Z dy y =
Z
a dx よりlog|y|=ax+C (C は積分定数). ゆえに |y|=eax+C =eCeax. ゆえ に y=±eCeax =C′eax. ただし ±eC を C′ とおいた。
実数の世界だけで考える場合は(分母が0になる場合の問題をおいておけば)これでも構わな いけれど、関数の値だけでも52複素数を使う場合は、かなり悩ましいことが分かるだろうか?
じっくり考えてみることを勧める。大学の微分方程式の授業では、定数係数線形常微分方程式 に対する特性根の方法というのを教わるはずなので、それを使うようにしよう。
授業メモから(こちらにマージする)
以上の話は対数関数の主値に限らない。幅2πの任意の半開区間I = [α, α+ 2π)あるいは I = (α, α+ 2π] を選んで、z =reiθ (r >0, θ∈I) に対して
log z = logr+i(θ+ 2nπ) と定めた log も、N を
Nα:=
reiα r≥0 とおいて C\N に制限すると正則関数になり、
(log z)′ = 1 z.
すでに述べたように、一価関数にした log を対数関数の分枝と呼ぶが、N のように、そ れを除くことで1つの分枝を
き
截り出すことができる曲線(普通は半直線や線分を選ぶ)を、
分岐
せっせん
截線 (branch cut) と呼ぶ。
z の極形式 z =reiθ (r >0, θ ∈R) を用いると、
p(z, α) = eαlogz =eα(logr+i(θ+2nπ)) (n ∈Z).
簡単のため、最初はα∈Rのときのみ考えることにする。このときαlogr ∈R,α(θ+2nπ)∈ R である。またeαlogr = elogrα
=rα であるので、
p(z, α) =rαeiαθe2πinα (n∈Z).
e2πinα がどういう値を取りうるか、場合分けして調べてみる。
(a) α∈Z のとき、nα∈Z であるから、e2πinα = 1. ゆえに p(z, α) =rαeiαθ = reiθα
=zα.
(この zα は、α >0 ならば α 個の z の積、α < 0 ならば −α 個の z の積 z−α の逆数を 表す。)
(b) α∈Q\Zのとき、
(36) α= q
p (p∈N, q ∈Z, p≥2,pとq は互いに素)
と表せる(既約分数表示)。そうすると
p(z, α) =rαeiαθe2πinqp =rαeiαθωnq (n ∈Z), ω :=e2πi/p
pと q が互いに素であるので、n が Z を動くとき、nq を pで割った余りには、0, 1, . . ., p−1 がすべて現れる53。ωnq は、1,ω, ω2, . . .,ωp−1 のどの値も取る54。ゆえに
p(z, α) =rαeiαθωk (k = 0,1, . . . , p−1).
これらは円周|z|=rα の p等分点である。特に α= 1
p ならば、z の p乗根に等しい。
(c) α∈C\Qならば実は p(z, α)は無限個の値を持つ。(この場合はあまり使わないだろうか ら、証明は省略する。)
p(z, α) を図示する Mathematica プログラム
p[z_, alpha_, maxn_] := Module[{r, t, w}, r = Abs[z]; t = Arg[z];
w = r^alpha*Exp[ alpha t];
Table[{Re[w Exp[I n alpha 2 Pi]], Im[w Exp[I n alpha 2 Pi]]}, {n, maxn}]]
g8=ListPlot[p[1,1/8,8], AspectRatio->Automatic, PlotStyle->{PointSize[0.03]}]
groot2a=ListPlot[p[1, Sqrt[2], 100], AspectRatio -> Automatic]
groot2b=ListPlot[p[1, Sqrt[2], 1000], AspectRatio -> Automatic]
Manipulate[
ListPlot[p[1, Sqrt[2], n], AspectRatio -> Automatic], {n, 1, 1000}]
今後は、この p(z, α) = eαlogz のことを断りなく zα と書く。また α = n1, n ∈ N のとき、
√n
z とも書く。特に n= 2 のときは √
z と書く。
53実際、pとqは互いに素であるから、(∃k, ℓ∈Z)kp+ℓq= 1. ゆえに任意のmに対して、mkp+mℓq=m.
ゆえに(mℓ)q をpで割った余りはmであるから、ω(mℓ)q =ωm.
54さっきの続きで、n:=mℓ とおくと、ωnq=ωmℓq=ω−mkpωm=ωm.
-1.0 -0.5 0.5 1.0
-1.0 -0.5 0.5 1.0
-1.0 -0.5 0.5 1.0
-1.0 -0.5 0.5 1.0
-1.0 -0.5 0.5 1.0
-1.0 -0.5 0.5 1.0
図 4: p(1,1/8), p(1,√
2) (1≤n ≤100 の100個),p(1,√
2) (1≤n≤1000 の 1000個) 例 4.4 (√
−1 は何か?) (−1) = 1·eπi より log(−1) = log 1 +i(π + 2nπ) = (2n + 1)πi (n ∈Z) であるから、
√−1 = (−1)1/2 =e12log(−1) =e12(2n+1)πi=e(n+12)πi =i(−1)n =±i.
