第 3 章 拡張感度解析に基づく複数地点間の託送経路特定手法
3.5. 提案手法のシミュレーションによる検証
3.5.2. 託送経路の特定
本項では、IEEE30モデルにおいて表3.1-1のケース2~4に相当する託送を各2ケース、合計6 ケースの託送を想定し、提案手法によりそれぞれの託送経路を特定する。
具体的には、133kV側の発電所と33kV側の負荷の間に以下の6つの託送を想定した。
発電所(一箇所)、需要場所(複数箇所)
【ケース1】ノード1(発電所)-ノード12、23(需要場所)
【ケース2】ノード1(発電所)-ノード23、29(需要場所)
発電所(複数箇所)、需要場所(一箇所)
【ケース3】ノード1、8(発電所)-ノード23(需要場所)
【ケース4】ノード1、8(発電所)-ノード29(需要場所)
発電所(複数箇所)、需要場所(一箇所)
【ケース5】ノード1、8(発電所)-ノード12、23(需要場所)
【ケース6】ノード1、8(発電所)-ノード23、29(需要場所)
はじめに、表3.1-1 のケース 2 に相当する一箇所の発電所から複数箇所の需要場所への託送経 路を特定する。ここでは、図3.5-1に示す2つの託送を想定した。
105
図 3.5-1 発電所(一箇所)、需要場所(複数箇所)のシミュレーションケース
2 1
3
4
5
6
7 8
9
1 0 12 11
13 14
15
16 17
18 19
20 21
22
23 24 25
26
27
28 30
29
G G G
G C C
ケース1 ケース2
106 (1) 【ケース1】ノード1-12、23間の託送
ケース1の託送経路を特定する。ノード12、23間の託送量の割合は3:7とする。以下 に図3.4-1の託送経路特定手法のアルゴリズムとの対応を示す。
[step1]ケース1は需要場所が複数のため[step2]へ移る。
[step2]一箇所の需要場所への託送に分解する。具体的にはノード1-12、23間への託送をノ ード1-12間の託送とノード1-23間の託送に分解する。
[step3~9]分解した各託送は、第2章の提案手法により託送経路が特定可能である。[step9]
までの手順に従い、各託送の経路を特定するために必要な線路電力潮流感度を計算する。
表 2.6-9 及び表 2.6-10が分解した各託送の線路電力潮流感度である。両託送の線路電力潮 流感度は、発電所が同じため1度の計算により求められている。
[step10]感度に線形性が成り立つ性質を利用し分解した各託送を重ね合わせる。ノード12、
23間の託送量の割合は7:3であることから、[step9]で計算したノード1-12間、ノード1-23 間の線路電力潮流感度をそれぞれα、βとすると 0.7α+0.3βにより託送経路の特定に必 要な線路電力潮流感度を得ることができる。計算結果が表3.5-2である。表3.5-2における 感度の符号は表2.6-2の対応表の左ノードから右ノードの潮流を正としている。
[step11]表3.5-2より託送経路の特定を行った結果が図3.5-2である。図3.5-2における実線 矢印は感度が0.1以上の経路を示したものである。また、表3.5-2のブランチ番号と図3.5-2 のノード番号の対応は表2.6-2の通りである。
始めに表 3.5-2 において、発電端に接続されているブランチ 1、2 と受電端のノード 12 に接続されているブランチ 15~19 及びノード 23 に接続されているブランチ30、32に注 目 す る 。 す る と 、 ブ ラ ン チ 1、2 の 感 度 は そ れ ぞ れ 0.6415、0.4021 で あ る の で 、 0.6415+0.4021=1.0436より、発電側は託送量の104.36%を発電していることがわかる。また、
需要場所については、ノード12に接続されているブランチ15~19の感度はそれぞれ0.5027、 0、0.0584、0.2249、-0.0806であるので、ノード 12に流れ込む合計は、潮流方向を考慮す ると0.5027+0-0.0584-0.2249 +0.0806=0.3000より、全託送量の30.00%となっている。また、
ノード23に接続されているブランチ30、32の感度はそれぞれ0.3828、-0.3205であるので、
ノード23に流れ込む合計は、潮流方向を考慮すると0.3828+0.3205=0.7033より、全託送量 の70.33%となっている。以上より、設定通りにノード12、23の需要場所に3:7の割合で 託送が行われていることがわかる。また、発電量が受電量より託送量の 4.03%大きな値と なっているが、これは送電損失を考慮しているためである。
107
次に託送経路について考える。図 3.5-2 よりノード 12 の需要場所への主要託送経路は、
ノード1-3-4-12及びノード 1-2-4-12であることがわかる。一方、ノード 23については、
ノード4-12間の変電所の他、ノード6-9、10及びノード28-27の変電所を通るルートと複 数のルートにより託送が行われている様子がわかる。
表 3.5-2 ノード1-12、23間の託送における線路電力潮流感度
ブランチ
線路電力 潮流感度
ブランチ
線路電力 潮流感度
ブランチ
