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Laurent 展開

ドキュメント内 複素関数 - nalab.mind.meiji.ac.jp (ページ 160-166)

10 Laurent 展開 , 孤立特異点 , 留数

10.1 Laurent 展開

定義 10.1 (円環領域) c∈C, 0 ≤R1 < R2 + に対して、

A(c;R1, R2) :={z C|R1 <|z−c|< R2}

とおき、これを c を中心とする円環領域(annulus, annular domain, annular region) と 呼ぶ。

また

A(c;r1, r2) := {z C|r1 ≤ |z−c| ≤r2} とおく。

「円環」という言葉にふさわしいのは、0 < R1 < R2 < + の場合だけだろう。しかし、

Laurent級数の収束・発散を扱うときは、収束円のときと同様に R1 = 0 や R2 = + の場合 も考えるのが有効である。

実はR1 = 0の場合が頻出する。これは円盤D(c;R2)からcを除いたものである。すなわち A(c; 0, R2) =D(c;R2)\ {c}.

特に A(c; 0, R2)⊂D(c;R2)である。

円盤領域D(c;R)で正則な関数は冪級数展開出来たが、円環領域 A(c;R1, R2)で正則な関数 は Laurent 級数展開出来る。

定理 10.2 (円環領域で正則な関数は Laurent展開出来る) c C, 0 R1 < R2 +. fA(c;R1, R2)で定義されていて正則とするときa、ある{an}nZ CZ が一意的に存在 して、

(64) f(z) =

X n=0

an(z−c)n+ X n=1

an

(z−c)n (z ∈A(c;R1, R2))

が成り立つ。右辺の級数はR1 < r1 < r2 < R2 を満たす任意のr1, r2 に対して、A(c;r1, r2) で一様に絶対収束する。

(64) が成り立つとき、R1 < r < R2 を満たす任意のr に対して、

(65) an= 1

2πi Z

|zc|=r

f(z)

(z−c)n+1 dz (n∈Z) が成り立つ。

a正確にいうと: f: ΩCかつ、A(c;R1, R2)Ω,かつf|A(c;R1,R2) は正則。

係数を表す公式(65)は、D(c;R) で正則な関数のTaylor 展開の係数の式と同じ形をしてい る。「覚えられない」とギブアップしないように。

この定理の中の「一様に絶対収束」の部分の証明は、冪級数についての定理3.21 と、次の

補題(証明は付録に回す, p. 254) から得られる。

補題 10.3 (負の指数の 冪級数 の収束) X n=0

an

(z−c)n について、次の3つのいずれか1 つだけが必ず成立する。

(i) ∀z C\ {c} に対して収束する。∀R (0,∞) に対して、{z C| |z−c| ≥R} で 一様に絶対収束する。

(ii) ∃R∈(0,∞) s.t. {z C| |z−c|> R}で収束し、D(c;R)で発散する。∀R (R,∞) に対して、{z C| |z−c| ≥R} で一様に絶対収束する。

(iii) ∀z C\ {c} に対して発散する。

定理10.2の証明 最初に係数についての等式(65)を証明する。mを任意の整数とする。(64) の両辺を (z−c)m+1 で割って

(66) f(z)

(z−c)m+1 = X n=−∞

an(z−c)nm1 (z ∈A(c;R1, R2)).

R1 < r < R2 を満たす任意の r に対して、(補題10.3 直前の注意から) 円周 |z−c|=r 上で

Laurent 級数が一様収束するので、有界な 1

(z−c)m+1 をかけた(66)も一様収束する。ゆえに、

項別積分が可能であり、

1 2πi

Z

|zc|=r

f(z)

(z−c)m+1 dz = X n=−∞

1 2πi

Z

|zc|=r

an(z−c)nm1 dz = X n=−∞

anδnm=am. これから(64)を満たす{an}の一意性(存在すればただ一つしかない)と、(65)の積分がr に 依らないことも分かる。

以下、(64)を満たす {an} が存在することを示す。r1, r2R1 < r1 < r2 < R2 を満たす任 意の数とする。D :=A(c;r1, r2) とおくと、fD を含む開集合 A(c;R1, R2) で正則である からことから、

(67) f(z) = 1

2πi Z

∂D

f(ζ)

ζ−z (z ∈A(c;r1, r2))

が導かれる(例えば、定理 8.5を用いて証明できる。また、星型領域における Cauchy の積分 定理を用いた証明を§10.1.1で説明する。)。

ゆえに

I := 1 2πi

Z

|ζc|=r2

f(ζ)

ζ−z dζ, J := 1 2πi

Z

|ζc|=r1

f(ζ) ζ−z とおくと

f(z) = 1 2πi

Z

∂D

f(ζ)

ζ−z =I+J.

