第 7 章 対象事例
7.2. カルビー:ファミリービジネス以外の新規株式公開事例
7.2.3. カルビー上場の意義
カルビー株式会社は、
2011
年3
月11
日に東京証券取引所市場第一部に上場を 果たした。上場の意義として、海外進出、経営合理化と効率化、株主による監 視が考えられる。第一に、海外進出について、これまでのカルビーは国内売上が大半を占める 企業で、海外売上高比率は約
3.5%に過ぎなかった
395。海外にも製造販売拠点は あったものの、販路開拓が思うようにいかなかった経緯があった。よって、ペ プシコとの資本提携により海外展開の礎を築いた。北米だけでなく、中国、ア ジア諸国を中心とする海外事業の拡大に向けて、すべての地域で現地生産体制
395 『経済界』46(7)、 p. 52。
188
を整える。また、ペプシコとの提携を皮切りに、ライセンス契約と事業買収(
L&A:
Licensing & Acquisition)を推進していく
396。【図16 カルビーの株価(2011 年 3 月〜2013 年 11 月)】
(出所)筆者作成。
第二に、経営合理化と効率化について、従来は安売りをしてこなかったが、
価格を下げてシェアを獲得することにより工場の稼働率を高めてコストを削減 するなど、これまでになかった経営の合理化と効率化を追求するようになった。
また、過剰な品質管理についても改めて、システムや業務を効率化した。松本 晃は、「最低でも
10%の売上高経常利益率を実現する。そのために品質を上げな
がらコスト削減を徹底する」397と語る。第
61
期(2010
年3
月期)は売上高1464
億円に対して経常利益95
億円、売上 高経常利益率は6.5%だったが、第 64
期(2013年3
月期)には売上高1794
億円 に対して経常利益171
億円、売上高経常利益率は9.5
%にまで改善している。コ スト削減により捻出した資金は研究開発に投資していく398。カルビーが上場時 に得た資金は約50
億円と言われており、その多くをJagabee
の生産能力増強に 向けて投資された399。財務体質も改善され、上場の過程で不良債権、不用債権
396 『経済界』46(15)、 p. 18。
397 『日経ビジネス』1551(2010年7月26日)、 p.50。
398 前掲記事(2010年7月26日)、 p.51。
399 『経済界』46(7)、 p. 52。
189
を整理し、バランスシートを改善した。設備投資を改善し、減価償却費を減少 させた400。
【図17 カルビーの株価(2011 年 3 月 11 日〜2012 年 3 月 11 日)】
(出所)筆者作成。
第三に、株主からの監視の効用がある。
2000
年8
月に発生したポテトチップ スへの異物混入事件、2005年のカルビーポテト株式会社による防疫検査を受け ていないジャガイモの種芋販売といった不祥事があり、3
代目の松本雅彦が2005
年に社長を辞任した。株主からの監視により、「同族経営からの脱却を図り、外 から監視されることによる緊張感のある会社体質に変えていく。そして、海外 展開など、今以上の成長が見込める会社に変貌させる401」という意図がある。カルビー株式会社が上場した
2011
年3
月11
日以降の株価で、2013
年11
月現 在までの株価推移を(図16)、上場後1
年間(2012
年3
月11
日まで)の株価 推移を(図17)に示す。
400 『財界』59(8)、 p. 68。
401 『経済界』46(7)、 p. 52。
190
ドキュメント内
博士論文題目
(ページ 193-196)