデメリットもあるし、地代家賃には必要経費の計上や青色申告特別控除など のメリットや会社の消費税で得をするケースもありますので、どちらの名目で もらったほうが有利かはケースによる

なお、経営者が会社に対して無償で不動産等を貸しても、税務上はとくに問 題が生じない。これは、個人が会社に対して無償で不動産等を貸した場合、特 別な場合を除いては、無償で借りたことで得をした分に対して会社に法人税等 が課税されることはなく、もらわなかった地代家賃に対して個人に所得税がか かるようなこともないからである。

役員報酬と地代家賃の金額は、税務的な有利不利だけでなく、その他の理由 で左右されることもある。例えば、自分の取り分が他の役員等と比較して高額 ではないとアピールしながら社内でリーダーシップを発揮したいという趣旨で、

不動産の賃料を目一杯高額にして、役員報酬は低くすることもある。

いずれにしても、経営者一族に対する役員報酬や地代家賃の金額は、社長自 身が決める問題である。株主が分散していなければ、会社法上の競合避止義務 の問題も生じない。

どのように金額を設定したかを把握することは、利益調整の分析に有用であ る。

ファミリービジネス業においては、会社の収益力が上がると役員報酬等を増 やす、逆に収益力が落ちると役員報酬等を減らすことが一般的である。よって、

役員報酬が増えている場合は実質的に業績が良く、これに対して、減少してい る場合は収益力が落ちている可能性が高い237

(3)交際費

交際費の増減についても、おおむね同じような見方ができる。業績が良いと きには贅沢に交際費を使う、収益力が落ちてきたら少し謙虚に支出する。苦し くなったら交際費を極力抑えるというのが、一般的なファミリービジネスの経 営者である。このため、交際費の増減については、注目すべき利益調整項目で ある。

ただし、交際費の使い方には、社長個人の価値観等が強く反映される。業績 が良いにもかかわらず交際費を控えめにしている経営者もあれば、収益力が落 ちてきているにもかかわらず交際費を抑えられない経営者もある。その状況か ら、経営者としての派手さや自分に対する厳しさ等が、ある程度まで伺い知る ことができ、経営者の経営方針が顕在化しやすい項目ということができる。

237 同上、p22。

115

役員報酬額等の増減とともに、交際費の増減についても継続的に把握してい くことが、ファミリービジネスの利益調整分析において役立つと考えられる。

経営が乗っている車についても、同様に見ることができる。派手な外車に乗 っているか、国産車を大切に長いこと乗っているかで、当然に経営者のタイプ や価値観は異なる。

後継者にどのような車を与えているかでも、同様な定性情報が得らることが できる。この点は、滅価償却資産の明細書によって、経営者や後継者の車が、

何年前にいくらで買ったどのような車かを確認することができる。交際費によ る評価を補完できることとなる。

財務諸表に表れる数字の多くは、取引先等の相手があって、はじめて決まっ てくるものである。その中にあって、経営者が自分自身で決めることができる、

つまり経営者の意思や判断が反映されやすい数字には、経営者一族に対する役 員報酬、地代家賃、交際費等がある。

これらの数値については、経営者が会社の収益力等をどのように見ているかが 強く反映されるため、把握しておくことが重要である。

財務分析によって将来の収益力等を判断することはある程度可能であるが、

しょせんは過去のトレンド等から将来を予測しているだけに過ぎない。経営に あたる当事者としての経営者が、会社の将来をどのように予測しているかを確 認できれば、その情報は非常に大切な情報といえるであろう。とはいえ、経営 者から直接将来の展望を聞いたところで、業績悪化が見込まれるにもかかわら ず、対外的にはバラ色の将来展望を語る経営者は少なくない。直接聞かなくて も、社長の予測は役員報酬の設定額等にあらわれてくる。

役員報酬は定時株主総会のとき以外のタイミングで金額の変更を行うと、通 常は税務上で不利益を被るため、定時株主総会時に変更するという実務が定着 している。そのときに、経営者が今まで以上に業績が良くなると予測していれ ば、役員報酬月額を増やすであろうし、逆に悪化しそうなら減額するのが一般 的である。今後の業績を直接ヒヤリングするかわりに、あるいは補完するため に、定時株主総会において社長自身が決定した役員報酬や地代家賃等の増減額 から、社長の本音を推測することが重要といえる238

(4)

配当金

経営者一族が会社から利益を得る方法として、株式や出資に対する配当金と して受け取る方法もある。しかし、ファミリービジネスにおいては、この方法 はあまり採用されていない。なぜなら、会社が配当を行っても、支払った配当 金は法人税法上で経費にならないため、ほとんどのケースで法人税等の節税に 役立たないからである。

238 同上、pp25-26。

ドキュメント内 博士論文題目 (ページ 118-125)