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Laurent 展開、孤立特異点、留数の例

ドキュメント内 複素関数 - nalab.mind.meiji.ac.jp (ページ 167-174)

10 Laurent 展開 , 孤立特異点 , 留数

10.3 Laurent 展開、孤立特異点、留数の例

注意 10.8 (Laurent展開はTaylor展開の一般化である) fc の近傍 D(c;R) で正則であ るとき、ある {an}n≥0 が存在して、

f(z) = X n=0

an(z−c)n (z ∈D(c;R))

と Taylor 展開(冪級数展開) 出来る。このとき、an= 0 (n∈N) とおくと、

f(z) = X n=0

an(z−c)n+ X n=1

an

(z−c)n (z ∈A(c; 0, R))

が成り立つ (A(c; 0, R) D(c;R) に注意する)。つまり、Taylor 展開は Laurent 展開でもあ る。この場合は、Laurent 展開の主部は 0で、fc における留数も 0である。

(逆の言い方をすると) Laurent展開は Taylor 展開の一般化であるとも言える。

10.9 (Taylor展開がLaurent展開となる, 正則点) ez =

X n=0

zn

n! (z C) であるから、f(z) = ez の 0 のまわりの Laurent 級数展開は

ez = X n=0

zn

n! (z ∈A(0; 0,+)) である。

10.10 (除去可能特異点)

f(z) = (

z2+ 1 (z 6= 0)

2 (z = 0)

とするとき、0 は f の孤立特異点であり(実際 f は 0<|z−0| <+ で正則であり、z = 0 では微分可能でない)、除去可能特異点である。

0での値2を 1 に変更した関数 fe(z) =

(

z2+ 1 (z 6= 0)

1 (z = 0)

は 0 を正則点とする (すべての z C に対して f(z) =e z2+ 1 であることに注意せよ)。 このように、除去可能特異点での値を変更して、その点が正則点であるように出来る。この ことを断りなく行う場合が多い。

10.11 (有理関数の極)

() f(z) = 3

(z−1)2 (z C\ {1})

で定義される f は正則関数であるが、C\ {1} は円環領域 A(1; 0,+)である。() 自身がf の 1 のまわりの Laurent 展開である。実際、

a2 := 3, an := 0 (n Z\ {−2}) とすると

3 (z−1)2 =

X n=0

an(z−1)n+ X n=1

an

(z−1)n (z ∈A(1; 0,+)).

また Laurent 展開の主部は 3

(z−1)2. Res(f; 1) = 0. 1 は f の2位の極である。

10.12 有理関数 f(z) = z3 7z2+ 26z−30

z35z2+ 3z+ 9 は、次のように部分分数分解できる。

f(z) = z37z2+ 26z−30

z35z2+ 3z+ 9 = 1 + 2

z−3 + 3

(z−3)2 4 z+ 1.

f は C\ {3,−1} で正則である(分母・分子は多項式なので C 全体で正則で、z 6= 3,−1 のと き分母は 0 でない)。

3は f の孤立特異点である。3の周りの Laurent 展開は f(z) = 3 +

X n=1

(1)n1

4n (z−3)n+ 2

z−3 + 3

(z−3)2 (0<|z−3|<4).

ゆえに 3 は f の2位の極である。そして Res(f; 2) = 2.

1 も f の孤立特異点である。1の周りの Laurent 展開は求めなくても、1位の極である と分かる。実際、

f(z) =f1(z) +f2(z), f1(z) := 1 + 2

z−3 + 3

(z−3)2, f2(z) := 4 z+ 1

と分解すると、f1D(1; 4) で正則であるから、1 の周りに冪級数展開できる: (∃{an}) f1(z) =

X n=0

an(z+ 1)n (z ∈D(1; 4)). ゆえに

f(z) = X n=0

an(z+ 1)n+ 4

z+ 1 (z ∈A(1; 0,4)) が成り立つが、これは f1 の周りのLaurent展開である。主部は 4

z+ 1 であるから、1 は f の極で、その位数は 1. Res(f;1) = 4. ({an} を具体的に求める必要がないことに注 意。)

10.13 (有理関数) 有理関数の Laurent 展開、孤立特異点を調べよう。

P(z), Q(z) C[z], P(z) と Q(z) は互いに素、P(z) 6= 0 とする。P(z) の相異なる根を α1, . . . , αr ,それぞれの重複度を m1, . . . , mr,P(z) の最高次係数をa0 とすると、

P(z) = a0 Yr k=1

(z−αk)mk. このとき、

Q(z)

