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冪級数の収束円

ドキュメント内 複素関数 - nalab.mind.meiji.ac.jp (ページ 56-62)

(次の命題は、授業では c= 0 の場合に証明を書くのが良いかもしれない34。中心を cとす

ると、案外式が複雑に見えてしまう。)

補題 3.1 {an}n0 を複素数列、c, z0 C とする。

X n=0

an(z−c)nz = z0 で収束するな らば、|z−c|<|z0 −c| を満たす任意のz C に対して絶対収束する。

証明 lim

n→∞an(z0−c)n= 0 である。(一般に「収束する級数 X n=1

an の一般項は 0に収束する:

nlim→∞an= 0.」が成り立つから35。)

「収束列は有界である」から

(∃M R)(∀n N∪ {0}) |an(z0−c)n| ≤M.

このとき bn:=M z−c

z0−c

n とおくと

(∀n∈N∪ {0}) |an(z−c)n|=|an(z0−c)n| z−c

z0−c

n≤M z−c

z0−c

n =bn.

34ζ:=zc,ζ0:=z0cとおくと、X

n

anζn ζ=ζ0で収束するならば、|ζ|<|ζ0|を満たす任意のζに対 して絶対収束する。」という命題に帰着されるので、c= 0の場合に証明すれば十分である」くらい言っておく。

35実際s:=

X n=1

an,sn:=

Xn

k=1

ak とおくと、sn sであるが、sn1sも成り立つ。ゆえにn→ ∞のとき

an= Xn

k=1

ak

nX1

k=1

ak =snsn1ss= 0.

数列 {bn}は公比 |(z−c)/(z0−c)|<1の等比級数であるので収束する:

X n=0

bn= M

1− |z−c|/|z0 −c|.

ゆえに優級数の定理(定理A.5, p. 232,よほど忙しくない限り、授業で「優級数の定理」の証 明を紹介するつもりである。)から

X n=0

an(z−c)n は絶対収束する。

3.2 {an}n0 を複素数列、c, z0 C とする。

X n=0

an(z−c)nz =z0 で発散するなら ば、|z−c|>|z0−c| を満たす任意のz に対して発散する。

証明 補題から「|z1−c|<|z2−c| のとき、z2 で収束すればz1 で収束する」が分かるが、そ の対偶である。

定理 3.3 (冪級数の収束円の存在) {an}n0 を複素数列、c∈Cとする。冪級数 X n=0

an(z− c)n に対して、次のいずれか一つが成立する。

(i) z =c以外の任意のz で冪級数は収束しない。

(ii) 任意の複素数z で冪級数は収束する。

(iii) ある正の数 ρ が存在して、|z−c|< ρならば冪級数は収束し、|z−c|> ρ ならば冪 級数は発散する。

証明 (授業では、図を描いて流すものかもしれない。「きちんとやるには、区間縮小法に持 ち込みますが、それは講義ノートを見て下さい。」と言って簡単に済ませる。)

A:=

(

z C

X n=0

an(z−c)n は収束する )

とおく。c∈A であることに注意する(z =cを代入すると n≥1 に対して an(z−c)n= 0 で あるから収束する)。次の3つに場合分けできる。

(i) A={c}. すなわち、c以外のすべての複素数で発散する。

(ii) A=C. すなわち、すべての複素数で収束する。

(iii) (i), (ii)のいずれでもない。

(iii) の場合を考える。

(i) でないので、∃zc ∈A\ {c}. r0 :=|zc−c| とおくとき、|z−c|< r0 では収束する。

(ii) でないので、∃zd C\A. R0 :=|zd−c| とおくとき、|z−c|> R0 では発散する。

0< r0 < R0 である。以下、二分法を行なう。

ρ0 := r0+R0

2 とおく。

c+ρ0 ∈Aであれば|z−c|< ρで級数は収束する。このとき r1 :=ρ0,R1 :=R0 とおく。

c+ρ0 6∈Aであれば|z−c|> ρで級数は発散する。このときr1 :=r0,R1 :=ρ0 とおく。

どちらの場合も、級数は |z−c|< r1 で収束し、|z−c|> R1 で発散する。また r0 ≤r1 < R1 ≤R0, R1−r1 = R0−r0

2 が成り立つ。

以下同様にして、数列{rn}, {Rn} が作ると、

{rn}は単調増加数列であり、{Rn} は単調減少数列である。

• 任意の n に対して rn< Rn, Rn−rn = R0 −r0 2n .

