早稲田大学大学院 環境・エネルギー研究科 博士学位論文
2011 年 2 月
早 稲 田 大 学 大 学 院 環 境 ・ エ ネ ル ギ ー 研 究 科 環 境 ・ 電 力 シ ス テ ム 研 究
濱 田 拓
Research on identification of wheeling paths and effective power system operation in competitive electricity market
競争的電力市場における託送経路特定
手法と系統の効率的運用に関する研究
i
《 目 次 》
第1章 序 論 ... 1
1.1. 研究の背景と目的 ... 2
1.1.1. 託送 ... 2
1.1.2. 電力自由化と託送制度の変遷 ... 4
1.1.3. 日本の託送料金制度 ... 9
1.1.4. 託送取引の増加と送電線混雑 ... 14
1.1.5. 問題点と研究テーマの抽出 ... 16
1.2. 本論文の概要 ... 17
参考文献 ... 20
第2章 感度解析に基づく託送経路特定手法 ... 21
2.1. 託送経路特定手法の必要性と既存手法 ... 21
2.1.1. ループフロー問題と託送経路特定手法の必要性 ... 21
2.1.2. 既存の託送経路特定手法と課題... 22
2.2. 感度解析 ... 23
2.2.1. 感度 ... 23
2.2.2. 感度解析の導出 ... 23
2.3. 電力系統における感度解析 ... 25
2.3.1. 電力潮流方程式と変数の分類 ... 25
2.3.2. 電力方程式に関する感度行列 ... 28
2.3.3. ヤコビ行列GX、GUの計算法 ... 30
2.3.4. 線路電力潮流感度 ... 34
2.3.5. 線路電力潮流感度行列の計算手順 ... 36
2.4. 感度解析に基づく託送経路特定手法 ... 36
2.4.1. 託送経路特定手法 ... 36
2.4.2. 託送経路特定手法のアルゴリズム ... 37
2.5. 潮流計算プログラムとの関連性 ... 39
ii
2.6. 提案手法のシミュレーションによる検証 ... 40
2.6.1. テスト系統の選定理由 ... 48
2.6.2. 精度 ... 50
2.6.3. 負荷状況の考慮 ... 52
2.6.4. 計算効率 ... 55
2.6.5. 託送経路の特定 ... 57
2.7. まとめ ... 84
参考文献 ... 85
第3章 拡張感度解析に基づく複数地点間の託送経路特定手法 ... 86
3.1. 複数地点間の託送経路特定手法 ... 86
3.2. 経済負荷配分 ... 87
3.2.1. 静的経済負荷配分 ... 87
3.2.2. 動的経済負荷配分 ... 93
3.3. 拡張感度解析と託送経路特定 ... 93
3.3.1. 系統特性を考慮した感度行列 ... 93
3.3.2. 発電振替係数 ... 94
3.3.3. 電力潮流方程式の修正法 ... 96
3.3.4. ヤコビ行列GX、GUの修正法 ... 97
3.4. 拡張感度解析に基づく託送経路特定手法 ... 98
3.4.1. 発電所(一箇所)、需要場所(複数箇所)間の託送経路特定手法 ... 98
3.4.2. 発電所(複数箇所)、需要場所(一箇所)間の託送経路特定手法 ... 99
3.4.3. 発電所(複数箇所)、需要場所(複数箇所)間の託送経路特定手法 ... 99
3.4.4. 託送経路特定手法(任意の発電事業者と需要家間)のアルゴリズム ... 100
3.5. 提案手法のシミュレーションによる検証 ... 103
3.5.1. 計算効率(任意の発電事業者と需要家間) ... 103
3.5.2. 託送経路の特定 ... 104
3.6. まとめ ... 128
参考文献 ... 129
第4章 拡張感度解析に基づく送電線混雑管理手法 ... 130
iii
4.1. 送電可能容量と送電線混雑管理の現状 ... 130
4.1.1. 送電可能容量の分類 ... 130
4.1.2. 日本の系統と送電可能容量 ... 131
4.1.3. 送電線混雑管理の現状 ... 133
4.1.4. 既存の送電線混雑管理手法 ... 136
4.2. 拡張感度解析と送電線混雑管理手法 ... 138
4.2.1. 過負荷解消効果指数 ... 138
4.2.2. 拡張感度解析に基づく送電線混雑管理手法 ... 139
4.2.3. 送電線混雑管理と託送経路の特定 ... 140
4.2.4. 送電線混雑管理手法及び混雑解消後の託送経路特定手法のアルゴリズム ... 140
4.3. 提案手法のシミュレーションによる検証 ... 143
4.4. まとめ ... 171
参考文献 ... 173
第5章 系統利用状況を反映した託送料金設定手法 ... 174
5.1. 託送料金に求められる性質と既存手法 ... 174
5.1.1. 託送料金に求められる性質 ... 174
5.1.2. 既存の託送料金設定手法 ... 175
5.2. 系統利用状況を反映した託送料金 ... 178
5.2.1. 郵便切手方式と投資コストの回収 ... 178
5.2.2. 潮流方向係数 ... 179
5.2.3. 託送距離係数 ... 181
5.2.4. 負荷平準化係数 ... 182
5.2.5. 系統利用状況を反映した託送料金 ... 184
5.3. 提案手法のシミュレーションによる検証 ... 186
5.3.1. 託送料金算出手順 ... 186
5.3.2. 第2章の各ケースにおける託送料金(発電所及び需要場所が共に一地点の託送) 192 5.3.3. 第3章の各ケースにおける託送料金(複数地点間の託送) ... 194
5.3.4. 第4章の各ケースにおける託送料金(送電線混雑発生時の託送) ... 198
5.4. まとめ ... 200
iv
参考文献 ... 202
第6章 結論 ... 203
6.1. 本論文の成果 ... 203
6.2. 今後の課題と発展性 ... 204
謝辞 ... 206
研究業績 ... 207
1
第 1 章 序 論
1980 年代より諸分野の規制緩和が世界的な潮流となってきたが、とりわけ、1990 年代初頭の 高度経済成長の終焉ののち、競争を促進し活力ある経済社会を実現するため、規制緩和の推進が 大きな政策課題となった。また、我が国では、1990年代の急激な円高を契機として電気料金の内 外価格差が指摘され、公共料金についても、規制緩和やより一層の経営効率化が求められるよう になった。このような背景の下、国際的に比較して割高だという指摘が多かった電気料金を引き 下げることを主な目的として、我が国においても電力自由化が進められてきた。