I は円盤における正則関数のTaylor 展開と同じで、

I = X n=0

an(z−c)n, an := 1 2πi

Z

|ζc|=r2

f(ζ)

(ζ−z)n+1 dζ.

J については、|ζ−c| =r1 のとき ζ−c

z−c

= r1

|z−c| <1 であるから (等比級数の和の公式 より)

1

ζ−z = 1

(ζ−c)(z−c) = 1

z−c· 1

1 ζzcc = X n=1

(ζ−c)n1 (z−c)n が導かれるので

(68) J = 1

2πi Z

|ζc|=r1

X n=1

(ζ−c)n1

(z−c)n f(ζ)dζ.

M := max

|ζc|=r1

|f(ζ)| とおくと|ζ−c|=r1 ならば

(ζ−c)n1 (z−c)n f(ζ)

M

r1

r1

|z−c| n

が成り立つので、Weierstrass M-testが適用できて、(68)の右辺に現れる級数は、円周|ζ−c|=r1 上で一様収束する。ゆえに項別積分が可能で

J = X n=1

1 2πi

Z

|ζc|=r1

f(ζ)

(ζ−c)n+1 1 (z−c)n =

X n=1

an

(z−c)n. まとめると

f(z) = X n=0

an(z−c)n+ X n=1

an

(z−c)n (r1 <|z−c|< r2).

r1, r2 が任意であることから、この級数は A(c;R1, R2) で収束する。

注意 10.4 任意の X n=1

an

(z−c)n について、次の3つのうち、どれか1つ(だけ)が成り立つ。

(i) 任意のz C\ {c}に対して収束する。

(ii) あるR (0,+)が存在して、|z−c|> R ならば収束、|z−c|< R ならば発散する。

(iii) 任意のz C\ {c}に対して発散する。

(i) のときR = 0, (iii)のときR = + とすると、いずれの場合も

|z−c|> R 収束, |z−c|< R 発散.

さらにr > R を満たす任意のr に対して、{z C| |z−c| ≥r} で一様に絶対収束する。

実際、任意のz C\ {c} に対して、ζ := 1

z−c とおくと、

X n=1

an (z−c)n =

X n=1

anζn,

|z−c|> r ⇔ |ζ|< 1 r,

|z−c|< r ⇔ |ζ|> 1 r,

|z−c|=r ⇔ |ζ|= 1 r

が成り立つことから、原点中心の冪級数の収束・発散に帰着されるので、ほぼ自明である。

Laurent展開を孤立特異点のまわりのものに限るテキストもあるが、ここでは円環領域で正

則な関数に対して定義しておく。特に正則点のまわりの Laurent 展開、留数も定義されるこ とになり、Laurent 展開はTaylor 展開の一般化であることになる。

定義 10.5 (円環領域における Laurent 展開, 点のまわりの Laurent 展開と主部・留数) c∈C, 0≤R1 < R2 +, fA(c;R1, R2) で定義されていて正則とするとき、

() f(z) =

X n=0

an(z−c)n+ X n=1

an

(z−c)n (z ∈A(c;R1, R2)) を満たす{an} が一意的に存在する。

この() を fA(c;R1, R2) における Laurent (級数)展開と呼ぶ。

特に R1 = 0 のとき、fc のまわりの (c における) Laurent (級数)展開とも呼ぶ。

さらに X n=1

an

(z−c)n をLaurent (級数)展開の主部 (主要部、the principal part)、a1fcにおける留数(residue)と呼び、Res(f;c) で表す:

Res(f;c) = a1.

(注意: R1 >0の場合は、主部、留数という言葉は使わない。)

以下この講義に現れる Laurent 展開の9割以上が、点のまわりの Laurent 展開で、そうで ない円環領域における Laurent 展開は、あまり登場しない。これは(以下に導入する)孤立特 異点の話が長くなるせいであるが、他のテキストを読んでいる人には注意が必要かもしれない (テキストによっては、円環領域における Laurent 展開を定義していないものもある)。

10.1.1 (67) の証明について (しばらく工事中。)