• 任意の n に対して、級数は |z−c|< rn で収束し、|z−c|> Rn で発散する。

区間縮小法により、{rn}{Rn}は共通の極限 ρ に収束する。

ρ≥r0 >0 であるから ρ >0.

また級数は |z−c|< ρ で収束し、|z−c|> ρ で発散する。

(i) の場合に ρ = 0, (ii) の場合に ρ = + とすると、形式的に次のように一つにまとめら れる。

あるρ (0≤ρ≤+) が一意的に存在し、|z−c|< ρ で収束、|z−c|> ρ で発散する。

通常、円 D(c;ρ) ={z C| |z−c|< ρ} の半径ρ は正の数であるが、ρ= 0, ρ= +の場 合も用いることにする。

D(c; 0) =∅, D(c;) =C と約束する。

定義 3.4 (収束半径, 収束円, 収束冪級数) 上の定理の ρ を冪級数の収束半径(radius of convergence)、{z C| |z−c|< ρ}を冪級数の収束円 (the circle of convergence)と呼ぶ。

冪級数の収束半径が0でない (正の数または )とき、その冪級数は収束冪級数であると いう。

注意 3.5 (「収束半径の定義を述べよ」と言われたら) 収束半径の定義は何か?と尋ねられて

答えられない人が多い。上に書いた定義は「上の定理の」とあるので、そういう問題の答とし て使いにくいかもしれない。過保護かもしれないが、一つの答を示す。

0≤ρ <+または ρ= + とする。ρ が冪級数 X n=0

an(z−c)n の収束半径であるとは

|z−c|< ρならば X n=0

an(z−c)n は収束し、|z−c|> ρならば X n=0

an(z−c)n は発散する が成り立つことをいう。

青い字で書いた条件を覚えて欲しい。

3.6 (もっとも簡単な冪級数、等比級数) (c= 0, an = 1 とした) X n=0

zn を考えよう。これ は公比z の等比級数であるから、収束・発散が具体的な計算で判る。結論だけ述べると、|z|<1 であれば収束、|z| ≥1 であれば発散する。ゆえに収束半径は 1である。

(念のため「ゆえに」の説明: |z| ≥1であれば発散することから、|z|>1であれば発散するこ とが導かれる(当たり前)。ゆえにc= 0,ρ= 1 として、「|z−c|< ρならば収束し、|z−c|> ρ ならば発散する」という条件が成立する。ゆえに 1が収束半径である。)

ゆえに収束円はD(0; 1) ={z C| |z|<1}.

46. 上の例で述べたこと(複素等比級数の収束条件)を確認せよ。

{an} が分かっているとき、それからρ を計算する公式を2つ紹介する。次の定理は、適用 範囲はあまり広くないが(それでも微積の講義で現れる冪級数の多くを処理可能である)、使う のが簡単なので、身につけるべきものである。

命題 3.7 (係数比判定法, ratio test, d’Alembertの判定法) {an}n0 を複素数列、c∈C とする。冪級数

X n=0

an(z−c)n について、ある番号から先のすべての n に対して an 6= 0 であり

nlim→∞

|an|

|an+1| が確定するならば、それは冪級数の収束半径に等しい。

(“d’Alembert” は「ダ・ランベール」と読む36

ここで「確定する」とは、極限が存在する(収束する)か、lim = + となる、という意味 である。

証明のあらすじは、(i )|z−c|< ρ のときは等比級数と比較して、優級数の定理を用いて収 束することを示し、(ii)|z−c|> ρのときは、一般項が 0には収束しないことを示して、級数 は発散する、と議論する。)