電力自由化のもと、発電事業への参入自由化と公正な競争を確保するためには、市場参加者の 送電系統への公平なアクセスのルールを確立することが不可欠である。しかし、送電系統のオー プンアクセスが、系統運用上や経済的な観点から、公平で効率的な電力供給システムの構築を阻 害してはならない。そのためにも、すべての送電線利用者に対する利用ルールと、コストと価値 を反映した送電線利用料金(託送料金)の設定が不可欠である。
託送料金が高すぎれば、効率の良い発電事業者の市場参入や広域的な電力取引の妨げになり、
電気料金低廉化を促進することが困難となる。一方、託送料金が安すぎても、非効率な発電設備 の参入や局所的な重潮流(送電線混雑)等により系統運用上のさまざまな弊害を引き起こす可能 性がある。さらに、適切な託送料金の設定は、第三者による送電線の二重投資を防ぐためなど、
送電系統への効率的な投資を図るキーポイントとなる。
このような背景から、本論文では電力系統の利用状況を反映した託送料金の設定が重要である と考え、上記料金設定に必要となる課題の抽出及びそれら課題を解決する手法の提案を行う。本 章では、本研究の背景、取り組むべき課題について述べ、本論文の概要と各課題の位置づけにつ
2 いて記述する。
1.1. 研究の背景と目的
1.1.1. 託送
ここでは、本論文のテーマである託送について述べる。
従来の垂直統合型電気事業では、発電から供給に至る電力供給のすべての機能が一つの組織に 組み込まれていたため、送電は電源と需要をむすびつける物理的なネットワークとして存在して きた。しかし、電力自由化のもとでは、送電は送電容量[kW]、送電電力量[kWh]、無効電力[VAR]
をある受給点から別の受給点まで輸送するサービスとなる。
託送とは、新規発電事業者が既存電力会社の送電設備を利用して他の電力事業者や最終需要家 に電力を供給することであり、送電サービスに含まれる。託送による電力が電気事業者のネット ワークを使用する場合は、あらかじめ定められた託送料金を支払う取り決めとなっている。託送 は一般に卸託送と小売託送に区別され、前者は送電される電力の受け手が卸売事業者であり、後 者では最終需要家である。本論文で取り扱う託送料金はこのうち、小売託送に係るものである。
電力小売託送サービスは接続供給と振替供給の二つに分けられる [1]。
接続供給とは、一般電気事業者が、契約者(特定規模電気事業者および自社以外の一般電気事 業者)から受電し、自社が維持および運用する供給設備を介して、同時に、自社の供給区域内の 需要家(特定規模需要の需要家)へ、その需要の変動に応じて電気を供給することをいう。ここ で、特定規模電気事業者とは、特定規模電気事業(特定規模需要に応ずる電気の供給を行なう事 業)を営むことについて、経済産業大臣に届け出た者をいい、特定規模需要とは、特別高圧また は高圧の電線路から受電する契約電力が原則として 50 キロワット以上の需要をいう。契約者か らの受電は次の2パターンがある。
(1)当社供給区域内にある発電場所で受電する場合(図1.1-1の①)
(2)当社供給区域外にある発電場所から会社間連系点(当社の供給設備と他電力会社の供給 設備との接続点)で受電する場合(図1.1-1の②)
また、需要場所での電気の使用状況の変化(負荷変動)や契約者の発電設備の事故等によって需要 場所へ供給する電力が不足した場合は、その不足分を自社が補給し、契約者から受電した電気と 合わせて需要場所へ供給する。
3
出典:東北電力HP 図 1.1-1 接続供給の概要
振替供給は、一般電気事業者が、契約者(特定規模電気事業者および自社以外の一般電気事業 者)から受電し、自社が維持および運用する供給設備を介して,同時に,その受電した電気の量 に相当する量の電気を,受電した場所以外の会社間連系点(当社の供給設備と他電力会社の供給 設備との接続点)に供給することをいう。振替供給は、契約者から受電する地点により「地内振 替」と「中継振替」に分けられる。
(1)地内振替…自社供給区域内にある発電場所で受電する場合(図1.1-2の①)
(2)中継振替…会社間連系点で受電する場合(図1.1-2の②。図1.1-2の「B電力」を「自社」
と置換えた場合。)
地内振替の場合、自社と契約者との間であらかじめ定めた電力量(通告電力量)より、受電した電 力量が不足する場合には、自社はその不足分を補給する。
出典:東北電力HP 図 1.1-2 振替供給の概要
自 自
4
電力自由化のもと、発電事業への参入自由化と公正な競争を確保するためには、これら小売託 送サービスの適切な料金設定が重要となる。
1.1.2. 電力自由化と託送制度の変遷
電力自由化のうち、託送に関わる事項について概観する。
電気事業においては、規模の経済を前提に、電気供給を営む電気事業者に対して発送電一貫の 独占的供給を認め、一方で料金規制等によってその弊害を排除するという形の事業規制を課すこ とが、国民経済的に見て最適であると考えられてきた。
このような従来の電気事業の公益事業規制の在り方に対して、1995 年、1999 年に 2 度の制度 改革が行われ、さらに第3次の改革として2003年に電気事業法の改正(全面施行は2005年4月)
が行われた(図1.1-3) [2]。
出典:エネルギー白書2007年版
図 1.1-3 電力自由化に向けたスケジュール
(1) 第1次電気事業制度改革(1995年)
1993年 12 月の総合エネルギー調査会総合部会基本政策小委員会中間報告において、発 電部門への市場原理導入が提言され、これを受け 1995 年 4 月に電気事業法が一部改正、
5 同年12月に施行された。
この規制緩和によって、電力会社(一般電気事業者)に電力を供給する事業に独立系発 電事業者(IPP:Independent Power Producer)の参入が可能になった。
また、託送についても1995年11月までは電力会社(一般電気事業者)が、すべての需要 家に電気を送っていたが、卸供給事業の創設に伴い、新規事業者が電力会社の送電線を使 って他の電力会社に送電する卸託送制度が整備された。
続いて、自家発電を行う会社が電力会社の送電線を使って遠隔地の同社工場へ送電する自己 託送が許可制から当事者間の私契約となり、1997年4月から自己託送が制度化された。
(2) 第2次電気事業制度改革(1999年)
