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孤立特異点の lim による特徴付け

ドキュメント内 複素関数 - nalab.mind.meiji.ac.jp (ページ 174-178)

10 Laurent 展開 , 孤立特異点 , 留数

10.4 孤立特異点の lim による特徴付け

Laurent展開の係数の一意性から

(∀n∈Z) an= (1)n+1an.

これから n が偶数ならば an =−an であるから an= 0. すなわちf のLaurent 展開は奇数次 の項だけからなる。

同様に、fc について偶関数であれば

(∀n Z) an = (1)nan.

これから n が奇数ならば an =−an であるから an= 0. すなわちf のLaurent 展開は偶数次 の項だけからなる。特に fc における留数は 0である:

Res(f;c) =a1 = 0.

注意 10.1 cf の除去可能特異点であるとき、特に断りなく、fD(c;R)上の正則な関数 feに置き換えて議論することが多い。このfeは、

fe(z) :=



f(z) (0<|z−c|< R) limz̸=c

zc

f(z) (z =c) と特徴づけることも出来る。

命題 10.20 (極の性質) Ω は C の開集合、f: ΩC, c C であり、cf の極であれ ば、lim

=c zc

f(z) =.

証明 cf の孤立特異点であるから、∃R >0, ∃{an} s.t.

f(z) = X n=0

an(z−c)n+ X n=1

an

(z−c)n (0<|z−c|< R).

極の位数を k とすると、ak 6= 0 かつ(∀n N: n > k) an= 0 であるから、

f(z) = X n=0

an(z−c)n+ Xk n=1

an

(z−c)n (0<|z−c|< R).

前命題と同様に

limz̸=c zc

X n=0

an(z−c)n =a0. ζ = 1

z−c とおくと、z 6=c, z →cのとき ζ → ∞ で、

Xk n=1

an (z−c)n =

Xk n=1

anζn. 補題 9.19 により、

ζlim→∞

Xk n=1

anζn =∞. ゆえに

limz̸=c zc

f(z) =a0+=∞.

補題 10.21 (Riemann の除去可能特異点定理) cf の孤立特異点とする。ある正数 ε が存在して、{z C|0<|z−c|< ε}f が有界であれば、cf の除去可能特異点で ある。特に lim

z̸=c z→c

f(z) が有限確定であれば、cf の除去可能特異点である。

証明 (Liouville の定理 (定理9.18) の証明と見比べてみると面白い。) f が有界という仮定 から、∃M R s.t. |f(z)| ≤M (0<|z−c|< ε).

fA(c; 0, ε) で正則であることから、∃{an}nZ s.t.

f(z) = X n=0

an(z−c)n+ X n=1

an

(z−c)n (0<|z−c|< ε).

任意の n∈Z, 0 < r < εを満たす任意の r に対して an = 1

2πi Z

|ζc|=r

f(ζ) (ζ−c)n+1dζ.

ゆえに

|an| ≤ 1 2π

Z

|ζ−c|=r

f(ζ) (ζ−c)n+1

|dζ| ≤ M 2πrn+1

Z

|ζ−c|=r|dζ|= M

2πrn+1 ·2πr = M rn. 特に、任意の n∈N に対して、

|a−n| ≤ M

rn =M rn (0< r < ε).

r 0 とすることでan= 0 (n∈N). ゆえに fcにおけるローラン展開の主部は 0 である ので、cf の除去可能特異点である。

別証 (不等式は嫌いだという人向け85) fA(c; 0, R)で正則であるとする。

g(z) :=

(

(z−c)2f(z) (0<|z−c|< R)

0 (z=c)

とおく。g は明らかに 0<|z−c|< R で正則であるが、

g(c) = lim

z→c

g(z)−g(c) z−c = lim

z→c

(z−c)2f(z)0 z−c = lim

z→c(z−c)f(z) = 0

であるから (ここでf が有界であることを用いた)、gcでも微分可能で、結局 |z−c|< R で正則である。ゆえにその範囲で収束する冪級数に展開できる:

∃{an}n0 s.t. g(z) = X n=0

an(z−c)n (|z−c|< R).

g(c) = 0, g(c) = 0 であるから、a0 =a1 = 0. ゆえに g(z) =

X n=2

an(z−c)n = (z−c)2 X n=2

an(z−c)n2 = (z−c)2 X n=0

an+2(z−c)n (|z−c|< R).