線路電力 潮流感度 1 0.6415 15 0.5027 29 0.1241 2 0.4021 16 0.0000 30 0.3828 3 0.2482 17 0.0584 31 0.2052 4 0.3945 18 0.2249 32 -0.3205 5 0.1218 19 -0.0806 33 -0.1181 6 0.2732 20 0.0576 34 0.0000 7 0.1280 21 -0.0802 35 -0.1191 8 0.1204 22 -0.1038 36 0.1207 9 -0.1190 23 -0.1018 37 0.0001 10 0.0238 24 -0.1017 38 0.0001 11 0.2519 25 0.1042 39 0.0000 12 0.1408 26 0.0809 40 0.0248 13 0.0000 27 0.1255 41 0.0964 14 0.2519 28 0.0821
108
図 3.5-2 ノード1-12、23間の託送経路特定結果
2 1
3
4
5
6
7 8
9 10
12 11 13
14
15
16 17
18 19
20 21
22
23 24 25
26
27
28 30 29
G G G
G
C C
109 (2) 【ケース2】ノード1-23、29間の託送
次にケース 2の託送経路を特定する。ノード 23、29間の託送量の割合は6:4とする。
ケース2 はケース 1 と発電所が同じである。従って、3.4.4 項の[step12]にあるように、ケ ース1で得られた計算結果から託送経路の特定に必要な線路電力潮流感度を計算すること ができる。ケース1と同様に需要場所が複数のため、ノード1-23、29間への託送をノード 1-23間の託送とノード1-29間の託送に分解する。ケース1の[step9]で得られた線路電力潮 流感度行列は式(2.6-2)のように41行30列であり、M列の要素がノード1-M間の線路電力 潮流感度となっている。従って、それぞれ23列及び29列が分解した託送の線路電力潮流 感度となる。ノード23、29間の託送量の割合は6:4であることから、各託送の線路電力 潮流感度をそれぞれα、βとすると 0.6α+0.4βにより託送経路の特定に必要な線路電力 潮流感度を得ることができる。計算結果が表3.5-3である。表3.5-3における感度の符号は 表2.6-2の対応表の左ノードから右ノードの潮流を正としている。表3.5-3より託送経路の 特定を行った結果が図3.5-3である。図3.5-3における実線矢印は感度が0.1以上の経路を 示したものである。また、表3.5-3のブランチ番号と図3.5-3のノード番号の対応は表2.6-2 の通りである。
始めに表 3.5-3 において、発電端に接続されているブランチ 1、2 と受電端のノード 23 に接続されているブランチ 30、32 及びノード 29 に接続されているブランチ37、39に注 目 す る 。 す る と 、 ブ ラ ン チ 1、2 の 感 度 は そ れ ぞ れ 0.6609、0.3963 で あ る の で 、 0.6609+0.3963=1.0572より、発電側は託送量の105.72%を発電していることがわかる。また、
需要場所については、ノード23に接続されているブランチ30、32の感度はそれぞれ0.4041、 -0.1992であるので、ノード23 に流れ込む合計は、潮流方向を考慮すると0.4041+0.1992=
0.6033より、全託送量の60.33%となっている。また、ノード29に接続されているブラン チ37、39の感度はそれぞれ0.2977、-0.1125であるので、ノード29に流れ込む合計は、潮 流方向を考慮すると0.2977+0.1125=0.4102より、全託送量の41.02%となっている。以上よ り、設定通りにノード23、29の需要場所に6:4の割合で託送が行われていることがわかる。
また、発電量が受電量より託送量の 4.17%大きな値となっているが、これは送電損失を考 慮しているためである。
次に託送経路について考える。図 3.5-3 よりノード 23 の需要場所への主要託送経路は、
ノード4-12間の変電所からノード12-15-23を通るルートと、ノード6-9、10間の変電所か らノード10-22-24-23を通るルートの二つであることがわかる。一方、ノード29について
110
は、ノード28-27間の変電所に対応しているブランチ36の感度が表3.5-3より0.3598とな っていることから、0.3598/0.4102=0.877より託送の87.7%がこのルートを通っているこ とがわかる。
表 3.5-3 ノード1-23、29間の託送における線路電力潮流感度
ブランチ
線路電力 潮流感度
ブランチ
線路電力 潮流感度
ブランチ
線路電力 潮流感度 1 0.6609 15 0.3366 29 0.1550 2 0.3963 16 0.0000 30 0.4041 3 0.2352 17 0.0751 31 0.2564 4 0.3889 18 0.2755 32 -0.1992 5 0.1318 19 -0.0092 33 0.0538 6 0.2956 20 0.0693 34 0.0000 7 0.2763 21 -0.0092 35 0.0543 8 0.1304 22 -0.0630 36 0.3598 9 -0.1288 23 -0.0624 37 0.2977 10 0.0711 24 -0.0622 38 0.1170 11 0.2134 25 0.0639 39 -0.1125 12 0.1191 26 0.0095 40 0.0725 13 0.0000 27 0.1568 41 0.2891 14 0.2134 28 0.1025
111
図 3.5-3 ノード1-23、29間の託送経路特定結果
2 1
3
4
5
6
7 8