その後、1996年12月に、「経済構造の改革と創造のためのプログラム」が発表され、そ の中で、電気事業の高コスト是正が主要課題の一つとされ、「2001 年までに国際的に遜色 のないコスト水準とすること」を目指し、電力の小売部門における競争をさらに促進する ための規制緩和・制度改革を行うこととされた。そして、1997年7月に、通商産業大臣の 諮問機関として、設置された電気事業審議会基本政策部会の中間報告(1997年12月)、最 終答申(1999年1月)を受け、1999年5月に電気事業法が一部改正され、2000年3月か ら施行されている。
制度改正により、小売部門に競争が導入され、2000年3月から大規模工場やオフィスビ ル、デパート、大病院等の特別高圧で受電する需要家(2万V以上で受電、電気の契約電 力が原則2,000kW以上の需要家)に対しては、電力会社以外の新規参入者も電気を供給す ることができるようになった。その際、自由化対象となった需要家は、我が国の電力販売 量の3割弱を占めていた。
なお、需要家へ電気を供給するための送電設備は、設備の重複を避けるという観点から、
引き続き電力会社が一元的に運用することとなった。そこで、電力会社は小売の一部自由 化と同時に、維持及び運用する送電ネットワークを、新規参入者(特定規模電気事業者)
が利用するための小売託送制度を整備した。
(3) 第3次電気事業制度改革(2003年)
2000年の制度改正時の3年後の見直し条項及びエネルギー政策基本法を踏まえ、供給シ ステム改革による安定供給の確保、環境への適合及びこれらの下での需要家選択肢の拡大 を図るため、「電気事業法及びガス事業法の一部を改正する等の法律」が2003年6月に成 立した。
6
改正電気事業法は2004年4月より一部施行され、小売自由化範囲が500kW以上の高圧 需要家に拡大され、我が国の販売電力量の約4割が自由化対象となった。また、2005年4 月からは全面施行され、小売自由化範囲がすべて高圧需要家にまで拡大され、我が国の販 売電力量の約6割が自由化対象となった。
託送については、振替供給料金制度の変更が行われた [3]。
出典:第3次制度改革における措置 図 1.1-4 託送料金制度の改正
<改正前>
発電所から遠くの需要家に電気を送る場合、近接地から送る場合よりコストがかかる仕組 みとなっており、図1.1-4の例においては1kWhあたり3.5円(0.2円+0.3円+3.0円)の 託送料金がかかる。
<改正後>
いずれの供給区域の発電所から供給する場合であっても、同一の託送料金(3.0+α円)が 適用される。※振替料金に係るコスト(A電力:0.2円、B電力:0.3円)は、C電力から 支払われ、需要地(C電力)の一般電気事業者の供給区域の需要家が薄く広く負担する。
改正前の制度では、ある供給区域の需要家に電力を供給する際、異なる供給区域の電源 から電力を調達すると、区域をまたがるごとに振替料金が課せられていた。その料金水準 は電力各社で異なるが、kWhあたり30銭程度で接続料金の10分の1程度であった。複数 の区域をまたがると、振替料金をその区域の数だけ重ねることになり、枚数を重ねていく パンケーキになぞらえてパンケーキ構造と称されていた。
改正後は、供給区域をまたがるごとに課金される振替供給料金制度は廃止され、区域外 の電源から供給する場合でも需要地の区域で接続料金だけを支払うことになる(詳細は次
7
項参照)。この際、区域外からの供給に係る系統利用コストは、電源のある区域と通過す る区域の電力会社がその需要家のいる区域の電力会社に請求し、適正なコスト回収を確保 する。そのコストは最終的には、その需要家がいる区域内の需要家が全体で広く薄く負担 することになる。
上記の改正が行われた背景としては、供給区域にとらわれない需要家の選択、広域的な 電源の有効活用が可能となるような全国的な市場の構築をするという政治的要請があっ た。
以上のような電気事業制度改革のもと、図 1.1-5 に示すように新規参入事業者数は着実に増加 し、2008年 3月現在全国で25社になっている [4]。また、販売電力量シェアについても図1.1-6 に示すように特別高圧では伸び悩む傾向が見られる一方、高圧では増加傾向にあり、自由化分野 全体では2007年10月現在2.55%と着実に増加していることがわかる。また、販売電力量の推移 は図1.1-7のようになっており、2007年度の特定規模電気事業者による販売電力量は計153億kWh となっている [5]。
出典:電気事業分野における報告事項
図 1.1-5 特定規模電気事業者の数の推移
新規参入事業者数(社)
8
出典:第4次電気事業制度改革について
図 1.1-6 特定規模電気事業者の販売電力量シェア
出典:第4次電気事業制度改革について 図 1.1-7 特定規模電気事業者の販売電力量推移
千kWh
9
しかし、現行の制度は以下のような問題点があると考える。
1 点目は公平性についてである。現行制度の場合、自由化が促進し、長距離託送が活発化した 場合、一般需要家の負担額が増大することが考えられる。また、改正前は受益者が負っていた負 担を当該区域内の需要家が負う形となっているため一般需要家に理解が得られない可能性もあ る。現行制度の競争促進による料金値下げが目に見えて大きければ消費者の理解を得られる可能 性もあるが、これが少ないと消費者の不満が顕在化してくると考えられる。
2 点目はシステムの効率性についてである。現行制度では供給地点、距離に関わらず均一料金 が適用されるため、システムの効率的な運用に対するインセンティブが働かない状態となってい る。具体的には電源の設置コストが安い地域に建設する電源が多くなり、需要地から離れた電源 が増えることが懸念される。需要地から離れた区域から供給すると、送電ロスが増大するととも に、流通設備を整備するコストがかさみ、全体的な経済性を悪化させる恐れがある。参入シェア が増大した場合、上述のような需要遠隔地への電源立地の促進の他、送電線混雑(過負荷)を発 生させるような取引の増大等により電力系統の効率的な運用が阻害される可能性がある。
実際、2003年の制度改正時に、振替供給料金の廃止については、コスト回収、地域間精算、遠 隔地立地への対処を図るとともに、廃止後の状況の推移をみて、大きな問題が生ずれば、直ちに 廃止を見直すものとすると表記されており、託送料金体系については確立していないのが実情で ある。
1.1.3. 日本の託送料金制度
続いて、託送料金設定手法を提案するにあたり、日本の託送料金の現状について記述する。
