第 5 章 系統利用状況を反映した託送料金設定手法
5.2. 系統利用状況を反映した託送料金
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表 5.1-3 総括費用方式の既存手法
出典:電力自由化と技術開発
179
郵便切手方式による託送料金としては式(5.1-1)が提案されており、単位 kW あたりの平均費用よ り託送料金を算出している。しかしこの方式では、図 5.2-1 のように kW の値をシステムピーク 時における託送電力のkW値とするか、個々の託送電力の最大kW値によって算定するかで、料 金に違いが生じる。更に、個々の託送電力の最大kW値を採用する場合、個々の需要家の最大電 力の和は、最大電力需要を上回るため調整が必要となるという問題点がある [4]。また、式(5.1-1) は単位kW あたりの平均費用のため、kW あたりに比例する料金を回収する場合には良いが、可 変費等のkWhに比例する料金を設定する場合には改良が必要である。
図 5.2-1 郵便切手方式のkW値
そこで、これらの点を考慮して、式(5.2-1)のようにように郵便切手方式を改良した。
総需要 送電設備の費用
=
∑
2
UCPS (5.2-1)
式(5.2-1)による託送料金UCPS2[通貨単位/kWh]は、単位kWあたりではなく単位kWh当たりの単 価を求め、単価と託送電力量によりコストを配分するものである。これにより、送電設備の費用 を使用量に応じた形で適切に回収することが可能となる。提案手法では、式(5.2-1)の UCPS2と次 項以降で説明する各係数により託送料金を算定する。
5.2.2. 潮流方向係数
本項では、系統の利用状況を反映する三つの係数のうち、潮流方向係数について説明する。潮 流方向係数αにより、潮流改善に対してインセンティブを付与することが可能となる。この係数 は、託送と託送以外(ベース)による潮流の方向関係により決定する係数で、ベース潮流と逆方 向の託送(潮流状況を改善する託送)程、料金が安くなる係数である。この係数を説明したもの
180 が図5.2-2である。
図 5.2-2 潮流方向係数
潮流方向係数は、次の手順により計算できる。
[step1]主要託送経路における託送による潮流とそれ以外の潮流(ベース潮流)の方向関係から式 (5.2-2)によりα′を計算する。
( )
( )
∑ ∑
×
= ×
′
i i
i i
b a
b
α
a (5.2-2)ここで、
[同方向の場合] a:|線路電力潮流感度|
[逆方向の場合] a:|線路電力潮流感度|×(-1) b:送電線亘長
i:主要託送経路の送電線
である。主要託送経路及び各送電線の線路電力潮流感度は、前章までに提案した託送経路特定手 法により計算する。α′は主要託送経路の全送電線の潮流がベース潮流と逆方向の場合に-1となり、
同方向の場合に1となる。
[step2]α′及びA、Bから式(5.2-3)により潮流方向係数αを計算する。
(
A−B)(
′+)
+B= 2
α
1α
(5.2-3)A、Bは可変であり、範囲を広く設定する(例えばA=1.4、B=0.6)ことにより本係数の重みを大 きくすることができる。
181
係数αが1 より大きい場合、料金を割り増し、逆に 1 より小さい場合は割り引く係数である。
この係数は託送が利用している各送電線に対して、送電線距離と託送潮流の割合(線路電力潮流 感度)に応じた重みを乗じて潮流方向を算出している。長距離送電線と短距離送電線を同じ一送 電線と扱わないために送電線距離の項を入れている。また、主要託送経路(例えば託送の 80%)
の送電線とほとんど託送による潮流が流れない送電線(例えば託送の 3%)を同じ一託送経路と 扱わないために線路電力潮流感度の項を入れている。
以下で潮流方向係数αの計算例を示す。
例(潮流方向係数α): A=1.2、B=0.8
主要託送経路送電線数:2
送電線1:送電線亘長:50km、線路電力潮流感度:0.4、潮流方向:逆方向 送電線2:送電線亘長:60km、線路電力潮流感度:-0.6、潮流方向:順方向
( )
0.2866 . 0 60 4 . 0 50
6 . 0 60 4 . 0
50 =
× +
×
× +
−
= ×
α′ (5.2.4)
( )( )
0.8 1.0572
1 286 . 0 8 . 0 2 .