(別法)α = 12, z =−1 とすると、z = 1·eπi,ω =e2πi/2 =eπi =−1であるから、
√−1 =z1/2 = 112e12·πi·ωk =i·(−1)k (k = 0,1)
ゆえに √
−1 =±i.
例 4.5 多分応用はないと思うが、ii を求めてみよう。i の極形式は i= 1·ei·π2 であるから logi= log|1|+i
π
2 + 2nπ
=
2n+1 2
πi (n∈Z).
ゆえに (ab =ebloga によって)
ii =eilogi =ei·(2n+12)πi=e−(2n+12)π (n ∈Z).
ここまでに分かったことのまとめ
(a) α∈Z ならば、zα は、これまで使ってきた記号と同じ意味になる。
(b) α ∈Q\Z ならば、α の既約分数表示を α = q
p (p∈N, q ∈Z) とすると、zα は p 価 関数であり、p個の値は複素平面内の原点中心の円周の p等分点である。
(c) α∈R\Q ならば、zα は無限多価関数である。
心構え: まず注意が必要であることを理解する。zα = eαlogz と logz = logr+i(θ+ 2nπ) (ただし z =reiθ とする)を使えば、後は地道な計算である。α が整数、有理数、それ以外で 異なる。
(√
z =z1/2 の話をしたいけれど…これは分枝を選ばず、多価関数とするときは、二価関数。) 余談 4.6 (00 をめぐって (長い話)) 数学を学んでいて、「00 は何か?」という話が時々出て来 る。冪 (累乗)ab について、b∈N の場合はほとんど問題にならないが55、そうでない場合は、
55もちろん、b 個のaの積という意味に取る —積さえ定義できれば、数でない場合(例えば多項式や行列な ど)にも自然に拡張できる。
後で便利であるように定義する、という基本方針でやっている。他の初等的な数学的概念と同 様に、数学の学習の進行に沿うように定義を拡張して行く。数の冪乗について、ほぼ最終地点 まで到達したので、00 について考えてみよう。
Wikipedia (英語版)に Zero to the power of zero
https://en.wikipedia.org/wiki/Zero_to_the_power_of_zero という記事があり、良くまとまっている。
最初のパラグラフは以下のようになっている。
Zero to the power of zero, denoted by 00, is a mathematical expression with no agreed-upon value. The most common possibilities are 1 or leaving the expression undefined, with justifications existing for each, depending on context. In algebra and combinatorics, the generally agreed upon value is 00 = 1, whereas in mathe- matical analysis, the expression is sometimes left undefined. Computer programs also have differing ways of handling this expression.
これはなかなか優れたまとめだと思う。直訳すると、概ね以下のようになるであろう。
0の 0乗 (00 と表される)は、合意された値を持たない数式です。最も普通な可能 性は、1であるか、その式を未定義のままにしておく、というものです。いずれも 文脈によって正当な理由があります。代数学や組み合わせ数学では、00 = 1 であ ると、一般的に合意されています。しかし解析学では、この式はしばしば未定義と されます。コンピューターのプログラムでも、この式は色々な取り扱い方があり ます。
Wikipedia の記事には、TEX の開発者として数学者村でも有名な D. Knuth (数学者かつ
computer scientist) は、00 = 1 と定義すべきであると力説しているとか、色々面白い話も載っ ているが、この文書は関数論の講義ノートであるから、解析学の立場というものを説明してみ よう。
まずは微積分の復習から始めよう。多変数の微分積分学を学ぶとき、以下の例に遭遇したか もしれない(私は「数学解析」という授業で話すことが多い)。
Ω :={(x, y)∈R2 |x≥0∧y≥0∧(x, y)6= (0,0)}とするとき、f(x, y) = xy ((x, y)∈Ω)に よって定義された関数 f は、
lim
(x,y)→(0,0) y=0
f(x, y) = lim
x→0f(x,0) = lim
x→0x0 = 1, lim
(x,y)→(0,0) x=0
f(x, y) = lim
y→0f(0, y) = lim
y→00y = 0 を満たすので、極限 lim
(x,y)→(0,0)
f(x, y) は存在しない。ゆえに、f を (0,0) を含む集合まで連続
関数として拡張することはできない。
次に現在学習中の複素関数論の立場から見てみよう。今回ab =ebloga という関係式を用い て、複素数の範囲にまで冪乗を拡張したが、a = 0 の場合は定義していないことは注意してお くべきであろう。0は log にとってある種の特異点であるので、ここでのやり方でa= 0 の場 合まで拡張するのが難しいことは理解できるであろう。
(少し脱線になるが) 0! = 1 という式が、関数論の立場からすると、ガンマ関数Γ の 1での