日本の託送料金は、上述の通り接続供給関係の料金と振替供給関係の料金に分けられる。接続 供給料金は、送配電ネットワークを利用する特定規模電気事業者の負担が、一般電気事業者から 特定規模重要の需要家へ電気を供給する時の送配電ネットワーク利用コストと同様になるよう、
一般電気事業託送供給約款料金算定規則(経済産業省令)に基づき、適正・公平に算定されてい る。具体的な接続供給料金の算定プロセスは図1.1-8のようになる [1]。
(1) 接続供給に必要なコストの抽出 (1-1)総原価の整理
1 年間を原価算定期間として、フォワードルッキングコスト方式(※)にもとづき算定 している。
具体的には、人件費、燃料費および設備に係る修繕費・減価償却費等の営業費用に電気
10
事業報酬・法人税等を加えたものから、地帯間販売電源料・電気事業雑収益等を差し引い て算定しています。
※フォワードルッキングコスト方式
過去の費用の実績をもとに算定するだけでなく、技術革新や経営効率化など将来見込ま れる成果を織り込み推計する算定方式。
(1-2)8部門への整理
(1-1)で整理した総原価を、8 部門(水力発電費、火力発電費、原子力発電費、送電費、
変電費、配電費、販売費、一般管理費)に整理する。なお、ここでは、後に整理する必要 がある一部の原価の整理を保留している。
(1-3)一般管理費の7部門への整理
一般管理費を、次のプロセスで、上記の8部門における一般管理費以外の7部門に配分 する。
①その費用の発生原因が特定できるものについては、その部門に直接配分(直課)する。
②直課が困難なものは、客観的・合理的な基準(活動帰属基準)に基づき配分する。
③さらに、活動帰属基準による配分が困難なものは、代理的基準(配賦基準)により配分 する。
(1-4)送電・高圧配電関連費の抽出
(1-2)及び(1-3)で整理された7部門の費用から、以下の送電・高圧配電関連費を抽出する。
アンシラリーサービス費 送配電ネットワークを通じて電気の品質(周波数)を適正な 範囲に維持するためのコスト
総送電費 送電設備による電気の搬送に必要なコスト
受電用変電サービス費 変電設備による特別高圧の電気の搬送に必要なコスト 配電用変電サービス費 変電設備による高圧の電気の搬送に必要なコスト 高圧配電費 配電設備による高圧の電気の搬送に必要なコスト
ネットワーク給電費 送配電ネットワークを安定維持させるための、監視・制御(給 電指令)等に必要なコスト
需要家費 計量や検針、料金計算、収納等に必要なコスト
11
出典:東北電力HP 図 1.1-8 接続供給料金算定プロセス(例:東北電力平成20年度)
12
(1-5)特別高圧需要・高圧需要に係る送電・高圧配電関連費の抽出
接続供給で利用する送配電ネットワークは、低圧受電の需要家も利用する設備である。
従って、(1-4)で抽出した送配電ネットワークコストのうち特別高圧需要及び高圧需要に 係るコストを、需要家の最大電力や電力量等の使用形態に応じた比率(負担割合)等によ り、特別高圧需要・高圧需要ごとに抽出する。
また(1-2)で整理を保留した原価についても、特別高圧需要及び高圧需要に係る送電・高 圧配電関連費を、特別高圧需要・高圧需要ごとに抽出する。
(2) 接続供給料金の算定
特別高圧需要・高圧需要ごとに、(1-5)で特定された送電・高圧配電関連費と原価算定期 間における料金収入が一致するように算定する。
実際の接続供給料金は、特定規模需要向けの小売料金との整合をとるために二部料金制を導入 し、基本料金および電力量料金を、特別高圧需要および高圧需要の送電・高圧配電関連費に基づ き算定している。また、基本的な料金メニューである標準料金に加えて、選択制料金メニューと して送電設備の利用形態を反映した時間帯別料金を設定している。
表 1.1-1 接続供給料金(例:東北電力平成22年4月実施)
出典:東北電力HPより作成
一方、振替供給の場合は、実施に先立ち、年間、月間、週間および翌日の発電計画、連系線等 利用計画等を一般電気事業者に通知し、地内振替の場合、契約者が受電地点において一般電気事 業者が受電する電力量と受電地点における通告電力量が一致するよう調整する。
接続供給料金 特別高圧 高圧
標準料金
基本料金[円/kW] 383.25 645.75 電力量料金[円/kWh] 1.22 2.54
時間帯別料金
基本料金[円/kW] 383.25 645.75 電力量料金
[円/kWh]
昼間 1.33 2.86 夜間 1.03 2.04
13
通告電力量に対して不足が発生する場合は、一般電気事業者が補給し、余剰が発生する場合は、
一般電気事業者が契約電力の3%相当を2 で除した値までは購入し、それ以外については無償で 引き取ることとなる。従って、振替供給料金には、接続供給料金のような基本料金や電力量料金 に相当する料金はない。
以上からも、2003年に振替供給料金制度が変更され、現行の託送料金は、特定規模電気事業者 が電力量を通告電力量と一致するように調整した場合、託送距離や接続地点によらず契約電力及 び使用電力量のみで決定されることがわかる。
ここまで、小売託送サービスの種類(接続供給、振替供給)及び現行の託送料金制度について 述べてきたが、最後に託送実施までの流れを例に、各サービスの適用例について記述する。
特定規模電気事業者と需要家が同一の一般電気事業者区域内にない場合、託送による電力は一 般電気事業者間を結ぶ連系線を利用することとなり、利用にあたっては、連系線等の運用に関わ る全国的な総合調整業務を行っているESCJ(電力系統利用協議会)の定めるルールによることに なる。ルールに基づく託送実施までの流れは図1.1-9のようになる [6]。図1.1-9 より託送の実施 にあたっては、接続供給及び振替供給に係る契約を各々の一般電気事業者と締結する形となって いることがわかる。
出典:電力系統利用に関する技術資料 図 1.1-9 託送実施までの流れ
接続供給 振替供給
振替供給
14
1.1.4. 託送取引の増加と送電線混雑
ここでは、託送取引の増加に伴い予想される送電線混雑について述べる。
送電線には熱容量や安定度などさまざまな運用制約が存在し、電力会社はこれらの制約を遵守 した運用を行ってきた。電力自由化のもとでは、発電と送電の整合性のとれた設備形成が困難で あること、需要や電力託送の想定外の急増など、複数の要因が複雑に関係しあい、送電線混雑が 発生する可能性がある。この送電線混雑とは,送電線の運用制約(熱容量、安定度など)を逸脱す る電力(過負荷電力潮流)が送電線に流れることを防ぐために何らかの需給調整を行っている状態 を指す。これにより、電源の経済的な運用は妨げられる。実際、自由化の進展に伴い、欧州では 国際間の取引が、米国では州を跨いだ取引が活発になり、送電線混雑が発生している。