9 11 10
12 13
14
15
16 17
18 19
20 21
22
23 24 25
26
27
28 30 29
G G G
G
C C
112
次に、表3.1-1 のケース 3 に相当する複数箇所の発電所から一箇所の需要場所への託送経路を 特定する。ここでは、図3.5-4に示す2つの託送を想定した。
図 3.5-4 発電所(複数箇所)、需要場所(一箇所)のシミュレーションケース
2 1
3
4
5
6
7 8
9
1 0 12 11
13 14
15
16 17
18 19
20 21
22
23 24 25
26
27
28 30 29
G G G
G C C
ケース3 ケース4
113 (3) 【ケース3】ノード1、8-23間の託送
ケース3の託送経路を特定する。ケース3では発電所が複数箇所あるため、始めに発電 所間の出力配分を 3.2 節の経済負荷配分により決定した。各発電所の燃料費特性関数は表 3.5-4である。また、ノード1及び8により供給する負荷量は合計で97.69[MW]である。以 上より、各発電所の出力、燃料費、増分燃料費を算出した結果が表 3.5-5 である。本ケー スでは託送における発電所間の出力配分を発電出力の割合に応じて設定することとする。
また、送電損失分についてはノード1の発電所で供給することとする。
表 3.5-4 発電所の燃料費特性関数
表 3.5-5 発電所の出力及び燃料費
以下に図3.4-1の託送経路特定手法のアルゴリズムとの対応を示す。
[step1]ケース3は需要場所が一箇所のため[step3]へ移る。
[step3]複数の発電所からの託送のため、[step4]へ移る。
[step4]本ケースでは発電所間の出力割合に応じて託送時の出力配分を決定する。各発電所 の出力は表 3.5-5 よりそれぞれ 67.873[MW]、29.817[MW]であることから出力の割合は 69.48%、30.52%となっている。従って、ノード 1、8 の発電振替係数をそれぞれ 0.6948、 0.3052と設定する。
[step6]GX行列を第2章と同じように作成する。
[step7]GU行列については、複数の発電所からの託送のため、式(3.3-14)~式(3.3.-19)により 作成する。
発電所 出力[MW] 燃料費[$/h]
ノード1 67.873 774.43 ノード8 29.817 352.67
発電所 α β γ
ノード1 0 10.833 0.00850 ノード8 0 11.669 0.00533
114
[step8][step6]及び[step7]で得られた GX 、GU行列を用いて、ノード電圧、位相に関する感 度行列Sを作成する。
[step9]有効電力潮流感度の計算:[step8]で得られた感度行列と式(2.3-55)から線路電力潮流 感度を計算する。
[step11][step9]で得られた線路電力潮流感度行列は式(2.6-2)のように 41 行 30列であり、M 列の要素がノード1、8-M間の線路電力潮流感度となっている。ケース3はノード23へ の託送のため、23列目の感度から託送経路を特定する。計算結果が表3.5-6である。表3.5-6 における感度の符号は表2.6-2の対応表の左ノードから右ノードの潮流を正としている。
[step11]表3.5-6より託送経路の特定を行った結果が図3.5-5である。図3.5-5における実線 矢印は感度が0.1以上の経路を示したものである。また、表3.5-6のブランチ番号と図3.5-5 のノード番号の対応は表2.6-2の通りである。
始めに表3.5-6において、ノード1の発電所に接続されているブランチ1、2とノード8 の発電所に接続されているブランチ10、40に注目する。ブランチ1、2の感度はそれぞれ 0.4615、0.2953 であるので、0.4615+0.2953=0.7568 より、ノード 1 の発電所では託送量の 75.68%を発電していることがわかる。一方、ブランチ 10、40 の感度はそれぞれ-0.2333、 0.0724であるので、潮流方向を考慮すると0.2333+0.0724=0.3057より、ノード8の発電所 では託送量の30.57%を発電していることがわかる。以上から両発電所で託送量の106.25%
を発電していることがわかる。ここで、各発電量を発電振替係数と比較すると、ノード 8 の発電所は30.52%の設定に対し30.57%と設定値に近い出力となっているのに対し、ノー ド1の発電所は69.48%の設定に対し75.68%と出力の方が大きい値となっている。これは、
ノード 1 が送電損失分を発電しているためである。次にノード 23 の需要家に接続されて いるブランチ 30、32に注目する。ノード23 に接続されているブランチ30、32の感度は それぞれ0.5862、-0.4193であるので、ノード23に流れ込む合計は、潮流方向を考慮する と0.5862+0.4193=1.0055より、全託送量の100.55%となっている。以上より、ノード1、8 の発電所とノード 23 の需要家間に託送が行われていることがわかる。また、発電量が受 電量より託送量の 5.70%大きな値となっていることから、ケース 3 における送電損失は 5.7%であることがわかる。
次に託送経路について考える。ノード1-23間の表2.6-9及び図2.6-12と比較すると、ノ ード1の発電所からノード6-9、10への回り込みの潮流が少なくなっていることがわかる。
具体的にはノード2-5、ノード2-6、ノード4-6のブランチ5、6、7に注目すると、ノード