値が 1である(Γ(1) = 1)ことから、自然な式に思えるのとは対照的な感じがする56。
56微積分の段階で x > 0 に対して Γ(x) = Z ∞
0
tx−1e−t dt が定義され、n > 1 を満たす n ∈ N に対して Γ(n) = (n−1)!であることは容易に証明できる。Γ(1) = 1であるから、Γ(n) = (n−1)!という式がn= 1に ついても成立するには、0! = 1と定義すれば良い。ガンマ関数は複素関数に拡張され、1は特異点ではない。
Wikpediaの記事で「解析学では、この式はしばしば未定義とされます」とあるが、未定義 とする理由は、おおむね上の2つの話が根拠になっていると考えられる57。
以上のような話だけだと「解析学をやっているときは 00 = 1 は未定義だ」という誤解が生 じそうなので、ここまで読んだ人は、もう少し話につきあって下さい。
解析学の中にも代数はある。実は 00 = 1 ということは良く使っている。例えば微積分でも Taylor展開
(37) f(x) =
X∞ n=0
f(n)(a)
n! (x−a)n や二項定理
(38) (a+b)n=
Xn r=0
n r
arbn−r
などの式が頻出するが、(37) では、n = 0 かつ x =a のとき、(38) では、r = 0 かつ a = 0 のとき、または r=n かつ b= 0 のとき、00 が登場する。これらの場合、いずれも 00 = 1 と 解釈することになっている(そうしないと等式が成立しない)。
代数の立場では、多項式 (あるいはその極限だから)、と説明するものかもしれない。例え ば 1変数x の多項式とは、
a0xn+a1xn−1+· · ·+an−1x+an という形をした式のことをさすが、これは普通 P
を用いて Xn
j=0
ajxn−j
と表される。j =n に対する項は anx0 であるが、これが an を表すためには x0 = 1 である必 要がある。x= 0 を代入できるためには00 = 1 でなければならない。
代数学では、多項式は基本中の基本であるから、「代数学や組み合わせ数学では、00 = 1 で あると、一般的に合意されています。」とあるのは理解できる。
(組み合わせ数学については、ここでは説明できないが、Wikipedia に D. Knuth が出て来 たのでGraham-Knuth-Patashnik [23] をあげておく。)
そろそろ、筆者の意見を述べよう。
00 を 1 と定義するか、未定義とするかは文脈による。
• 2変数変数の関数の値としては定義しないとう立場も認める(連続関数になら ないので)。
• しかし (例えば) X
k
という式の中で現れる 0k については、00 = 1 と定義 する。
一方で、一律に00 = 1 と定義しても構わない(反対する気はまったくない)。xy は (0,0)で不連続となるが、それを理解していれば問題は生じないはずだから。基本 的な関数に不連続なものがあっても構わないだろう。ab =ebloga とはつながらな くなるけれど、矛盾するわけでもなし、それは構わない。
57定義するときは、なぜそう定義するか理由を説明することが多いが、定義しないときになぜ定義しないか理 由を説明することはほとんどないので、ここは推測になってしまうが、多分大きく外していないと思う。
(結局のところ、Wikipedia に書いてあることとほぼ変わらない、代数と解析学は共通部分 が空というわけではないので、一冊の本の中でも、どこに書いてあるかで違うよね、というこ とである。)
おそらく、多くの数学者が同じような意見だと思う。微積分の教科書で Taylor 展開の式が 出て来たとき、つねに (x−a)0 = 1とするという断り書きは、さぼることが多い(「だって、
多項式書くときもそうだろう、そんなのは常識だ」と言う人が多そう —高校数学では多項式 (整式)を P で書かないんだけどね)。
上の例に戻って、指数((37)では n, (38では rや n−r))が連続的に変化するものでないか ら、という説明も出来るかもしれない。つまりxy (y は変数)でなく、xb (b は定数、ここでは b = 0) を考えている、ということである。これについて、もう一つだけ書いておくと(ちょっ としつこい?)
n を自然数とするとき (xn)′ =nxn−1
と書いてあるのをしばしば目にするけれど、n= 1 かつ x= 0 のときに右辺が 1·00 になるの で、もしも 00 を未定義とすると、(xn)′ =nxn−1 という式に「ただし n = 0 のときは x 6= 0 とする」というただし書きが必要になる。こういう式を扱うときは
x0 = 1 (x∈R\ {0}) だけでなく
x0 = 1 (x∈R)
とする方がスッキリすると思うけれど、いかが。解析学の精神にのっとり、連続的に拡張でき るものはそうする、ということかな。
ひまばなしはこれまで
閑 話 休 題 問 59. 0< a <1 を満たす任意の a に対して、lim
n→∞xn = 0, lim
n→∞yn = 0, lim
n→∞(xn)yn =a を満 たすような数列 {xn}, {yn} が存在することを示せ。
もうこういうのは不要かと思うけれど、念のため。これを間違えなければ良いでしょう。
問 60. φ: (0,+∞) → (0,+∞), ψ: (0,+∞) → (0,+∞) が lim
t→+0φ(t) = 0, lim
t→+0ψ(t) = 0 を満 たすとき、
tlim→+0φ(t)ψ(t)= 1 であるかどうか答えよ。
(解答は p.226 にある。)