図1.1-10に米国の連系線の混雑状況を示す [7]。また、図1.1-11に送電線混雑発生回数を示す [8]。図1.1-11はレベル2以上の TLRの発動回数を示しており、TLRとは、ISO間または州間の 送電線に混雑が発生した時に、地点間送電サービスと呼ばれる電力取引を調整する方法である。
なお、レベル 2 とは送電設備が運用限界に近い状態をいい、手順にはレベル 1~6 まである。図 1.1-11より、2000年以降送電線混雑の発生回数は年々増加傾向にあることがわかる。混雑発生箇 所と混雑潮流の方向は概ね同じであり、同じ送電線で1日のうちに何回も混雑が発生するような 箇所も存在する。
出典:電気事業への市場メカニズム導入による効果と課題 図 1.1-10 米国の連系線混雑頻発箇所と混雑方向
15
出典:電力自由化と信頼度維持 図 1.1-11 米国の送電線混雑発生回数
続いて、図 1.1-12に欧州における送電線混雑発生状況を示す [9]。欧州における送電線の混雑 は、東欧の安価な石炭発電と北欧の水力による電力がドイツ、デンマークに流れ込み、またこれ らの地域を経由してイタリアに流れ込んでいる。夜間はフランスの原子力が他国に流出しており、
昼間は、夜間受電した原子力を揚水動力の原資とした揚水発電と貯水池式発電の電力がスイスや スペインからフランスに流れ込み送電線混雑が発生している。また、原子力の夜間電力はスイス を介してイタリアにも流れ込むため、スイス・イタリア間にも送電線混雑が発生している。
以上のように、電力自由化に伴う託送取引の増加に伴い、送電線混雑の増加が予想されるため、
本論文では、送電線混雑を迅速で解消する手法を提案する。
送電線混雑発生回数
(年)
16
出典:欧米での電力自由化傾向 図 1.1-12 欧州の送電線混雑状況
1.1.5. 問題点と研究テーマの抽出
以上の背景から本論文で取り組むテーマについて述べる。
(1) 託送経路の特定
本論文は、接続地点や託送距離に関わらず契約電力と使用電力量のみにより決定される 現行の託送料金制度に変わる託送料金設定手法を提案することが目的である。我々は、そ のような料金設定として電力系統の利用状況を反映した託送料金が好ましいと考えた。電 力系統の利用状況を反映するためには、発電事業者と需要家間を託送による電力がどのよ うに流れるかを把握する必要がある。これまで、託送経路の特定は困難(特にメッシュ系 統)であるとされてきており、本論文では託送経路を特定する新たな手法を提案する。
(2) 送
た 行 め い 消 況 (3) 託
そ は た 定
1.2. 本論
1.1-5項 したもの
送電線混雑管 1.1.4項で述 た場合、送電 行うことが系 めには、発電 いても送電線 消する新たな 況下の託送経 託送料金設定
託送料金設 その料金体系 はこれまでに た新たな託送 定された系統
論文の概要
項で抽出した のがそれぞれ
管理
述べたように 電線混雑が発 系統運用者に 電機振替が通 線混雑解消前 な手法を提案 経路特定手法
定
設定手法はこ 系は未だ確立 に提案されて 送料金設定手 統の利用状況
要
たテーマよ れテーマであ
に、自由化先 発生すること にとって重要 通常実施され 前とは異なっ 案するととも 法を提案する
これまでにい 立されておら ているいく 手法を提案す 況を反映した
り、本論文 あり、四角で
図 1.2-1 17 先行地域であ とが予想され 要業務の一つ れるが、この ったものとな もに、発電振 る。
いくつか提案 らず、各国と つかの手法 する。提案す た料金となっ
の全体構成 で示したもの
1 本論文の全
ある米国や欧 れる。このよ つである。ま のような操作 なる。本論文 振替等によ
案されてきて とも模索して 法の問題点と
する託送料金 っている。
は図1.2-1の のが手法であ
全体構成
欧州のよう ような場合に また、送電線 作が行われた 文では、送電 り託送経路が
ているが、1 ているのが現 と日本の料金
金は、託送経
のようにな ある。
に、託送取 には迅速に 線の混雑を た場合、託 電線混雑を が変更され
.1-2項で述 現状である 金制度の現状
経路特定手
る。ここで
引の増加し 解消操作を 解消するた 送経路につ 効率的に解 るような状
べたように
。本論文で 状を考慮し 法により特
、楕円で示 し を た つ 解 状
に で し 特
示
18
本論文は、全6章で構成されており、各章の概要は以下の通りである。
第1章では、本研究の背景、取り組むべき課題について述べ、本論文の概要と各課題の位置づ けについて記述する。
第2章、第3章では託送経路の特定手法を提案する。提案手法により、発電事業者と需要家間 を託送による潮流がどのように流れるかを把握することができる。また、提案手法により求めた 託送経路の情報を利用することにより、系統の利用状況を反映した託送料金を設定することが可 能となる。本論文では、発電事業者と需要家の数により、託送状況を次の 4 ケースに分類する。
ケース①:発電事業者と需要家が一対一、ケース②発電事業者と需要家が一対複数、ケース③:
発電事業者と需要家が複数対一、ケース④:発電事業者と需要家が複数対複数。ケース①におけ る託送経路特定手法を第2章で提案し、ケース②~④を含む発電事業者と需要家間のあらゆる組 み合わせにおける託送経路特定手法を第3章で提案する。また、提案手法の有用性を検証するた めに、IEEE30母線標準系統モデル(米国電気電子学会標準系統)で託送経路の特定を行う。更に、
日本の系統であるEAST10機系統モデル(電気学会標準モデル)に提案手法を適用し、日本にお ける託送経路特定の必要性を示す。
第4章では送電線混雑管理手法を提案する。新規発電事業者から需要家へ電力を送る場合、い くつかの制約があり、無制限に送ることはできない。送電線混雑を管理するためには送電可能容 量という情報が必要となる。本章では始めに送電可能容量について整理するとともに、日本の送 電線混雑管理の現状について記述する。また、託送の増加に伴い米国等では送電線混雑(過負荷)
が発生している。このような場合には、迅速に解消操作を行うことが系統運用者にとって重要業 務の一つである。本章では託送経路特定手法に用いた拡張感度解析により、送電線混雑を迅速に 解消する手法を提案する。具体的には送電線潮流、送電線可能容量及び提案手法により算出する 係数から送電線混雑を迅速に解消できる振替発電機の選定及び振替発電量の算出を行う。更に、
