11 ( 整理予定 ) Laurent 展開 , 孤立特異点 , 留数
11.3 極とその位数の特徴づけ
我々は、極とその位数をLaurent 展開を用いて定義したが、Laurent 展開を求めるのはしば しば面倒なので、もっと簡単な判定法があると便利である。ここではそれを追求しよう。
次の命題を、零点に関する命題 9.3 と比較してみると良い。この命題の (ii) =⇒ (i) の証明 を見ると、極のまわりの Laurent 展開を求める問題は、Taylor 展開を求める問題に帰着され ることが分かる。残念ながら (孤立)真性特異点のまわりの Laurent展開については、似たよ うなことは出来ない。
命題 11.8 (極の特徴づけ) c が正則関数 f: Ω→Cの孤立特異点,k ∈N とするとき、次 の (i), (ii)は互いに同値である。
(i) cは f の k 位の極
(ii) cを含むある開集合 U で正則な関数g が存在して、
f(z) = g(z)
(z−c)k (z ∈U \ {c}), g(c)6= 0.
条件 (ii) は、次の各条件 (U を少し具体的な形にした) と同値であることは比較的簡単に分 かる。
(ii)′ (∃R >0) (∃g: D(c;R)→C 正則) f(z) = g(z)
(z−c)k (0<|z−c|< R)かつ g(c)6= 0.
(ii)′′ (∃g: Ω∪ {c} →C 正則) f(z) = g(z)
(z−c)k (z ∈Ω\ {c})かつ g(c)6= 0.
(これは (z−c)kf(z)が cを除去可能特異点とする、という方が良いかも。)
証明 c が f の孤立特異点ということから、c のまわりで Laurent 展開できる。すなわち
∃R ∈(0,+∞],∃{an}n∈Z s.t.
f(z) = X∞ n=−∞
an(z−c)n (0<|z−c|< R).
(i) =⇒ (ii) の証明。c が f の k 位の極ならば、
a−k 6= 0 かつ (∀n∈N:n > k) a−n = 0.
ゆえに f(z) =
X∞ n=−k
an(z−c)n
= a−k
(z−c)k +· · ·+ a−1
z−c +a0+a1(z−c) +a2(z−c)2+· · · (0<|z−c|< R) であるから、
(z−c)kf(z) = a−k+a−k+1(z−c) +· · ·= X∞ n=0
an−k(z−c)n (0<|z−c|< R).
この右辺は冪級数で、(0 <|z −c| < R で収束するのだから) 収束半径は R 以上である。そ こで
g(z) :=
X∞ n=0
an−k(z−c)n (|z−c|< R) とおくと、g は D(c;R) で正則で、
(z−c)kf(z) = g(z) (0<|z−c|< R).
ゆえに
f(z) = g(z)
(z−c)k (0<|z−c|< R) かつ g(c) = X∞ n=−k
an−k(c−c)n =a−k 6= 0.
(ii)=⇒(i) の証明。(ii) を仮定すると、∃R >0,∃g: D(c;R)→C s.t. g は正則で、
f(z) = g(z)
(z−c)k (0<|z−c|< R), g(c)6= 0.
g は D(c;R) で正則だから、Taylor展開できる。すなわち
∃{an}n≥0 s.t. g(z) = X∞ n=0
an(z−c)n=a0+a1(z−c) +a2(z−c)2+· · · (|z−c|< R).
ゆえに 0<|z−c|< R を満たす任意のz に対して、
f(z) = g(z)
(z−c)k = a0
(z−c)k +· · ·+ ak−1
z−c+ak+ak+1(z−c) +ak+2(z−c)2+· · ·
= X∞ n=0
an+k(z−c)n+ Xk n=1
ak−n (z−c)n.
そして、a0 =g(c)6= 0 であるから、c は f の k 位の極である。
注意 11.9 (対比させておく) 命題 9.3 で見たように、cが f の k 位の零点とは、
f(z) = (z−c)kg(z) (|z−c|< R), g(c)6= 0
を満たす正則関数 g: D(c;R) →C が存在すること。また命題 11.8 で見たように、cが f の k 位の極とは、
f(z) = g(z)
(z−c)k (0<|z−c|< R), g(c)6= 0 を満たす正則関数 g: D(c;R)→Cが存在すること。良く見比べよう。
Laurent展開をしなくても、極かどうか、その位数は何か、分かることが重要である。
例 11.10
f(z) = (z−3)2(z−4)3 z3(z−1)2(z−2)
0 は f の3位の極。1 は f の2位の極。2 は f の1位の極。(それぞれg が何であるか、把握 すること。)ついでに、3は f の 2位の零点、4は f の 3 位の零点である。
それでは
g(z) = (z−2)(z−3)2(z−4)3 z3(z−1)2(z−2) は? 2は実は除去可能特異点である。実際
h(z) := (z−3)2(z−4)3 z3(z−1)2
は 2 の近傍 D(22; 1)で正則であるから、
(∃{an}n≥0) h(z) = X∞ n=0
an(z−2)n (z ∈D(2; 1)).
g(z) = h(z) (z ∈C\ {2}) であるから g(z) =
X∞ n=0
an(z−2)n (z ∈A(2; 0,1)).
ゆえに 2 は g の除去可能特異点である。
系 11.11 P と Q は c の近傍で正則で、c は P の k 位の零点、Q(c)6= 0 であるならば、
cは f := Q
P の k 位の極である。
証明 cが P の k 位の零点であるから、cの近傍で正則な関数 R が存在して、P(z) = (z− c)kR(z),R(c)6= 0. このとき、g(z) := Q(z)
R(z) とおくと、gはcの近傍で正則で、g(c) = Q(c) R(c) 6= 0, f(z) = (zg(z)−c)k (cのある除外近傍で) が成り立つ。命題11.8によって、cは f の k 位の極であ る。
問 k ∈ N, c∈ C, f は cの近傍で正則とするとき、cが f の k 位の零点であるためには、c が 1
f の極であることが必要十分であることを示せ。
例 11.1 f(z) := sinhz
sinz のすべての極とその位数を求めよ。
(解) Q(z) := sinhz, P(z) := sinz はともに C 全体で正則な関数である(sinhz = (expz − exp(−z))/2, sinz = (exp(iz)−exp(−iz))/(2i) からも分かるし、原点における Taylor 展開の 収束半径が ∞ であることを確認しても良い)。c∈C が極であるためには、P(c) = 0 である ことが必要である。sinc= 0⇔ ∃n∈Z s.t. c=nπ. P′(c) = cosnπ = (−1)n 6= 0であるから、
c=nπ は P の1位の零点である。
(i) n 6= 0 のとき、Q(nπ) = sinhnπ 6= 0 (sinhnπ > 0 に注意) であるから、上の Cor. に よって、nπ は f =Q/P の1位の極である。
(ii) 0 は P の1位の零点であるから、∃P1 s.t. P1 は 0 のある近傍 (C で OK) で正則で、
P(z) = zP1(z), P1(z) 6= 0 (0 < |z| < 1). 同様に 0 は Q の1位以上の零点であるから、
∃Q1 s.t. Q1 は 0 の近傍(C でOK) で正則で、Q(z) =zQ1(z). このとき、0 のある除外 近傍(0<|z|<1)で
f(z) = Q(z)
P(z) = zQ1(z)
zP1(z) = Q1(z) P1(z).
この右辺は |z|<1で正則であるから、0 は f の除去可能特異点である。ゆえに 0 は f の極ではない。