これから

f(z) = X n=0

an+2(z−c)n (0<|z−c|< R).

ゆえに cf の除去可能特異点である。

命題 10.22 (Casorati-Weierstrass, 真性特異点の性質) Ω は C の開集合、f: Ω C, c∈C であり、cf の孤立真性特異点とするとき、

(∀β C)(∃{zn}nN)

(∀n∈N) zn6=c∧ lim

n→∞zn=c∧ lim

n→∞f(zn) = β

. (結局 β = でも良いことになる。)

この定理の証明は省略してある本が多いが、以下に見るようにそれほど長い証明は必要ない。

85どうもそういう人がいるみたい。個人的には、Riemann の定理の不等式を用いた証明は、Liouvilleの定理

Cauchy評価を用いた証明と同じで、面白いと感じるのだけれど、そうでない人もいるらしい。この別証にも、

違った面白さは感じられるけれど…

証明 f は 0<|z−c|< R で正則とする。∀β C に対して次が成り立つ86

主張

(∀ε >0) (∀r∈(0, R)) (∃z ∈A(c; 0, r))|f(z)−β|< ε.

もしこれが証明できれば、n = 1,2,· · · に対して、ε=r= 1

n として用いて、∃{zn}nN s.t.

(∀n N) 0<|zn−c|< 1

n ∧ |f(zn)−β|< 1 n. これから

nlim→∞zn=c, lim

n→∞f(zn) = β.

以下、上の主張を背理法87を用いて証明する。そのため成り立たないと仮定すると、

(∃ε >0)(∃r >0)(∀z ∈A(c; 0, r)) |f(z)−β| ≥ε.

このとき、

g(z) := 1

f(z)−β (z ∈A(c; 0, r))

とおくと (分母が0 にならないことに注意)、g は除外近傍 A(c; 0, r)で正則である。ゆえに cg の孤立特異点であるが、

|g(z)| ≤ 1

ε (z ∈A(c; 0, r))

という評価が成り立つので、Riemann の定理(補題10.21) によって、cは除去可能な特異点で ある。すなわち gB(c;r) で正則な関数に拡張できる。定義から g(z)6= 0 (z A(c; 0, r)) である。

f(z) = β+ 1

g(z) = βg(z) + 1 g(z)

であるから、cf の除去可能特異点または極である(cg の零点でなければ cf の除 去可能特異点, cgk 位の零点であれば、cfk 位の極)。これは cf の孤立真 性特異点であるという仮定に反する。

定理 10.23 (孤立特異点の lim による特徴づけ) cf の孤立特異点であるとき、以下の (1), (2), (3)が成り立つ。

(1) cf の除去可能特異点であるためには、lim

z̸=c zc

f(z) が有限確定であることが必要十分 である。

(2) cf の極であるためには、lim

=c zc

f(z) = であることが必要十分である。

(3) cf の孤立真性特異点であるためには、lim

z̸=c z→c

f(z)が有限確定でもなく、lim

z̸=c z→c

f(z) = でもないことが必要十分である。

証明 必要性は上で示した3つの命題 (除去可能特異点の性質、極の性質、真性特異点の性 質)で分かる。分類になっていることから、十分性は明らか。

86この主張は、定理の結論と同値と言って良い。つまり、ε-δで書き換えたものである。

87背理法(proof by contradiction, reductio ad absurdum)

10.24 f(z) := exp

1 z2

について、0は f の孤立真性特異点である。一般論からz 0 のときの f(z)の極限は存在しないが、実際

limx∈R x→0

f(x) = 0, limyR

y0

f(iy) =

のように近づけ方によって、0に収束したり、 に近付いたりする。

実は、Casorati-Weierstrass の定理よりももっと強く、次の定理が成り立つことが知られて いる。しかし定理 10.23 を得るためには、Casorati-Weierstrass の定理で十分なので、次の定 理の証明は省略する(例えば Ahlfors [24]にある)。

命題 10.25 (Picard の大定理) cf の孤立真性特異点とするとき、∃e∈C, (∀U: c の 除外近傍)、∀v C\ {e},∃z ∈U s.t. f(z) =v. — 高々一つの除外値を除き、cの任意の 除外近傍において、その値を取る。

このPicard の定理については、一松[39] に色々お話が書いてある。

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