証明 c= 0 の場合に証明すれば良い。lim

n→∞

|an|

|an+1| =ρとおく。|z|< ρならば収束し、|z|> ρ ならば発散することを示す。

|z|< ρとする。|z|< R < ρとなるR を取る。(ρ <∞ならばR := |z|+ρ

2 とおく。ρ= ならば R:=|z|+ 1 とおく。) lim

n→∞

|an|

|an+1| =ρ であるから、(∃N N) (∀n N: n≥N) an

an+1

> R (これは an+1

an

< 1

R と書き直せる).

この条件を満たす N を1つ取る。m 0 とすると aN+mzN+m=

aNaN+1

aN · aN+2

aN+1 · · · · aN+m

aN+m1zNzm

≤aNzN

|z| R

m

. 言い換えると ∀n≥N に対して

|anzn| ≤aNzN

|z| R

nN

. そこで

bn :=





|anzn| (0≤n≤N 1) aNzN

|z| R

nN

(n ≥N)

36Jean Le Rond d’Alembert (1717年フランスのParisに生まれ、1783年フランスのParisにて没する。哲学 者、物理学者、数学者。)

とおくと、任意の n Nに対して |anzn| ≤bn, X

n=0

bn =

N1

X

n=0

|anzn|+ aNzN

1− |z|/R (収束).

優級数の定理により X n=0

anzn は収束する。

|z| > ρ とする。|z| > R > ρ となる R を取る。(ρ = + のときは考えなくて良いので、

R := |z|+ρ

2 とおけば良い。) lim

n→∞

|an|

|an+1| =ρ であるから、(∃N N) (∀n N: n≥N) an

an+1

< R (これは an+1

an

> 1

R と書き直せる).

上と同様にして (しかし不等号の向きは逆になって)∀n ≥N に対して

|anzn| ≥aNzN

|z| R

nN

.

ゆえに anzn は0に収束しないので、

X n=0

anzn は発散する。

3.8 (ratio test の例) X n=1

zn

n の収束半径は 1である。実際 an= 1

n とおくと

nlim→∞

|an|

|an+1| = lim

n→∞

n+ 1

n = lim

n→∞

1 + 1

n

= 1.

収束円は D(0; 1) ={z C| |z|<1}. 同様に

X n=1

zn

n2 の収束半径は1 であり、収束円は D(0; 1).

X n=0

zn

n! (expz の Taylor 展開) の収束半径は + である。実際an= 1

n! とおくと

nlim→∞

|an|

|an+1| = lim

n→∞

(n+ 1)!

n! = lim

n→∞(n+ 1) = +∞. ゆえに収束円は C.

同様に X n=0

n!zn の収束半径は0 であり、収束円は . X

k=0

(1)n

(2k)! z2k (cosz のTaylor 展開) の収束半径は+ である。実際ζ =z2 とおくと X

k=0

(1)k (2k)!z2k =

X n=0

(1)n (2n)! ζn.

右辺は ζ の冪級数である。まずこの収束半径を調べる。an = (1)n

(2n)! とおくと

nlim→∞

|an|

|an+1| = lim

n→∞

(2(n+ 1))!

(2n)! = lim

n→∞(2n+ 2)(2n+ 1) =∞.

この (ζ の) 冪級数 X n=0

(1)n

(2n)!ζn の収束半径が + であるから、この冪級数は任意の ζ に対

して収束する。するともとの級数 X k=0

(1)n

(2k)!z2k は任意のz に対して収束することが判る。ゆ えに収束半径は +. 収束円は C.