第3章の手法を応用することにより、送電線混雑の解消に伴い託送経路が変更されるような状況 における託送経路特定手法を提案する。上記提案手法を米国電気電子学会 IEEE30 母線標準系統 モデルへ適用し、有用性を検証する。
第5章では、系統利用状況を反映した託送料金設定手法を提案する。望ましい託送料金の性質 として①簡潔かつ透明性の確保②投資コストの回収③電力系統の効率的な運用への価格シグナ ルといった点が挙げられる。本章では、上記性質を満足するような託送料金設定手法を提案する。
託送料金設定理論は総括費用方式と限界費用方式に大別できるが、本研究では②投資コストの回 収の点で優れている総括原価費用方式に注目した。総括原価費用方式には、日本の現行制度であ
19
る郵便切手方式の他に、契約経路方式と負荷距離方式という方式がある。本研究ではこのうち郵 便切手方式と負荷距離方式に着目し、コストを適切に回収できる形に改良した郵便切手方式をベ ースとした新たな託送料金設定手法を提案する。提案手法では系統の利用状況を反映するために 三つの係数を導入する。これら係数の算出には、負荷距離方式の考え方を応用している。提案手 法による託送料金は実際に使用した託送経路に基づいており、託送経路を特定する際に第 2~4 章で提案した託送経路特定手法を利用する。提案手法を用いることにより、託送距離、各送電線 の利用率、託送潮流方向といった系統の利用状況を反映した託送料金設定が可能となる。また、
系統の効率的な運用に対しインセンティブを付与することや新規参入事業者へ適切な価格シグ ナルを送ることも可能となる。米国電気電子学会 IEEE30 母線標準系統モデルへ提案手法を適用 し、既存方式による料金との比較を行うことにより有効性を検証する。
第6章では、本論文の成果を概観するとともに、今後の課題について整理する。
20
参考文献
[1] 東 北 電 力 、「 託 送 供 給 の 概 要 お よ び 託 送 供 給 約 款 等 の ご 案 内 」、 <http://
www.tohoku-epco.co.jp/jiyuka/setsuzoku/index.htm>
[2]経済産業省資源エネルギー庁、「エネルギー白書 2007 年版」、<http://www.enecho.meti.go.jp/
topics/hakusho/2007energyhtml/index2007.htm>
[3]経済産業省資源エネルギー庁、「第 3 次制度改革における措置」、<http://www.enecho.meti.
go.jp/info/committee/denkijigyo/denki-24.htm>
[4]経 済 産 業 省 資 源 エ ネ ル ギ ー 庁 、「 電 気 事 業 分 野 に お け る 報 告 事 項 」、<http://www.
enecho.meti.go.jp/info/committee/denkijigyo/kanshi5/kanshi04_05.htm>
[5]「第4次電気事業制度改革について」、山本恭、<http://210.163.11.141/ data/pdf/1635.pdf>
[6]電 力 系 統 利 用 協 議 会 、「 電 力 系 統 利 用 に 関 す る 技 術 資 料 」、<http://www.escj.or.jp/news/
2006/20061020.html>
[7]CIRJE Research Project、「電気事業への市場メカニズム導入による効果と課題」、<http://www.
cirje.e.u-tokyo.ac.jp/network/EPM06/index.html>
[8]「電力自由化と信頼度維持」、和田謙一、エネルギー経済2006年4月、http://eneken.ieej.or.jp/data/
pdf/1263.pdf
[9]「欧米での電力自由化傾向」、東海邦博、季報エネルギー総合工学、Vol.27, No.3, pp.52-65, 2004
21
第 2 章 感度解析に基づく託送経路特定手法
系統の利用状況を反映した託送料金を設定するためには、託送による電力が発電事業者から需 要家までどのように流れるか系統の利用状況を特定する必要がある。本章では感度解析に基づく 託送経路特定手法を提案する。始めに託送経路特定の必要性と既存手法について述べる。
2.1. 託送経路特定手法の必要性と既存手法
2.1.1. ループフロー問題と託送経路特定手法の必要性
託送料金体系については第5章で詳述するが、託送料金設定手法の一つに契約経路方式(contract path method)という方式がある。この方式では、系統利用者と系統運用者の間で、託送経路を交 渉により契約時に定める。従って、現実の電気物理法則を無視して契約経路が設定されるため、
契約時に決定した託送経路と実際の託送経路が一致するとは限らない。そのため、契約託送経路 以外の送電線に流れた電力が、送電系統内に混雑(過負荷潮流)を発生させ、経済運用を阻害す る要因となりうる。さらに、系統利用者と系統運用者の間で費用負担の相互補助が生じ、市場の 公平性が維持されない可能性もありうる。これは、ループフロー問題と呼ばれ、北米、欧州で大 きな問題となった [1]。
図2.1-1はループフローの例である [2]。ドイツからフランスへ託送を行う場合、最短距離の赤 線が託送経路となるよう見えるが、実際の潮流は、近隣諸国の連系線にも迂回する。青線の潮流 が送電線混雑等を発生させ、経済運用を阻害する要因となる可能性もあるため、送電線利用状況
(託送経路)を把握し、利用状況に応じた料金設定をすることが重要である。
2.1.2. 既
既存の Tracing 法 いずれも ンダクタ るため、
め、負荷 精度の点
G F 電 潮
既存の託送経
の託送経路特 法、電源別色 も直流計算法 タンス成分を 電圧分布を 荷条件の変化
点でも交流計
Generation D Flow Tracing 電源別色分 潮流計算反復
経路特定手
特定手法を表 色分け法と潮 法(近似計算 を無視し、電 を考慮するこ 化(重負荷、標
計算法(精密
表
既存手法 Distribution F
g 法 け法 復法
出典:欧 図 2.1-1
手法と課題
表2.1-1に示 潮流計算反 算法)に基づ 電圧をすべて ことができな 標準負荷、軽 密計算法)に
表 2.1-1 既
法