講義の後に (67) がなぜ成り立つのか、分かるように説明してほしい、と言われたので、説 明してみる。

私自身は、Greenの定理は重要で、(67)を証明するのにうってつけであると感じているのだ が、現実には、関数論を学習する人にとって、Greenの定理はとても常識とは言えない(その 説明に十分な時間を割けない、そもそも必修科目の範囲に入っていない、そういうのがありが ちと思われる)。以下では、講義科目内の self-contained を目指し、Greenの定理は使わずに、

定理6.18と、定理??を使った証明を説明する。

ε >0, D(a;ε)⊂A(c;r1, r2) とするとき (69)

Z

|zc|=r2

f(z) z−a dz

Z

|zc|=r1

f(z) z−a dz =

Z

|za|=ε

f(z) z−a dz

を示そう。右辺は円盤領域における Cauchy の積分公式により、2πif(a)に等しいことが分か る。ゆえに (67)が成り立つ(zζ, az に置き換える)。

a=c+ρe, ρ >0,φ R とする。

C11: z =r1e (θ [φ, φ+π]), C12: z =r1e (θ [φ+π, φ+ 2π]), C21: z =r2e (θ [φ, φ+π]), C22: z =r2e (θ [φ+π, φ+ 2π]), γ1: z =a+εe θ∈[φ, φ+π], γ2: z =a+εe θ∈[φ+π, φ+ 2π], L1: z =tei(φ+π)(t∈[r1, r2]),

L2: z =te (t∈[r1, ρ−ε]), L3: z =te (t∈[ρ+ε, r2]),

Γ1 :=C21−L1 −C11+L2−γ1+L3, Γ2 :=−L3 −γ2−L2−C12+L1+C22

と Γ1, Γ2 を定義すると、どちらも閉曲線であり、Γ1+ Γ2 に沿った線積分で、往復する経路 (±L1, ±L2, ±L3)に沿う線積分が打ち消しあって0になるので、

Z

Γ12

f(z) z−a dz =

Z

C21C11γ1γ2C12+C22

f(z) z−a dz

= Z

C21+C22

f(z) z−a dz−

Z

C11+C12

f(z) z−a dz−

Z

γ1+γ2

f(z) z−a dz

= Z

|zc|=r2

f(z) z−a dz

Z

|zc|=r1

f(z) z−a dz

Z

|za|=ε

f(z) z−a dz が得られる。以下 Z

Γ1

f(z)

z−a dz = 0, Z

Γ2

f(z)

z−a dz = 0

を示す。それができれば 0 =

Z

Γ12

f(z) z−a dz =

Z

|zc|=r2

f(z) z−a dz−

Z

|zc|=r1

f(z) z−a dz−

Z

|za|=ε

f(z) z−a dz から、移項により (69)が得られる。

以下、積分路 Γ1 を、積分の値を変えずに、像が星型領域に含まれるような Γ1 に変形でき ることを示す。

R1,R2 より、角度2∆φ以下の任意のバウムクーヘン扇領域が星型となるような∆φ >0が 定まる(定理??)。

c から γ1 へ接線を引き、その偏角を φ+δ とする(接線が z = c+tei(φ+δ) という意味で ある)。

中心角が小さなバウムクーヘン扇領域 B で Z

∂B

f(z)

z−adz = 0 が成り立つので、L1, C11 の 定義式にあるφ+πを少し(∆φ 以下) 減少させても積分

Z

Γ1

f(z)

z−adz の値は変わらない。そ の変形を繰り返すことで、積分の値を変えずに、φ+π のところを φ+δ+ φ3 に変えること ができる。

L2, L3 の像は、直線 z = c+te (t > 0) の像に含まれるが、積分路を変形して、半直線 z =c+tei(φ+δφ3 ) (t≥0)の像に含まれるようにできる。もちろん同時にC11γ1 の部分も 変形する(C11 はまだしも、γ1 の変形を式で書くと複雑になるので、それはあきらめる)。— 以上は a を避けた、ということである。

こうして得られた閉曲線Γ1 は、その像が B(c;R1, R2, φ+δ−φ2 , φ+δ+φ2 )に含まれる。

この領域は星型であるので、

Z

Γ1

f(z) z−adz =

Z

Γ1

f(z)

z−adz = 0.

同様にして Z

Γ2

f(z)

z−adz = 0 が証明できる。

(個人的な感想: 定理??さえ理解してしまえば、後は図を眺めるだけで積分路の変形が納得

できるのだが、こうして言葉で説明を書くのは面倒で、また出来上がった説明が読む人にかな り分かりにくくなっている、と思われる。)

ドキュメント内 複素関数 - nalab.mind.meiji.ac.jp (ページ 160-166)