時々 |an|

|an+1| なのか |an+1|

|an| なのか、混乱しそうになるが、|an|の増大が早まるほど、収束半 径は小さくなるはず、と考えれば前者が正しいと判るであろう。あるいは

X n=0

z ρ

n

に適用 して(これは等比級数であり、収束条件が|z|< ρであることは明白)、収束半径がρ という結 果が出るかどうか。

与えられた冪級数の係数から収束半径を求める問題には、ある意味で決定版と言える解答が ある。それが次の定理である。

命題 3.9 (Cauchy-Hadamard の公式, Cauchy-Hadamard の判定法) {an}n0 を複 素数列、c∈Cとする。冪級数

X n=0

an(z−c)n の収束半径を ρとする。 1

+ = 0, 1

0 = + の約束のもとで、次式が成り立つ。

(24) ρ= 1

lim sup

n→∞

pn

|an|.

(証明のあらすじは、d’Alembert と同じである。すなわち、|z−c|< ρのときは等比級数と比 較して、優級数の定理を用いて収束を示す。|z−c|> ρ のときは、一般項が 0 には収束しな いことを示して、級数は発散する、と議論する。)

任意の複素数列 {an} に対して、lim suppn

|an| は確定するので、(24) は任意の冪級数の収 束半径を表す公式になっている(その意味では、究極の公式である)。

これを使いこなすためには、数列の上極限 lim sup (付録 A.3.1(p. 235) 参照)を習得する必 要があるが、それにはある程度の時間が必要になるので、講義では説明を省略するかもしれな い(年度によって、説明したり、説明しなかったりする)。証明は付録A.3 で与えておく。

3.10 例えば X n=1

zn2 =z+z4+z9+· · · のような級数は冪級数であり(n が平方数である ときに an = 1, そうでなければ an = 0)、収束半径が1 であることは少し考えれば分かるが、

係数比判定法の適用範囲外である。

lim sup

n→∞

pn

|an|= 1

であることはすぐ分かるので37、Cauchy-Hadamard の公式を使えば、収束半径は 1

1 = 1 と得 られる。

37pn

|an| 0, または1 であり、1 となるn (平方数)は無限にたくさん存在するので、supkn pk

|ak| = 1.

lim sup

n→∞ an = lim

n→∞sup

kn

anという公式(流儀によっては定義式)より、lim sup

n→∞

pn

|an|= lim

n→∞sup

kn

pk

|ak|= lim

n→∞1 = 1.

3.11 (簡略版 Cauchy-Hadamard の公式) {an}n0 を複素数列、c C とする。冪 級数

X n=0

an(z−c)n の収束半径をρ とする。

nlim→∞

pn

|an| が確定するならば、 1

+ = 0, 1

0 = + の約束のもとで、次式が成り立つ。

ρ= 1

nlim→∞

pn

|an|.

証明 一般に、lim が確定するとき、それは lim supに等しいので、定理からすぐに結論が得 られる。

3.12 冪級数 X n=0

2nzn, X n=0

3nzn の収束半径はそれぞれ 1 2, 1

3 である。その和として得られ る冪級数

X n=0

(2n+ 3n)zn の収束半径は 1

3 である。実際

nlim→∞

2n+ 3n 2n+1+ 3n+1

= 1 3 であることから、d’Alembert の公式により収束半径は 1

3.

筆者は、2つの収束冪級数の和として得られる冪級数の収束半径は、最初の冪級数の収束半 径の最小値とある時期勘違いしていたが、それは正しくない。

47. 冪級数 X n=0

anzn, X n=0

bnzn の収束半径がそれぞれ R1, R2 で、0 < R1 < R2 <∞ を満 たすならば、

X n=0

(an+bn)zn の収束半径はR1 であることを示せ。

48. 冪級数 X n=0

anzn, X n=0

bnzn の収束半径が両方共 R とする。

(1) X n=0

(an+bn)zn の収束半径はR 以上であることを示せ。

(2) X n=0

(an+bn)zn の収束半径がR より大きい例をあげよ。

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