Factors法
22 欧州の再生可
1 ループフロ
示す。既存手 復法の大き づいている。
て 1.0[p.u.]と ない。また、
軽負荷等)に に比べ劣るた
既存の託送経
直流計 電圧分 負荷条 計算効
可能エネルギ ローの例
手法はGener く二つに分
直流計算法 と仮定した上 直流計算法 についても考 ため向上が望
経路特定手法
特徴 計算法(近似 分布の考慮 条件の考慮 効率
ギー系統連系
ration Distrib 分類できる [ 法は、母線ア 上で、潮流方 法は系統構成
考慮できな 望まれてい
法
徴と課題 似計算法)
系要件等に
bution Factor [3-5]。前者 アドミタン 方程式を簡 成により解 い特徴を持 る。
関する調査
rs法、Flow の各手法は ス行列のコ 略化してい が定まるた 持つ。更に、
査
w は
い た
23
一方で、潮流計算反復法は、託送実施前後の系統条件で潮流計算を実施することにより託送経 路を求めるもので、式(2.1-1)で表わされる。
old
new P
P −
=
託送潮流量 (2.1-1)
ここで、Pnewは託送実施後の潮流であり、Poldは託送実施前の潮流である。この手法は、実際に調 整設備を変化させて計算していることから精度が良いという利点がある。しかし、託送ごとに潮 流計算を実施する必要があるため、託送数が増加した場合に計算量が増加するという課題がある。
そこで、本論文では上記課題を解決する手法として、感度解析に基づく託送経路特定手法を提案 する。
2.2. 感度解析
本節では、託送経路の特定に使用する感度について始めに定義を記述し、続いて一般的な感度 解析を導出する。
2.2.1. 感度
感度とは、二つに大別され、その一つは系が時間を含まない等式で表現される場合の‘定常的 な感度’であり、他方は系が微分方程式で表現される場合の‘動的な感度’である。
定常的な感度とは、ある系が初めに最適な状態にあったときに、方程式に含まれる変数(操作 変数、状態変数、あるいはパラメータ変数)が変化、変動した場合に、その変化が系の状態にど のような影響を与えるかを表すものである。
一方動的な感度とは、微分方程式で表される系において、方程式に含まれる変数あるいは初期 条件の値が変動したとき、制御系の状態を表す解軌道がどのような変動をするかを表すものであ る。
電力系統の運用においては、電力潮流方程式が基盤となっており、上述の分類に従えば、定常 的な状態として扱うことができる。
2.2.2. 感度解析の導出
一般にN個の状態からなる系はN元の連立方程式は式(2.2-1)で表すことができる。
(
X,U,P)
=0G (2.2-1)
式(2.2-1)において
[
x x xN]
TX = 1, 2,L, :状態変数ベクトル
24
[
u u uN]
TU= 1, 2,L, :操作変数ベクトル
[
p p pN]
TP= 1, 2,L, :パラメータ変数ベクトル
である。X、U、Pの意味については、次節の電力系統における感度解析で詳述する。
式(2.2-1)の系がある基準状態にあり、そのときの変数をそれぞれX0、U0、P0で表すとすれば、
基準状態では式(2.2-2)が成立している。
(
X0,U0,P0)
=0G (2.2-2)
式(2.2-2)の状態において、操作変数U0をΔU変化させたとする。その変更に伴う状態変数、パ ラメータ変数の変化がそれぞれΔX、ΔPであったとすれば、系が新たな定常状態に移行したとき には、式(2.2-2)と同様に式(2.2-3)が成立する。
(
X0 +ΔX,U0 +ΔU,P0 +ΔP)
=0G (2.2-3)
この式(2.2-3)を基準状態(X0,U0,P0)を中心にテイラー展開し、2次以上の高次の項を無視する と式(2.2-4)を得る。
(
X0 +ΔX,U0 +ΔU,P0 +ΔP) (
≈G X0,U0,P0)
+G ΔX +G ΔU +G ΔP=0G X U P (2.2-4)
ここで、GX、GU、GPはそれぞれ関数ベクトルGを変数ベクトルX、U、Pで偏微分して得られる ヤコビ行列である。各ヤコビ行列の値は基準状態(X0,U0,P0)に対して計算されるものである。
式(2.2-2)を式(2.2-4)に代入すれば、式(2.2-5)が得られる。
=0 Δ + Δ +
ΔX G U G P
GX U P (2.2-5)
ここで必要なのは状態変数の変化分ΔXであるからΔXについて式(2.2-5)を解けば式(2.2-6)となる。
[ ]
G G U[ ]
G G PX =− X UΔ − U PΔ
Δ −1 −1 (2.2-6)
式(2.2-6)は、操作変数ベクトルUおよびパラメータ変数ベクトルPが変化したときの状態変数 ベクトルXの変化分ΔXをヤコビ行列GX、GU、GPから計算することができることを示している。
ここで、式(2.2-7)、式(2.2-8)の行列SU、SPを用いると式(2.2-6)は式(2.2-9)のように表される。
[ ]
X UU G G
S =− −1 (2.2-7)
[ ]
X PP G G
S =− −1 (2.2-8)
P S U S
X =− UΔ − PΔ
Δ (2.2-9)
式(2.2-7)、式(2.2-8)で与えられる行列SU、SPがそれぞれ‘状態変数Xの操作変数ベクトルUに 対する感度行列’および‘状態変数Xのパラメータ変数ベクトル Pに対する感度行列’である。
次節に述べる電力系統における感度を求めるときの基本式となるのが式(2.2-7)、式(2.2-8)である。
通常、パラメータ変数ベクトルPは一定な変数としているので、変化分ΔP=0である。このとき 式(2.2-9)は式(2.2-10)となる。
25
U S X =− UΔ
Δ (2.2-10)
式(2.2-7)、式(2.2-8)の詳細と計算式に関しては、次節の電力系統における感度解析で記述する。
2.3. 電力系統における感度解析
本節では、始めに電力系統における感度解析として、電力潮流方程式に関する感度行列の求め 方と計算式について述べる。その後、託送経路の特定に必要となる線路電力潮流感度の算出方法 について述べる。
2.3.1. 電力潮流方程式と変数の分類
N個のノードを持つ一般の電力系統の電力潮流は一般にN元の複素数連立方程式で表されるが、
有効電力、無効電力を発電と消費に分けて書き直すと式(2.3-1)のように書くことができる。
∑
+ +
=
+ ks k k k N k
ks jQ C jD E Y E
P
α &α &α k=1,2,…,N (2.3-1) 式(2.3-1)において