P(z) =多項式+ Xr k=1

mk

X

m=1

Ak,m

(z−αk)m, Ak,mC という形に部分分数分解出来る。

これから、Q

P は Ω :=C\ {α1,· · · , αr} で正則であり、αk は高々 mk 位の極であることが 分かる。その他の点は Q

P の正則点である。以上は、P(z)と Q(z)が互いに素と仮定したから で、もしも P(z)と Q(z) が次数1以上の共通因数を持つならば、(正則点でない) 除去可能特 異点が現れる(例: f(z) = z31

z−1 は 1 が正則点でない除去可能特異点である)。

以上から、有理関数のcのまわりのLaurent展開を求めるには、f(z) = 1

(z−a)m の点c

まわりの Laurent 展開が求まれば良い。

(1) m= 1 の場合は以前示したように (i) c=a のとき、f(z) = 1

z−a = 1

z−c (0<|z−c|<+). これ自身が cのまわりの Laurent 展開である。

(ii) c6=a のとき。f(z) = 1

z−aD(c;|a−c|)で正則であるから、cは正則点であり、

除去可能得点である。

f(z) = 1

z−a =· · ·(中略)· · ·= X n=0

(z−c)n

(a−c)n+1 (0<|z−c|<|a−c|) が cのまわりの Laurent 展開である。

(2) m >1 の場合は、m = 1 の場合の Laurent 展開を微分すれば求まる。

例えば、f(z) = 1

(z−1)2 とする。

(i) c= 1のとき、cf の2位の極であり、f(z) = 1

(z−1)2 (0<|z−1|<+) 自身 が fc のまわりの Laurent 展開である。

(ii) c= 2 のとき、fD(2; 1) で正則であるから、cf の正則点であり、除去可能特 異点である。

1

z−1 =· · ·= X n=0

(1)n(z−2)n (|z−2|<1).

ゆえに

f(z) = 1

(z−1)2 = 1

z−1

=X

n=1

n(1)n(z−2)n1

= X n=0

(n+ 1)(1)n(z−2)n (|z−2|<1).

これがfcのまわりの Laurent 展開である(|z−2|<1で成り立つならば、当然 0<|z−2|<1で成り立つ。)。

これで、任意の有理関数をLaurent 展開する方法が分かった。

脱線になるが、f(z) = 1

(z−1)2 の、A(2; 1,+)における Laurent 展開も求めてみよう。

1

z−1 = 1

(z−2) + 1 = 1

z−2 · 1 1 + 1

z−2

= 1

z−2 X n=0

1 z−2

n

= X n=1

(1)n1

(z−2)n (1<|z−2|<+) であるから

f(z) = X n=1

(−n)(1)n1 (z−2)n+1 =

X n=2

(n−1)(1)n

(z−2)n (1<|z−2|<+).

有理関数以外の関数の例をあげよう。

10.14 f(z) = sinz

z2 は C\ {0} = A(0; 0,+) で正則である。sin の 0 のまわりの冪級数 展開

sinz = X k=0

(1)k

(2k+ 1)!z2k+1 (z C)

から

() f(z) = sinz z2 =

X k=0

(1)k

(2k+ 1)!z2k1 = X k=1

(1)k

(2k+ 1)!z2k1+1

z (z ∈A(0; 0,+)).

(P でなく · · · で書き換えると良いかも。) これが f の 0 のまわりの Laurent 展開である。

実際

c= 0, an=







(1)k

(2k+ 1)! (n 0,n は奇数のとき。k = n+12 とおくと k は整数で n = 2k−1)

1 (n =1)

0 (それ以外)

とおくと、() の右辺は X n=0

an(z−c)n+ X n=1

an

(z−c)n の形をしている。

また、この Laurent 展開の主部は 1

z であり、0は f の1位の極、Res(f; 0) = 1.

10.15 f(z) = sinz

z は C\ {0}=A(0; 0,+) で正則である。0 の周りの Laurent 展開は f(z) =

X k=0

(1)k

(2k+ 1)!z2k (z ∈A(0; 0,+)).

上とほとんど同じなので、議論を少しスキップして、主部は 0であるから、0 は f の除去可 能特異点である。

10.16 (孤立真性特異点) f(z) = exp1

z は C\ {0}=A(0; 0,+) で正則である。

expζ = X n=0

1

n!ζn (ζ C) であるから

f(z) = exp1 z =

X n=0

1 n!

1

zn = 1 + X n=1

1 n!

1

zn (0<|z|<+).

これは f の 0 のまわりの Laurent 展開である(実際、an = 0 (n N), a0 = 1, an = 1 n!

(n N) とすると…)。

このLaurent 展開の主部は X n=1

1 n!

1

zn であり、(0でない項が無限個あるので) 0 はf の真性 特異点である。また Res(f; 1) = 1!1 = 1.