1 − + + =
α= (5.2-5)
5.2.3. 託送距離係数
次に、託送距離係数について説明する。潮流方向係数βにより、託送距離に対してインセンテ ィブを付与することが可能となる。この係数は、発電所と需要場所の距離により決定する係数で、
託送距離が短い託送程、料金が安くなる係数である。この係数を説明した図が図5.2-3である。
図 5.2-3 託送距離係数
182 託送距離係数は、次の手順により計算できる。
[step1]発電所と需要場所の距離をβ′とする。
距離については、複雑性を避けるために、発電所、需要場所間の最短経路等、託送経路によらな い距離とする。
[step2] β′及びA、B、C、Dから式(5.2-6)により託送距離係数βを計算する。
( )( )
BC D
C B
A +
−
′−
= −
β
β
(5.2-6)A、Bは可変であり、範囲を広く設定する(例えばA=1.4、B=0.6)ことにより本係数の重みを大 きくすることができる。また、C、D については、託送料金を設定する系統に応じて設定する。
例えば、想定される託送の最短、最長距離をそれぞれC、Dと設定する等となる。また、図5.2-3 のように一定距離以下、以上は一定値(A、B)となるように設定することも方法も考えられる。
係数βが1 より大きい場合、料金を割り増し、逆に 1 より小さい場合は割り引く係数である。
係数βの導入により託送距離を反映できるため、送電損失が多くなる長距離託送と短距離の託送 が同水準の料金となるという現行の料金制度の問題点を解決することができる。
以下で託送距離係数βの計算例を示す。
例(託送距離係数β):
A=1.2、B=0.8、C=50km、D=250km 発電所、需要場所間距離:200km
( )( )
0.8 1.150 250
50 200 8 . 0 2 .
1 + =
−
−
= −
β (5.2-7)
5.2.4. 負荷平準化係数
最後に、負荷平準化係数について説明する。負荷平準化係数γにより、負荷平準化に対してイ ンセンティブを付与することが可能となる。この係数は、主要託送経路の利用率(潮流/送電線 容量)により決定する係数で、軽負荷の送電線を利用する託送程、料金が安くなる係数である。
この係数を説明したものが図5.2-4である。
183
図 5.2-4 負荷平準化係数
負荷平準化係数は、次の手順により計算できる。
[step1]主要託送経路における利用率及び送電線亘長から式(5.2-8)によりγ′を計算する。
( )
( )
∑ ∑
×
×
= ×
′
i i
i i i
b a
c b
γ
a (5.2-8)ここで、
a:|線路電力潮流感度|
b:送電線亘長
c:利用率(送電線潮流/送電線容量)
i:主要託送経路の送電線
である。送電線潮流は潮流計算により計算し、主要託送経路は前章までに提案した託送経路特定 手法により計算しする。γ′は、主要託送経路の送電線潮流が全て送電線容量と同じ場合に1(100%)
となる。
[step2]γ′及びA、B、C、Dから式(5.2-9)により負荷平準化係数γを計算する。
( )( )
BC D
C B
A +
−
′−
= −
γ
γ
(5.2-9)A、Bは可変であり、範囲を広く設定する(例えばA=1.4、B=0.6)ことにより本係数の重みを大 きくすることができる。また、C、Dは系統の平均利用率等から適宜設定する。
係数γが1 より大きい場合、料金を割り増し、逆に 1 より小さい場合は割り引く係数である。
この係数は、託送が利用している各送電線に対して、送電線距離と託送潮流の割合(線路電力潮 流感度)に応じた重みを乗じて送電線の平均利用率を算出している。送電線距離や線路電力潮流 感度の項を入れた理由は、5.2.2項の潮流方向係数と同様である。
184 以下で負荷平準化係数γの計算例を示す。
例(負荷平準化係数γ): A=1.2、B=0.8、C=0.2、D=1.0 主要託送経路送電線数:2
送電線1:送電線亘長:50km、線路電力潮流感度:0.4、利用率:0.3 送電線2:送電線亘長:60km、線路電力潮流感度:-0.6、利用率:0.7
557 . 6 0
. 0 60 4 . 0 50
7 . 0 6 . 0 60 3 . 0 4 . 0
50 =
× +
×
×
× +
×
= ×
γ′ (5.2-10)
( )( )
0.8 0.9792 . 0 1
2 . 0 557 . 0 8 . 0 2 .