Pk:ノードkにおける発電有効電力 Qk:ノードkにおける発電無効電力 Ck:ノードkにおける消費有効電力 Dk:ノードkにおける消費無効電力
α:ノードk自身も含めたノードkに隣接するノード
E&k:ノードkの電圧ベクトル
α
Y&k :ノードkとノードα間の伝達アドミタンス
Y&kk:ノードkの駆動点アドミタンス
ここで、ノードkの電圧ベクトルE&kを極形式で表すと式(2.3-2)のようになる。
j k
k
k E e
E& = ϑ (2.3-2)
Ek:電圧の大きさ θk:位相角
また、アドミタンスY&kαを直角座標形式で表すと式(2.3-3)のようになる。
α α
α k k
k G jB
Y& = + (2.3-3)
α
Gk :コンダクタンス α
Bk :サセプタンス
26
これを式(2.3-1)に代入して実部と虚部(有効電力と無効電力)に分けると2N個の方程式g2k-1=0、
g2k=0(k=1,2,…,N)が得られる。すなわち、式(2.3-4)、式(2.3-5)のようになる。
( ) ( )
{ }
∑
− + −+
−
− =
α α kα
θ
kθ
α kαθ
kθ
α kk k
k C P E E G B
g2 1 cos sin (2.3-4)
( ) ( )
{ }
∑
− − −+
−
=
α α kα
θ
kθ
α kαθ
kθ
αk k k
k D Q E E G B
g2 sin cos (2.3-5)
式(2.3-4)、式(2.3-5)の両式は、各ノードにおける発電及び消費有効電力、無効電力、電圧、位相 角、コンダクタンス、サセプタンスを変数とする2N元の実数連立方程式である。
ここで、式(2.3-4)、式(2.3-5)に含まれる変数について考えてみる。
電力系統内のいろいろな電気量を一括整理すれば、潮流計算における既知量と未知量、調整設 備に対応する操作量、および一定な不変量に大別される。
まず、電力潮流計算においては、発電機母線、負荷母線、スラック母線の指定値の違いから既 知量と未知量は表 2.3-1 のようになる。表 2.3-1 のほとんどの量は電力潮流方程式式(2.3-4)、式 (2.3-5)に含まれている。
これらの緒量を次の3種の変数に分類する。
(1) 従属変数ベクトルX(2N次元列ベクトル)
前述の潮流計算における未知量の中で、母線の有する未知量とする。すなわち、従属変 数Xとしては、母線の種類別に
発電機母線:Qk、θk 負荷母線:Ek、θk スラック母線:Pk、Qk が選ばれることになる。
式(2.3-4)、式(2.3-5)に含まれるものの総数は、各母線から2 つずつ選んで、2N である。
これは電力潮流が一義的に定まるための条件でもある。
(2) パラメータベクトルP(列ベクトル)
電力潮流計算における既知量の中で、通常の運用では不変な量であるもの。すなわち、
送電線路および機器の定数がこれに相当する。
27
表 2.3-1 潮流計算における既知量と未知量
(3) 操作変数ベクトルU(M次元列ベクトル)
系統運用における調整設備の操作量に対応するものであり、調整設備の種類によって、
式(2.3-4)、式(2.3-5)中のいずれを操作変数に選ぶかが決まる。操作変数の要素としては次 のものを選ぶことができる。
① 電力潮流計算における母線での既知量
すなわち、以下のものを選ぶことができる。
発電機母線:Pk、Ek 負荷母線:Pk、Qk スラック母線:Ek、θk
例えば操作量として、発電機有効出力、発電機端子電圧を考えるときは、それぞれPk、 Ekを操作変数Uとすればよい。
② 電圧無効電力制御における調相設備 並列キャパシタ:Dk
リアクター:Dk
③ 式(2.3-4)、式(2.3-5)に含まれない各種変圧器の操作量 負荷時電圧調整器(LRC)のタップ:n
既知量 未知量
発電機母線
有効電力Pk
母線電圧の大きさEk
無効電力Qk
母線電圧の位相角θk
負荷母線
有効電力Pk 無効電力Qk
母線電圧の大きさEk 母線電圧の位相角θk
スラック母線
母線電圧の大きさEk 母線電圧の位相角θk
有効電力Pk 無効電力Qk
送電系統 送電線路と機器の 接続状態と定数
送電系統内の母線電圧の 大きさと位相角Ek、θk 線路・機器を流れる有効・
無効電力潮流Pkm、Qkm
28 移相変圧器:nejθ
④ 負荷母線における負荷(遮断負荷)
遮断負荷:Ck + jDk
⑤ 発電機母線における脱落発電機
脱落発電機の有効・無効出力:Pk + jQk
ここで④、⑤を制御変数と考える場合は、それぞれCkとDkおよびPkとQkの複合された ものであり、①~③の場合とは異なっているが、感度行列の計算時には、まったく同様に 扱うことができる。
2.3.2. 電力方程式に関する感度行列
前項の分類によって定義された3つのベクトルX、UおよびPを用いると、式(2.3-4)、式(2.3-5) の両式は簡単に式(2.3-6)のベクトル方程式で表される。
(
X,U,P)
=0G (2.3-6)
ここでGはg2k-1およびg2k (k=1,2,…,N)をその要素とする式(2.3-7)のような列ベクトルである。
(
g g g k g k g N g N)
col
G≡ 1, 2,L, 2 −1, 2 ,L, 2 −1, 2 (2.3-7) ただし、colは列ベクトルを意味する。
さて、ある運転条件で運転しているNノードの電力系統において操作ベクトルUの値がU0の とき、従属変数ベクトルXがX0であったとすると、U0およびX0は電力潮流方程式を満足するの で式(2.3-8)が成り立つ。
(
X0,U0,P)
=0G (2.3-8)
いま、電力系統内のある調整設備を操作して、操作変数ベクトルU0からU0+ΔUに変化したとす る。このとき、電力潮流方程式を満足するため、従属変数ベクトルXがX0からX0+ΔXに変化し たとすると、式(2.3-9)が成立する。
(
X0 +ΔX,U0 +ΔU,P)
=0G (2.3-9)
ここでΔU を微少量とすると(従って、一般にΔX も微少量になる)、式(2.3-9)を初期潮流状態
(
X0,U0,P)
を中心にテイラー展開し、ΔX およびΔU に関する二次以上の微少量を無視すること により、式(2.3-10)が成り立つ。( )
(
0, 0,,) (
, 0, 0,) (
0, 0,)
00 0
= Δ +
Δ +
≈
Δ + Δ
+
U P U X G X P U X G P U X G
P U U
X X
G
U X
(2.3-10)
ただし、GX:関数ベクトルGの従属変数ベクトルXに関するヤコビ行列