Laurent展開を求めるのは結構大変というか手間がかかる。なるべく求めずに色々なことを

分かりたい(特異点の種類や留数が分かれば十分がことが多い)。

10.17 (孤立特異点でない「特異点」)

f(z) = 1 sinz1 .

fz = 0 で定義されないことは明らかであるが、それ以外に sin1z = 0 となるz に対しても 定義されない。この f は、{0} ∪ 1

n Z に属する点では定義されない。0は孤立特異点 ではない。これも真性特異点と呼ばれる。

10.18 a∈C として、f(z) = 1

z−a (z C\ {a}) とする。

(i) c=a とすると、fA(c; 0,+) で正則で、fcのまわりの Laurent 展開は f(z) = 1

z−a (z ∈A(c; 0,+)).

(ii) c6=a とする。fD(c;|a−c|)で正則であるので、c のまわりで Taylor 展開でき、そ れが fc のまわりの Laurent 展開である。この計算は以前もやってあるので結果だ け書くと、

f(z) = X n=0

(z−c)n

(a−c)n+1 (z ∈A(c; 0,|a−c|)).

(実際、

f(z) = 1

z−a = 1

(z−c)(a−c) = 1

a−c· 1 1 z−c

a−c

= 1 a−c

X n=0

z−c a−c

n

であるから。)

一方、fA(c;|a−c|,+)でも正則である。z ∈A(c;|a−c|,+)のとき、|z−c|>|a−c| であるから、|a−c|

|z−c| <1 が成り立つので、等比級数の和の公式を用いて

f(z) = 1

(z−c)(a−c) = 1

z−c· 1 1 a−c

z−c

= 1

z−c X n=0

a−c z−c

n

= X n=0

(a−c)n (z−c)n+1. すなわち

f(z) = X n=1

(a−c)n1

(z−c)n (z ∈A(c;|a−c|,+)).

これがfA(c;|a−c|,+) における Laurent 展開である。

10.3.1 Laurent展開と関数の偶奇性

(これも時間の埋め草?常識的なことだけれど、案外書いてある本を目にしないように思う。

係数の一意性を強調するための話のタネに適当な話題と考える。) 以下に述べることは手短に

「奇関数のLaurent展開は奇数次の項だけからなる。偶関数のLaurent展開は偶数 次の項だけからなり特に留数は0である。」

とまとめて、大きな誤解は生じないであろう。これと同様のことは、冪級数展開 (Taylor 展 開)についても成立する。

原点について対称な集合 Ωを定義域を持つ関数 f: ΩCがあるとする。f が奇関数であ るとは、

f(−z) = −f(z) (z Ω) が成り立つことをいう。またf が偶関数であるとは、

f(−z) = f(z) (z Ω)

が成り立つことをいう。

Ωが C の円環領域 A(0;R1, R2)であり、f が正則である場合、ある{an} が存在して f(z) =

X n=−∞

anzn (z ∈A(0;R1, R2)).

f が奇関数であれば X n=−∞

anzn =f(z) =−f(−z) = X n=−∞

an(−z)n

= X n=−∞

(1)n+1anzn (z ∈A(0;R1, R2)).

Laurent展開の係数の一意性から

(∀n∈Z) an= (1)n+1an.

これから n が偶数ならばan =−an であるから an = 0, すなわち f のLaurent 展開は奇数次 の項だけからなる。

反対にf が偶関数であれば X

n=−∞

anzn =f(z) =f(−z) = X n=−∞

an(−z)n = X n=−∞

(1)nanzn (z ∈A(0;R1, R2)).

Laurent展開の係数の一意性から

(∀n Z) an = (1)nan.

これから n が奇数ならば an =−an であるから an= 0. すなわちf のLaurent 展開は偶数次 の項だけからなる。特に f の 0 における留数は 0である:

Res(f; 0) =a1 = 0.

以上の結果を一般化しよう。c∈C, 0 R1 < R2 + として、f は Ω =A(c;R1, R2)で 正則な関数とする。このとき、

fcに関して奇関数def. (∀z C: R1 <|z|< R2)f(c+z) =−f(c−z).

fcに関して偶関数def. (∀z C: R1 <|z|< R2)f(c+z) =f(c−z).

と定める。

ある{an} ∈CZ が存在して f(z) =

X n=−∞

an(z−c)n (z ∈A(c;R1, R2)) が成り立つ。

fcについて奇関数であれば X

n=−∞

anzn= X n=−∞

an(c+z−c)n=f(c+z) =−f(c−z) = X n=−∞

an((c−z)−c)n

= X n=−∞

(1)n+1anzn (z ∈A(0;R1, R2)).

Laurent展開の係数の一意性から

(∀n∈Z) an= (1)n+1an.

これから n が偶数ならば an =−an であるから an= 0. すなわちf のLaurent 展開は奇数次 の項だけからなる。

同様に、fc について偶関数であれば

(∀n Z) an = (1)nan.

これから n が奇数ならば an =−an であるから an= 0. すなわちf のLaurent 展開は偶数次 の項だけからなる。特に fc における留数は 0である:

Res(f;c) =a1 = 0.

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