1 + =
−
−
= −
γ (5.2-11)
5.2.5. 系統利用状況を反映した託送料金
ここでは、本章で提案する系統利用状況を反映した託送料金について記述する。前項まで各要 素を用いて式(5.2-12)より託送料金[通貨単位/kWh]を算出する。
γ β α × ×
×
=
PS2PM
UC
UC
(5.2-12)ここで、
UCPM:提案手法による託送料金[通貨単位/kWh]
2
UCPS :5.2.1項において改良した郵便切手方式によるコスト α:潮流方向係数
β:託送距離係数 γ:負荷平準化係数 である。
各係数の概要と効果をまとめたものが表 5.2-1 である。提案手法では、託送による潮流方向を反 映する潮流方向係数、託送距離を表す託送距離係数、託送実施時の系統の利用率を反映する負荷 平準化係数により系統利用状況を反映した託送料金を算出する。式(5.2-12)は 5.2.1 項で改良した 郵便切手方式を用いているため、送電設備費用の算出には現行の手法を利用できる。また、各係 数は負荷距離方式と同様に託送による利用送電線毎の影響を反映しており、利用送電線の影響度 合いを特定するために第 2~4 章で提案した託送経路特定手法を使用している。提案手法により 潮流改善する取引については割り引く、負荷率の低い夜間は割り引く、送電距離が短い場合は割 り引く、といった系統の利用状況を反映した料金設定が可能となる。
185
表 5.2-1 各係数の概要と効果
以下で、提案手法と既存手法である郵便切手方式、契約経路方式、負荷距離方式を比較するこ とにより提案手法の利点を示す。
はじめに、提案手法と郵便切手方式を比較する。現行の料金制度となっている郵便切手方式で は、託送距離や系統上の接続地点に関係なく一定の託送料金を設定するため、託送による系統の 利用状況は料金に反映されていない。これに対し、提案手法では、託送による潮流方向、託送距 離、託送時の系統利用率といった点から託送による系統の利用状況を反映することができる。一 方で、郵便切手方式における送電設備費用の算出については、投資コストの回収という点から優 れている手法のため、提案手法においても改良した形で取り入れている。これにより、送電設備 費用の算出については、現行方式をそのまま利用できると共に、5.1.1項であげた投資コストの回 収という性質を満足する託送料金を設定することができる。
次に、契約経路方式と比較する。契約経路方式では、系統運用者と系統利用者(託送依頼者)
の間で、託送経路を契約時に交渉で定めるため、2.1 節で述べたループフローのような託送によ る状況を料金に把握することができない。これに対し、提案手法では、託送経路を第 2~4 章で 提案した託送経路特定手法により特定するため、託送による系統利用状況を料金に正確に反映で きる。このため、送電線利用者にとっても実際に使用した送電線から料金が算出されるという点 で透明性の高い料金設定となる。
最後に、負荷距離方式と比較する。利用送電線毎の影響を反映しているという点では提案手法 と負荷距離方式は共通である。しかし、託送実施時の系統の潮流状況を反映できる点が両手法の 異なる点である。負荷距離方式では、託送による利用送電線の送電容量や送電距離から料金を算 出するため、軽負荷の時間帯、地域における託送と重負荷の時間帯、地域における託送が同様に 取り扱われるという性質がある。これに対し、提案手法では負荷平準化係数により託送実施時に おける利用送電線の利用率を反映した託送料金を設定できる。
係数 概要 効果
潮流方向係数α ベース潮流を緩和する程コスト安 重潮流緩和 託送距離係数β 託送距離が短い程コスト安 長距離託送の抑制 負荷平準化係数γ 軽負荷(時、場所)の取引程コスト安 負荷平準化